落日の煌き、灯るころ
落日の煌き、灯るころ
無差別とも言える手段をとる「加害者」。
そして、身勝手な犯人の思いが、彼女を追い詰めていく……。
このお話は、まだその序章。
中身とタイトルが少々合わないような気もしますが^^;
※今回は、最後にPersonaXIIの誰かがCROSSします。
『……お聞きいただきましてありがとうございます。
こちらは『Sunset On Night Time』……』
カーラジオから流れてくる軽快な音楽。
南関東の地元局だが、その範囲は意外と広くて、南関東圏ならばほぼ一円で聞けるというFM局。
そのラジオの看板番組でかかった曲が、波となって車中を満たしていく。
夕陽の沈む時間、薄暮のひと時――その時間は季節によって違うものだけれど。
このラジオは大体午後5時半ごろを想定して、7時までやっている番組。
選曲もさることながら、この番組にリクエストしてくる人たちも、結構粋なナンバーをリクエストしてくる事でも知られている。
勿論、この息の長い番組を支えているのは、リスナーもさることながら、出演者に魅力があるってことなのだろう。
“麻央”と言う名で知られているこの女性アナウンサーは、流暢な日本語と耳に心地よい声で人気が高い。
ついついこの時間にそこに合わせてしまうのは、やはり、その声を聞きたくなってしまうからだろうな。
「……それでは、次のリクエストに参りましょう。
Mailですね。ありがとうございます。えっと……」
ふと、“麻央”の声が止まった。
珍しい。こんなことは今までなかったのに。
「……あ、ごめんなさい。
では、こちらのリクエストで――」
「!? リクエストを替えた?」
いつもと違う彼女の行動に、訝しい思いを拭いきれないまま車を走らせていた。
「小包爆弾!?」
「しっ! 声が高いですよ」
「あ、あぁ。ごめん……。つい……」
浮かしかけた腰を椅子に戻し、座席の前の方に座って、やや前のめりな格好になる。
幸い、こちらの話に耳を傾けている人はいないようだった。
ちょっとほっとしながら、少し声を潜めて改めて聞きなおした。
「その話は、本当なの?」
「なぜに嘘をつく必要があるんですか?
もう、その話で持ちきりですよ。
知らなかったんですか?」
「知らなかったから聞いてるんだろう?
キミも、意地が悪いね」
「はは……。それはすみませんでした。
でも、誰なんでしょうね?
悪戯にしては、たちが悪すぎる」
「それで? 被害者は?」
「あぁ、それが幸いと言うか、大した被害がなくてすんだんで――あ、だから、知らなかったんですかね?」
「……そう、かもしれないね」
彼は、少し得意そうに話を続ける。
よっぽど、他人が知らないことを教えるというのが嬉しいらしい。
「昨日の夕方頃のことですよ。
放送局のフロアー宛に、妙にごわごわした封筒が届きましてね。
しかも、中身もなんか怪しいってんで、ちょっと、その筋の人に来てもらいましてね」
「その筋?」
「まぁ、なんていうんですか?
処理班ってほどじゃあないんですけど、そう言うものの扱いに慣れている人っていうのがいましてね。
本当はたまたまなんですけれど。
その人が、ちゃんと調べてくれて……」
「玄人なのかい?」
「いやぁ、そう言うわけでもないようですけれど。
本職じゃあないって言ってましたしね」
「ふ~ん。本職でもないのに解体が上手い、のか……」
「豪語するだけあって、見事な手さばきでしたよ。
いや、本当感心しましたよ」
「キミが言うなら、本物なんだろうね」
「まぁた。そんな褒めないでくださいよ」
「相変わらず、自分の都合のいいことだけ、拾い上げるヤツだな」
そう言うと、思わず吹き出していた。
彼は、その姿にぷぅっと頬を膨らませていたけれど。
「それにしても……小包爆弾か……。
最近じゃ、インターネットとかでそう言うものの作り方がわかるらしいから、
一概にマニアックな連中のものと言うわけではなくなってきたし……」
「そうですよね。
本当、もしかしたら隣の人が爆弾魔だってこともありえるんですよね」
「確かにね。
隣人のことも良く解ってない昨今、何が起こるか解らないし」
「本当ですよ。
怖い世の中になったものです……」
「……それ、年寄りくさいよ?」
「なんですか? 同じこと言ってるだけじゃないですか?」
「こら、新藤。
そこでじゃれてないで、仕事したまえ!
まだ、今日のノルマは残ってるんだぞ?」
やおら課長が背後から声をかける。
まぁ、この状態じゃふざけていると見られても、仕方ない……か。
「はぁい、課長」
ちょっとふてぶてしさを残しながら、彼はそう仏頂面で答える。
こういうときに少しでも反省の色を見せて、しおらしくしていれば、もっと早く出世できるだろうに……。
ま、そう言うのに興味ないっていっつも言っている彼だから、こうして付き合っていられるんだろうけれど。
それにしても……。
爆弾魔と呼ばれるような連中の仕業なんだろうか?
見た目からして怪しいと思われるような、そんな物を送りつければ、爆弾の目的としては達成しないのではないか?
それとも……。
「なにか、違う目的があった――とか?」
誰も聞いていないフロアーの片隅で、ひとり窓の外を見ながら呟いていた。
そろそろ、夕陽が傾く。
ふと、昨日のラジオが気になった。
あの“麻央”の一瞬動揺したような沈黙……。
いったい、あれの意味するところは!?
冷めかけたコーヒーを咽喉に流し込む。
妙に苦さが口に広がった。
杞憂ならば、いい……そう、祈るように思いながら。
「今日、こちらの方に本人が来るので……」
「なんだ。
直耶君が担当なのかい?」
「まぁ、今日だけ――ですけどね。
彼女、まだ専属の担当、ここにはいないんですよ」
照れ笑いをしながら、彼は僕に伝えてくれた。
そして、彼女のことをもいろいろと教えてくれた。
いつもは生放送の番組を持つ彼女が、最近は収録が増えてきた事で一部リスナーに文句を言われ始めている事。
ある映画にゲスト出演したのがきっかけで、最近、TVなどの仕事が増えてきた事。
今日も、その仕事のために、ここにやってくること。
ここのところ、彼女がレギュラーをしているラジオ番組に、妙なMailが届くようになった事……。
それは、もしかして、昨日の!?
「あ、来たようですね。
では、迎えに行ってきますので、また、あとで」
呼び出していた携帯に出た彼が、そう言い残して足早に廊下を去ってった。
一人残された形になった僕は、直耶君が残していった情報を頭の中で整理していた。
この一連の出来事は、もしかして、ひとつのもの――なのかもしれない。
ざわっと、廊下が騒がしくなった。
何かあったのか?
考えるより先に、体が動いていた。
ドアを開けると同時に、甲高い悲鳴。
あの声は……。
角を曲がると、ぺたんと床に座り込んでいる女の人がいた。
そのそばに守るようにしていたのは、直耶君だった。
「どうしたの?
いったい、何が……」
真っ青な顔をして、その人は小刻みに体を震わせていた。
直耶君は、ちょっとおろおろした感じで、彼女を支えきれていない。
僕を見ると、とても安心しきった瞳をした。
「い、斑鳩さん……。
い、い、今……な、ナイフを持った男がっ……」
「ナイフだって?
それで、怪我は?」
「僕は、なかったんですけど……」
「まさか、彼女に!?」
視線を落とすと、呆然とした表情のままで、彼女は首を小さく何度も横に振っていた。
「いや……わ、私……なにもしてない……」
少し半狂乱になっているようだった。
多分、襲われたショックだろう。
「大丈夫、ですか?
立てますか?」
努めて優しい声で話しかける。
彼女の体がびくっと振るえ、その定まらない視点のまま、のろのろと顔を上げた。
僕はにっこり笑って、手を差し出した。
「いつまでも、そんなところに座っていては風邪を引きますよ。
さぁ、こちらへ」
ほっとしたような彼女の表情に、こちらも内心ほっとする。
こくりと頷いて、手を伸ばす彼女は、どことなく幼く見えた。
「あ、ありがとうございます」
部屋へと向かう最中に、彼女は小さな声で呟いた。
「別に、お礼を言われるほどの事はしてませんよ」
「でも……」
「直接あなたを助けたのは、僕ではありませんからね」
「そんなこと! ……ないです、よ……」
少し恥ずかしそうに、彼女はそう告げる。
それほど遠くない距離のはずなのに、今日はなぜか長く感じられた。
「さぁ、どうぞ」
気配を探りつつ、彼女を中に導く。
大丈夫。
変な気配は、ない。
「あれぇ?
斑鳩……さん?」
少々素っ頓狂な声に振り向くと、そこにいたのはカメラマンの日下部春流で……。
「おや、珍しいところで珍しい人に会いますね。
どうしたんですか、今日は」
そう言いながら彼女を中にいれ、ドアを閉めた。
「今日は、グラビア雑誌に載せるための取材のスチルを取りに来たんだ。
ところで、なんか騒がしいようだけど、なにかあった?」
「まあ、あったと言えばあった。
なかったと言えばなかった――でしょうかね?」
「なにそれ?
まぁ、いいや。
斑鳩さんは、これからお仕事? あんたも大変だね」
「仕事に関しては、お互いさまでしょう。
似たようなものですよ」
「ま、そうか。
あっ、もしかして、担当する人、もう中にいたりするんじゃ?
じゃあ、お邪魔だな。それじゃあ、失礼するよ」
「お気を使わせてすみませんね。
またの機会に」
そう言うと、彼は手をひらひらと振りながら角を曲がっていった。
ふぅと息をついて、ドアを開き、中へと歩みを進めた……。
※少々二番煎じのようなシチュエーションですが^^;
角坂SSに続いて2度目の登場の“麻央”さんです。
今回初登場した彼――直耶君。
フルネームは 新藤 直耶「しんどう なおや」です。
テレビ局に勤めてて、タレントさんのお世話をする人と言う……。
果たしてこんな職業があるのかどうかさえ怪しいのですが。
今回は、年下で少し甘えん坊なところがあると言う、設定で動いてもらいました。
好奇心旺盛で、意外と情報通――かな?(笑)
ちょっと春流さんが春流さんらしくなかったかも?^^;
この設定は絶対無理!と言う場合、ご一報いただきたいと思います^^;
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最終更新:2009年09月05日 21:38