Cold Night & Hot Night
Cold Night & Hot Night
※ 『十六夜月の誘い……』で初登場したヒロさんが再び登場!
新キャラも、登場してます❤
「う~、寒い。
今夜は一段と冷え込みますねー」
寒風吹き荒ぶ街中から、そう言いながら足早に店に入ってくる人影があった。
「何言ってるんだ?
まだ若いのに」
そのすぐ傍らを歩いていた人が、揶揄するように言う。
「いくら年齢が若くったって、寒いときは寒いもんですっ」
妙なとこで自己主張して、胸を張る。
そんな彼に、苦笑しながら言う、もうひとりがいた。
いるだけで目立つような、そんな存在感を醸し出す人だった。
「まー、もう12月だしな。
そろそろ年末も近いから、冷え込んだって当たり前だよな」
仲間を得たとばかりに、瞳を輝かせる。
「そーですよねっ?
俺、間違ってませんよね?
寒いのは、寒いんですよねっ?」
興奮気味にそう言う彼に、先輩風な人が呆れた感じで言った。
「確かに、気温的には冷え込んでいるし、寒いんだろうけどな」
「だろうけど?」
「どうやら、おまえは、一番若いのに一番寒がりなようだけどな」
「う……」
どうやら図星を指されたようで、二の句が告げなかった。
「うん? どうした?」
解っていつつそう尋ねると、やはり可笑しさがこみ上げてくるのか、笑いを堪えてもいるようだった。
「……反論、できません……」
少し哀しそうに、少し悔しそうに、彼が呟いた。
ちょっと、場の雰囲気が気まずいものになりそうになった。
それを払拭させるかのように、勤めて明るくみんなに提案する。
「まぁまぁ、それくらいにしませんか?
どうです? 今夜は仕事上がりに鍋でも。
あったまりますよ」
少しのどよめきと、賛成する声が幾人からも上がる。
「お鍋かぁ……。
いいですねぇ」
ウットリしたような声音で呟く声を、聞き逃すわけもなく。
またもや、弄られるターゲットになってしまったようで。
「と、言う事で。
材料の調達は――おまえだな、タクヤ」
にやりとほくそえみながら、先輩は彼の肩をぽんと叩いた。
驚いたのは叩かれた方で、ギャグ漫画的に言えば、飛び上がったようなものだったかもしれない。
「えぇっ?
そ、そんなのありですかぁ?」
悲鳴に近い、ある意味泣き言。
20そこそこの男性とは、ちょっと思えないくらいの頼りなさが、いまだあるようだ。
いくら、店に来て長い事たっていないとは言え、もう少ししっかりしていてもいいようなものなのだが。
「ひとりで無理ってんなら、2、3人連れてくといいさ」
「え~、でも……」
視線を巡らすも、若手の面々は誰一人として目を合わせようともしなかった。
鍋は食べたいけれども、その準備に借り出されるのは真っ平ごめん――と言ったところなのだろうか。
雑用が嫌なのか、後輩と一緒なのが嫌なのか……それは、聞いてみなければ解らない事なのだろうけれど。
「誰も付いてきてくれそうにないんですけどぉ……」
捨てられた子犬のように、半泣きに近い潤んだ瞳で縋り付く様に見上げてくる。
さすがに苛めた感があるらしく、先輩はちょっとした罪悪感を感じていたらしい。
ほんの少しため息混じりで、頭を掻いてこう言った。
「しゃーないなぁ。
ん~と、じゃあ、あとで交渉しといてやるよ」
その言葉に、ぱぁっと顔が明るくなる。
本当に、喜怒哀楽のはっきりしすぎるくらいしている。
「本当ですか?
ありがとうございます」
ぺこりと勢いよく頭を下げる。
その頭を微笑みながら、軽くぽんぽんと叩いた。
「その代わり、上手い鍋作れよ。
期待してるぞ」
「はぁ……」
自信なさげな返事に、苦笑しか返せなかった。
「さぁて、話もまとまりましたし。
今日の仕事も……」
言い終わらないうちに、控え室のドアが開く。
ここはスタッフ以外出入りはできないところなのだが……。
「あぁら、今日も賑やかねぇ」
その声に振り返ると、少々派手なメイクをしたヒトが笑顔でいた。
上背があり、割と恰幅のいい体躯。
中年太りと言うのとは、またちょっと違う。
割と筋肉質な引き締まった身体だから、元々の体形なのだろう。
暖かそうな毛皮に、その身を包んで。
それは、サイズこそデカいが、どうみても女性もの。
街で、そうそう見ないものだから……オーダーメイドなのだろうか?
「ヒロさん!?
今日は随分とお早いお越しで……」
これから店を開けようって言う時刻。
お客は、それ以降に入店することになっている。
けれど……。
「ゴメンナサイねぇ。
こんな早くに来るつもりはなかったんだけど。
どうやら、寒くてぇ、足が勝手に早くきちゃったみたいなのぉ」
「あはは。なるほど」
「それよりもぉ、さっき、楽しそうなお話、してたわね」
突然の話題の展開に、一瞬何のことかと面食らった。
「えっ?」
「お・な・べ」
「あ、あぁ。
聞いてたんですか」
「聞いてたんじゃなくて、聞こえてきたの」
さも、自分は悪くないとの言い方に、反論はしない。
反論したところで、この人にかないやしないのだから。
だから、ちょっとだけ肩を竦めて。
「はいはい。
で? それがどうしたんです?」
その言葉に、ヒロさんは瞳を輝かせた。
「アタシも混ぜてもらえない?
もちろん、材料は提供するわ」
そう言うんじゃないかと思ってましたよ――と言おうかと思ったけど。
実際口に出たのは違う言葉だった。
「でも、上がりの時間ですよ?
かなり遅くなりますし……」
やんわりと遠まわしなお断りの言葉。
けれど、それで諦めるようなヒロさんではない。
「そんなこと構わないわ。
アタシは、みーんなと一緒にお鍋囲みたいのよ」
にこにことした顔は、断られることは眼中にないと言った感じの確信に満ちたようなものだった。
何故にこんなに自信たっぷりなのだろう。
まぁ、ヒロさんの場合、自分の念願はほとんど叶えてしまうのだから、当たり前なのかもしれないけれど。
「で? なんのお鍋にするの?」
「さぁ? まだ決めてないようですけれど……」
「じゃあ、アタシが決めちゃってもいい?
あぁ、心配しないで。
闇鍋なんて事はしないわ。
ちゃんとした、美味しいお鍋にするわよ」
「はぁ……。
そうですねー」
ちょっと考えて、先ほど鍋の材料調達に任命されていた後輩を呼ぶ。
「おーい、タクヤ」
名前を呼ばれて、こちらを振り返る。
手招きすると、不思議そうな顔で近寄ってきた。
「なんですか? 美堂さん」
「タクヤ、さっき、鍋の材料調達して来いって言われただろ?」
「えっ? あれ、やっぱり、本当なんですか?
ただの意地悪じゃなかったんですか?」
「別に意地悪じゃないよ。
それで、だ。
このヒロさんが、一緒に鍋したいって言うんだ」
「え? ヒロさん……ですか?」
この場に居合わせることを、今更ながら不思議に思ったらしい。
何度か店内で顔を合わせてはいるが、ちゃんと面識があったわけではないらしく、お互いこの日が初対面になったらしい。
「どうも、改めてよろしくね。
アタシのこと、ヒロって呼んでね」
「あ、はぁ……ど、どうも。
タクヤって言います。よろしくお願いします」
店に来て日も浅い方のタクヤは、さすがに、ヒロさんのようなタイプには慣れていないらしく、少し戸惑っているようであった。
その姿が、なんとなく微笑ましくて、つい微笑んでしまう。
「ヒロさんが、材料調達を手伝ってくれるらしい。
タクヤ、ヒロさんと一緒に行っておいで」
「えぇっ?」
あまりの突然な申し出に、タクヤは驚きを隠せなかった。
ビックリした顔で、俺とヒロさんを交互に見ている。
「ふふ。醍醐ちゃんとはまた違うタイプで、可愛いわねぇ」
くすくすと笑いながら、そんなことを言うヒロさんは、何処となく小悪魔っぽかった。
「ヒロさん……」
脱力してしまうのは、致し方ないだろう。
ヒロさんはあの一言で、タクヤと俺の両方を弄っている事になるのだから。
何度注意しても、ヒロさんは「醍醐ちゃん」を貫く……。
せめて店の中だけでも、源氏名で呼んで欲しいところなのだが。
そんな思いに耽っていると、悲鳴に近い声音が耳に響いた。
「えっ? ちょっ……ま、待ってくださいよっ!」
なぜか感じる、罪悪感。
別にヒロさん自体がタクヤ自身に害を及ぼすことはないけれども、なんと言うか……。
精神的なダメージは、やはり多少なりとも負ってしまうだろうから。
まぁ、俺としても、ヒロさんに関しては、ある種の被害者なわけだけど。
それをなんの身構えもなく共有させられては……やはりダメージは高かろうと思う。
「ん~、安心して。
アタシ、別に貴方を食べちゃうわけじゃないから」
「ヒロさん、あんまり誤解を生むような発言はしない方がいいですよ」
ため息混じりでそう言うと、ヒロさんは驚いたように目を見開いた。
「あぁら、そう?
もしかして、誤解しちゃったのかしら?」
その言葉に、ぶんぶんと首を盾に振っていた。
「ヒロさんは、その……おネェだけど。
ゲイって訳じゃないから、安心していい」
こういう説明もどうかとは思ったんだが……。
「おネェ――だったんですかっ?
し、知りませんでした……。
俺、てっきりヒロさんって女性の方なのかとばかり……」
「あらん。キミってば、嬉しいこと言ってくれるじゃないのぉ」
満更でもなさそうに、鈴を転がすように笑う。
「今度から、キミのこと「タクちゃん」って呼ぼうかしら?」
「え? あ、いや……。
ご遠慮します」
「まぁまぁ、そんなに遠慮しなくてもいいのにぃ」
「俺、そんな器じゃないし……」
「謙虚なところが、ますます気に入ったわ。
タクちゃん」
「あはは……」
「ま、諦めるんだな、タクヤ」
ため息混じりで言うしかない。
「……」
なんとも言えない様な複雑な瞳で俺を見上げるが、俺もどうすることもできない。
どうにかできるものなら、俺自身でどうにかしてるさ。
そんな思いが、顔に出ていたのだろう。
タクヤも諦めたように、苦笑する。
「それでぇ、いつ、行くの?」
唐突に尋ねてくるのはいつものことだけれど、それは今回も同じ。
「どうする? タクヤ」
「えっ? どうしましょう? 美堂さん」
控え室の中は、いつの間にか俺たちだけになっていた。
どうやらみんな、話をしている最中に店の方へといってしまったらしい。
ま、開店準備などがあるから、そう暇しているわけじゃない。
そう言っても、開店早々に、どっとお客さんが来るわけじゃないだろう。
ヒロさんみたいに。
少し考えて、言葉を紡いだ。
「そうだな……。
ま、今でもいいんじゃないか?
なんだったら、俺がオーナーに言っておくし」
「あら、それはいいわね。
あんまり遅いと、良い材料なくなっちゃうものね。
じゃあ、醍醐ちゃんのお言葉に甘えて、行きましょ、タクちゃん」
「はぁ……。
いいんですか? 美堂さん」
「いいっていいって。
それに、言い出したのは俺だしな」
「でも、あれは……」
「気にするな。
早く行って来い」
「あ、はい」
「そうだ。
おい、タクヤ、ちょっと待て」
行きかけたところを呼び止めて、ポケットから財布を取り出した。
何枚かのお札を掴んで、タクヤの手に握らせる。
「えっ? び、美堂さん?」
「いいから。
これで、飛び切り美味いの、頼むな。
その代わり、みんなにはナイショだぞ」
耳元で囁くように言って、ウィンクをした。
タクヤは凄く嬉しそうに相好を崩して、微笑んだ。
「ありがとうございます。
じゃあ、行ってきますっ!」
一連のことを見て見ぬ振りをしていたヒロさんは、最後にちらっと俺を見て、とても嬉しそうに笑った。
そうして、ふたりを裏玄関先で見送って、店へと踵を返した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[作者コメント]
冬ですね
お鍋の美味しい季節ですw
そんなところから、書いてたら……あら、またもやヒロさんがwww
今回のお話は、前哨戦(?)みたいなもので、肝心のお鍋には辿り着いておりませんが
この続きは、また書く――かなぁ? 保障は出来ませんけれども(^^;
でも、きっと、ヒロさんが関わってくるのだから、すっごく豪勢なお鍋になりそうだわ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆Newキャラクター紹介♪
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※新人君、「タクヤ」と言うオリジナル・キャラを出してみました
まだ、入店してそんなに日も経っていなくて、20歳になったばかりと言う
ちょっと「男の子」って感じのキャラクターです
身長は醍醐さんよりは低めで、少し細い感じのタイプ
筋肉質の体に憧れていて、ジムに通うもまだ効果は現れず……
喜怒哀楽がはっきりしているコで、顔に表れやすいので、先輩方にはよく弄られてますw
う~ん、どちらかと言うと先天的Mキャラかな?
頑張れっ! 後輩!w
【追記】
この「タクヤ」君、あまりの可愛さに、お気に召した方がいらっしゃるようです^^
その方の小説に、いつか登場する予定です!
どんな風に弄られるのか……ちょっと楽しみかなぁ(とSってみるw)
● この作品についての評価を投票受付中!
● この投稿作品へのコメント
最終更新:2009年08月26日 00:20