夏休みが終わった。
夏休みが終わったからには新学期がやってきてしまうもので。
夏休みの間ハルヒに振り回されたにも関わらず、体は鈍っているらしく坂道が物凄くきつかった。
あの坂道を下りるのかと思うと憂鬱だね。やれやれ。
そんな事を考えながら部室をノックすると、朝比奈さんの声が聞こえてきた。
声に違和感を感じたが、入っても問題はなさそうなので扉を開け、挨拶を――
「キョンくん、こんにちは〜」
若い朝比奈さんがそこにいた。
いやいや、今でも十分に若い。だが流石にこれは若すぎる。
どう見たって幼児だもんな。あっはっは。どうすんだこれ。
……現実逃避をしている場合ではないぞ俺よ。
きっとまた何か事件が起きて未来から朝比奈さんが送られてきたのだ。
きっとそうに違いない。
では何故そんな事態になっているのだろうか。
ここで部室の隅にいる筈の宇宙人に説明を求めるべくそっちを向いた。
あれ? 居ない?
視線を少し下に落としてみる。
……長門さんも幼児化されてなさるんですか。
「…………」
長門はいつもの場所に座ってはいるが、
手にはいつもの分厚い本ではなく絵本を持っていた。
こ、古泉は!? たまには役に立ってみせろ!
「今日はオセロにしましょうか」
消えたー! 最後の希望も消え失せた!
古泉はいつもの胡散臭い笑みではなく、
俺の困惑顔に対抗するかのような無邪気な笑顔を浮かべている。
「あ、ああ、そうだな」
……心が、痛いなあ。
底知れぬ不安に胃も痛くなってきた気がする。
「お茶ですよ〜」
純粋な笑顔に俺が心(と胃)を痛めていると朝比奈さんがお茶を持ってきてくれた。
といってもいつもの本格的なものではなく、冷蔵庫から取り出してきた烏龍茶だ。
朝比奈さんはお使いを完遂したかのような表情で俺を見つめている。
まあ、火は危ないしな。火遊びはダメ、ゼッタイ。
「ありがとうございます。美味しいですよ」
しかし小さい子供に敬語とは違和感を感じるな。
でもこの子は朝比奈さんな訳で……ええい、面倒臭い!
「おっまたせー!」
俺が訳の分からぬ葛藤に呑まれているとハルヒが入ってきた。
やはり、幼児の姿で。
ああ、これはきっと夢だな。
絶対そうだろう。これは夢オチなのだ。
フロイト先生も笑い死にだっぜ!
母さん。俺はロリコンでショタコンらしいよ。
うん、将来は保育士になろう。毎日が薔薇色だぜ。
よし、俺の将来は決定した。
きっと俺は保育士になるべくして生を受けた存在なのだ。
「うぉおおぉぉお!?」
いきなり携帯が震えた。
誰だ? 人が人生設計を立てているときにメールしてくる奴は。
俺は少し不満を覚えつつも律義にメールを開いてやる。
この寛大さに平伏すがいい。
……そのメールに書かれていた文面はこうだ。
ポケモンの151って数字が懐かしいですね。
By 森
P.S.
何かSOS団のメンバーが幼児化しちゃったようなので頑張って面倒見てください☆
原因は涼宮さんが望んだからとかでもういいじゃないですか。
確かに『ひゃくごじゅういち』って歌もあったよなあ…今じゃ全く意味ないが。
って、森さぁああん!
何書いてんのこの人!?
本文とP.S.逆だし! ありがち! ありがちすぎるネタ!
てか、理由曖昧!
あれ? まだ下に文が……?
ちなみに、ありがちなネタとか言ったらはかいこうせん。
はかいこうせん撃たれる!
でもまだ下の方に文があるよな?
――かくして俺の子育て奮闘記は始まったのであった。
何だこれ!?
ん? 何だ長門。ズボンなんか引っ張って。
「これ……読んで」
古泉とのオセロが終わったら…………、あー、読んでやるよ。
オセロやりながらだからちまちまとだけどな。
俺にロリ属性は無いのだと言い聞かせながら古泉と長門、
そして何故だか不機嫌なハルヒと泣きそうな表情の朝比奈さんの面倒を見るのであった。