アットウィキロゴ
 
 長門はニョロモにフードをあげている。かわいい。
 朝比奈さんはピカチュウとゼニガメの喧嘩を止めている。かわいい。
 夜のキャンプ。この世界に入って、今日で5日目になる。
 ゆらゆらと夏の風に揺らされた炎。それに照らされた二人と三匹。そして俺のフシギダネ。夏の風は緑色の匂いがした。
 こんなのも悪くない。忘れていたワクワクを、思い出させてくれるような。
 この五日間、色々あった。
 この世界に飛ばした張本人は、ハルヒではないらしい。古泉でもないし、長門でもないらしい。もちろん朝比奈さんでもない。そう長門が言っていた。
 ん?ああ、俺じゃない。
 でも、目的。―この世界に飛ばした人間の目的は、なんとなくわかる。
 このときめき。―昔感じた、きらめきを、思い出させようとしてくれたのだ。
 戻ることができないならば、戻らなくてもいい気がする。
 長門によれば、ハルヒは古泉と同じような旅をしているそうだ。
 そして長門によれば、俺達の目的は、このゲームの世界を、「本当の意味」でクリアすることらしいのだ。
 それがなんなのかは長門にもわからないそうだ。
 ―綺麗な空だ。俺が空を見上げると、フシギダネも見上げる。そしてキャンプにいる全員が見上げる。
 ―子どもの頃のきらめき。愛する仲間たちと、大きな冒険が続く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 風がふわっと右側から吹いてきた。右頬を撫で、前髪を撫でるその風は大海原から吹いてきているようだった。潮の匂いがするのだ。
 目を開けると、大きな青い空が見えた。
 草原に横になっているようだ。仰向けも仰向け。空しか見えない。
こんなステキな夢が見られるほど、俺は景色通だったろうか。
 むくっと腰から起き上がると、上半身に優しい風が当たる。
 あああ。なんだこりゃ。右を向けば来ては帰る波が地平線の果てまである。
 体の左側にはなんとか町があるようで助かったが、結構そこまでの草原が長いようだ。どこかで見たことがあるような、、。そんな景色というか雰囲気が、この世界の空気に溢れていた。
 起き上がって、足を軸に体を360度回転させてみる。相変わらず海風が吹いて気持ちいい。
 草原といっても、それほど長い草では無い。膝の上までとどくぐらいだ。そんな草が、同じ長さのまま、遠く遠くまで続いている。草が砂浜に変わるところまで歩く。潮の匂いを思い切り吸って、気配を感じて振り向く。
10メートルほど離れたところで、草が風に逆らうように動いた。
 なにかいる、、。
 目が開いたときから、不思議とこの世界には危険が少ないような、穏やかな世界のような気がしていた。
 だから、警戒も少ししかしていなかったのだ。
 しかし、むくりと起きたその物体は、恐ろしいほど平和的な生物であった。
 目を左手でこするその生物は、起き上がるまで自分の置かれた状況がわからなかったらしく、二本足で立ってから、キャッ。と飛び上がる。
 朝比奈さんだ。
「あっ。キョンくん!」
 おーいというように手を振ってきた。メイド服を着た彼女に手を振り返す。
 草原を走って寄ってきた朝比奈さん。幼い顔に付いていた草をとってあげてから、俺はこう聞いた。
「ここ、どこだかわかりますか?」
 とった草は風に吹かれて街のほうに飛んでいった。
 朝比奈さんは首を振った。
「でも、懐かしいようなきがします。」
 ―どうも、そう簡単には戻れなさそうだ、、。冒険を促すような、そんな空気。この空気は嫌いではない。子どもの頃のようなきらめきを持っている。
 まず、朝比奈さんとの旅が始まった。
 
 
 
「朝比奈さん。一番今に近い記憶はなんですか?」
「ええっと。キョンくんが部室に入ってきたとき、、かな?」
「えっ?俺も部室の景色が一番近い記憶なんです。」
 ということは、どうゆうことだ?
 俺達は町へと草原を歩んでいる。
「私はメイド服のまま。キョン君は制服のまま。つまり、、。」
「俺が部室に入ると同時に、異世界に飛ばされた、、、。ということですか。」
 とりあえず。原因はハルヒであろう、、。それになにか偶然が重なったのだ、、。なにか不思議な力を持った人間がハルヒに作用されたのだ、、。そうに違いないだろう、、。まあ悪意は無いのだろうが、、。バカやろうとでも念じておこう、、。
「はあ、、。―朝比奈さん。俺が部室に入ったとき、中には誰がいましたか?」
「キョンくん以外全員がいました。」
「じゃあ、、全員が飛ばされたのでしょうね。」
 ―そう考えたほうがいいだろう。
「、、みんな大丈夫かな、。」
 妙に深刻な顔で朝比奈さんが言った。
 長門は大丈夫だろう。古泉は心配する気にもなれない。ただ、ハルヒは大丈夫だろうか、、。
 朝比奈さんが手を繋いできた。暖かい、やわらかい手だ。
「キョン君、、。だいじょぶ。私と一緒に探しましょう。きっと、みつかr」
 ガサッ!
 ガサガサッ!ガサササッサササッサ!
「朝比奈さん。動きました?」
「ぃ、、いいえ。」
 危険の匂いに、どちらからともなく手を繋ぎなおす。
「朝比奈さんは左を注意して!俺は右を注意します!」
 言い終わる前に手が引っ張られた。
「きゃあああ」
 町へと一直線に逃げる。ガサガサ音も追いかけてくる。姿はまだ見えない。
 手を離して、囮になるべきかどうか。―直感で、あまり危険性は無いように感じられる。
 というか、右手同士を繋いでいるため、朝比奈さんの裏を行く俺はものすごく走りづらいのだ。
 俺は手を離した!
「朝比奈さん!先に行っていて下さい!」
 言い終わる前にふくらはぎに痛みが走る。まあ、、別に痛くない。妹が噛み付いてきたぐらいのものだ。
 ただ、恐怖感だけはたいしたものだ。足を噛み千切られるかもしれない。毒があるかもしれない。なんとか振り払って、朝比奈さんが町につくまで囮になってから、町へと走る。
 姿は見えない。毒蛇の類だったらヤヴァイ。
 ガサガサはまだ追いかけてくる。
町の周りをぐるりと守る木の塀がある。それを登ることができないらしい朝比奈のバカが、塀の上に飛び乗ろうとして失敗する流れを繰り返していた。
「朝比奈さん!町なんだから入り口があるでしょ?!ちょっと冷静になって探してみて下さいよ!こっちがわにはないけど、違う方位にありますよ!囮になっておきますから!」
 朝比奈さんは了解したらしく、急いで入り口を探しにいった。
「キョンくん!こっち!」
 朝比奈さんが叫ぶ。俺もいそいでそこへと向かったのだった。
 ―荒げた息を四つんばいになって吐き、ガサガサの音が消えたのを確認した。そして顔を上げると。その町は穏やかさの集大成のような懐かしい町だった。
 この町はマサラタウン。という看板が見えた。
 懐かしい名前。昔々にすばらしい希望とともに覚えた名前。ガサガサッ。ガブ。また足に痛みが走る。
 ―足元には、見たことのあるねずみ。
 ―ああ。そう。コラッタ。一生懸命かじりついている。
 背中に子どもらしいねずみが乗って、恐ろしそうにこちらを見ている。かじる方は母親なのだろう。
 ねずみをなだめるより、自嘲するほうが先決だと思われた。
 このなつかしい感じは、子どもの頃妹と二人でやった、喧嘩が原因で、途中から妹のものになってしまったポケモンの世界の空気のものだったのだ。
 、、、。
「朝比奈さん。ポケモンクリアしました?俺はなんだか一人ジムリーダーを倒したぐらいの記憶しかないんですが。」
 朝比奈さんはポカンとした顔で、俺の脚にかじりつくコラッタ親子を見つめている。
「いいえ。なんだかまっくらなところに行ってしまって、バグだと思って止めてしまいました。」
 なんだか朝比奈さんの勘違いのような気がする。
 ワクワクしてきた。
 そう。子どもの頃のように。
 
 
 
 いつもの風景がそこにあった。
 起きてしまったのだ。目を開けたことが悔やまれた。悔しい。子どものころのきらめきやワクワクが、これほど大きなものだったんだ。
 気づいたときにはもう遅い。俺は涙を流していた。
 悔し涙だ。気取って、大人になろうとして、そして忘れていってしまったきらめき。なんて大きなかけがえの無いものだったんだろう。
 いつものように着替えて、いつものように同じ通学路を行く。ついさっきの夢が、いつもの通学路を更に無表情なものに変えた。
 なにをするにも、疑問と希望を持っていたあの頃。おもちゃやに入るときのきらめき。クリスマスのきらめき。
 涙が零れる。お構いなしに頭を駆け回る思い出が、止まらない。
 ティッシュを出して涙を拭く。
 学校に行くまでに涙を止めなければいけないのに。あの思い出が止まらない。
 俺は知らない家の塀を思い切り叩いた。それほど悲しかったのだ。
 痛みに涙を止めてもらおうと、左手を塀に叩きつける。
「くそっ。くそおっ。」
 
 
 
 涙が止まらない。教室へ入る前に、少し休もうと部室へと足を向ける。
 ―ガチャ。
 そこには朝比奈さんがいた。
「キョン君?」
 泣き顔を見られてしまった。
「なんで泣いてるの?」
 朝比奈さんは、忘れ物を取りに来たようだった。
「キョン君?」
 ―ああ。朝比奈さん。―いや。気にしないで下さい。
「話してくれませんか?」
 ―え?
「気になるんだ。」
 ―いや。ちょっと夢をみてしまって。懐かしいことを。失ってしまったかけがえのないものが、消えてしまったきらめきが。無くなってしまって、、。
 朝比奈さんは少し考えたようだった。
 
 
「夢に見るなら、まだ忘れていないってことじゃない?それに、自分が変わったから失ってしまうんでしょ?でもなにか他のことがわかるんだよ。自分が大きく変わればいいんだよ。また。」
 ―、、、朝比奈さん。ポケモンをやったことはありますか?
「いいえ。途中で止めてしまいました。」
 ―一緒に始めませんか?
 ―朝比奈さんと一緒の世界は、きらめいていくと思います。
 ―俺と一緒に世界を見てくれませんか?
 新しい世界を始めませんか?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 Fine
 
 
 
 
 
見直ししてないんだあ。ふう、、。
 
 
 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年01月18日 17:05