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「じゃあキョン!カレーの食材をちゃっちゃと買ってきてね!」

スーパーに着いたら直ぐにハルヒが朝比奈さんを引っ張って適当に物色しにいった。
古泉はのんびり見て回ってるみたいだな。

「とりあえず何が必要なんだろうな…長門」

カゴを持って立ちつくすわけにもいかないので聞いてみた。

「なに」
「野菜はどの位あるんだ?」
「………干からびたニンジンの先が3本。ジャガイモの芽がひとかけら。」
「…肉は?」
「……………肉類はここ一週間口にしていない………」
「……………米は??」
「……………………」
「…すまん。泣くな。」
「…コク」

仕方ない。
カレーに必要なものは一式買うか。
オーソドックスに野菜は玉ねぎとニンジンとジャガイモを買ってと…
米重っ!これは古泉担当にしよう。

そうだ

「なぁ、小麦粉を炒めたりとかよくわからんからカレールーを使ってもいいか?」
「構わない。バーモントカレーからこくまろカレー、
果てには私自身がスパイスを組み合わせて制作したオリジナルのカレールーまで幅広く用意している。」
「…そこは完全装備なんだな。」

…まさかカレールーをかじったりしてないよな?

「カレーとはルーとご飯、更に選び抜かれた具が一体となって初めて成立するもの。
ルーだけ食べるのはカレーに対する冒涜。」

…それもそうだな。

残りの食材は肉だ。
カレーのメインともいえる食材だからな。しっかり選ばないと。
玉ねぎが全てだとかほざいてる作者は黙らせておいたぞ。

しかし迷う…

一言で「肉」と言っても色んな種類がある。
牛肉や豚肉や鶏肉。少し冒険して羊肉もいいかもしれない。
まぁ長門に聞いてやったほうがいいな。

「長門、メインの具は何がいい?」

本当に久しぶりに見るのだろう。
目をキラキラさせて肉を吟味する長門はなんだか心を和ませるものがあるな。

やがてひとつのパックを持ってトテトテと戻ってきた。

「…これ。」
「よし、じゃあ会計に行くか。」

長門が持ってきたのは鶏肉だ。
チキンカレーか。旨そうだな。
やばい。涎が溢れでて「キョン!肉買うならこれにしなさい!!

…あのなぁ。長門の為に作るんだから長門の好きなもの食べさせてやれよ。

「それはそうだけど…久しぶりのカレーなんだからいいものにしたいじゃない!」

そうはいってもなぁ…

…ん?長門、どうした?
いつのまにか袖を引っ張られていたみたいだ。

「私は別に構わない。」
「お前がそれでいいなら問題ないが…」

仕方ないか。

「んで、ハルヒ。どんな肉だ?」
「これよ!!!」

…………「最高級松坂牛100g1780円」か………

「元のコーナーに返してこい。」
「なんでよ!」
「高すぎるだろ。俺の手持ちで足りる金額じゃねえぞ。
それにステーキ用の肉じゃねえか。」
「焼けば同じよ!!」
「長門はちゃんとしたカレー用の肉で食いたいだろ?…………って長門?」

…長門の視線が松坂牛に釘付けになってやがる。
まてまて長門。本当に食べたいなら買ってやりたいところだが、
俺の手持ちは相当少ないんだ。
さすがにこれだけは勘弁してくれ。

「………」

そんな目で見られてもなぁ…

「…わかった。」

理解してくれたらしい。
助かった。

「朝比奈さんと古泉はどこだ?」
「そういや古泉くん見ないわね。
みくるちゃんは…あ、いたいた。」

キョロキョロ辺りを見回してるな。
…手にプリンを持ってるのが気になるが…

「あ、涼宮さん。急にいなくなってビックリしましたよ~。」
「ゴメンゴメン。是非ともキョンに勧めたい肉があってさぁ。」
「まぁ却下したんですけどね。
ちなみにそのプリンは何ですか?」
「え?カレーに乗せると美味しいかなって。」
「却下です。」

トボトボプリンを戻しにいく朝比奈さんの背中はどこか淋しそうだったな…
デザートに食べるって言うなら許可したんですけどね。

「おや、もう買い物はすませたんですか?」
「のわっ!!いつの間にそこにいたんだ。」

朝比奈さんを見送る俺たちの後ろに古泉が立っていた。

「ついさっきです。探しましたよ。
是非とも入れてほしい食材があったものでして。」

俺と長門とハルヒで顔を合わせる。
流れ的にロクなものじゃなさそうだ。

「…一応言ってみろ。」
「フルーチェで「「「却下。」」」

…カレーって人によっては色んなこだわりがあるんだな…

うだうだしながら買い物を済ませて長門の住むマンションに向かう。

相変わらず机がひとつだけ置かれてるだけの部屋に買ってきた食材を置く。

「じゃあキョンはさっさとカレーの製作に取りかかりなさい!!」

へいへい。
とりあえず米を炊くか。

「手伝いますよ。」

おぉ古泉。助かる。

「何せ作り方が曖昧にしかわかんからな。」
「僕も似たようなものですよ。」

ここで冒頭のシーンに戻るわけだ。

ハルヒは部室にくる前にやってたことを朝比奈さんに話しているのだろう。
時折「ひぇ!?」などという悲鳴が聞こえてくるということは朝比奈さん絡みか。
あんまり朝比奈さんに迷惑をかけるんじゃないぞ。
長門はさっき俺が渡したみな○けを読んでいるみたいだな。
ちなみに本を持っている知り合いがいないとバレたので、
本はそのまま長門にあげることにした。
まぁ日頃の感謝の気持ちということで。
そういや今日の○の2はどこにやったんだ?

「…そういや古泉。」
「はい、何でしょうか?」
「一応聞いとくがフルーチェは隠し味に使うと美味くなるのか?」
「隠すつもりはありません。
出来たてのカレーの上に豪快にかけるのがよろし「わかった。もういい。」
「…そうですか。」

カレーって本当に色んな食べ方があるな。
作者の弟はタバスコをたっぷりかけるようだが全く理解できん。

「そろそろ具も煮詰まってきたようですね。
カレールーは何を使用するんですか?」

そういや長門が沢山用意してるみたいだが…

「おーい長門。カレールーはどれ使えばいいんだ?」
「こっち。」

本から顔を上げた長門はそういうと玄関の方に消えていった。
あれ?台所に無いのか?
玄関から出て行くみたいだ。

…これって。
隣の人の家じゃないのか?

「…そう。」
「そうって…勝手に入っていいのか?」
「安心して。情報操作は得意。」
「そういうことじゃなくてだなぁ…」

そこまで言って口を閉じた。
玄関を開けると

「…どこだよここ?」

明らかに長門の住んでる部屋とは明らかに別物の部屋が出現した。
四畳半程の部屋をぐるりと棚で囲ってある。
部屋の中心には小さな机がポツンと置いてあるな。

「ここは私専用のカレー研究室。
向かって右側の棚には各国から輸入したスパイス、
正面の棚は各有名メーカーが販売している市販のカレールー、
そして左の棚は私が調合して作ったカレールーと調合用具一式。
…ルーはどれでも好きなものを選んでいい。」
「…………………あぁ、そうか。」

圧倒された。
長門がここまでカレーに熱意を持ってるとは思わなかったぞ。
机の上に置いてあるノートを見ると、
訳の分からん略式でスパイスの比率、市販のルーの組み合わせ、熟れるまでの時間、ルーにあう具、味、日持ち具合、etc…
目が痛くなるくらいびっしりと書かれている。
しかも1日も欠かさずやっているみたいだ。

「どのくらい研究し続けてたんだ?」
「生み出されてから三年間、私はずっとそうやって過ごしてきた。」

凄いなおい。

「…ん?」

パラパラとめくっていく内にあることに気付いた

「なぁ、この日を境に現れなくなってる研究員Aって誰だ?
この基本的に危ない組み合わせの時に味見役になってる奴。」
「………」
「…長門?」
「朝倉涼子。」
「…そうか。」
「…そう。」

何か気まずいな。
プライベートでは仲良かったのか…

「…なぁ、長門の作ったルーを食べてみたいんだが、オススメのものはどれだ?
あんまり辛くないやつで頼む。」

長門は少し考えたあと、左の棚を指差して

「上から3段目、右から7番目の箱の中にあるBと書かれた袋の中。」
「…これか。」
「そこの箱にあるものは極力辛さを抑えたルー。
そのBのルーは辛さが足りない分をスパイスの強い香りで補っている。
また、滑らかさも鶏肉と相性がいい。」
「そうなのか。」

説明する長門の顔は無表情だがとても生き生きとして見えるな。
……ん?

「長門。」
「何?」
「このNってやつかじられてないか?」
「………………………ネズミ。」
「いや…この歯形って人の「ネズミ。」
「………」
「………」
「…あの「ネズミ。」
「…長門。」
「………」
「泣くな。悪かったから。」
「…コク」

何はともあれ長門から貰ったルーを使えば完成だ。
なお、あの部屋は俺と長門の秘密にするらしい。
古泉には適当言って誤魔化しといたぞ。

「やっとできたな。
古泉そっちの皿運んでくれ。」
「わかりました。」

しかし料理って大変なんだな。
毎日飯を作ってくれるお袋に感謝しないと。

「遅い!!」
「文句言うなら食うな。一生懸命作ったんだぞ。
ほら、スプーン配ってくれ。」
「キョンくんと古泉くんの手料理ですかぁ~。」
「いえ、僕は殆ど何もしていませんよ。」
「あなたと古泉一樹の調理姿は私達が写真にとっておいた。」
「…いつの間に撮ったんだ?」

「秘密。」

まぁいいか。
長門も楽しんでるみたいだしな。

「ほらキョン!ボーっとしてないでそこに座りなさい!」
「へいへい。」
「それじゃあ食べましょうか。」
「「「「「いただきます。」」」」」

…何か自分の作った料理を食べてもらうのって緊張するな。

「うん!キョンにしては中々やるじゃない!」
「うん、とても美味しいですよ。」

あぁ良かった。
朝比奈さんだけでなくハルヒにまで誉めてもらえるとは思わなかったな。

古泉の感想?悪いが心の底から興味が無いな。

「おかわり。」

…いや早すぎるだろ長門。
ハルヒも朝比奈さんも古泉も2、3口しか食べてないのに何なんだそのスピードは。
俺にいたってはまだ1口も食べてないんだぞ。

「おかわり。」

わかったよ。そのかわりもう少し味わって食べてくれ。

「問題ない。とても美味しい。」
「…そーかい。」

結局長門は3杯おかわりした。
というかカレールーが無くなってしまった。
まぁ盛り方が俺達の10倍くらい豪快だったしな。

「ごちそーさまー。
片付けくらいは私達もやりましょう。
キョン食器洗うから持ってきて。私達は調理用具を洗ってるから。
古泉くんは生ゴミまとめといて。」
「了解しました。」
「あぁ、わかった。
長門は休んでていいぞ。」
「…私も手伝う。」

そう言って自分の食器を持って立ち上がる。

「じゃあお願いするよ。」
「…コク」
「楽しかったか?」
「凄く。」

それだけ言ってもらえれば救われるよ。
困ったらいつでも言っていいんだぞ?

「…感謝する。」
「それにしても宇宙人も食料不足になるんだなぁ、
てっきり不思議パワーかなんかで大量生産できるものだと…長門?」

…口を半開きにして硬直してやがる。

「…許可が降りた。」
「へ?何の?」
「くぁqwすぇdrftgyふじこlp;@」

おい!いきなり高速で呪文を唱えるな!
ハルヒに見られたらどうする気…

「……これは。」
「迂闊。私としたことがこんなことにも気がつかなかった。」

そう言う長門が持つ皿の上には、
さっきまで長門が食べていた倍は存在するカレーが乗っていた。

「…長門。」
「モグモグ…何?」
「食べたりなかったのか?」
「モグモグ…ゴクン…そう。」

…やれやれ、だ。

「キョン!早く食器を運びなさい!」

お、いかんいかん。

「ほら早くそのカレーをどうにかしろ。
ハルヒに見つかると厄介だ。」
「了解した…6秒待って。」

ん?また不思議パワーで片付けるのか?

………3口で食べきりやがった。
しかも口の周りにカレーつけまくってやがる。

「ごちそうさま。」
「……はぁ。」

呆れながらもどこか嬉しそうに長門の口を拭くキョンが、ある日古泉に裏切られたのを思い出すのはまた別のお話。

おわり。

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最終更新:2008年06月22日 12:30