秘めた想い プロローグ
年中突拍子もないことを考えその全てで周りの人間を巻き込んで振り回し続けるあいつがSOS団を立ち上げてからもうすでに3年目だ。
そろそろ俺たちも進路を本気で考えなければならない時期になってきた訳で、去年の同じ時期なら適当にあしらっていたであろう期末考査のために柄にもなく俺は成績優秀なハルヒや結構いい大学に進学し、割と頻繁に部室に訪れる朝比奈さんに指導してもらいつつ一所懸命に勉強していた。
そんな時期の昼休み、俺はいつもどおりに国木田と谷口と弁当を食っていた。
「…そんでその女がよぉ」
谷口のナンパ失敗談をいつもどおり適当に聞き流しているとき国木田がいつものようにやんわりと受け答えしていた。
「谷口もそのナンパへのエネルギーをもうちょっと受験勉強に注いだら?」
…もっともだ。
「別にいいじゃねぇか、ナンパやゲーセン以外の時間は勉強に当ててんだから」
「確かにこの前の中間考査は頑張ってたけど、そんなんじゃそのうち痛い目見るよ」
そうなのだ、忌々しいことに2年の学年末まで俺と一緒に赤点ラインギリギリを低空飛行していた谷口は前回の中間考査であろうことか学年順位のちょうど真ん中あたりにまで成績が上がっていたのだ。
くそぉ~、思い出しただけでも忌々しい。
「にしたってキョンはいいよな~、毎日麗しの涼宮に勉強見てもらってんだから」
「麗しのってなんだ、羨ましいんだったら代わってやってもいいんだぞ」
朝比奈さんならともかくハルヒ先生のご指導はとんでもなく厳しいからな。
「遠慮しとく、涼宮なんてこっちから願い下げだ、中学の時だって何か聞くたんびに小動物なら焼き殺せそうな眼力で睨んでくるんだからな」
また始まった、谷口の中学のハルヒの話…学年が上がるにつれあまり話さなくなっていたのに最近になってまた話すようになっていた。
「そりゃ今は少しはまともになったさ、でも常軌を異しているのには変わりない…それにキョンから横取りしちゃまずいだろ」
なんだそりゃ。
それじゃまるでハルヒが俺の所有物みたいな言い方じゃねぇか、ハルヒの名誉のために言っとくが、そんなことは断じてない。
ハルヒは俺のことを団員その1としか思ってないさ。
「ま、そういうことにしといてやるよ…俺トイレいってくるわ」
そういいながら席を立つ谷口を見送りながら。
「なんなんだよ、まったく…。」
「ちょっとぐらい察してあげなよ、谷口はああ見えてキョンのことが羨ましいんだよ」
「羨ましい?何のことだ?」
国木田が言ったことに疑問を抱き弁当の残りに手を付けようとした箸を止める。
「谷口は涼宮さんとキョンが仲良くしているのが羨ましいのさ」
そんなことないだろ、第一谷口は日ごろからハルヒのこと変人呼ばわりしてんじゃねぇか。
「そうでもねーと思うぞ」
後ろからニヤニヤしながら話しかけてきたのはクラスメートの後藤だった。
「後藤、そりゃどういうことだ?」
「ほら、オレも東中だったじゃん」
そうだっけ?
「んでさ、実はあいつ東中で一番最初に涼宮に交際申し込んだ相手なんだぜ」
結構驚くべき真実を話す後藤。
「で、OKの5分後に振られちまって…その後も機会があれば涼宮に話しかけてたんだぜ」
そんなに未練たらしいことやってたのか……言われてみれば谷口が中学の頃のハルヒをよく知っているのは中学のときから同じクラスだったよりもずっとハルヒのことを見ていたからなのかもしれん。
無論、こいつらの考えすぎかもしれんが。
「だから涼宮と仲いいお前に少し妬いてんのさ」
「お前らの考えすぎじゃないのか、第一ハルヒに未練があるんならナンパなんかしないだろ」
「そういえば、谷口がプレイボーイ気取るようになったのも涼宮に振られた後だった気がす……」
「おい後藤、キョンとなに喋ってんだ?」
とか言いつつ谷口が帰ってきた。
「別に、何も、ただの世間話だ」
そう言って後藤は自分の席に戻っていった。
「ホントか?キョン」
「本当だよ、お前も疑り深いな」
「ま、それなら別にいいんだけどよ」
谷口がそう言った時にちょうど予鈴が鳴っていた。
やべ!まだ弁当残ってる。
あわてて弁当を胃袋に納めた俺はそのまま授業を受けた。
その後は谷口に対して正体のわからない奇妙な感情を抱いたが、それが何かもわからぬまま今日の授業は終わりを告げた。
この時はまだあんなことが起こるなんて予想だにしていなかった。
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