「チッ! コイツじゃメビウスの方がまだマシだぜ! 言う事…聞きやがれぇ!」
 
 ストライクの『鳴り物入り』に導入した新OSが全くと言って良い程、使い物に 為らなかった。
やはりZAFTのモノを直接コピーしたものの方が、余程使い物に なる! それをやると、コーディネーターと、この俺しか扱えない位にピーキーな 反応を示す乙女に為ってしまう。…つまりは、ナチュラルが扱う兵器としては失格 って事だ。選ばれた者しか使えない兵器など、兵器では無い。ジンがソードを振るう のを受けるのがやっとだった。畜生! OSさえマトモなら…!

 「君! 何をしているの! 止めなさい! 」
 
 女、マリューの鋭い怒声が俺のカンに触る。マリューのうなじ越しに餓鬼を見ると、 なんとコンソールのキーボードを展開し、勝手にストライクのOS設定画面を呼び出し、 圧倒的な速さで解析していた。…コイツ…!なんてこった! 戦闘中にここまで…! 俺にもある程度は出来るが、戦闘中にやる程無謀では無い。敵の居ない状態を作り、 後でZAFTのMS用OSを使ってリブートする心算だったが…! 

「キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定…、 チッ!なら疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結! ニュートラルリンケージ・ネットワーク、再構築! メタ運動野パラメータ更新!フィードフォワード制御再起動、 伝達関数! コリオリ偏差修正! 運動ルーチン接続!システム、オンライン! 」

 餓鬼がキーボードのENTERキーを押したその途端…ストライクは俺の忠実な『女』に為った。
 
 General
 Unilateral
 Neuro-link
 Dispersive
 Autonomic
 Maneuver

 この文字がコンソールに表示された時、ストライクの追随性が段違いにUPした。 スティックとペダルの操作に、機体がZAFT製OSよりもピーキーに、まるで男を始めて 識った処女だった女の様に、敏感に反応する。やるじゃないか、餓…いや、少年!

 「おい! そこの餓鬼からお前は少年に昇格だ! 名乗れよ僕チャン! 」
 「キラ…ヤマト…学生です…」  


ストライクは俺のスティックとペダルの操作に、タイムラグの存在すら伺わせない追従性を見せた。コイツは完全に俺の…女だ。ならばっ! ジンが振るうソードを そのまま受け流し、俺はストライクにアーマーシュナイダーを握らせたまま…

 「きゃあっ! 」
 「ウわぁぁっぁあぁぁあっぁあぁぁっぁ!! 」

 後方転回、つまりバック転させた。一回、二回、三回。そうして距離を取り、 右手にハンマーグリップ、左手にサーベルグリップのまま、ストライクをジンに 対峙させる。

 「掛かって来いよ、ZAFTの雑魚がッ! 」

 嵩にかかって上段にソードを構えて突っ込んで来たジンの首を撥ね、右腕を落し、 行き過ぎて行ったジンのバックパックを持ち替えた両手のアーマーシュナイダーで突き、 止めを刺す。ストライクに降りかかる黒い潤滑油や赤い推進剤が、返り血を思わせる。

 「見たか! 完全天然素材のナチュラル様を舐めるなよ! 肉人形がッ! 」

 以前、メビウスで追い捲られた記憶が嘘のようだった。これさえあれば勝てる。俺はそう、信じた。 次のジンが掛かってくる。懲りもせずに良くも来たもんだ! 行くぜ!


 「ヤザン中尉! イーゲルシュテルンを…」
  
 煩い乳女が! 飛び道具の弾は有限なんだよ! 雑魚相手にイチイチ撃って 居られるかってんだと怒鳴ろうとした俺の気配を読んだのか、ホルスタインは 何故か頬を真っ赤に染めて黙った。…何だ?女がケツをモゾモゾさせている。

 「中尉…その…」

 ああ、そうか! 戦闘の興奮で、俺のナニが勃ちっ放しになっていて、コイツ のケツに当たりまくっていたって寸法か! …誤解も甚だしいな? 俺はこんな 女女した、いかにも天然媚売り肉感女郎は余り、好みでは無い。

 「傲慢だな? 魔乳…いや、マリュー・ラミアス大尉ィ? 男が全て、巨乳好きとは限らんし、女好きとも限らんぞ? 」
 
 少年、キラが身を硬くする。オイオイ…俺は少年愛にも男にも興味は無いぞ?

 「俺は戦闘が大好きでなぁ? どうやって生き残るか、どう戦うか? それを 思うだけでナニが元気に為る不良青年なんだ。テメエらの常識は俺の非常識 だと言う事を…」

 俺はストライクにアーマーシュナイダーを格納させると、ジンに疾走させる。 女と少年が目を覆い、悲鳴を上げる中、ジンの右腕の関節を極め、腕を折り、 膝に蹴りを放つ。ストライクの関節は自由度が高い。…このOSさえあれば、体術のみでも充分イケると踏んでの行為だ。拳、蹴り、関節技、ナイフ格闘… どれも、『兵士』の基本技能だった。人型である利点を生かさねばな!

 「覚えて置け! でやぁアアアアアアアアアッ! 」

 関節を極めて壊したジンを助けようと、他の馬鹿が背後より襲い掛かって来る。 『装甲越しに敵を感じろ』。メビウス乗りで有った俺は、良く言われたものだった。 それも、『女』の上官にだ。…ライラ…イイ女だったよ、アンタは…。

 「いやああああああああああ!」
 「ルセェ! 黙ってろ女! 食らえ必殺の掌底+裏拳の連続撃ちィ! 」

 見事ジンの頭部が宙に舞う。ストライク! ノーマルでこれだけ俺が戦えるとは! 少年! お前、いいプログラマーに為れるぜェ! 俺専属に、なりな! 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2006年12月08日 18:44