名前: マルガレーテ・ラムペンパック(Margarete=Lumpenpack)
種族:人間
年齢:19
性別 :女
能力値
器用度:11 +1
敏捷度:15 +2
知 力:20 +3
筋 力:12 +2
生命点:20→18 +3(クロックアップジェムの強制作動により減少)
精神点:21→19 +3(クロックアップジェムの強制作動により減少)
冒険者技能
ソーサラー:6
セージ :1
一般技能
バトラー:2
ノーブル:3
魔法
古代語魔法:Lv6 魔力:9
経験点:3102
所持金:12784
冒険者レベル:6
戦闘能力
攻撃力:0
打撃力:追加ダメージ:0
回避力:0
防御力:7
ダメージ減少:7
肉体抵抗:9
精神抵抗:9
所持品
『疾走する魂の駆動体(クロックアップジェム)』
知名度=なし
魔力付与者=『怠惰』アセディア
形状=内部に発光する複雑な二重螺旋が駆動する紫水晶のブローチ
魔力=自分と周囲の時間の流れを遅くする
説明=このアイテムは、ラウンドの最初に使用を宣言することで発動します。
使用を宣言すると、使用者を中心に半径5mの任意の対象の時間の流れが遅くなり、1R分行動を行うことが出来ます。
このアイテムは、1日に1回しか使えません。
※一日一回という制限を無視して効果を発動することが可能。但し、一回効果を発揮するごとに生命点と精神点の原点が1点ずつ失われる。
評価額=鑑定不能(100万ガメル)
『愛すべからざる光(メフィストフェレス)』
知名度=なし
魔力付与者=不明
形状=真紅の羽が強引に捩り伸ばされ杖となっているような形態。柄頭には、無理矢理捻じ込まれたような紺碧の魔晶石が配されている。その魔晶石の内部を覗くと、幾重もの魔方陣やルーンが一つの機構の如く複雑に絡み合っている様が見える。
魔力=古代語魔法の魔力に+2
説明=古代語魔法の発動体として使用すると魔力に+2のボーナスが得られます。魔道の名門であるラムペンパック家の当主が代々継承している杖ですが、その来歴は未だ殆ど明らかになっていません。そもそも、どのような経緯でラムペンパック家がこれを手に入れたのかさえ不明で、その不可解な名称のみが伝わるのみです。無論、幾人もの野心的な代々の当主がこの正体を明らかにしようと研究しましたが僅かな事実しか判明しませんでした。それは、柄頭の魔晶石が強引に何かを封じる為の機構であるということです。異界の魔神を強引に封じて杖としているのだと推測する当主もいましたが、それにしては機構の方向性が微妙に異なると訝しむ当主もいました。結局のところ強力な発動体であるという利便性が優先し、現在に至るまで真剣に最後まで正体を追究する当主は居ませんでした。ですが、歴代において最高の天才であるクリームヒルトのみはその正体を把握していました。彼女が愉快そうに語るところに依れば、これは『竜の吐息で暖をとっているようなもの』なのだそうです。無論、今となってはその真意も計り知れるところではありませんが。
評価額=鑑定不能(強力な発動体として評価すれば30万ガメル程度)
補足もしくは蛇足:ラムペンパック(Lumpenpack)とは、“ぼろ纏い”もしくは“ならずもの”のような意味合いだが、この設定における“ラムペンパック”はゲーテの戯曲『ファウスト』の「ワルプルギスの夜の夢」による。“バイオリンひき”に下司仲間(ラムペンパック)と揶揄されるは狂乱のワルプルギスの夜に相対した五人の哲学者であり、彼らは自らの範疇を越える現象にそれぞれの思想に基づいてそれを把握しようとした。
独断論者、観念論者、実在論者、超自然主義者、懐疑論者がそれであり、それぞれが的外れな論を語るのだが、ある意味では超越した存在や事象へのちっぽけな人間の対峙の仕方と言えなくも無い。
ちなみに、ラムペンパックの分家の五家の名はそれぞれの論の代表的な哲学者からとられている。
『ルーンの指輪』
知名度=14
魔力付与者=「力ある」カルラ
形状=小さなプラチナの指輪
魔力=身に着けると、古代語魔法の魔力に+1される。
説明=これを身に着けた者は、古代語魔法の魔力に+1のボーナスが得られます。また、指輪には通常の発動体としての能力もあります。
評価額=6万ガメル
『ファストフィンガー』
知名度=13
魔力付与者=多数
形状=鳥の翼をかたどった銀製の指輪
魔力=身に着けると、敏捷度に+6(敏捷度ボーナス+1)
着用者の敏捷度を+6します。同時に、「身体能力」に属する魔法の影響を受けなくします。
基本取引価格=7万2000ガメル
『プロテクションリング(+1)』
ダメージ減少+1
メイジリング
ソフトレザー(必要筋力7)
ダガー(必要筋力5)
背負い袋
水袋
マント
羊皮紙(10枚)
羽根ペン/インク
ランタン
油(2本)
火口箱
ロープ(10メートル)
調理器具(1セット)
食器(1セット)
手鏡
化粧道具一式
裁縫道具一式
保存食(7日分)
紅茶(20杯分程度)
茶道具一式(木製)
魔晶石 6点分 22点分 2点分*5
竜の牙*2
使い魔
白鳩(生命点:3 精神点:3)
設定:
金髪縦巻きロールかつ高飛車お嬢様な女魔術師。
少々電波も入っている。
その原形は、淑女のフォークなんちゃらなあの人。
勿論、原形というだけでまるっきり違うが最初のイメージとしてはそんな感じということである。
以下は詳細な設定だが、相変わらずの蛇足である。
また、GMの設定や都合により大幅に変わるかも知れません(何の許可も取ってないので)
トライデントより遥か遠き東方、大陸中央の魔道の都ルーザリアにおいて断絶した魔術師家系の遺児。
マルガレーテの生まれついたラムペンパック家は、それなりに隆盛を誇っていた魔道の名門だった。
その為、彼女は幼少よりいわゆる名家の息女として何不自由無い裕福な暮らしを送っていた。
しかし、前当主つまりはマルガレーテの母親が道を誤ったことによりそれは完膚なきまでに台無しとなる。
この母は、決して短くは無いラムペンパック家の血筋における最高の天才と謳われたほどの魔術師だった。
が、血の濃さによる弊害なのか、己の真理の追究と命題の解決の為にはあらゆる犠牲も厭わない大きく逸脱した人物だったというのがこの悲劇を生んだ主たる原因だったのである。
果たしてどのような思索の結論でそうなったか………娘であるマルガレーテには未だ理解できないが、彼女が最終的に追い求めたのは“負の生命の解明とそれに基づく不死への探求”という最悪の禁忌だったのだ。
そして、その無謀なる挑戦は当然ながら周囲にあまりにも無惨な結末を齎した。
───マルガレーテは、未だその血塗られた悪夢を見る。
窓から大きく覗く紅い月を背に、艶然と微笑みながら自身の娘である筈のマルガレーテの姉に牙を突き立てる母親。
それを目にし、血を吐くような叫びを上げる父親。
屋敷に居た人々は………優しかった乳母も、忠実だった数多くの使用人も、美味しいお菓子をたくさん作ってくれた料理人も、逞しく何時も笑っていた御者も、密かに憧れに似た淡い恋心を抱いていた母親の弟子たる青年も、みんながみんな赤黒い水溜りの中へ壊れた人形同然に打ち捨てられていた。
やがて、業火が周囲を包み今までマルガレーテの殆どを構成していた世界は真っ赤に焼け落ちていく。
耳について離れない、罅割れた哄笑と自身を“グレーチェン、グレーチェン”と呼ぶ声。
混じり合う、嘔吐せんばかりの生臭さと鼻腔を強烈に刺激する焦げた匂い。
何もかもが水面に映る虚像のようで、何もかもが朧な影のようで、何もかもが出来の悪い曖昧な戯曲のようで………
結局───マルガレーテは、どのようにしてあの阿鼻叫喚の地獄さながらの場から脱することが出来たのかはまるで憶えていなかった。
気がつくと、先程の狂騒が信じられないような静かな一室でベッドに寝かされていた。
それで、“ああ、やっぱりあれは悪い夢だったんだ”と彼女は一旦は安心し、しかし視界に入った全身に火傷と酷い怪我を負っていた執事が自身のそれらを省みずに悲しみに満ちた表情で傍らに佇んでいたのを見て、再び酷薄なる現実を思い知る。
その忠実な老執事ジョルジュが訥訥と苦しげに語ってくれたところによると、奇跡的に助かった経緯はこうだった。
狂った悪鬼と化した母がまさにマルガレーテをその手にかけようとした寸前、彼女は父に辛うじて救われたのだという。
しかし、その際に自分の身を犠牲にした為に父は当然のように致命の傷を負い、息絶える前に駆けつけた執事へマルガレーテを託した。
そして、最後の力を振り絞って父は屋敷の方々へ魔術で火を放ち、それに紛れて何とか逃げ延び彼女は九死に一生を得たというのだ。
だが、マルガレーテにはその説明が少々信じられなかった。
あの化け物となった母は、高位の魔術師であったにしろ人間に過ぎなかった父が例え我が身を犠牲にしたにしろ僅かでもどうにか出来るものでは無いと対峙して実感できたし、屋敷全体が燃え尽きるほどの大火災だったとはいえそれで足止めになるとは到底思えなったからだ。
そう彼女が指摘すると、執事は何も分からないと首を振るだけだった。
恐らく………遠からず自分はあの母であった怪物に再び見えて、姉と同様に容赦なく牙を突き立てられるのだ。
マルガレーテはそう考え、生き残りはしたものの底知れぬ恐怖と諦観に感情が占められていた。
しかしながら、絶望に震えるマルガレーテを取り残してその後に起こりうるだろう悲劇の拡散は未然に防がれていた。
事態を重く見た大賢者ルーザリア本人が直接動いたのだとも、噂に名高い流浪の英雄達が母を誅したのだとも後に伝え聞いたが、彼女には真実は分からなかった。
分かったことは、栄光あるラムペンパック家は滅んでしまったのだという事と、十を過ぎたばかりの齢の小娘に過ぎない自分がこれから過酷な現実に相対しなければならなくなったという事だけ………。
名門であった故の影響を考えてか、ラムペンパック家の凶事は物のの見事に“無かった事”とされ、失火によるものとして処理された。
そして成人するまでの一時的な保護処置として、逃げ込んだ先である分家のフィヒテ家で息女として扱われることとなったのである。
虚無感の中でそれを受け入れた彼女だったが、それが後の更なる悲劇の元となった。
ラムペンパックの分家である五家(フィヒテ・アンセルムス・ヒューム・カント・エリフィス)は全て魔術家系であり、それなりの格式と歴史を誇っていたが、かつての栄華のみに執着し権勢を保つことばかりに捉われ互いに足を引っ張り合うという実に堕落した状態にあったのである。
その為、宗家であるラムペンパック最後の生き残りであるマルガレーテは、まるで獲得したものが次の宗家となることが出来るというトロフィーであるかのように扱われることになったのだ。
───フィヒテが今は“確保”しているが、それは緊急措置のようなもので今後の状況しだいではどうなるか解らない。
───なに、覆す手段は幾らでもある。
───最終的には、手元に“あれ”があればいいのだ。
───いざとなれば、監禁でも何でもして強引に自家との誰かと婚姻を承諾させればいい。
───所詮は、偶々生き残っただけの哀れな小娘にしか過ぎないのだから。
そのような下卑た認識の中、五家は策謀と暗闘を繰り返した。
それは時に血で血を洗う闘争にすら発展したが、マルガレーテは感情が無い醒めた目で他人事のようにそれを眺めているだけだった。
自分が居たって、ラムペンパックという家はもう滅びているというのに。
まだ、あの化け物となった母は実は生き延びていて未だに自分を狙っているかもしれないのに。
この連中は、一体何を浮かれて騒いでいるのだろう。
彼女は、自身が再三に渡り拐されたり騒乱の元としていっそ亡き者としようとした一派に殺されかけたりしていたというのに、そのような感情しか抱けなかったのである。
が、決定的な事件を機にマルガレーテは大きく変わる。
それは、闘争に疲れ果てたフィヒテ家の当主の暴挙だった。
ある夜半、彼は未だ幼い少女である彼女の貞操を強引に奪いに忍び寄ってきたのだ。
こうなればマルガレーテに何とか自分の子を孕ませ、それを一つの見せ札として他四家を黙らせるしかない。
その過程で、彼女を従順な自身の女へと変えることができればさらに効果は高まるだろう。
そのような、歪んだ欲望と打算に満ちた短絡的な思惑に彼は錯乱のあまり捉われてしまったのである。
しかし、そんな早すぎる純潔の危機さえ彼女は空虚な心で受け入れようとしていた………筈だった。
その時の事は、断片的にしか憶えていない。
ただ、夢から醒めるように意識を取り戻した時───彼女の目の前に、全裸のフィヒテ家の当主が胸を押さえ血を流しながら倒れていたのだ。
自分はずたずたにされた無残な服を纏った状態で、涙を流しながら荒い息を吐いていた。
彼女には魔術を使ったという感覚だけがあった。
そこに最初に駆けつけてきたのは、ほぼ唯一の味方であった老執事ジョルジュだった。
彼が惨状を目にし真っ先に行ったのは、迷うことなく死に掛けていたこの不埒なフィヒテ家の当主に常に佩いていた剣で止めを刺す事だった。
マルガレーテが驚きの声を上げるのを遮って、老執事は言った。
「これで……フィヒテの御当主に手をかけたのは、このジョルジュにございます。御無礼を承知で申し上げますが、お嬢様はこのような下劣なことを背負うべきではないと、私めは愚考致します故。それに───実の所少々嬉しくも御座います。あれ以来、初めて自身の意志をお示しになられましたな」
柔らかい笑みを見せながらのこの言葉に、彼女は雷に打たれたような衝撃を受ける。
思えば、確かに自分は己が無価値であるという考えに捉われ、何も決めようとはしなかった。
何もかもに怯え、何に対しても自身は無力だと断じて、自分の意志は誰にも届かず何の影響も与えないと信じてしまっていた。
だから………今まで泣くことさえ忘れていたのだ。
その事に漸く気がつき、マルガレーテはあの惨劇以来初めて年相応に声を上げて泣き叫んだ。
その間───ジョルジュは、慇懃に頭を下げたまま決して彼女を見ようとはしなかったという………。
その後、マルガレーテはルーザリアを出奔する事を毅然と宣言した。
自分は、あらゆる意味において無力で小さな存在だと思い知った。
ならば、どのような強大な存在にも怯まず対峙できる力を一から積み上げていくしかない。
それは、このようなあまりに閉塞した世界に留まっていては到底出来ようはずが無い。
自身が取るに足らない存在だとしても、せめて抗う意志を示し少しでも高みを目指すのがラムペンパックというものではないのか。
そう天啓に似た強い意志が、彼女の心に今までの反動のように湧き上がったのだ。
こうして、魔術師としての誇りを取り戻したマルガレーテは老執事を伴ってルーザリアをその日の内に脱した。
当然のように五家からも、殺人という事でルーザリアの治安組織からも追っ手がかかったもののそれらからは難なく逃れる事が出来た。
全ては、執事ジョルジュの活躍によるものである。
というのも、マルガレーテもこの時までまるで気が付いてはいなかったが、この控えめにして完璧なる老執事は明らかに只者ではなかったのだ。
時に絶望的な囲みを獣のような動きで疾風のように突破し、時に優れた機転を以って逃亡手段を確保し、時に尋常ではない剣捌きで幾人もの追っ手を撃退し………マルガレーテは、身近な者の知られざる一面に呆気に取られ、寧ろ相手のほうにこそ哀れみを覚えた位だった。
そして、惨劇のショックに自失してから今までの己を本当に守っていたのは一体誰だったのかというのをここで初めて知ったのである。
後にこのジョルジュが僅かに語ってくれたところによると、彼は若い頃にトライデントに居りそこで軍に所属して幾つかの戦争を経験したということだった。
しかし、どうにも軍は性に合わぬという事で退役し冒険者となったらしい。
それで冒険者として少々名が知れ渡った頃に偶々トライデントに来ていた先々代のラムペンパックの当主、つまりはマルガレーテの祖母にあたる人物に会い、どういう経緯か執事として仕える事となったようだ。
その話を聞く過程で、マルガレーテは冒険者の幾つかの冒険譚を耳にし一つの決意を固めていた。
自分も、冒険者というものになってみようと。
それは、多くの危険といつも隣り合わせだが思いもよらぬ一攫千金も運が良ければ齎されるという。
名が知れ渡った魔術師の中には、かつて冒険者であったという人物も多い。
もしかしたら、現在では到底及びもつかぬ様な古代王国の壮大なる魔法に触れる機会もあるかもしれない。
何より、その頃の事を語るジョルジュの顔は今まで自分が見た事が無いような純粋に嬉しげな表情だった……。
それらを理由に決意を表明すると(最後の理由は言わなかったが)
「それも宜しいでしょう。全ては、お嬢様の御心のままに」
と、控えめながら力強く老執事は頷いてくれたのである。
当初は、流石にトライデントまでは遠すぎるという事でルヴェルグ公国において冒険者としての活動を行っていた。
だが、魔術師ではあるものの箱入りの娘であり気位が高過ぎたマルガレーテは当然の事ながら失敗続きだった。
何より、彼女は冒険者としてあまりにも要領が悪すぎたというのもあった。
恐らくは、ジョルジュの控えめながら的確な助けが無ければとうに命を落としていただろう。
それでも、彼女は無邪気にめげる事無くこの“冒険者”という自身にとって新鮮な立場を楽しんでいた。
ある意味では、マルガレーテにとっては人生において最良の幸せな時間だったと言えるかもしれない。
しかし………それは、ある時唐突に終わりを告げる。
ジョルジュが、突如病に倒れてしまったのである。
マルガレーテは迷う事無く、逃亡時に僅かだが持ち出せたラムペンパック家に伝わる秘宝や身に付けた装飾品類を全て売り払い、ジョルジュの病を治すための手を尽くした。
だが、そもそも老齢での無理が祟ったのか。
あらゆる高価な薬も効かず高位の神官の祈りも届かず………そのまま、唯一の信頼すべき味方であった老執事は帰らぬ人となったのである。
彼女は、かつての惨劇の後よりもさらに深い悲しみと喪失感を味わうが、今度は心が折れたりはしなかった。
彼との最後の会話が、そうする事を許さなかったのだ。
『やはり………お嬢様には、トライデントの海を見せたかったですなあ』
『ルーザリアは、あれはあれで良き所に御座いましたが、海が見えないのが少々寂しくありました』
『朝も夕も………空と海の境に陽がある時、水面に輝く軌跡が現れる様はそれはそれは見事で、まるで遥か彼方の理想郷への唯一の道のようでありましたな』
『きっとあれを心に焼き付ければ、どんな悲しみも過酷さも乗り越えていけるはずです。時に、人の世はどうしようもないほどに愚かで醜くありますが、世界はそれでも美しいのだと誇れるのですから』
『お嬢様も、今にきっと遥かなる高みへと立つ事が出来ましょう。恐らく、母君であるクリームヒルト様も少々何かに躓き失敗されただけなのです。あの方は想像を絶するほどに優れておりましたが、昔から思いつめると詰めを誤るという癖がありましてな………』
『お嬢様は、私めが居なくともきっと大丈夫です。ラムペンパックというのは、決してそんなに弱くはない。その気高さを、その強さを、私めは良く知っています。そう、本当に良く………』
『ああ………リシャルド───これで………私は……約束が……果たせ……た……だろう………か』
今際の際のジョルジュの言葉は、あまりに小さい囁き声だったがマルガレーテの祖母の名を親しげに呼ぶ声は本当に幸せそうなものだった。
その後、彼女は決して涙は見せなかった。
本当に独りとなったとき、自分があまりに甘く深刻でなかったと大いに反省し、改めて決意を固めなおしたからだ。
マルガレーテは残った財の殆どを使い盛大な葬儀を行うと、彼を荼毘に臥し遺灰を持ってトライデントへ向かった。
女の一人旅で途中どんな事が待ち受けようと、必ずその海を見てやろうと覚悟を決めたからだった。
そして、様々な苦難を乗り越え漸くトライデントに辿り着き、夕暮れに橙に染まる空と宝石が散りばめられた輝きを放つ海を見て彼女はジョルジュの遺灰を撒きながら静かに咽び泣いた。
しかし、それは決して悲しみゆえのものでは無かったのである。
───もし貴方がトライデントの冒険者の宿『海鳥のガラ亭』に立ち寄った際、奇異な行動をする女魔術師を見ることがあるかもしれないが大目に見てやって欲しい。
ひょっとしたら、彼女は場にそぐわない淑女さながらの立ち振る舞いをするかもしれない。
顔立ちは確かに整い高貴さを漂わせているし、豪奢な縦巻きの輝ける金髪で頭は飾られている。
しかし、その身に着けた衣服は元は上質で高価なものかもしれないのだが、所々に繕った跡があるし端々が擦り切れてボロボロだ。
つまり、良く言ってその姿は零落して破産した貴族の娘といったところなのである。
これだけならまだ良いが、時々彼女は
『ジョルジュ、お茶にしますよ』
とか
『ジョルジュ、そろそろ眠りますので寝所の用意を』
とか、誰も居ない空間に命じるように話しかけるから、さぞかし貴方は気味悪く感じるだろうと思う。
だが、例え気味が悪かろうが放っておいて問題は無いのだ。
そう言いながら、彼女は命じた事を即座に自身で全て行うからである。
まるで、自分で自分に仕えるようにとても生真面目にだ。
一つ断っておくが、彼女は至極正気だ。
少々気位が高いのが玉に瑕だが、理知的ですらある。
まあ…………人には、それぞれ事情があるということで。
容姿
白皙の肌を持ち、宝石の如き碧眼で、縦巻きの黄金細工のような髪を持ち、彫刻のように整った顔立ちをしている。
身体つきも細身でありながら女性らしい豊満さを持つほぼ理想的な美女………なのだが、一つだけコンプレックスの元となるような特徴がある。
前髪を伸ばし隠してはいるが、実は額に大きな黒子があるのである。
それはそれは見事な形と大きさで、彼女が美人であるという事など全て吹き飛び自然と押してみたくなる衝動に駆られるとか何とか。
子供の頃は、親族の子供達に良く黒子を押され泣いていた。
押されると酷く痛いのである。
ちなみに、今それを行うと彼女は怒り狂い相手に手袋を投げつけ、半泣きになりながら魔法で決して洒落にならない事をしようとする。
この黒子はラムペンパックの女子に代々顕れるが、何か特殊な意味を持つということは全く無い。
身長:161cm
体重:49kg
(現代の表記に直した、あくまで目安)
最終更新:2013年08月31日 23:21