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虎の穴を前にして」(2015/10/26 (月) 01:11:58) の最新版変更点

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**虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k  魔術都市ユグドラシルには、二つの噂がある。  魔力を秘めた剣を使い、さながら伝承の吸血鬼のように、しもべを増やす通り魔の噂。  姿も形も見えないのに、戦いの爆音だけが聞こえる、謎の戦闘者の噂。  そのどちらもが、聖杯戦争本戦が始まる一日前に、突如として急速に広まったものだ。  故に勘のいいマスター達は、それが自分のライバルのことなのだと、言われるまでもなく理解していた。 ◆ 「俺達には二つの道がある。刀の通り魔を探すか、謎の音の主を探すかだ」  戦闘のプロ、剣鉄也。  鍛え上げられた肉体と、年齢不相応のいかつい顔を持つ、いかにも戦闘者という風情の男である。  今回の聖杯戦争では、ライダーのサーヴァントとして現界し、その豪腕を振るっていた。  愛機『偉大な勇者(グレートマジンガー)』を駆り、数多の敵と戦ってきた彼は、まさに聖杯戦争という舞台には、うってつけの役者と言えた。 「普通に考えたら、謎の音の方よね」  問題はその鉄也の現在地が、女子中学生の私室という、なんともらしくない場所であるということだ。  勉強机の椅子に無造作の腰掛け、ベッドに視線を向けた先では、犬吠埼風が腰を下ろして、難しい顔をして思考していた。  中学三年生でありながら、勇者という途方もない宿命を背負ったこの少女が、剣鉄也のマスターだった。 「それなりに広範囲をうろついてんだろうな。通り魔の方は証言がバラバラで、活動範囲が特定できねぇ」 「逆に音の方は、特級住宅街っていう風に、場所が限定されている」  議題はこれからの本戦で、敵マスターを探すに当たって、まず何を手がかりとするかだ。  既に噂というヒントは得ているが、それは二パターン存在している。  二兎を追えば一兎も得られない。狙いは一羽に絞らねばならない。  風が選んだ情報は、具体的に場所が決まっている、謎の戦闘音の方だった。 「仮にそっちを選ぶとして、もう一つ考えることがある」 「今から乗り込むかどうか、ってことね」 「何せ場所が場所だからな。お偉方の集まる場所とくりゃ、警備も厳重になってるはずだ」  しかし、そこで問題が生じる。  特級住宅街というのは、そもそも一流の魔術師や、要人が暮らしているエリアなのだ。  当然、そうした人間を守るために、警察の巡回なども厳しくなっている。  今からそこに繰り出したとして、馬鹿正直にうろついていては、即座に補導されてしまうだろう。 「それで、どうする」  故に選択する必要があった。  相手に対応する隙を与えず、リスクを承知で飛び込むか。  自身の安全を優先するため、警備の手薄な時間を待つか。 「……今夜は行かない。このまま寝て、朝を待つことにする」  犬吠埼風が選択したのは、後者だった。 「わざわざ特級住宅街に陣地を構えたってことは、そこが家に近いってことでしょ? そうじゃないんだったら、そんなとこ普通選ばないし」 「だな。警備の目も光ってる。騒がれる危険を冒すよりも、もっと目立たない場所に陣取るはずだ」 「それなら、一晩くらいほっといても、そう遠くまでは動かないはず」  だったら無理をすることなく、日中に動くべきだと風は言う。 「正論だな。臆病風に吹かれたってわけでもないらしい」 「そりゃまあ、迷ってないってわけでもないけどさ。でも聖杯が欲しいっていうのは、ホントのホントに思ってるから」  人を蹴落とさなければならないというのは、確かに心苦しいとは思う。  だがそれでも、たとえ刃を交えてでも、叶えたい願いは確かにあるのだ。  仲間達や他ならぬ自分が、喪ったものを取り戻す。そのためにこの戦いに臨み、勝ち抜いてみせるという覚悟がある。  それならば文句はないだろうと、風は鉄也に向かって言った。 「了解だ。それなら俺も異論はねぇ」 「決まりね。とりあえず明日目が覚めたら、学校を休んで特級住宅街へ向かう。そこでマスターを捜しましょ」 「見つけちまえば、あとはグレートマジンガーで踏み潰せる。……まぁもっとも、最初からグレートで乗り込めれば、もっと楽に済むんだろうがな」  背もたれによりかかりながら、鉄也がぼやく。  『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は強力無比だが、巨大な分かかるコストも桁外れだ。  勇者の力をもってしても、長時間維持し続けることは難しい。無駄な使い方をせず、一撃必殺の覚悟で臨むべきだろう。 「いっそのこと令呪でも使って、魔力をひねり出すって手もあるけど」 「それは駄目だ。よほどのことがねぇ限り、令呪はフルで残しておけ」  風の提案を、しかし鉄也は否定した。  魔力の結晶体である令呪を、宝具発動の命令に使えば、その魔力を宝具に割り当てることが可能だ。  しかしその使い方はすべきではないと、マスターの主張に反論する。 「何で?」 「俺の切り札を使うためだ。そいつを呼び寄せ起動するには、令呪三つ分の魔力が要る。  その後の維持コストもかかるからな……こればっかりは、令呪を使わず、自前の魔力でってわけにはいかねぇんだよ」  だから令呪が必要なんだと、ライダーのサーヴァントが言った。  宝具『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は、それ単体で完成するものではない。  全ての力を解放した、正真正銘の最終形態は、もう一段先に存在する。  来たるべき時にそれを使うためには、令呪の使いどころを誤るわけにはいかないのだ。 「それって本当に必要なの? あのグレートだけでも、十分強いと思うんだけど」 「要る。皇の力を使うべき時は、いつか必ず訪れる」 「その根拠は?」 「プロの勘だ」  理論や理屈があるわけではない。  されど古今の英雄が集った、この聖杯戦争の舞台では、ただならぬ気配が渦巻いている。  誰を相手にした時かは知らないが、不滅の『偉大な勇者(グレートマジンガー)』ですら、揺るがされる場面が訪れるだろう。  その時には迷わず切り札を切る。  偉大な勇者をも超越した、偉大な皇を目覚めさせる。  いずれ来る死線の時を思い、剣鉄也は決意を固めた。 【D-3/一般住宅街・犬吠埼家/一日目 深夜】 【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]スマートフォン [所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度) [思考・状況] 基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる 1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す 2.人と戦うことには若干の迷い。なるべくなら、サーヴァントのみを狙いたい 3.鉄也の切り札を使うためにも、令呪は温存しておく [備考] ※D-3にある一軒家に暮らしています ※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました ※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています 【ライダー(剣鉄也)@真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:サーヴァントという仕事を果たす 1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す 2.グレートマジンカイザー顕現のためにも、令呪は温存させる [備考] ※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました ※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています ◆  夜の街を、風が駆ける。  ひゅんひゅんひゅんと音を立て、されど姿を見せることなく、風は闇夜を吹き抜ける。  家の屋根に降り立って、眼下を見下ろしたその風は、されど一人の少女だった。  茶色く長いツインテールに、まな板のように貧相な胸。  キーパーのマスター――悪忍・両備は、特級住宅街に侵入を果たし、周囲をぐるりと見渡していた。 《警備の数が多いっつっても、結局大したことなかったな》 《両備は忍よ。これくらい突破できないようじゃ、選抜メンバーの名がすたるわ》  霊体化したハービンジャーに、声を出さず念話で返した。  今日までに調べて分かったことだが、この魔術都市の警備の練度は、実はそれほど高くない。  隠密を本分とする両備であれば、問題なく潜り抜けられるレベルだ。  故に彼女は、即座に特級住宅街に乗り込み、噂の正体を確かめに来た。  両備ならば、警備を突破し、街に隠れている臆病者を、燻り出せると考えたからだ。  彼女も犬吠埼風同様、二つの噂を耳にして、それに応じ動いたマスターだったのである。  違いがあるとするならば、彼女にはたとえ夜の街でも、動き回れる技があった。それが対応を分けたのだった。 《とりあえず、ここまではオーケー……あとは隠れているマスターを、どうやって見つけ出すかってことよね》  恐らく敵のマスターは、両備達が用いている、忍結界のような術を使っているのだろう。  隔絶された結界に閉じこもれば、姿を一切見せることなく、敵から身を隠すことが可能だ。 (忌夢……じゃ、ないわよね)  そこまで考えると、どうしても、頭に浮かぶ顔があった。  夕方に喫茶店で鉢合わせた、眼鏡をかけた先輩の顔だ。  あの後念のため尾行してみたが、彼女の暮らしていた家は、特級住宅街にはなかった。  そもそも出歩いている以上、引きこもっていると思われる敵マスターとは、前提条件が合致しない。  ここに潜んでいるライバルは、忍結界を展開し、息を殺している忌夢ではないはずだ。そう自分に言い聞かせた。 《夕方のアイツが、そんなに気になるか》  そしてそんな気の迷いは、相方にも悟られてしまっていたらしい。  迷いを見せる両備に対し、ハービンジャーが語りかける。 《……関係ないわよ、あんな奴。両備は両備の戦いをする。それだけよ》 《ならいいけどよ》  サーヴァントの問いかけを否定し、両備は視線を走らせた。  周囲にそれらしい人影がないのを見ると、再びその場から跳躍し、次の家の屋根へと向かう。  屋根と屋根の間を飛び交い、夜の闇の奥深くへと、両備は分け入り突き進んでいった。  唐突に広まった噂と、見かけ倒しの脆い警備。これはゲームを仕組んだマスターが、こちらを催促している証拠だ。  ライバルのヒントは与えてやる。戦いの邪魔もしないでやる。だからさっさと会敵し、聖杯戦争を進めろと。  上等だ。ならばやってやろうじゃないか。  この手で聖杯を手に入れるためにも。両備の願いを果たすためにも。 《しっかしめんどくせぇなあ。小宇宙の一発でも叩き込んでやりゃあ、ビビッて飛び出してくるんじゃねえのか?》 《バカ! それじゃ隠密行動の意味がないじゃないの!》  猪武者のパートナーに、やや不安を覚えながらも、両備は奥へ奥へと進んでいった。 【F-3/特級住宅街/一日目 深夜】 【両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]スナイパーライフル [道具]秘伝忍法書、財布 [所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度) [思考・状況] 基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる 1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する 2.復讐を果たすこと、忌夢と戦うことに迷い [備考] ※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました ※忌夢が本物であるかどうか、図りかねています ※忌夢の家が特級住宅街にはないことを調べています。そのことから、『姿の見えない戦闘音』の正体は、忌夢ではないと考えようとしています 【キーパー(ハービンジャー)@聖闘士星矢Ω】 [状態]健康 [装備]『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:両備について行き、共に戦う 1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する 2.両備の迷いに対して懸念 [備考] ※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました ---- |BACK||NEXT| |[[振り返るもの、向き合うべきもの]]|[[投下順>本編目次投下順]]|[[師弟再び]]| |[[振り返るもの、向き合うべきもの]]|[[時系列順>本編目次時系列順]]|[[師弟再び]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |[[カーテン・コール]]|[[犬吠埼風]]|-| |~|ライダー([[剣鉄也]])|-| |~|[[両備]]|-| |~|キーパー([[ハービンジャー]])|-|
**虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k  魔術都市ユグドラシルには、二つの噂がある。  魔力を秘めた剣を使い、さながら伝承の吸血鬼のように、しもべを増やす通り魔の噂。  姿も形も見えないのに、戦いの爆音だけが聞こえる、謎の戦闘者の噂。  そのどちらもが、聖杯戦争本戦が始まる一日前に、突如として急速に広まったものだ。  故に勘のいいマスター達は、それが自分のライバルのことなのだと、言われるまでもなく理解していた。 ◆ 「俺達には二つの道がある。刀の通り魔を探すか、謎の音の主を探すかだ」  戦闘のプロ、剣鉄也。  鍛え上げられた肉体と、年齢不相応のいかつい顔を持つ、いかにも戦闘者という風情の男である。  今回の聖杯戦争では、ライダーのサーヴァントとして現界し、その豪腕を振るっていた。  愛機『偉大な勇者(グレートマジンガー)』を駆り、数多の敵と戦ってきた彼は、まさに聖杯戦争という舞台には、うってつけの役者と言えた。 「普通に考えたら、謎の音の方よね」  問題はその鉄也の現在地が、女子中学生の私室という、なんともらしくない場所であるということだ。  勉強机の椅子に無造作の腰掛け、ベッドに視線を向けた先では、犬吠埼風が腰を下ろして、難しい顔をして思考していた。  中学三年生でありながら、勇者という途方もない宿命を背負ったこの少女が、剣鉄也のマスターだった。 「それなりに広範囲をうろついてんだろうな。通り魔の方は証言がバラバラで、活動範囲が特定できねぇ」 「逆に音の方は、特級住宅街っていう風に、場所が限定されている」  議題はこれからの本戦で、敵マスターを探すに当たって、まず何を手がかりとするかだ。  既に噂というヒントは得ているが、それは二パターン存在している。  二兎を追えば一兎も得られない。狙いは一羽に絞らねばならない。  風が選んだ情報は、具体的に場所が決まっている、謎の戦闘音の方だった。 「仮にそっちを選ぶとして、もう一つ考えることがある」 「今から乗り込むかどうか、ってことね」 「何せ場所が場所だからな。お偉方の集まる場所とくりゃ、警備も厳重になってるはずだ」  しかし、そこで問題が生じる。  特級住宅街というのは、そもそも一流の魔術師や、要人が暮らしているエリアなのだ。  当然、そうした人間を守るために、警察の巡回なども厳しくなっている。  今からそこに繰り出したとして、馬鹿正直にうろついていては、即座に補導されてしまうだろう。 「それで、どうする」  故に選択する必要があった。  相手に対応する隙を与えず、リスクを承知で飛び込むか。  自身の安全を優先するため、警備の手薄な時間を待つか。 「……今夜は行かない。このまま寝て、朝を待つことにする」  犬吠埼風が選択したのは、後者だった。 「わざわざ特級住宅街に陣地を構えたってことは、そこが家に近いってことでしょ? そうじゃないんだったら、そんなとこ普通選ばないし」 「だな。警備の目も光ってる。騒がれる危険を冒すよりも、もっと目立たない場所に陣取るはずだ」 「それなら、一晩くらいほっといても、そう遠くまでは動かないはず」  だったら無理をすることなく、日中に動くべきだと風は言う。 「正論だな。臆病風に吹かれたってわけでもないらしい」 「そりゃまあ、迷ってないってわけでもないけどさ。でも聖杯が欲しいっていうのは、ホントのホントに思ってるから」  人を蹴落とさなければならないというのは、確かに心苦しいとは思う。  だがそれでも、たとえ刃を交えてでも、叶えたい願いは確かにあるのだ。  仲間達や他ならぬ自分が、喪ったものを取り戻す。そのためにこの戦いに臨み、勝ち抜いてみせるという覚悟がある。  それならば文句はないだろうと、風は鉄也に向かって言った。 「了解だ。それなら俺も異論はねぇ」 「決まりね。とりあえず明日目が覚めたら、学校を休んで特級住宅街へ向かう。そこでマスターを捜しましょ」 「見つけちまえば、あとはグレートマジンガーで踏み潰せる。……まぁもっとも、最初からグレートで乗り込めれば、もっと楽に済むんだろうがな」  背もたれによりかかりながら、鉄也がぼやく。  『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は強力無比だが、巨大な分かかるコストも桁外れだ。  勇者の力をもってしても、長時間維持し続けることは難しい。無駄な使い方をせず、一撃必殺の覚悟で臨むべきだろう。 「いっそのこと令呪でも使って、魔力をひねり出すって手もあるけど」 「それは駄目だ。よほどのことがねぇ限り、令呪はフルで残しておけ」  風の提案を、しかし鉄也は否定した。  魔力の結晶体である令呪を、宝具発動の命令に使えば、その魔力を宝具に割り当てることが可能だ。  しかしその使い方はすべきではないと、マスターの主張に反論する。 「何で?」 「俺の切り札を使うためだ。そいつを呼び寄せ起動するには、令呪三つ分の魔力が要る。  その後の維持コストもかかるからな……こればっかりは、令呪を使わず、自前の魔力でってわけにはいかねぇんだよ」  だから令呪が必要なんだと、ライダーのサーヴァントが言った。  宝具『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は、それ単体で完成するものではない。  全ての力を解放した、正真正銘の最終形態は、もう一段先に存在する。  来たるべき時にそれを使うためには、令呪の使いどころを誤るわけにはいかないのだ。 「それって本当に必要なの? あのグレートだけでも、十分強いと思うんだけど」 「要る。皇の力を使うべき時は、いつか必ず訪れる」 「その根拠は?」 「プロの勘だ」  理論や理屈があるわけではない。  されど古今の英雄が集った、この聖杯戦争の舞台では、ただならぬ気配が渦巻いている。  誰を相手にした時かは知らないが、不滅の『偉大な勇者(グレートマジンガー)』ですら、揺るがされる場面が訪れるだろう。  その時には迷わず切り札を切る。  偉大な勇者をも超越した、偉大な皇を目覚めさせる。  いずれ来る死線の時を思い、剣鉄也は決意を固めた。 【D-3/一般住宅街・犬吠埼家/一日目 深夜】 【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]スマートフォン [所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度) [思考・状況] 基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる 1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す 2.人と戦うことには若干の迷い。なるべくなら、サーヴァントのみを狙いたい 3.鉄也の切り札を使うためにも、令呪は温存しておく [備考] ※D-3にある一軒家に暮らしています ※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました ※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています 【ライダー(剣鉄也)@真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:サーヴァントという仕事を果たす 1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す 2.グレートマジンカイザー顕現のためにも、令呪は温存させる [備考] ※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました ※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています ◆  夜の街を、風が駆ける。  ひゅんひゅんひゅんと音を立て、されど姿を見せることなく、風は闇夜を吹き抜ける。  家の屋根に降り立って、眼下を見下ろしたその風は、されど一人の少女だった。  茶色く長いツインテールに、まな板のように貧相な胸。  キーパーのマスター――悪忍・両備は、特級住宅街に侵入を果たし、周囲をぐるりと見渡していた。 《警備の数が多いっつっても、結局大したことなかったな》 《両備は忍よ。これくらい突破できないようじゃ、選抜メンバーの名がすたるわ》  霊体化したハービンジャーに、声を出さず念話で返した。  今日までに調べて分かったことだが、この魔術都市の警備の練度は、実はそれほど高くない。  隠密を本分とする両備であれば、問題なく潜り抜けられるレベルだ。  故に彼女は、即座に特級住宅街に乗り込み、噂の正体を確かめに来た。  両備ならば、警備を突破し、街に隠れている臆病者を、燻り出せると考えたからだ。  彼女も犬吠埼風同様、二つの噂を耳にして、それに応じ動いたマスターだったのである。  違いがあるとするならば、彼女にはたとえ夜の街でも、動き回れる技があった。それが対応を分けたのだった。 《とりあえず、ここまではオーケー……あとは隠れているマスターを、どうやって見つけ出すかってことよね》  恐らく敵のマスターは、両備達が用いている、忍結界のような術を使っているのだろう。  隔絶された結界に閉じこもれば、姿を一切見せることなく、敵から身を隠すことが可能だ。 (忌夢……じゃ、ないわよね)  そこまで考えると、どうしても、頭に浮かぶ顔があった。  夕方に喫茶店で鉢合わせた、眼鏡をかけた先輩の顔だ。  あの後念のため尾行してみたが、彼女の暮らしていた家は、特級住宅街にはなかった。  そもそも出歩いている以上、引きこもっていると思われる敵マスターとは、前提条件が合致しない。  ここに潜んでいるライバルは、忍結界を展開し、息を殺している忌夢ではないはずだ。そう自分に言い聞かせた。 《夕方のアイツが、そんなに気になるか》  そしてそんな気の迷いは、相方にも悟られてしまっていたらしい。  迷いを見せる両備に対し、ハービンジャーが語りかける。 《……関係ないわよ、あんな奴。両備は両備の戦いをする。それだけよ》 《ならいいけどよ》  サーヴァントの問いかけを否定し、両備は視線を走らせた。  周囲にそれらしい人影がないのを見ると、再びその場から跳躍し、次の家の屋根へと向かう。  屋根と屋根の間を飛び交い、夜の闇の奥深くへと、両備は分け入り突き進んでいった。  唐突に広まった噂と、見かけ倒しの脆い警備。これはゲームを仕組んだマスターが、こちらを催促している証拠だ。  ライバルのヒントは与えてやる。戦いの邪魔もしないでやる。だからさっさと会敵し、聖杯戦争を進めろと。  上等だ。ならばやってやろうじゃないか。  この手で聖杯を手に入れるためにも。両備の願いを果たすためにも。 《しっかしめんどくせぇなあ。小宇宙の一発でも叩き込んでやりゃあ、ビビッて飛び出してくるんじゃねえのか?》 《バカ! それじゃ隠密行動の意味がないじゃないの!》  猪武者のパートナーに、やや不安を覚えながらも、両備は奥へ奥へと進んでいった。 【F-3/特級住宅街/一日目 深夜】 【両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]スナイパーライフル [道具]秘伝忍法書、財布 [所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度) [思考・状況] 基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる 1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する 2.復讐を果たすこと、忌夢と戦うことに迷い [備考] ※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました ※忌夢が本物であるかどうか、図りかねています ※忌夢の家が特級住宅街にはないことを調べています。そのことから、『姿の見えない戦闘音』の正体は、忌夢ではないと考えようとしています 【キーパー(ハービンジャー)@聖闘士星矢Ω】 [状態]健康 [装備]『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:両備について行き、共に戦う 1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する 2.両備の迷いに対して懸念 [備考] ※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました ---- |BACK||NEXT| |[[振り返るもの、向き合うべきもの]]|[[投下順>本編目次投下順]]|[[師弟再び]]| |[[振り返るもの、向き合うべきもの]]|[[時系列順>本編目次時系列順]]|[[師弟再び]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |[[カーテン・コール]]|[[犬吠埼風]]|-| |~|ライダー([[剣鉄也]])|-| |~|[[両備]]|[[背負う覚悟は胸にあるか]]| |~|キーパー([[ハービンジャー]])|~|

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