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「虎の穴を前にして」(2015/10/26 (月) 01:11:58) の最新版変更点
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**虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k
魔術都市ユグドラシルには、二つの噂がある。
魔力を秘めた剣を使い、さながら伝承の吸血鬼のように、しもべを増やす通り魔の噂。
姿も形も見えないのに、戦いの爆音だけが聞こえる、謎の戦闘者の噂。
そのどちらもが、聖杯戦争本戦が始まる一日前に、突如として急速に広まったものだ。
故に勘のいいマスター達は、それが自分のライバルのことなのだと、言われるまでもなく理解していた。
◆
「俺達には二つの道がある。刀の通り魔を探すか、謎の音の主を探すかだ」
戦闘のプロ、剣鉄也。
鍛え上げられた肉体と、年齢不相応のいかつい顔を持つ、いかにも戦闘者という風情の男である。
今回の聖杯戦争では、ライダーのサーヴァントとして現界し、その豪腕を振るっていた。
愛機『偉大な勇者(グレートマジンガー)』を駆り、数多の敵と戦ってきた彼は、まさに聖杯戦争という舞台には、うってつけの役者と言えた。
「普通に考えたら、謎の音の方よね」
問題はその鉄也の現在地が、女子中学生の私室という、なんともらしくない場所であるということだ。
勉強机の椅子に無造作の腰掛け、ベッドに視線を向けた先では、犬吠埼風が腰を下ろして、難しい顔をして思考していた。
中学三年生でありながら、勇者という途方もない宿命を背負ったこの少女が、剣鉄也のマスターだった。
「それなりに広範囲をうろついてんだろうな。通り魔の方は証言がバラバラで、活動範囲が特定できねぇ」
「逆に音の方は、特級住宅街っていう風に、場所が限定されている」
議題はこれからの本戦で、敵マスターを探すに当たって、まず何を手がかりとするかだ。
既に噂というヒントは得ているが、それは二パターン存在している。
二兎を追えば一兎も得られない。狙いは一羽に絞らねばならない。
風が選んだ情報は、具体的に場所が決まっている、謎の戦闘音の方だった。
「仮にそっちを選ぶとして、もう一つ考えることがある」
「今から乗り込むかどうか、ってことね」
「何せ場所が場所だからな。お偉方の集まる場所とくりゃ、警備も厳重になってるはずだ」
しかし、そこで問題が生じる。
特級住宅街というのは、そもそも一流の魔術師や、要人が暮らしているエリアなのだ。
当然、そうした人間を守るために、警察の巡回なども厳しくなっている。
今からそこに繰り出したとして、馬鹿正直にうろついていては、即座に補導されてしまうだろう。
「それで、どうする」
故に選択する必要があった。
相手に対応する隙を与えず、リスクを承知で飛び込むか。
自身の安全を優先するため、警備の手薄な時間を待つか。
「……今夜は行かない。このまま寝て、朝を待つことにする」
犬吠埼風が選択したのは、後者だった。
「わざわざ特級住宅街に陣地を構えたってことは、そこが家に近いってことでしょ? そうじゃないんだったら、そんなとこ普通選ばないし」
「だな。警備の目も光ってる。騒がれる危険を冒すよりも、もっと目立たない場所に陣取るはずだ」
「それなら、一晩くらいほっといても、そう遠くまでは動かないはず」
だったら無理をすることなく、日中に動くべきだと風は言う。
「正論だな。臆病風に吹かれたってわけでもないらしい」
「そりゃまあ、迷ってないってわけでもないけどさ。でも聖杯が欲しいっていうのは、ホントのホントに思ってるから」
人を蹴落とさなければならないというのは、確かに心苦しいとは思う。
だがそれでも、たとえ刃を交えてでも、叶えたい願いは確かにあるのだ。
仲間達や他ならぬ自分が、喪ったものを取り戻す。そのためにこの戦いに臨み、勝ち抜いてみせるという覚悟がある。
それならば文句はないだろうと、風は鉄也に向かって言った。
「了解だ。それなら俺も異論はねぇ」
「決まりね。とりあえず明日目が覚めたら、学校を休んで特級住宅街へ向かう。そこでマスターを捜しましょ」
「見つけちまえば、あとはグレートマジンガーで踏み潰せる。……まぁもっとも、最初からグレートで乗り込めれば、もっと楽に済むんだろうがな」
背もたれによりかかりながら、鉄也がぼやく。
『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は強力無比だが、巨大な分かかるコストも桁外れだ。
勇者の力をもってしても、長時間維持し続けることは難しい。無駄な使い方をせず、一撃必殺の覚悟で臨むべきだろう。
「いっそのこと令呪でも使って、魔力をひねり出すって手もあるけど」
「それは駄目だ。よほどのことがねぇ限り、令呪はフルで残しておけ」
風の提案を、しかし鉄也は否定した。
魔力の結晶体である令呪を、宝具発動の命令に使えば、その魔力を宝具に割り当てることが可能だ。
しかしその使い方はすべきではないと、マスターの主張に反論する。
「何で?」
「俺の切り札を使うためだ。そいつを呼び寄せ起動するには、令呪三つ分の魔力が要る。
その後の維持コストもかかるからな……こればっかりは、令呪を使わず、自前の魔力でってわけにはいかねぇんだよ」
だから令呪が必要なんだと、ライダーのサーヴァントが言った。
宝具『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は、それ単体で完成するものではない。
全ての力を解放した、正真正銘の最終形態は、もう一段先に存在する。
来たるべき時にそれを使うためには、令呪の使いどころを誤るわけにはいかないのだ。
「それって本当に必要なの? あのグレートだけでも、十分強いと思うんだけど」
「要る。皇の力を使うべき時は、いつか必ず訪れる」
「その根拠は?」
「プロの勘だ」
理論や理屈があるわけではない。
されど古今の英雄が集った、この聖杯戦争の舞台では、ただならぬ気配が渦巻いている。
誰を相手にした時かは知らないが、不滅の『偉大な勇者(グレートマジンガー)』ですら、揺るがされる場面が訪れるだろう。
その時には迷わず切り札を切る。
偉大な勇者をも超越した、偉大な皇を目覚めさせる。
いずれ来る死線の時を思い、剣鉄也は決意を固めた。
【D-3/一般住宅街・犬吠埼家/一日目 深夜】
【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]スマートフォン
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す
2.人と戦うことには若干の迷い。なるべくなら、サーヴァントのみを狙いたい
3.鉄也の切り札を使うためにも、令呪は温存しておく
[備考]
※D-3にある一軒家に暮らしています
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています
【ライダー(剣鉄也)@真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーヴァントという仕事を果たす
1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す
2.グレートマジンカイザー顕現のためにも、令呪は温存させる
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています
◆
夜の街を、風が駆ける。
ひゅんひゅんひゅんと音を立て、されど姿を見せることなく、風は闇夜を吹き抜ける。
家の屋根に降り立って、眼下を見下ろしたその風は、されど一人の少女だった。
茶色く長いツインテールに、まな板のように貧相な胸。
キーパーのマスター――悪忍・両備は、特級住宅街に侵入を果たし、周囲をぐるりと見渡していた。
《警備の数が多いっつっても、結局大したことなかったな》
《両備は忍よ。これくらい突破できないようじゃ、選抜メンバーの名がすたるわ》
霊体化したハービンジャーに、声を出さず念話で返した。
今日までに調べて分かったことだが、この魔術都市の警備の練度は、実はそれほど高くない。
隠密を本分とする両備であれば、問題なく潜り抜けられるレベルだ。
故に彼女は、即座に特級住宅街に乗り込み、噂の正体を確かめに来た。
両備ならば、警備を突破し、街に隠れている臆病者を、燻り出せると考えたからだ。
彼女も犬吠埼風同様、二つの噂を耳にして、それに応じ動いたマスターだったのである。
違いがあるとするならば、彼女にはたとえ夜の街でも、動き回れる技があった。それが対応を分けたのだった。
《とりあえず、ここまではオーケー……あとは隠れているマスターを、どうやって見つけ出すかってことよね》
恐らく敵のマスターは、両備達が用いている、忍結界のような術を使っているのだろう。
隔絶された結界に閉じこもれば、姿を一切見せることなく、敵から身を隠すことが可能だ。
(忌夢……じゃ、ないわよね)
そこまで考えると、どうしても、頭に浮かぶ顔があった。
夕方に喫茶店で鉢合わせた、眼鏡をかけた先輩の顔だ。
あの後念のため尾行してみたが、彼女の暮らしていた家は、特級住宅街にはなかった。
そもそも出歩いている以上、引きこもっていると思われる敵マスターとは、前提条件が合致しない。
ここに潜んでいるライバルは、忍結界を展開し、息を殺している忌夢ではないはずだ。そう自分に言い聞かせた。
《夕方のアイツが、そんなに気になるか》
そしてそんな気の迷いは、相方にも悟られてしまっていたらしい。
迷いを見せる両備に対し、ハービンジャーが語りかける。
《……関係ないわよ、あんな奴。両備は両備の戦いをする。それだけよ》
《ならいいけどよ》
サーヴァントの問いかけを否定し、両備は視線を走らせた。
周囲にそれらしい人影がないのを見ると、再びその場から跳躍し、次の家の屋根へと向かう。
屋根と屋根の間を飛び交い、夜の闇の奥深くへと、両備は分け入り突き進んでいった。
唐突に広まった噂と、見かけ倒しの脆い警備。これはゲームを仕組んだマスターが、こちらを催促している証拠だ。
ライバルのヒントは与えてやる。戦いの邪魔もしないでやる。だからさっさと会敵し、聖杯戦争を進めろと。
上等だ。ならばやってやろうじゃないか。
この手で聖杯を手に入れるためにも。両備の願いを果たすためにも。
《しっかしめんどくせぇなあ。小宇宙の一発でも叩き込んでやりゃあ、ビビッて飛び出してくるんじゃねえのか?》
《バカ! それじゃ隠密行動の意味がないじゃないの!》
猪武者のパートナーに、やや不安を覚えながらも、両備は奥へ奥へと進んでいった。
【F-3/特級住宅街/一日目 深夜】
【両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]スナイパーライフル
[道具]秘伝忍法書、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する
2.復讐を果たすこと、忌夢と戦うことに迷い
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※忌夢が本物であるかどうか、図りかねています
※忌夢の家が特級住宅街にはないことを調べています。そのことから、『姿の見えない戦闘音』の正体は、忌夢ではないと考えようとしています
【キーパー(ハービンジャー)@聖闘士星矢Ω】
[状態]健康
[装備]『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:両備について行き、共に戦う
1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する
2.両備の迷いに対して懸念
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
----
|BACK||NEXT|
|[[振り返るもの、向き合うべきもの]]|[[投下順>本編目次投下順]]|[[師弟再び]]|
|[[振り返るもの、向き合うべきもの]]|[[時系列順>本編目次時系列順]]|[[師弟再び]]|
|BACK|登場キャラ|NEXT|
|[[カーテン・コール]]|[[犬吠埼風]]|-|
|~|ライダー([[剣鉄也]])|-|
|~|[[両備]]|-|
|~|キーパー([[ハービンジャー]])|-|
**虎の穴を前にして ◆nig7QPL25k
魔術都市ユグドラシルには、二つの噂がある。
魔力を秘めた剣を使い、さながら伝承の吸血鬼のように、しもべを増やす通り魔の噂。
姿も形も見えないのに、戦いの爆音だけが聞こえる、謎の戦闘者の噂。
そのどちらもが、聖杯戦争本戦が始まる一日前に、突如として急速に広まったものだ。
故に勘のいいマスター達は、それが自分のライバルのことなのだと、言われるまでもなく理解していた。
◆
「俺達には二つの道がある。刀の通り魔を探すか、謎の音の主を探すかだ」
戦闘のプロ、剣鉄也。
鍛え上げられた肉体と、年齢不相応のいかつい顔を持つ、いかにも戦闘者という風情の男である。
今回の聖杯戦争では、ライダーのサーヴァントとして現界し、その豪腕を振るっていた。
愛機『偉大な勇者(グレートマジンガー)』を駆り、数多の敵と戦ってきた彼は、まさに聖杯戦争という舞台には、うってつけの役者と言えた。
「普通に考えたら、謎の音の方よね」
問題はその鉄也の現在地が、女子中学生の私室という、なんともらしくない場所であるということだ。
勉強机の椅子に無造作の腰掛け、ベッドに視線を向けた先では、犬吠埼風が腰を下ろして、難しい顔をして思考していた。
中学三年生でありながら、勇者という途方もない宿命を背負ったこの少女が、剣鉄也のマスターだった。
「それなりに広範囲をうろついてんだろうな。通り魔の方は証言がバラバラで、活動範囲が特定できねぇ」
「逆に音の方は、特級住宅街っていう風に、場所が限定されている」
議題はこれからの本戦で、敵マスターを探すに当たって、まず何を手がかりとするかだ。
既に噂というヒントは得ているが、それは二パターン存在している。
二兎を追えば一兎も得られない。狙いは一羽に絞らねばならない。
風が選んだ情報は、具体的に場所が決まっている、謎の戦闘音の方だった。
「仮にそっちを選ぶとして、もう一つ考えることがある」
「今から乗り込むかどうか、ってことね」
「何せ場所が場所だからな。お偉方の集まる場所とくりゃ、警備も厳重になってるはずだ」
しかし、そこで問題が生じる。
特級住宅街というのは、そもそも一流の魔術師や、要人が暮らしているエリアなのだ。
当然、そうした人間を守るために、警察の巡回なども厳しくなっている。
今からそこに繰り出したとして、馬鹿正直にうろついていては、即座に補導されてしまうだろう。
「それで、どうする」
故に選択する必要があった。
相手に対応する隙を与えず、リスクを承知で飛び込むか。
自身の安全を優先するため、警備の手薄な時間を待つか。
「……今夜は行かない。このまま寝て、朝を待つことにする」
犬吠埼風が選択したのは、後者だった。
「わざわざ特級住宅街に陣地を構えたってことは、そこが家に近いってことでしょ? そうじゃないんだったら、そんなとこ普通選ばないし」
「だな。警備の目も光ってる。騒がれる危険を冒すよりも、もっと目立たない場所に陣取るはずだ」
「それなら、一晩くらいほっといても、そう遠くまでは動かないはず」
だったら無理をすることなく、日中に動くべきだと風は言う。
「正論だな。臆病風に吹かれたってわけでもないらしい」
「そりゃまあ、迷ってないってわけでもないけどさ。でも聖杯が欲しいっていうのは、ホントのホントに思ってるから」
人を蹴落とさなければならないというのは、確かに心苦しいとは思う。
だがそれでも、たとえ刃を交えてでも、叶えたい願いは確かにあるのだ。
仲間達や他ならぬ自分が、喪ったものを取り戻す。そのためにこの戦いに臨み、勝ち抜いてみせるという覚悟がある。
それならば文句はないだろうと、風は鉄也に向かって言った。
「了解だ。それなら俺も異論はねぇ」
「決まりね。とりあえず明日目が覚めたら、学校を休んで特級住宅街へ向かう。そこでマスターを捜しましょ」
「見つけちまえば、あとはグレートマジンガーで踏み潰せる。……まぁもっとも、最初からグレートで乗り込めれば、もっと楽に済むんだろうがな」
背もたれによりかかりながら、鉄也がぼやく。
『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は強力無比だが、巨大な分かかるコストも桁外れだ。
勇者の力をもってしても、長時間維持し続けることは難しい。無駄な使い方をせず、一撃必殺の覚悟で臨むべきだろう。
「いっそのこと令呪でも使って、魔力をひねり出すって手もあるけど」
「それは駄目だ。よほどのことがねぇ限り、令呪はフルで残しておけ」
風の提案を、しかし鉄也は否定した。
魔力の結晶体である令呪を、宝具発動の命令に使えば、その魔力を宝具に割り当てることが可能だ。
しかしその使い方はすべきではないと、マスターの主張に反論する。
「何で?」
「俺の切り札を使うためだ。そいつを呼び寄せ起動するには、令呪三つ分の魔力が要る。
その後の維持コストもかかるからな……こればっかりは、令呪を使わず、自前の魔力でってわけにはいかねぇんだよ」
だから令呪が必要なんだと、ライダーのサーヴァントが言った。
宝具『偉大な勇者(グレートマジンガー)』は、それ単体で完成するものではない。
全ての力を解放した、正真正銘の最終形態は、もう一段先に存在する。
来たるべき時にそれを使うためには、令呪の使いどころを誤るわけにはいかないのだ。
「それって本当に必要なの? あのグレートだけでも、十分強いと思うんだけど」
「要る。皇の力を使うべき時は、いつか必ず訪れる」
「その根拠は?」
「プロの勘だ」
理論や理屈があるわけではない。
されど古今の英雄が集った、この聖杯戦争の舞台では、ただならぬ気配が渦巻いている。
誰を相手にした時かは知らないが、不滅の『偉大な勇者(グレートマジンガー)』ですら、揺るがされる場面が訪れるだろう。
その時には迷わず切り札を切る。
偉大な勇者をも超越した、偉大な皇を目覚めさせる。
いずれ来る死線の時を思い、剣鉄也は決意を固めた。
【D-3/一般住宅街・犬吠埼家/一日目 深夜】
【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]スマートフォン
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す
2.人と戦うことには若干の迷い。なるべくなら、サーヴァントのみを狙いたい
3.鉄也の切り札を使うためにも、令呪は温存しておく
[備考]
※D-3にある一軒家に暮らしています
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています
【ライダー(剣鉄也)@真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーヴァントという仕事を果たす
1.明朝に特級住宅街へ向かい、噂の主を探す
2.グレートマジンカイザー顕現のためにも、令呪は温存させる
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※『姿の見えない戦闘音』の正体が、特級住宅街に居を構えていると考えています
◆
夜の街を、風が駆ける。
ひゅんひゅんひゅんと音を立て、されど姿を見せることなく、風は闇夜を吹き抜ける。
家の屋根に降り立って、眼下を見下ろしたその風は、されど一人の少女だった。
茶色く長いツインテールに、まな板のように貧相な胸。
キーパーのマスター――悪忍・両備は、特級住宅街に侵入を果たし、周囲をぐるりと見渡していた。
《警備の数が多いっつっても、結局大したことなかったな》
《両備は忍よ。これくらい突破できないようじゃ、選抜メンバーの名がすたるわ》
霊体化したハービンジャーに、声を出さず念話で返した。
今日までに調べて分かったことだが、この魔術都市の警備の練度は、実はそれほど高くない。
隠密を本分とする両備であれば、問題なく潜り抜けられるレベルだ。
故に彼女は、即座に特級住宅街に乗り込み、噂の正体を確かめに来た。
両備ならば、警備を突破し、街に隠れている臆病者を、燻り出せると考えたからだ。
彼女も犬吠埼風同様、二つの噂を耳にして、それに応じ動いたマスターだったのである。
違いがあるとするならば、彼女にはたとえ夜の街でも、動き回れる技があった。それが対応を分けたのだった。
《とりあえず、ここまではオーケー……あとは隠れているマスターを、どうやって見つけ出すかってことよね》
恐らく敵のマスターは、両備達が用いている、忍結界のような術を使っているのだろう。
隔絶された結界に閉じこもれば、姿を一切見せることなく、敵から身を隠すことが可能だ。
(忌夢……じゃ、ないわよね)
そこまで考えると、どうしても、頭に浮かぶ顔があった。
夕方に喫茶店で鉢合わせた、眼鏡をかけた先輩の顔だ。
あの後念のため尾行してみたが、彼女の暮らしていた家は、特級住宅街にはなかった。
そもそも出歩いている以上、引きこもっていると思われる敵マスターとは、前提条件が合致しない。
ここに潜んでいるライバルは、忍結界を展開し、息を殺している忌夢ではないはずだ。そう自分に言い聞かせた。
《夕方のアイツが、そんなに気になるか》
そしてそんな気の迷いは、相方にも悟られてしまっていたらしい。
迷いを見せる両備に対し、ハービンジャーが語りかける。
《……関係ないわよ、あんな奴。両備は両備の戦いをする。それだけよ》
《ならいいけどよ》
サーヴァントの問いかけを否定し、両備は視線を走らせた。
周囲にそれらしい人影がないのを見ると、再びその場から跳躍し、次の家の屋根へと向かう。
屋根と屋根の間を飛び交い、夜の闇の奥深くへと、両備は分け入り突き進んでいった。
唐突に広まった噂と、見かけ倒しの脆い警備。これはゲームを仕組んだマスターが、こちらを催促している証拠だ。
ライバルのヒントは与えてやる。戦いの邪魔もしないでやる。だからさっさと会敵し、聖杯戦争を進めろと。
上等だ。ならばやってやろうじゃないか。
この手で聖杯を手に入れるためにも。両備の願いを果たすためにも。
《しっかしめんどくせぇなあ。小宇宙の一発でも叩き込んでやりゃあ、ビビッて飛び出してくるんじゃねえのか?》
《バカ! それじゃ隠密行動の意味がないじゃないの!》
猪武者のパートナーに、やや不安を覚えながらも、両備は奥へ奥へと進んでいった。
【F-3/特級住宅街/一日目 深夜】
【両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]スナイパーライフル
[道具]秘伝忍法書、財布
[所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる
1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する
2.復讐を果たすこと、忌夢と戦うことに迷い
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
※忌夢が本物であるかどうか、図りかねています
※忌夢の家が特級住宅街にはないことを調べています。そのことから、『姿の見えない戦闘音』の正体は、忌夢ではないと考えようとしています
【キーパー(ハービンジャー)@聖闘士星矢Ω】
[状態]健康
[装備]『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:両備について行き、共に戦う
1.このまま特級住宅街で噂の主を探し、交戦する
2.両備の迷いに対して懸念
[備考]
※『魔術礼装を持った通り魔(=鯨木かさね)』『姿の見えない戦闘音(=高町なのは)』の噂を聞きました
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