幼少期を過ごしたエメ村から遥々、巨大都市ルビーへと越してきた。
越してきたという表現は少し違うのだがそういうことにしている。
今は昔
当時エメ村では“蒸発”という病が流行りだしていた。
世界線から存在が消えてしまうという恐ろしい病だ。
生活が困難になったり、心に“闇”を抱え続けていると発症してしまうらしい。
流行病は恐ろしい。望んでいないことが次々と起こってしまう。
一人、また一人と発症していったのだ。
人が少なくなれば村が栄えることはない。
村はみるみる衰退していった。
ある日、世話になっていた宿主の魔法使いが小さく細い声で語りかけてきた。
『ここはもうだめだ、はやく・・・お行きなさい』と。
その時僕はどんな顔をしていたのだろうか、宿主の魔法使いはにっこり笑うと僕の頭を撫でた。
語りかけてきた言葉の意味を理解して ここに居たい という言葉が喉を通りかけた時
そこにはもう誰もいなかった。
これが村での最後の記憶だ。
意識が遠くなる。気がついた頃にはもう “ここ”に来ていたのだ。
この巨大都市に足を踏み入れてからどれくらいの時が経っだのだろう
宿も見つからないまま残酷に時間だけが過ぎていった。
晒族が多いこの街で下手に動いてはいけないと教わったっけ・・・
そんなことを考えていると足がすくんで前に進み出せなかったのだ。
ふと 声が耳を掠める
『――――・・・』
誰だろうか?いや誰でも良かった。その時は前に踏み出す理由が欲しかったのだ。
気が付けば声の方へ走り出していた 進み出せなかった なんてまるで嘘だったかのように。
声はこの町の倉庫辺りからだった。
やがて僕の目は一人の人物を捕らえた。
茜色の長い髪を靡かせキラキラと輝くそれはまるでスライスした唐辛子のような そんな人物。
間違いない 声の主だった。
唐辛子のようなこの人物との出会いが
この物語の始まりであることを この時は知る由もなかった。
進みだす理由なんてほかにいろいろあった
それなのに なぜあの時 あの声の方に走り出したのか今となっては分からない。
(走り出さなきゃ何も始まらないんだぜ?)
―――エピソード2へ続く―――――
最終更新:2015年07月17日 20:01