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異様な光景だということに気がつくまで時間はかからなかった。

声の主は一人で話していたのだ。
一人で話していた、というより誰もその人物が見えていないかのようにそそくさと通りすぎていくのだ。
言葉に言葉を返す者は疎か、近づく人間すらいなかったのだ。

好奇心だったと思う。近づいてみることを決意したのだ。
一歩また一歩と、近づく。
しかし声をかけようにもうまく言葉が出てこなかった。

ただ近づいて傍にいた。


来る日も来る日も。





毎日


毎日・・・・・・・。




エメ村からここへ来て寂しかったのかもしれない。
人の温もりが欲しかったのかもしれない。
一人で心細かったのかもしれない。


やがて己の本能がその人物、唐辛子に危険がないことを諭していた。
傍で眠り、傍で活動していた。



そんなある日、小さな変化が起きた。


僕の格好がみすぼらしかったのだろうか、物乞いに見えたのだろうか、
やがて唐辛子は一人で会話するのをやめ、こちらをみて言葉を放ったのだ。

『ええい・・・鬱陶しい・・・・エリーをあげるから離れなさい・・・・』


と。


そう言い放った唐辛子の顔は嬉しそうでもあり悲しそうでもあった。


今思えば、もうその頃から唐辛子は既に“闇”を抱えていたのかもしれない。

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最終更新:2015年07月17日 17:03