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その日、シンクは道に迷っていた。

ダアト教会の中で。


(此処に来てからもう2年になるのに…情けない。)


六神将(実際には鮮血のアッシュを除くから、正確には5人なのだが…)で、一旦集まってこれからの行動について話し合うらしい。

…らしいのだが、向かう途中でルーク達を見つけた為、いつも通る道を外したのが運の尽きであった。

もとより複雑なダアト教会…。

いとも簡単に迷ってしまい、現在に至るという訳だ。


(人に聞くか?
格好悪いけどこの際…)


と、考えているところで微かに空いている扉を見つけた。

中からは人のいる気配が伝わる。


(しょうがないか…)


と、腹を括ってその隙間から中を覗き込んだ。


「…誰か居る?」


とても迷っていて道を聞くとは思えない態度で聞く。

しかし、中からは返事が全く返ってこない。


「入るよ…?」


ガチャリと戸を開き、部屋の中に足を踏み入れる。


(…なんだ。)


その部屋はタトリン家だった。


(それなら出口はすぐそこじゃないか。)


折角腹まで括ったというのに…

中ではアニスがぐっすりと眠っていた。

道理で気配はあるのに返事がない筈だ。

そう思いながら、アニスしかいないと分かり
ー…他の仲間は分かり、ずかずかと大股で部屋に入った。

そしてベットに腰掛けた。


「全く、いい気なもんだよ」


シンクはぼそりと呟いた。


「こんな近くに”敵”がいるなんて知らないでさ。」


そっとアニスの首に手を掛けた。















…こんなに熟睡されてちゃ奇襲も何も出来ないじゃん…







その手を仮面の上に置き、音を立てないように外した。





「……ま…………さぃ…」


すると、アニスが寝言を言っているのが聞こえた。

シンクはその小さな声に耳を澄ませた。



「……ま…イ…オン様…なさい……ごめんなさい…」



そう言いつつ、アニスの頬を一筋の涙が流れ落ちた。

ぽろぽろと、滴を零す。

その声と、意味が聞き取れたと同時に、胸に何か蟠りを覚えた。


…何だか苛々してきた。







「……アニス…大丈夫です。
いいんですよ、アニス…」



ゆっくりと優しい声で語りかけた。

まるで泣き喚く赤子をあやす様に。

まるで駄々を捏ねる幼子を窘める様に…。


(こんなこと、何の慰めにもならないのに…)


頭を撫でながら、何度も囁きかける。


(なのに、こんな行動…矛盾してる…)


そう思い、自分自身に自嘲する。










「…!イオン様!?」



不意にアニスは飛び起きた。

しかし、周りには誰もいない…

アニスは大きく一つ、溜め息をついた。


「夢、かぁ…」


さっきまで見ていた夢は、ちゃんと覚えていた。

亡きイオンを想って…

そして、決して償いきれないとは分かっていても…許してもらえたユメ。

それを見た気がした。


しかし、実際はやはり夢だったと分かり、しょんぼりと落ち込んだ。










その時、シンクは戸の裏にいた。

どきまぎと…隠れて。



「何やってんだろ、俺らしくない…」



そう呟いたシンクの顔は、仮面の上からでも分かるほど真っ赤であった…。













「…やっぱり…むしがよさすぎるよね…」


ぽつりと零し、アニスはまた少しだけ泣いた

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最終更新:2007年01月28日 19:49