愛しの助手梓に振り向いてもらおうと昼夜を問わず寝食すら惜しんで梓専用惚れ薬の研究に没頭する唯博士
梓はそんな唯の事を心配するが実験の手伝いどころか資料すら見せてもらえず門前払い状態
そんな唯の態度に梓は距離感を感じ、元々才能にあふれた唯はもう梓の事を必要としなくなったのかと落ち込む
それでも何とか唯のサポートをしようと夜食を作って持っていくが
研究室に入ってきた梓に慌てた唯に部屋の外に押し出されて、その弾みで折角作った夜食を床に落としてしまう
唯は閉めた扉の向こう、そんな梓の惨状に気付かず再び研究に没頭する
涙を零しながら後片付けをして、そっと唯の部屋をのぞいて真剣に研究に打ち込む唯の横顔を見て
自分はもう邪魔にしかならない、例え傍にいられなくても唯が研究者として成功するためならと、唯の元を離れる事を決意する
幾つもの閃きにも恵まれ、ついにその翌朝梓専用惚れ薬を完成させ、嬉々として梓の部屋を訪れる唯だったが梓の姿は無かった
怪訝に思い、研究所中を探し回る唯だったが梓の姿を見つけることは出来ない
散々探し回った後、唯はポストに梓から唯宛ての手紙を見つける
そこには唯にはもう自分は必要ないからということと、唯の成功を祈るという旨の文がしたためられていた
恨み言の欠片すらそこには記されていなかったが、紙面にかすかに残る涙の跡に唯はようやく梓が今までどんな思いをしていたのかを知る
完成させたばかりの薬は唯の手をすり抜けて床に落ち、割れた容器から床に広がっていく
だけど唯にはもうそんなものはどうでも良かった
どうせ自分みたいな怠け者でだらしない博士なんて梓助手が好きになってくれるはずが無いと、それならと
ずるをしてしまえばいいと思って作り出した薬。そのずるをするために、好きになってほしかった相手に、何をしてしまったのかと
当然の結果だと唯は思う。自分は正しかったのだと、こんな自分が梓に好かれるわけが無い、好かれていいはずが無い
こんな薬なんて完成させていいはずが無い。だけど自分はそうしてしまった。それが、何よりも明確にその事を証明している
自分が梓のためにただひとつ出来たことは、こんなダメな博士から離る決意をさせたことだと
唯はそのまま研究室へと篭った
そのまま、一日二日と時間が過ぎていく
研究室の自分の椅子に腰掛けたまま、唯は何をするでもなく時間を過ごしていた
寝ることも食べることも忘れて、ただそこにあるだけの時間
そしてこのまま時間を過ごしていけばただここにあるだけのことも潰えてしまうのだろうと唯は予感していた
だけどそれでいいと思っていた。自分に価値があるとしたらきっとそれは梓と一緒にいたことだけだったから
それを失ってしまった今、ここにある存在に価値は無いと唯は思っていた
ならば、このまま消えてしまおう。ただせめて願えるのなら、あの子が幸せでいられますようにと
そう思った瞬間、懐かしい声が唯を揺さぶっていた。なにをやってるんですか、と何度もかけられた呆れた叱咤の声が唯の鼓膜を打つ
驚いて目を遣るとそこにはここを出て行ったはずの梓の姿。怒ってますという表情をした彼女は、唯が口を開く前にぺしっとその顔に何枚かの資料を放る
見るとそれは研究資料の一部だった。荷造りした際に紛れ込んでいたそれを見て、梓は唯が一体どんな研究をしているのか看過したということらしい
まったく何を一生懸命やってるかと思えば、と梓はがみがみと唯を叱りだす
怒られながらも、もう二度と来ることは無いと思っていたこの光景に、唯は喜びを隠すことが出来ない
だけど、と唯は疑問に思う。あんな事をしてしまったのに、そして自分が何をしていたのかも知られてしまったのに、どうして梓は自分のところに戻ってきてくれたのかと
研究のためですよ、と梓は答える。対象が自分だけなら意味が無いですが、汎用性を持たせられればこの研究は金になるからですと
シビアな答えに唯はがくっとなる。だけど、それでも梓が自分の元に戻ってきてくれたことはうれしく思う
その前にと梓を顧みなかった事を謝ろうとする唯だったが、それには及ばないと梓は言う
意味の無い研究をしてたことには少し怒りを覚えますけどね、と続けられて、その意味が分からず唯は戸惑い、そんな唯を見て梓は笑う
そんなことより研究です!科学者としての成功ですよ!特許をいっぱい取得して大金持ちです!とせっつく梓に
唯は再びまた梓との日常が、その幸せな時間が戻ってきた事をかみ締めて、もう二度と離さないという事を誓う
その夜、どうしてその研究に意味が無かったのかたっぷり教え込まれることになったのは、また別のお話
- とりあえず、タイトル長いな!? -- (柚愛) 2011-05-19 01:23:24
- うん。……うん? -- (名無しさん) 2013-11-11 00:46:51
- ん?・・・・・・んん? -- (唯ちゃんラブ) 2017-11-15 20:21:51
最終更新:2011年05月10日 22:49