今日の放課後は珍しくムギ先輩とふたりきりだ。
律先輩は澪先輩を迎えに行きがてらいちゃこら、唯は補習に行っている。
こんな機会はめったにないから、普段から気になってたことを思い切ってムギ先輩に尋ねてみた。
「…ムギ先輩はどうして私と唯先輩の仲をそんなに気にかけてくれるんですか? やっぱりその…女の子同士の恋が好き…なんですか?」
「そうねぇ…」
私の手元へ紅茶の注がれたティーカップを差し出したムギ先輩は、喉を潤すよう自分の紅茶へ口をつけ、
それから私の質問にアンサーをくれた。
「美しいものがふたつ合わさるのって、とても感動的じゃないかしら?古代から連綿と受け継がれて来た芸術のように」
「は、はぁ…」
「汚れを知らない無垢な花々が咲き乱れて春の薫風を世界に運ぶように!」
すみません…意味わかりません。
トレードマークの眉毛を吊り上げて熱弁するムギ先輩の瞳は、まるで銀河が生まれたみたいにキラキラしてるけど、そこまで感動する理由は凡人には理解できません。
「…って言えば良かったかしら?」
「へ?」
引きつりまくってる私の顔を見てクスクス笑うムギ先輩…え?これってまさか―
「私、茶化されちゃいました?」
「なんでも信じる素直な梓ちゃん、可愛いわよ」
よしよし―とペットをなだめるみたいに、愛でるみたいにムギ先輩は私の頭を撫でてくれます。
なんだかほんわかした気持ちになるのはともかく、つまり私は一杯食わされたわけで。
「ひ、人が悪いですよぉ、ムギ先輩~」
「ふふっ…ごめんね、梓ちゃんがあんまり可愛らしいからつい、ね」
そうかなぁ…。
ぺろっと舌を出して謝る茶目っ気たっぷりなムギ先輩も十分可愛いですけど…。
「でも、唯ちゃんが梓ちゃんに恋した気持ちも分かったわ。梓ちゃんの本当の愛らしさに気付いて、唯ちゃんは惹かれたのよね」
「そ、そう…ですかね?」
「だって梓ちゃんといるときの唯ちゃん、本当に幸せそうだもの。…梓ちゃんもそうでしょう?」
「私、も…?」
「唯ちゃんの本当の愛らしさに恋した…そうじゃないかな?」
「それは…」
そう、ムギ先輩の言う通りだ。私は唯のお日様みたいな温もりに惹かれて、唯も私の想いを理解してくれてる。
私たちはお互いに想いの全てを分かち合い、愛し合っている。
「それが答えよ。さっきの質問のね」
そう言ってからムギ先輩はまた私の頭を撫でてくれた。
「恋する友達の応援って特別なことじゃないもの。それが相思相愛なら尚更」
「ムギ先輩…」
「みんなの幸せが私の幸せ―なんて言ったら、ちょっと気障過ぎるかしら?」
照れくさそうに微笑むムギ先輩は、窓から差し込む光に照らされて、さながら女神のような神々しさを醸し出していた。


  • 紬様マジネ申やな… -- (名無しさん) 2011-07-31 15:50:58
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最終更新:2009年12月07日 04:21