唯「ごちそうさま! 満ぷくだー!」

225  名無しさん@お腹いっぱい。  [sage]  2010/01/17(日) 01:11:02 ID:kRdPS2rN

唯「ごちそうさま! 満ぷくだー!」
憂「ふふっ。じゃ、食器片付けるね」
台所に消える憂の背中を見届けて私も立ち上がる。いつもならこれからギー太を触るんだけど、もう目の前に試験が迫って、さすがの私も勉強モード。
唯「やるぞ~」 フンスッ。
憂「後でお夜食もって行くからね」
おほぅ。持つべきものは妹だね。

唯「はー……私ったら、集中力がなかなかでわかないんだよね」
机に向かうもなかなかはかどらなくて鉛筆が勝手に、どこかの王様の頭にちょんまげなんか足しちゃってるし……あ!
唯「アイス!」
私としたことが、食後のアイスを忘れるんなんて。飛ぶように一階に降りる。
唯「集中しすぎでクールダウンをしなきゃ……っ、憂!?」
イスに座った憂が、泣いてた。慌てて立ち上がりながら、手を切っちゃったとか言ってどこかに逃げようとするけど、すぐに捕まえる。
唯「憂!」
憂「なんでもない、なんでもないったら! 勉強、しなきゃ…」
唯「お姉ちゃんの顔を見なさい」
憂のウソはすぐにわかる。私と一緒で隠し事が下手だから。腕を引っ張って、無理やり抱きしめる。
唯「離さないからね」
憂の嗚咽が大きくなって震えてる。でも、頭を振って何も言わない。
だからわかる。原因は私なんだ、って。
唯「……がまんしてたんだよね」
憂の体が少し大きく跳ねた。
わかるよ。ずっと、側で見てきたんだもん。
小さい頃、夏祭りではぐれちゃった時、真っ赤な顔で鳥居の側にいる憂を見つけて名前を呼んだ途端、大声で泣き出しちゃって。小学生の時も、ケンカしちゃってしばらく話せなくなった時、仲直りしたくて『ゲームでもしよっか』って、声かけたら泣き出して…。
憂「……どうしたらいいか、わからない」
唯「うん?」
憂「お姉ちゃんがこの家を出て行ったら、一人分の夕飯買って、誰もいない真っ暗な家に帰ってきて、一人でお風呂、ヒック…入って、ひとりでごばん、だべて……誰にもおやずみ言えなぐっで……グシュ」
唯「……」
憂「おねえぢゃんを起こさなぐなっで、お姉ちゃんの、ヒグッ…部屋掃除しなくなっで………ごわぐて、怖くて」
憂「そうなるっで、ずっど前からわかっていだのに。……いつか来るって覚悟してたのに。だから……だがら…………」
唯「全部吐き出しちゃっていいよ」
憂「……………お姉ちゃんが………………落ちちゃえばいいって」
唯「うん」
憂「そしたら、もう一年、……いっじょにいられるっで…!」
泣き崩れる憂と一緒に座り込んだ。




226  名無しさん@お腹いっぱい。  [sage]  2010/01/17(日) 01:13:48 ID:kRdPS2rN

唯「はい、よく言えました」
憂「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
唯「何で謝るの?」
憂「私、自分のことしか考えてなくて……お姉ちゃんにずっと、ウソついて」
唯「ウソついても、自分勝手でも、悪口言われても、私は憂が大好きだよ。世界で一番大切で、大事で大好きで。だって、妹だもん」
泣きじゃくる憂の背中をずっとさすってあげました。

唯「憂」
憂「うん」
唯「試験どうなるかわからないけどさ……できるだけ憂と一緒にいられる時間、作るから」 
今晩は私の部屋のベッドで、二人で寝ることにしました。
唯「足りない分は電話して、メールしてお手紙書いて。それでも足りなかった連絡して。すぐに行くから」
布団の中で憂の手を取って、小指をからませる。指きりげんまん。
憂「……ありがとう、お姉ちゃん」

律「さ、行くか」
センター試験当日。私たちはバス停で待ち合わせをしました。
梓「こ、これ」
見送りに来てくれたあずにゃんが私たちに小さな袋を差し出す。
紬「合格守り?」
和「私の分まで…ありがとう」
唯「あずにゃーん……」
抱きしめようとしたら、澪ちゃんに先を越された。あずにゃん、顔真っ赤。
律「行ってくるな!」
扉が閉まってあずにゃんが見えなくなるまで、みんなずっとバス停を見つめてた。あずにゃんも見えなくなるまで見送ってくれた。お守りをぎゅっと握り締めてポケットに入れる。
唯「あっ…」
和「どうしたの?」
唯「ううん」
ポケットにいつの間にかもうひとつ。家の方角を探す。

お姉ちゃん、がんばるからね。

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最終更新:2010年01月18日 01:15
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