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大好き。

194  大好き。  [sage]  2010/02/05(金) 03:35:35 ID:Ip0AjOn5O

お姉ちゃんがふとした瞬間に私に向ける笑顔。
お姉ちゃんが私に抱きついた時に感じるぬくもり。
何気ない会話の中でお姉ちゃんが私にくれる言葉。

その全部が、私を幸せにしてくれる。私に頑張ろうって勇気をくれる。
だから私は、そんなお姉ちゃんが小さな頃から大好きだった。ずっと、いつまでも一緒にいたいって思ってた。
でも、年を重ねるに連れてそばにいる時間は減っていく。
学校とか友達とか、それぞれ持っている世界はどんどん広がって、いつしかお互いが知らないことも増えていって…
私たちの距離は、少しずつ、少しずつ、開いていった。
そしてそれと反比例するように、私のお姉ちゃんへの気持ちは大きくなっていく…

「…ただいま」

両親が出張の時は、家に帰っても誰も迎えてくれないのが当たり前になっていた。
前は、たまに先に帰ったお姉ちゃんが私を驚かすために物陰に隠れたりしてたっけ。
でも今は…お姉ちゃんは家ではない自分の居場所を見つけて、私ではない仲間に囲まれて、私の知らない表情を覗かせているんだ。

「…お姉ちゃん」

寂しい。恋しい。愛しい。
お姉ちゃんと、もっと一緒にいたい。

だって…だって私は、お姉ちゃんのことが――



195  大好き。  [sage]  2010/02/05(金) 03:36:41 ID:Ip0AjOn5O

「……グスッ」

潤む視界を元に戻そうと、私は目を拭った。
ダメだ、こんな気持ちになっちゃ…お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなんだから。私はお姉ちゃんにとって妹でしかないんだから。

でも…そうわかっているのに、たまに考えてしまう。
もし、私がお姉ちゃんに告白したらどうなるんだろう。お姉ちゃんは、私の気持ちに答えてくれるのかな。
私とお姉ちゃんは、恋人になれるのかな……

ガチャ

「ただいまーっ♪」
「……!!」

突然背後の扉が開いて、私はビクッと肩を震えさせる。
まるで、叱られるのを恐れて隠していたものを親に見つかった子供のように。

「どしたの、そんなにびっくりしちゃって?」
「な…なんでもないよ。おかえりなさいお姉ちゃん。今日は早かったんだね」
「うん、今日は早めに終わりになったんだ。ところで憂、こんなところで突っ立ってなにしてたの?着替えもまだみたいだけど」
「…ちょっと考え事。今夜のおかず何にしようかなって」
「ふーん…」

お姉ちゃんは怪訝そうに私を見つめる。
変なことを考えていたのを悟られまいと、必死で平静を保っていたけど…それはお姉ちゃんの目をごまかすには、あまりに下手すぎた。

「…憂?」



196  大好き。  [sage]  2010/02/05(金) 03:37:35 ID:Ip0AjOn5O

「な…なに?」
「なんで泣いてたの?」

お姉ちゃんは手を伸ばすと、私の目もとに残った涙を優しく拭った。その瞬間、私の胸はトクン、と跳ねる。
その心配そうな眼差しに、私の視線は引き込まれるような感覚に陥る。

ダ、ダメ…ドキドキしちゃ、ダメ……

「な…泣いてなんかないよ?ちょっとあくびしただけ」
「…うそだよ」
「うそなんかじゃ…」
「じゃあ、なんでそんな悲しそうなの?」
「え…」
「なんでそんな悲しそうな目、してるの?」
「……」

私が嬉しいとか悲しいとか、どんなに隠そうとしたって、お姉ちゃんにはお見通しなんだ。
だって、私もお姉ちゃんの気持ちが分かるから。今のお姉ちゃんは、心から私のことを心配してくれてる。

…ありがとう、お姉ちゃん。私はそんなあなたのこと……

「…大好き……」
「……!」

私はお姉ちゃんの体を抱きしめた。普段は抱きしめられる私が、お姉ちゃんを抱きしめる。
その体は、普段より小さく、華奢に感じられた。なのに、そのぬくもりはより強く感じられる。

「うい…?」

窮屈そうに声を出すお姉ちゃん。それでも、私は抱きしめる力を弱めない。いや、弱められないんだ。

…だって、怖いから。



197  大好き。  [sage]  2010/02/05(金) 03:39:43 ID:Ip0AjOn5O

今お姉ちゃんの体を離したら、もう二度とこのぬくもりを感じられなくなるかもしれない。
二度と抱きしめることができなくなるかもしれない。二度と抱きしめてもらえなくなるかもしれない。

そう考えると…すごく、怖い。

「…憂」
「…っ…ぅ……おね…ちゃ……」
「…私も憂のこと、大好きだよ」

そしてお姉ちゃんは私の背中に手を回して、ギュッと力を込めた。
二人の体が、強く重なりあう。窓から差す夕日で出来た私とお姉ちゃんの影が、一つになる。

…伝えよう。私の気持ちを。
お姉ちゃんは私のお姉ちゃん。だったらそれでいい。家族だろうと姉妹だろうと関係ない。
だって私は、一人の人間としての『平沢唯』が好きなんだから。

「…お姉ちゃん」
「…ん?」
「私…お姉ちゃんのことが好き。でもこれは、お姉ちゃんが私のことを好きって言うのとは違うと思うの」
「……」
「これは…誰かに恋した時に使う好きなの」
「…恋?」
「…うん。私、お姉ちゃんと恋愛がしたい。お姉ちゃんの一番大切な人になりたいの。だから……」
「……憂」

お姉ちゃんは私から体を離した。そして――

「私の好きも…憂と同じだよ」
「……!」

私に、唇を重ねた。



198  大好き。  [sage]  2010/02/05(金) 03:43:12 ID:Ip0AjOn5O

その口づけはほんの十数秒のことなのに、永遠にも感じられた。
その唇は甘くて柔らかくて、幸せで切なくて、そして嬉しくて哀しい…そんな味だ。

「…お姉ちゃん……」
「…私たちはね、もうとっくに恋してるんだよ」
「え…?」
「あの日、憂が生まれた日から。その時にはもう、私は憂に恋してたんだから」
「私も…?」
「そうだよ。覚えてなくたって、私たちはお互い一目惚れしてたんだよ」

お姉ちゃんの言葉に、私の心は満たされていく。私はただ気付いていないだけだったんだ。
私たちはもうとっくに、お互いの一番大切な人になってたってことに。

「だから…これからはちゃんと恋らしい恋しよう」
「恋らしい恋…?」
「うん。いっぱいキスして、デートして、手を繋いで…いっぱい好きって言い合うの」
「でも、皆は…」
「大丈夫だよ。皆優しいし、きっと認めてくれるよ。それにもし変だって言われても、ダメって言われても、私は憂と別れないよ。一生憂のこと、守るから」
「わ、私も…私も、一生お姉ちゃんのこと守るよ」
「ありがとう…♪」

お姉ちゃんは私を抱きしめた。そのぬくもりを感じながら、私は決めた。




199  大好き。  [sage]  2010/02/05(金) 03:45:31 ID:Ip0AjOn5O

「…お姉ちゃん」
「なに?」
「私…絶対お姉ちゃんを幸せにするよ。ずっとずっとそばにいて、お姉ちゃんがいつも笑ってられるようにする」
「…じゃあ、私も頑張って憂のこと幸せにするね」
「…うん…お願いします」
「…憂」
「…お姉ちゃん」

「「大好き。」」

私たちはもう一度キスをした。
今度のキスは、さっきよりも少し甘味が増したような…そんな気がした。


おしまい

連投失礼しました


205  大好き。(おまけ)  [sage]  2010/02/05(金) 23:20:24 ID:Ip0AjOn5O

その朝目を覚ますと、いつもより部屋に差し込む日の光が明るく感じられた。
それはただの気のせいかもしれない。だけど確かに言えるのは…今日は昨日に比べて、私を幸せにしてくれるものが増えたってこと。

ガチャ

「憂、もう起きた?」

部屋のドアを開いてパジャマ姿の上半身を覗かせるのは、私のお姉ちゃん。私にとって世界で一番大切な人。そして…私の恋人。

「うん、今起きたとこだよ。今日は早いんだね?」
「えへへ…早く憂の顔が見たかったからね。ここ、座ってもいい?」
「うん、いいよ」

お姉ちゃんはベッドの端に腰掛けると、チラリと私の方に視線を向けた。
私はその意味を理解して、少しドキドキしながらお姉ちゃんに顔を近づける。

「…好きだよ。お姉ちゃん」

そっと囁いて唇を重ねると、お姉ちゃんは幸せそうに微笑む。
初めて口づけを交わしてからまだ十数時間しか経っていないのに、私たちはもう何度もその味を味わっていた。とても甘い、幸せな味を。

「…ねぇ憂。今日さ、デートしない?」
「デート?うん…いいよ。どこ行くの?」
「うーん…映画見に行ったり、買い物に行ったり…とにかくデート!」
「あはは、楽しそうだね♪」

おしまい

最終更新:2010年02月08日 10:38
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