560 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:15:08 ID:sZzBLDuhO
最近、私はお姉ちゃんのことを意識しています。
どんな風に、というと…
「ういー」
「な、なに?」
「私のタンスにね、憂のパンツが間違って入って…」
「きゃああ!」バッ
「?」
「うぅ…/////」
またある時は…
「ういー」
「なに…きゃあああっ!?お、お、おね、おね…」
「私の下着どこか分かるー?」
「ま、前くらい隠してお姉ちゃんっ!」
という感じで…とにかく、お姉ちゃんのふとした行動にどぎまぎしてしまうのです。
まぁ、裸で出てこられたら誰だって…裸で…裸…お姉ちゃんの…裸…は…だか…
「…もう少しよく見とけばよかったかな…ってばか!な、なに考えてるんだろ私…」
夜中のリビングで一人悶々とする私。
お姉ちゃんのことを考えているうちに目が冴えてしまったから、眠くなるまでいようと思ったんだけど…もうかれこれ2時間はこうしてテーブルに突っ伏していた。
「部屋、戻ろっかな……」
「さっき何がばかって言ってたの?」
「そりゃ私に決まって…お姉ちゃん!?ど、どうして…」
「うん、ちょっとね…それよか憂、もう寝なきゃダメだよ?風邪ひいちゃうから」
「う…うん…」
「よーしいい子だね!それじゃおやすみー」
「あ…」
561 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:17:27 ID:sZzBLDuhO
このためだけに来てくれた…のかな。こんな私のこと、心配して…
「…お姉ちゃん」
お姉ちゃんのことを考えると、胸がドキドキする。どうしようもなく、苦しくなる。
でもそれだけじゃなくて、すごくあったかい気持ちにもなる。いとおしくて、幸せな…そんな気持ちになるんだ。
…あぁ、そうか。そうなんだ…私がこんな気持ちになるのは、お姉ちゃんのことを意識してしまうのは…
「好きだから…なんだ」
「何を?」
「きゃあっ!?あ、梓ちゃん!?」
「なんでそんな驚くの…」
「い、いや…あはは、ちょっと考え事してたから」
「ふうん…?それより今日は朝珍しくギリギリだったね。夜更かしでもしたの?」
「うん、まぁ…」
結局、昨日は部屋に戻ってからもあまり寝られなかった。
お姉ちゃんに対しての気持ちを自覚してしまって、より一層悶々としてしまったのだ。
私はお姉ちゃんのことが好き。でも単なる姉妹愛と呼ぶにはあまりに強いこの気持ち。
私は、お姉ちゃんをどうしたいのかな。お姉ちゃんと、どうなりたいのかな…
562 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:19:25 ID:sZzBLDuhO
「はぁ、なんか今日は授業に集中できなかった…ん?」
放課後、玄関で靴を履き替えていると、どこからかギターの音色が聞こえてきた。
これは…お姉ちゃんの演奏だ。
もうずっと聞いてるから、簡単にわかってしまう。でもなんだか、普段より元気がないような…
そんなことを考えていると、不意に音が止んだ。他に楽器の音は聞こえないから、お姉ちゃんは一人なんだろうか。
…なんだか、胸騒ぎがする。ただ演奏を中断してお菓子を食べ始めたのかもしれない。
おしゃべりをしているだけなのかもしれない。でも…
気付くと私は軽音部の部室の前にやってきていた。
なんて言って入ればいいんだろう。ううん、そんなのどうだっていい。この不安が杞憂で終わってくれれば、それでいい。
「失礼…します」カチャ
そっと扉を開くと、そこには――
「お姉ちゃん!?」
「……」
床にうつ伏せに倒れるお姉ちゃんの姿があった。一瞬体が強張って動かなかった。でも…
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!どうしたの!?大丈夫!?」
「ん……」
「お姉ちゃん…」
「んぁ…うい…?」
563 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:23:57 ID:sZzBLDuhO
両手に抱き起こしたお姉ちゃんは、真っ青な顔で私を見つめた。その目はとろんとして、焦点が定まっていない。
ただぼんやりと、私を見つめているだけだ。
「…わたし……あれ?…あ、ギー太は?」
「ギターなら大丈夫だよ、それより…」
「…うい……私なんかいいよ、早くお買いもの行きなよ…」
「そんなのいいんだよ…お姉ちゃん、どうして倒れてたの?」
「……」
「おね…」
「ぐー……」
「ね、寝ちゃった……」
「唯!?」
振り向くと、律さん、澪さん、そして梓ちゃんが驚いた様子で立ち尽くしていた。
あ、もしかしてあらぬ誤解を…ってこんな時に私は何を考えて…
「…憂ちゃん、唯のやつ倒れてたのか?」
「え…は、はい…」
「もう…早退しろって言ったのに…」
「早退…?」
「唯のやつ、体育の授業中に倒れたんだよ。寝不足で貧血になってるらしい」
「え…」
「朝急いでたらしくて昼飯のパンも買ってなくてさ…こいつ、朝からなんにも食べてないんだ」
「そんな…」
それって、それって全部私のせい…?まさかお姉ちゃん、昨日私がリビングにいた時、ずっと起きてたの…?
痺れを切らして私のところに来るまで、ずっと起きて待っててくれたの…?
564 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:28:24 ID:sZzBLDuhO
「お姉ちゃん…」
「ぐー…むにゅむにゅ……」
…私、何やってるんだろ…自分のことばかり考えてて、知らない間にお姉ちゃんを、好きな人を傷つけてた…
…やっぱり私ばかだよ。お姉ちゃん…
――――――――
「ん…あれ?ここどこ…?皆は…?」
「…お姉ちゃんの部屋だよ。さわ子先生がタクシーで連れてきてくれたの」
「ふぁ…そっか…じゃあもう平気だから、憂は早く…」
「…お姉ちゃん」
私はお姉ちゃんの手を握った。その手は、驚くくらいに冷たかった。
「…昨日、私に寝るように言うまで、ずっと起きてたんだよね?」
「えっ?お…起きてないよ。ちょっとトイレに行く時気付いただけで」
「嘘だよ。じゃなきゃ、寝不足になんてならないよ」
「……」
「お昼だって…私のところにくれば分けてあげたのに、なんで来てくれないの?」
「お、お昼くらい食べなくたって大丈夫だもん。ムギちゃんのお菓子食べれば元気出るし」
「大丈夫じゃなかったじゃない!」
「うっ…」
「…どうしてそんなことするの?すぐに来てくれたらよかったのに…」
「…それは……」
お姉ちゃんの表情に、ふと陰が落ちた。それはとても暗くて、悲しそうな表情だった。
565 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:30:14 ID:sZzBLDuhO
「…憂が、私のことうっとおしいって思ってるから」
「え…?」
思いがけない返事に、私の思考は停止する。うっとおしいって…私が、お姉ちゃんを?
「な、なに言ってるの?そんなこと…」
「…憂は最近、私と一緒にいても目も合わせてくれないし、話も続かない。抱きついたりしても、すぐ離れちゃうでしょ」
「それは…」
好きだから意識してるんだよ。なんて言えない。…言う勇気が、ない。
「だから…私と一緒にいたくないんじゃないかなって思ったの。
昨日だって今日だって…ホントはすぐ憂のとこ行きたかった。けど…思ったんだ」
「…?」
「憂には憂の悩みがあって、自分の生活があるんだよね。そこに私が踏み込んじゃったら、迷惑なんだよね」
「ち…ちがうよ!そんなの…」
「だから…憂が悩みを自分から言ってくれないなら、私が無理矢理聞いたりしちゃダメなんだよ。
家で大変な思いさせちゃうんだから、せめて学校でくらい私と会わないようにしてあげなきゃダメなんだよ…」
お姉ちゃんはうつ向いた。よく見ると、お姉ちゃんの布団にはまだ新しいシミがあった。
…お姉ちゃんはあれから朝までずっと、泣いてたんだ。そして今も。
566 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:32:43 ID:sZzBLDuhO
「だから…だから、これ以上うっとおしいって思われたくないから、嫌われたくないから…もう私は憂に…」
「…ちがうんだよ。お姉ちゃん」
私はお姉ちゃんの肩を抱き寄せた。
「私はお姉ちゃんのことうっとおしいなんて思ってないし、嫌いでもないよ」
「で…でも……」
「私はお姉ちゃんのそばにいたいし、もっとそばにいてほしい」
「それじゃ、なんで…」
「大好きだから…だから意識しちゃうんだよ」
「え…?」
「…お姉ちゃん、好き」
私はお姉ちゃんに唇を重ねた。勇気が出たとかそういうのじゃなく、直感でこの行動を選んでいた。
それが私の気持ちを伝える、一番の方法だと思ったから。
「……」
「…好き、だから…だから、泣いたりしないでいいよ」
「うい…」
「私ね、ずっと、お姉ちゃんのことをまっすぐに見るのが怖かったんだ。自分の気持ちに気付くのが怖かった。
でも…昨日やっと気付けたの。一人ぼっちの私のところにお姉ちゃんが来てくれた時、やっと好きって思えたんだよ。なんでか、わかる?」
「…わかんない」
「笑ってくれたからだよ」
「え…笑うって…?」
567 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:35:01 ID:sZzBLDuhO
「私に悩んでることとか迷ってることがある時にお姉ちゃんに相談すると、いつも優しく笑ってくれたんだ」
「私が…?」
「うん…だから思えたの。私、お姉ちゃんのこと好きでいていいんだって」
「……」
「だから…私はお姉ちゃんのことが好き。だから…つ、付き合ってください」
「…私…」
お姉ちゃんはうろたえたような表情を浮かべて私を見つめる。
「…ゆっくり考えてくれればいいよ。私はずっと待ってるから」
「そ、そうじゃないよ…答えは出てる…出てるけど…」
「……?」
「私…憂と付き合って、幸せにできるのかな」
「…どうかな」
「わっ…憂、苦しいよ」
「お姉ちゃん…私もう幸せだよ?お姉ちゃんと一緒にいるの、すごく幸せ。だから付き合いたいんだよ」
「…そうなの?」
「うん…お姉ちゃんは?私といて、幸せ?」
「うんっ!もちろんだよ」
「じゃあ…」
「…私も、憂と…付き合いたい。憂の一番大事な人になりたい。そんで…ずっと、一緒にいよう」
お姉ちゃんは私を強く抱き締めて、キスをした。
そのキスが持つ意味は、お姉ちゃんと私の恋人としてのスタート…だと、思う。
568 好きと嫌い [sage] 2010/03/05(金) 14:37:00 ID:sZzBLDuhO
「…うい」
「ん…?」
「ねむったい…」
「わっ…ひゃあっ!そ、そんなお姉ちゃん、いきなり押し倒すなんて…」
「ぐー…」
「ま、また寝ちゃった…あはは、よっぽど眠かったんだね…おやすみ、お姉ちゃん…♪」
「ういー…♪」
END
長くなってしまったけど、投下しました!
最終更新:2010年03月05日 14:48