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がらがらがら。

152  軽音部員♪  [sage]  2010/09/02(木) 23:55:35 ID:Gvw7RASkO [8/11]


 がらがらがら。
百回以上通った神社の鐘をまた鳴らし終えると唐突に梓ちゃんに声をかけられた。
「憂のそのマフラーおもしろい柄だね」

わたしのマフラー。
これは一昨年お姉ちゃんからもらった大事なためにはマフラー。
とっても暖かくて幸せな気持ちになる。
「えへへ、かわいいでしょ?」
「えっ?」
「お姉ちゃんからもらったんだ~」
「へー。いつもしてるよね」
「うん、暖かいんだよー」

真ん中に魚の不思議なデザイン。
まるでお姉ちゃんの部屋着みたいでかわいらしい。

「誕生日にでももらったの?」
「ううん、クリスマスの時に……あ!」
「ん?」
そういえばあの時梓ちゃんはいなかった。
教えてあげよう。

「これはね……」

~~~~~~~~

「みんなしてずるい!」
 梓ちゃんは膨れ面。
二年前は梓ちゃんと知り合う前だから仕方ないよね。
ちょっぴり自慢したい気分になるけれど、梓ちゃんがかわいそうだからやめた。



153  軽音部員♪  [sage]  2010/09/02(木) 23:57:01 ID:Gvw7RASkO [9/11]


「ただいま~」
「あっ!お、遅いよなにしてたの!」
「……なにしてるの?」

家に帰ると純ちゃんの慌てるような怒り声。
言いつつも背を向ける純ちゃんを梓ちゃんが向き直らせると、ほっぺにチョコがいっぱいついてた。

~~~~~~~~

「えーっ!?ずるいー!」
純ちゃんにも話してあげたら、また同じ反応。
肩を掴まれがくがく揺すられて目が回りそうになったところを梓ちゃんに止めてもらった。

「梓ちゃんも同じこと言ってたよ」
「なにっ?梓はいいでしょ!」
「なんで?」
「だって合宿とか合宿とか合宿とか!」
「それは別だよ」
「なにをー!?」

すっかり熱くなった純ちゃんが今度は梓ちゃんの肩に手をかけた。
ぐらぐら揺れる梓ちゃんを、今度はわたしが止めてあげた。



154  軽音部員♪  [sage]  2010/09/02(木) 23:58:23 ID:Gvw7RASkO [10/11]

──
────

「お姉ちゃーん、もう行くよ~」
「ま、まって~!」

今日はバレンタイン。
わたしの首にはお魚マフラー。
朝は寒いけれど、マフラーと毎年のこの行事のおかげで頬はほんのり暖かい。
お姉ちゃんに喜んでもらえればそれでいいのだけれどやっぱり緊張してしまう。
「よーし、行こ」
「うん」

お姉ちゃんの手にはわたしがあげた手袋。
ずっと使っていてくれることが嬉しくて、わたしの白い息はもっと白くなる。
「ねぇ憂、今日はなんの日か知ってるよね?」

突然わたしの頭を巡っていたことを聞かれ、びくりと体が反応したけれど、気づかれないようにして答えた。
「うん。バレンタインだよね」
「うん、憂はいつもわたしにチョコ作ってくれたよね」

わたしがお姉ちゃんに喜んでほしくて作ったチョコ。そんなふうに言ってもらえたら恥ずかしくなっちゃうよ。



155  軽音部員♪  [sage]  2010/09/02(木) 23:59:34 ID:Gvw7RASkO [11/11]


「お姉ちゃんだって毎年……」
「わたしのは、ほら、買ったものだし」
「わたしはとっても嬉しかったよ?」

ぎゅっと、手を握られた。手袋越しだから、手袋越しだけど伝わるお姉ちゃんの温もり。
「……えへへ、ちょっとまってね」

わたしの右手を包んでいたお姉ちゃんの片手が離れ、鞄をごそごそ漁る。
わたしはなにもわからずお姉ちゃんを見ていた。

「はい、これどうぞ」
「これは……?」
ぽん、とわたしの手に置かれたのは小さな四角の箱。
また手にはお姉ちゃんの手が添えられて、ゆっくり箱を包みこむ。

「今年はわたしも作ってみたんだ。手伝ってもらったんだけどね」
少し照れながら、それを隠すように微笑むお姉ちゃん。
わたしの顔は、とっても熱い。

「じゃあ行こっか」
「う、うん」
お姉ちゃんに手をとられ思い出したように歩き出す。チョコはきちんと鞄にしまい、またお姉ちゃんの隣に並ぶ。

首には、お姉ちゃんがくれたマフラー。
とってもとっても暖かいけど、やっぱり一番は、お姉ちゃん。
こんなに心が暖かくなるのはお姉ちゃんだけなんだ。

帰ったら、わたしも渡さなきゃ。
今年はみんなで作ったから、もっとおいしくなってるかな。

お姉ちゃん、喜んでくれるかな。



   おしまい。

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最終更新:2010年09月03日 21:30
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