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THE ONLY PLACE(ここしかない)

809  名無しさん@お腹いっぱい。  [sage]  2010/09/15(水) 01:01:33 ID:pAGkFfHN0 [2/9]

―――最初は大丈夫だと思ってた。

でも、思ったより私はキミに依存し過ぎていて。

離れてから解る、本当のキミの温かさ。

キミに会いたいよ―――



「THE ONLY PLACE(ここしかない)」



お姉ちゃんが第一志望の大学に合格した。

付け加えるのならば、軽音楽部の3年生全員が合格した。
本当ならお姉ちゃん達の合格を喜ぶべきなのだろうけど、私は素直に喜べなかった。
何故なら、来春からお姉ちゃんが一人暮らしをすると言っていたから。

理由は至極自然な事で、高校と比べて自宅から大学まで倍近くの距離があるため、
大学付近の貸アパートに居住を移すことになった。
自宅からアパートは意外と距離があるため、これからは気軽に会えなくなってしまう。

今までの人生は姉と共に歩んできたような物だったので、正直ショックだった。

姉がこの家から巣立って、一人暮らしをする―――
それは素晴らしい事だし、私も出来る限り応援しようとも思う。

けれど。

「嬉しい事なんだろうけど…… なんだか寂しいよ……」

巣立つ日は、いつかきっと来る。
今回は、ついにその日が来ただけの事だ。
頭では解っているのに、どうやら本心では納得出来ていないらしい。


「お姉ちゃんは、寂しくないのかな―――」


――――――――――――――――――――――――――――――――――*




810  名無しさん@お腹いっぱい。  [sage]  2010/09/15(水) 01:04:42 ID:pAGkFfHN0 [3/9]

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「私、一人暮らしするよ。やっぱり大学が遠いと不便だしね」

私が最初に考えを打ち明けたのは、憂だった。
その話を聞いた憂は一瞬、とても寂しそうな表情を見せた。
けれど、それもすぐ笑顔に変わり、
「そっか。……大変だろうけど、頑張って! お姉ちゃん!」
そう応援してくれた。

実は大学が遠いというのは建前で、本当の理由は別にある。

私は遠いから出て行くと言っているが、
正直、大学生になってもこの家に居たかった。
この家は本当に居心地が良いし、なにより憂が居る。
憂は私の大切な妹だし、出来る事ならずっと一緒に居たい。

……けれど、憂には来年に受験が控えているから。
私がこの家に居たら、きっと憂の邪魔になるだろう。
自分自身だけではなく、私の世話も焼くとなると勉強する時間も減るのは明らかだ。

恐らく憂なら「お姉ちゃん、そんなの大丈夫だよ~」と言ってくれると思う。
けれど、それに甘えるのは憂の為にならないし、きっと私の為にもならない。

「(それに…… 今は憂が家事をしてくれているけど、憂が誰かと結婚したら?)」

寂しい事だけど、憂が誰かと結婚したのなら、私とは離れて住む事になる。
その時、家事をするのは憂ではなく、他でもない私自身なのだ。
それなら、この機会に少し勉強しておこう―――

そう自分自身に言い聞かせ、私はこの家を出て行く決心をしたのであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――*


―――そして、ついに引越しの日がやってきた。

「お姉ちゃん…… 何か有ったら、すぐに電話してね?」
「うん、わかった」
玄関で、少し潤んだ瞳で私を見つめる憂。
ちょっと強引だったかなと思ったけど、これも大切な憂の未来の為。

「お姉ちゃん」
「うん?」
「ううん。なんでも、ないよ」
「そっか……」
そう言って、優しく憂を抱きしめる。
その温かさを忘れないように、そして私の体温も憂の記憶に残るように。

「本当に今までありがとう、憂」
「お姉ちゃん―――」
「じゃあ、私はもう行くね」

そう言って私は一歩ずつ進む。
憂が何か言いたそうな顔をしていたけど、私は敢えて振り向かない。
だって、振り向いたら―――きっと、憂の優しさに甘えてしまうから。

―――本当にありがとうね、憂。

――――――――――――――――――――――――――――――――――*




812  名無しさん@お腹いっぱい。  [sage]  2010/09/15(水) 01:07:23 ID:pAGkFfHN0 [4/9]

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―――半年後。

「……はぁ」

私は盛大に溜息をついた。

憂と離れて暮らして以来、何か物足りない日々が続いている。
学校では友達も出来たし、またりっちゃん達と軽音楽部に入って放課後も楽しい。
流石に憂には劣るけど、食事や洗濯などは自分でも出来る様になった。

何も問題は無い筈なのに…… この空白感はなんだろう―――

「はぁ……」

本日二度目となる大きな溜息を吐く。
こういう時には、いつも隣に憂が居てくれた。
それだけで、私は勇気や安らぎを貰う事が出来た。

「どうしちゃったんだろう、私……」
最近は気が付くと、いつも憂の事ばかりを考えてしまう。

『今、何をしているのかな』『風邪は引いてないかな』『憂は寂しくないのかな』……

私は、とても寂しいよ。
憂と離れる事が、こんなに辛い事だとは思わなかったよ。


憂、会いたいよ。

キミがいないと、何も出来ないよ。

キミのご飯が、食べたいよ。

キミの声が、聴きたいよ。

キミの笑顔が見れれば、それだけでいいんだよ。

何時まででも、一緒に居たい。

この気持ちを、伝えたいよ。


憂―――  私のこの気持ち、伝わるかな。

他の誰でもない、唯一の存在であるキミに。

今、本当の私の気持ちを聞いてほしいよ―――

伝えたい、私の本当の気持ちを。

昨日でなく、明日でもなく。今の私の本当の気持ちを伝えたい―――

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813  名無しさん@お腹いっぱい。  [sage]  2010/09/15(水) 01:08:29 ID:pAGkFfHN0 [5/9]

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「お姉ちゃん、ご飯出来たよー」
と言っても、勿論返事が返ってくる筈もなく。
長年染み込んだ癖は、半年経っても中々抜けないもので。
返事が返ってくる代わりに、返ってくるのは虚しさだけ。

「もう、独りでご飯を食べるのは辛いよ……」
お姉ちゃんが出て行ってから、早くも半年。
すぐに慣れるつもりだったのだけど、予想以上に私はお姉ちゃんに依存していたらしい。

「お姉ちゃん、最近話してないなぁ」
かれこれ1ヶ月以上、お姉ちゃんと話していない。
それなのに、考える事はお姉ちゃんの事ばかり。

「ひょっとして、本当に恋人が出来ちゃったりして」
そうだとしたら、もう私の事なんてどうでもいいのかな―――
お姉ちゃんにとって、もう私は要らない存在なのかな―――

「お姉ちゃんの傍に居たい…… お姉ちゃんの声を聞きたい……」
どうか、お願いします。
私を傍に置いてあげて下さい。
私には、あなたしか居ないんです。
私にとって、あなたは私の全てなんです。

「―――あっ」
また涙がポロリと頬を伝う。
ダメだなぁ、私。
お姉ちゃんが出て行ったあの日から、もう泣かないって決めたのに。
それでも、なかなか零れ落ちる涙は止まらなくて。

少し感傷的になっていると、家の電話が鳴り響いた。

「いけない…… 電話に出なきゃ」

涙を拭いて一呼吸置くと、私は電話の受話器を取った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――*




814  名無しさん@お腹いっぱい。  [sage]  2010/09/15(水) 01:10:01 ID:pAGkFfHN0 [6/9]

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私はすぐに憂へ電話を掛けた。
この気持ちを伝えたいから。知って欲しいから。

『はい、平沢です』
憂が出てくれた。
そういえば、憂と話すのも久しぶりだ。
最近は色々と忙しかったから、あまりメールや電話もしていなかった。

そして、憂の声を聞いた途端に先程まであった空白感が薄れていくのが解った。
(ああ、やっぱり私は憂の事が好きなんだな―――)
そんな事を考えていると。

「もしもし? どちら様でしょうか……?」
いけない、久しぶりの声に名前を言うのを忘れていた。

「ごめんごめん。 私だよ、憂ー」
「お、お姉ちゃんっ?!」
なんだか吃驚しているみたいだ。
確かに最近は殆ど話していなかったし、色々と話したい事も沢山ある。

「本当は憂の受験が終わるまで、私から電話はしないつもりだったんだけど…… ごめんね、掛けちゃった」
「ううん、そんなの気にしないで。 私も、お姉ちゃんと話したかったんだ」

―――憂も私と話したかったんだ。
なんだか気持ちが通じ合ってるみたいで、暖かい感情が沸いてくる。

「そっか。憂と電話するのも久しぶりだもんね」
「―――実はね。私の事なんか、もうお姉ちゃんにとって、どうでも良くなったのかな、なんて思ってたの」
「えっ?」
「大学生になって、お姉ちゃんに恋人が出来たのかと思って…… それで、私の事なんか……」
「憂……」

そんな事、ある訳ない。
もし恋人が出来たとしても、私が憂の事を「どうでも良い」なんて思うはずが無い。
それに、私は憂の事が―――

「心配させてごめんね、憂。本当は憂に受験勉強に専念して貰いたかったんだ」
「お姉ちゃん……」
「私が居ると、勉強する時間も短くなるでしょう? それにギー太の練習で集中出来ないだろうし」
「そうだったんだ――― 良かった、お姉ちゃんに嫌われてなくて……」
「私が憂を嫌いになる訳ないよ」
例え憂が私に愛想を尽かしても、私は憂を愛する事をやめない。

「それにね。本当は出て行きたくなかったし、ずっと憂の傍に居たかった」
私はずっと言いたかった言葉を口にする。
一度溢れ出した言葉は、止まる事を知らない。

「私も…… お姉ちゃんの傍に居たいよ……」
「―――それでね、憂。もし憂が良かったらさ」

届け、私の気持ち。
伝われ、私のこの想い。

「憂の受験が終わって、一緒の大学に行けるようになったら……」

また一緒に、今度は憂と二人きりで暮らしたいな―――

――――――――――――――――――――――――――――――――――*




815  名無しさん@お腹いっぱい。  [sage]  2010/09/15(水) 01:10:43 ID:pAGkFfHN0 [7/9]

――――――――――――――――――――――――――――――――――*


―――三月末。

今は、私は愛する人と共に暮らしている。
一年と言う短いようで長い時間を乗り越えて、彼女の隣に戻る事が出来た。
この一年と言う時間は、私達姉妹の絆を更に深め、本当の気持ちを確認させてくれた。

私はあなたを愛し、あなたは私を愛してくれる。
今まで気付かなかった事が、どれだけ大切だったな事だったか……

やっぱり私の居場所は此処しかない―――
あなたの隣に居る事が、私にとって一番の幸せだよ―――


『THE ONLY PLACE(ここしかない)』 終わり

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  • このSSが全てを語ってくれた…
    来年の姉妹は必ずこうなる -- (名無しさん) 2011-01-25 08:07:23
  • アニメ3期がもし放映されるなら是非とも放映してほしい内容ですね。 -- (ルーラーシップ) 2010-12-23 03:32:20
  • 姉妹なのに両想いとはもうどんな兄弟姉妹よりも絆は強いんだなー。 -- (ブエナビスタ) 2010-10-29 03:07:55
  • イイハナシダナー -- (ロストインザフォグ) 2010-10-14 12:56:26

最終更新:2010年09月15日 22:14
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