267 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]
「ハロウィンってなにするんだっけ」
お姉ちゃんがそう聞いてきました。
「うんと…かぼちゃをくり抜いたお化け作って」
「ああ、あれね!ジャック!ジャック!」
「ジャック・オー・ランタンっていうんだよね、確か」
「らんたん?」
「うん…」
なぜか、お姉ちゃんはランタンという言葉に反応しました。
「…カスタネットに合いそうだねっ」
「??」
「あ、ねえ…かぼちゃのお菓子作るんでしょー?」
確かに、本場では作るみたい。
「…憂…作らないの?」
…っ、指をくわえて聞いてくるお姉ちゃんがかわいすぎます。
「ごめんね、お姉ちゃん……実はかぼちゃのお菓子は用意してないんだ」
「えー…憂のけちー」
うう…申し訳ない気持ちでいっぱいです。
「あ、でもお姉ちゃん…かぼちゃじゃなくて普通のお菓子はあるよ」
「市販のはあまり食べたくないよー……私は憂が作ったのが、食べたいの」
…っ!お、お姉ちゃん……。
「…ごめんね、お姉ちゃん。来月のお姉ちゃんの誕生日…私がケーキ、作るね」
「本当に!?わーい♪」
喜んでくれるお姉ちゃんが、本当に大好きです!
2010/10/31(日) 19:40:45 ID:hQkFi3ZtO [6/13]
268 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]
「ムギちゃんのケーキも美味しいんだけど…憂のハンドメイドがやっぱり好きなんだよ?」
「…ありがと、お姉ちゃん…」
そう、お礼を言うと、お姉ちゃんは凄く小さい声で言いました。
「…ちなみに憂は一番好きなんだよ?」
「え…?」
「…っ、な、なんでもないよー、なんでもないよー。あ、ねえねえ、和ちゃんちいかない?」
急に和ちゃんの家に行こうと誘うお姉ちゃん。…なんで?
「ほ、ほらー…トリックなんとかって言えば、お菓子もらえちゃうんだよね?」
「トリックオアトリート?」
「そう、それ!」
*
と、いうわけで和ちゃんちに行くことになりました。
ですが…
「お姉ちゃん、こんな格好で出歩くのは恥ずかしいよぉ…」
「ええー?だって、仮装しなきゃつまんないよー」
私はお化けの格好で、白い布を頭から被ってます。あまり前がよく見えません。
お姉ちゃんは魔法使いの格好です。尖った帽子と、簡易マントです。
「ほらー、憂、いこっ」
「お、お姉ちゃん…あんまり早く行かないで」
視界が悪く、歩きにくいです。
「…憂、手引いてあげるよ」
「え…」
2010/10/31(日) 19:43:50 ID:hQkFi3ZtO [7/13]
269 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]
そういうと、お姉ちゃんは私の手をとりました。
お姉ちゃんの手は、少し熱くて…。
ゆっくりと私たちは歩き出しました。
お姉ちゃんが口数が少ないのが不思議でした。
お姉ちゃんの手から伝わる熱さが、私をあらぬことを考えさせます。
…お姉ちゃん、私と…手を繋ぎたくて私にこんな格好させたのかな…。
自惚れだよそんなの、そう自分に言い聞かせました。
そう、自惚れ。だから…視界の悪い私に見えた、お姉ちゃんの赤い頬は…
まるで、恋する女の子のような赤い頬は、見間違えなのだと思い込みました。
*
ドアチャイムを押して、和ちゃんが出るのを待ちます。
「せーの、だからね」
「う、うん…」
しばらくしてドアが開きました。
そこには和ちゃんがいました。
「「せーの…トリックオア、トリート!」」
「……あんたち…はぁ」
和ちゃんは呆れつつ、でも嬉しそうに私たちを家に入れてくれました。
「憂まで何やってるの?」
「お、お姉ちゃんの誘いで…つい」
「あー、憂ってば直ぐ私だけのせいにしてー……って、和ちゃん一人?」
和ちゃんちの居間にいる私たち。
「うん、そうよ。弟と妹は今親と買い物に行ってるの」
2010/10/31(日) 19:45:51 ID:hQkFi3ZtO [8/13]
270 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]
「会いたかったのにー…ね、憂ー」
「うん…残念だね」
「どうしよう、ハロウィンらしいお菓子ないわよ」
「あ…じゃあ、イタズラしちゃうよ?和ちゃん」
お姉ちゃんが、少しにやにやしながら和ちゃんに忍び寄ります。
「い、イタズラって…」
「憂!くすぐるよ!」
「え…う、うん!」
「ちょ、唯、憂っ…や、やめなさっ…」
和ちゃんごめんね…お姉ちゃん命令は絶対なんだ。
「くふふっ、いや、やめっ…、ふふふ、こらぁ…っ」
和ちゃんもまんざらじゃなさそうでした。
*
それからしばらくして、私とお姉ちゃんは和ちゃんちを出ました。
ただくすぐりに人の家に行くなんて、本当にメイワクな客です。
でも和ちゃんは、いやと言いながらも嬉しそうでした。
今は帰路、辺りは暗くなる途中です。
「寒いね、憂」
「そうだね…」
「ね……手…」
「…?」
お姉ちゃんが何を行っているのかよくわからなくて…。
「だ、か、らー…憂ってば鈍い?」
「に、鈍い?」
お姉ちゃんは少しずつ、頬が染まっていきます。
「……手…つなごっ」
差し出された手は、心なしか震えていた。
きっと、寒いのだと思った。
そういうことに、しておいた。
2010/10/31(日) 19:48:15 ID:hQkFi3ZtO [9/13]
271 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]
「……うん、お姉ちゃん」
行き帰り、手を繋いで歩いた私とお姉ちゃん。
和ちゃんちは決して遠くなくて、むしろ近いくらいで。
わずかな距離を歩くだけなのに、どうしてこんなにも長く感じるのだろう。
どうして、こんなに…ドキドキしちゃうのだろう。
「……夕飯、どうする?お姉ちゃん」
「んー…憂が作ってくれれば何でもいいんだけど…」
「お姉ちゃんー?そういう返事が一番困るんだよ?」
「ごめんごめん…何か出前とる?」
「あ、いいね…たまには」
「ピザ、とか!」
「うん、いいよー」
「わーい♪」
ハロウィンの夜だし、少しばかり豪華でもいいよね。
*
「あ……ね、憂…」
家について、お姉ちゃんとどのピザをとろうか一緒に眺めていたときのこと。
「…トリック、オア、トリート…」
「うん…お菓子あるよ、お姉ちゃん」
私が買っておいた、市販のお菓子を取りに行こうとしたら…。
「だめー!」
「え?え?」
私はお姉ちゃんに無理やり、座らされました。
「…いますぐ、お菓子…出して」
「そんなの…無理だよ、お姉ちゃんってば」
「…ふーん?じゃあ、イタズラしちゃうよー?」
2010/10/31(日) 19:50:15 ID:hQkFi3ZtO [10/13]
273 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]
お姉ちゃんはさっき和ちゃんにしたように私ににじり寄ります。
「…お姉ちゃん…いいよ…」
「え?」
「お姉ちゃんにくすぐられちゃうの、私…好きだもん」
久しく、あまりお姉ちゃんにくすぐりってされていなくて…つい、自分から言ってしまいました。
「…憂…私ね……本当は、イタズラ…くすぐりなんかじゃなくて…」
お姉ちゃんの目は、なぜか少し潤んでいました。
ひどく切なそうな表情で…。
「本当はね……ずっと、ね…」
「お、お姉ちゃん…?」
鈍い私は、これを理解出来ないはずです。
私には、これから起こることはわからない。
…そういうことに、しておきたかったのに。
私の心臓はマラソンの時みたいに暴れていて、恥ずかしくて、目を会わせられなくて…。
いつからだったか。
私だって、同じ気持ちを持っていた。
でも、いつしか知らないふりをしていた。
知らないふりでごまかせると信じてた。
なのに、なのに…お姉ちゃんは今日は積極的で。
何度だって、私に手を差し伸べてきていて。
「…憂…お姉ちゃんね…、実は…」
「…お、お姉ちゃん…」
私が次の言葉を待っていた、そのときだった。
2010/10/31(日) 19:52:35 ID:hQkFi3ZtO [11/13]
274 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]
――――ピンポーン――――
「「え…?」」
いきなりの来客。
私は慌てて、誰かを確かめた。
「宅配便みたい…」
私がお姉ちゃんにそういうと。
「…な、なんでこんなタイミングでー…」
凄くしょんぼりしていた。
…ああ、そうだったんだ…。お姉ちゃん、凄く勇気出してたんだ。
知らないふりばっかりしていた私なんかと違って凄く勇気出していたんだ。
私は宅配便を受け取りに行きました。
少しだけ、宅配のお兄さんを恨んじゃいました。
お姉ちゃんの勇気を邪魔しちゃうんだから。
受け取った物を抱えて、私は階段をあがりながら考えた。
もう、知らんぷりなんてやめるんだ。
もう…迷わないで、一歩踏み出そう。
今までずっと、姉妹だから、とか…そんなことばかり思ってた。
でも、でも…今日は、私。
居間に入って、私はピザのメニューとにらめっこしていたお姉ちゃんに抱き付いた。
「ひゃっ…?う、憂…?」
「ねぇ……お姉ちゃん…」
ゆっくりと、落ち着いて、耳元で。
トリック、オア、トリート。
私はそう…お姉ちゃんに言った。
おしまい
2010/10/31(日) 19:54:59 ID:hQkFi3ZtO [12/13]
感想をどうぞ
- 続きが見たいぃぃ -- (名無しさん) 2013-03-20 10:58:25
- 鼻血が、 -- (名無しさん) 2010-11-08 16:36:10
- 誰か助けて!ハロウィンネタの唯憂に萌え殺されちゃう! -- (唯憂は正義) 2010-11-03 05:34:01
- 宅配空気読めよ!!!! -- (唯憂は素晴らしいとは思わんかね?) 2010-11-02 18:31:22
- 保管庫さん、いつもありがとう
保管してくれて嬉しいです -- (名無しさん) 2010-11-01 22:43:30
最終更新:2010年11月01日 17:24