WeplayCyu,

 5           WeplayCyu, [sage]

「うーい」

お昼休み。
三人で集まって、お弁当箱を開けようとしていたところにお姉ちゃんの声が聞こえました。

「こっちおいで」

振り向くと、扉の向こうから私を呼ぶお姉ちゃんの姿。
柔らかい笑顔を向けていました。

隣の二人を見ると、やれやれといった表情。
「今日もか」なんて苦笑いしながら、私の背中を押してきます。
そんな二人に謝ってから、私は廊下で待つお姉ちゃんの元へとかけていきました。

「おねえちゃ…わっ」

また?という私の声は待たずに、お姉ちゃんは私の手を強く握りました。

「こっち」

わかってるよね、と言わんばかりに私と目を一瞬だけ合わせてちらほらと生徒が通る廊下を進んでいきます。
私は手を引かれるがままにお姉ちゃんの後を付いていきます。

「ちょっと…早いよ」

少しだけ抵抗を示す言葉とは裏腹に、私の胸は熱くなっていました。
ああ、これからどうなるのかな。

お姉ちゃんもそんな私の心境を知ってか知らずか、振り向いて笑顔をみせてくれました。

                          2010/11/06(土) 22:01:37 ID:40JFEWqY0 [2/6]

  6           軽音部員♪ [sage]

ずかずかと廊下の真ん中を早足で歩いて、お姉ちゃんはトイレの扉を開けました。
一旦周りにだれもいないことを確認してから、私を中に引き込みます。

「はやく」

そう言うお姉ちゃんの声は、どこか私を責めるような、どこか私を誘うような、そんな声でした。
言われるがままに従う私は、お姉ちゃんよりもいけない子なのかも知れません。

「まって…」

でもそんな期待をお姉ちゃんの前で出すのは恥ずかしくて、ついついそんな心にもないことを言ってしまいました。
お姉ちゃんは分かってくれてるから大丈夫、なんて図々しい期待を寄せながら。

「はーやーく」

少し意地悪な顔で私に呼びかけるお姉ちゃんに私は敵う術を知りません。

誰もいない二階のトイレ。
その一番奥の扉を開けて、柔らかい手でお姉ちゃんは私を引き入れました。

「まって、誰かいるかも…」

私はまだ素直になれなくて、そんな事をお姉ちゃんに言いました。
首を傾げて揺れるお姉ちゃんの髪からは、シャンプーのいい香りがします。

「誰もいないから憂はそんなこと言うんでしょ?」

当たり前のことのように言うお姉ちゃんは、私の心を更に奪います。

                          2010/11/06(土) 22:03:10 ID:40JFEWqY0 [3/6]

  7           軽音部員♪ [sage]

「今日は大丈夫だった?」

ゆっくりと私の頬を両手で包み、お姉ちゃんは私に尋ねます。

お姉ちゃんが言うのは、今日は誰かに何もされなかったかどうかです。
私だけをそんなに心配してくれることが嬉しくて、どこか誇らしくもあります。


きっかけはひと月前。
学校の生徒がいつも温厚だった教師に乱暴されて、全校集会が開かれた次の日から。
ニュースではその先生は「生徒が可愛かったから」なんて理由を言っていたみたいです。

それを見たお姉ちゃんは、翌日からお昼休みのたびに私を呼ぶようになりました。
「憂はかわいいから」なんて、そんなことを真顔で言うのです。

でもやっぱり私のお姉ちゃんだから。
お姉ちゃんの言うことなら絶対だから、私は断らずにその手を取るのです。


「なにもないよ」

そう言うとお姉ちゃんは、ほっとしたように表情を崩して、いつもみんなの前で見せる笑顔になりました。

「よかったぁ」

まだ離されない頬の手に、私は熱くなっているのが気づかれていないか少し気になってしまいます。
鼻の頭にかかるお姉ちゃんの深く吐いた息が、ここがトイレであることを私に思い出させました。

「そんなに心配しなくても…むっ」

言いかけた私の唇をお姉ちゃんは人差し指のお腹で抑えました。
ようやく離れた右の手のひらは、今度は私の頬を冷やして私に名残惜しさを感じさせます。
私が言うたびにそうするお姉ちゃんとのこの行為は、ある意味お互いの気持ちを確認する作業にもなっていました。

「だーめ」

「……うん」

そのままお姉ちゃんは黙ってしまって、それでも私を見つめるその目に私は恥ずかしくて目を逸らしました。

これからされることに、拒否するわけじゃないよ、と顔は背けないままに。

「憂……」

そして、私の唇に、熱い感触が伝わりました。

私はお姉ちゃんの名前を呼び返したい衝動に駆られます。

でも、このあとでも構いません。
そうして、私はまだ開けたままだった両目をゆっくりと閉じました。

                          2010/11/06(土) 22:04:40 ID:40JFEWqY0 [4/6]

  8           軽音部員♪ [sage]

どちらともつかない吐息が、雰囲気に合わないトイレの個室に響きます。
唇だけでその全てを伝えるように、お姉ちゃんは私の唇に押し付けます。

「ん……はぁ…っ」

また頬に手を添えるお姉ちゃんにだんだんと押されて、背中が壁に当たりました。
でも、そんなことはお構いなしにお姉ちゃんはそれを続けます。

「…ぷは、…憂?」

やっとお姉ちゃんが唇を離してくれたときには、私はもう全身の力が抜けきっていました。
少し心配そうに眉を曲げるお姉ちゃんを安心させたくて、大丈夫だよ、と笑顔を作りました。

「えへへ」

そうするとお姉ちゃんも笑顔になって、声は出さないように二人で笑いました。


――どうしてキスしたの?
初めて口づけを交わしたひと月前、私はお姉ちゃんに尋ねました。

私はただ純粋に気になって、そのままお姉ちゃんを見つめました。
するとお姉ちゃんは、

「憂のことが好きだから」

そんな台詞を惜しげもなく言ってみせたのです。

きっとその言葉は本当なのでしょう。
だってお姉ちゃんが言う言葉なのですから。

あの赤の他人の生徒をきっかけに、私達はお互いがお互いだけを見る関係になったのです。

                          2010/11/06(土) 22:06:11 ID:40JFEWqY0 [5/6]

  9           軽音部員♪ [sage]

「ずっと前から、こういうことしたかったんだよ?」

お姉ちゃんはまたそう言いました。

自分でも嫌になるくらい恥ずかしがり屋な私は、その言葉に返す返事がなくて
せめて伝わるなら、ともう一度お姉ちゃんの唇に触れました。

ゆっくりと目を閉じてくれたあの日から、私達は毎日それを続けるようになりました。

学校がある日は、お昼休みにお姉ちゃんが。
休みの日には、お昼のあとに私から。

友達の二人には、お姉ちゃんと会ってくるとだけ伝えて。

言わずとも伝わるそんな関係が幸せでしょうがなくて、私はどうにかこの想いが伝わるようにまたキスをするのです。

「お姉ちゃん」

そしてやっと呼べたその人に、あの日のように再びキスをしました。

「大好き」

天井から差し込む太陽の光が、二人だけの空間を照らしていました。


 おしまい。

                          2010/11/06(土) 22:07:42 ID:40JFEWqY0 [6/6]

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  • これは…なんか大人な雰囲気ですなぁ -- (名無しさん) 2011-01-22 00:49:11
  • 俺も大好きです。唯憂は素晴らしい! -- (唯憂は素晴らしいとは思わんかね?) 2010-11-07 10:30:20
  • 独占欲の強い唯も大好きです -- (唯憂は正義) 2010-11-07 00:08:52

最終更新:2010年11月06日 23:36
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