43 軽音部員♪ [sage]
42
即興で書いた
☆★☆
む?キッチンの方からおいしそうな香りがするぞ?
「憂~何作ってるの~?」
「ケーキだよー!」
「おおう、ケーキ!食べたい食べたい!」
「ダメだよ~これ梓ちゃんの誕生日のお祝いだよ~」
「えー、私の分は~?」
「ごめんね今日は無いの」
「ちぇ~」
憂の作るお菓子を最初に食べるのは、いつも私だった。
どんなお菓子を作るときでも、最初に持って来てくれたのに。
「憂~、私よりあずにゃんの方が大事なの?」
「今日はお誕生日だからねー」
「そっか...」
いつもなら「お姉ちゃんが一番だよ!」って言ってくれるのに。
何だかあずにゃんのことがうらやましい。
うらやましいだけじゃない。なんだろう、この気持ち。
憂は私より、あずにゃんの方が...?
そんなこと考えてる自分が悲しくなった。
せっかくあずにゃんの誕生日なのに。
あずにゃんも私の大切な後輩なのに。
なのに。私って。
「憂~」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「ちょっと疲れちゃったから、みんな来るまで部屋で休んでるね」
「大丈夫?」
「うん...ちょっと疲れただけだから」
重くなってしまった体をベッドに横たえる。
自分の卑しさ、腹黒さが嫌になった。
2010/11/11(木) 22:03:50 ID:mu/mTJzY0 [1/2]
44 軽音部員♪ [sage]
☆★☆
誕生会も終わり、みんな疲れて眠ってしまった。
私はあずにゃんの幸せそうな寝顔を見つめる。
かわいい後輩、大切な後輩。
なのに、私はなんであんなこと思っちゃったんだろ...。
私はそっと窓を開けて、ベランダに出た。
見上げる夜空は雲が覆っていて、更に気持ちが重くなってしまう。
「はあ...」
そんな時、
「...お姉ちゃん?」
憂が窓を開けて、私の側にやって来た。
「寒くない?」
「うん...大丈夫...」
「あのね、私」
「うん?どうしたの?」
首を傾げる憂。
「私ね、自分のことが嫌なの」
「どうして?」
「あずにゃんのこと、うらやましくて、悲しくて、
いつも憂の一番は私だったのに、今日はそうじゃなくて、
そんな気持ちになっちゃう自分が...嫌なの」
うつむく私。憂の顔なんか見られない。
こんな顔見られたくないよ。
その時、私は肩に温もりが添えられるのを感じた。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん!」
「憂...」
「お姉ちゃんの誕生日ももうじきだね」
「うん...」
「また一つお姉ちゃんが先に行っちゃうのは寂しいけど、でも、
同じ歳の梓ちゃんがまた歳を重ねて、自分もお姉ちゃんの後を追いかけてることに気付いたんだよ」
「憂...?」
「だから、焼き餅妬かないで欲しいな…だって私はお姉ちゃんと姉妹なんだから」
そう言って微笑む憂。
「そっか...憂は私の妹だもんね」
「うん!だから他の誰より、お姉ちゃんのこと大事に思ってるよ!」
その言葉を聞いて、私は何だか温かい気持ちになった。
「憂...」
「なあに?」
「ありがとう!」
私は憂を、思いっきり抱きしめた。
「あったかいね~」
「ね~。あ、お姉ちゃん!」
「何?」
「流れ星!」
空を見上げると、いつの間にか雲は消え去り、プラネタリウムのような満天の星空。
「わ、また流れた!」
「すごい!すごいね!」
どちらとも無くつぶやいて、そして二人で願い事を掛ける。
『これからも、ずっと二人で幸せでいられますように』
おしまい
2010/11/11(木) 22:05:27 ID:mu/mTJzY0 [2/2]
感想をどうぞ
最終更新:2010年11月17日 18:14