192 軽音部員♪ [sage]
今日は私の誕生日。
ケーキもプレゼントもいらないから、その代わりひとつだけ。
ただ、一緒にいたい。
それなのに…
「じゃあお姉ちゃん、気をつけていってらっしゃい。楽しんできてね」
と笑顔で送り出される私。
私はこれからりっちゃんの家で開催される誕生日パーティに出席しなければならない。
いや、それはとても楽しみなんだけど。
憂も来る?って聞いたら、軽音部のみなさんだけで楽しんできてって断られてしまった。
なんでなんだろ、つまんないなぁ…
みんなには本当に悪いんだけど、早く家に帰れたらいいなぁとか考えながら私はりっちゃんの家へと向かっていた。
2010/12/01(水) 06:47:34 ID:k2Khmd.AO [2/6]
193 軽音部員♪ [sage]
はずなのに…
「おじゃましましたぁー」
とりっちゃんの家を出る頃には外はもう真っ暗で。
私に残された今日はもうあと数時間しかなかった。
外の空気に触れた瞬間、私は思い出す。
今日は…今日の本当の目的は…
「…あぁーっ!」
叫びながら、走りだす。
みんなが持たせてくれたいろんな袋ががさがさと音を立てる。
…ごめんね、みんな。ちょっとぐちゃぐちゃになっちゃうかもしれない…
正直もうそれに構っている余裕がなくて、息を切らしながらただひたすら走った。
私にはもう一秒だって無駄に使う時間はなかった。
「う、ういっ!」
2010/12/01(水) 06:52:39 ID:k2Khmd.AO [3/6]
195 軽音部員♪ [sage]
リビングに着いても、やっぱり離してくれません。
「…お姉ちゃん。ケーキ、食べる?」
「いらない…いっぱい食べた」
「ゼリーとプリンもあるよ?」
「おなか…いっぱい」
「アイスはどうかな?」
「いらないってばぁ…」
最後の切り札、アイスさえもいらないなんて。
お姉ちゃんはかなり、まいっているみたいです。
「わかった。ごめんね、お姉ちゃん」
2010/12/01(水) 07:07:40 ID:k2Khmd.AO [4/6]
196 軽音部員♪ [sage]
胸の前でかたく握られている腕をほどいて、体の向きを入れ替えました。
あごを肩に乗せられ、ぐりぐりと押されます。
「うー…もっと早く帰ってくるんだった…」
「でも楽しかったでしょ?」
「それはっ…そうだけどっ」
きっと時間が経つのも忘れるくらい楽しかったんだと思います。
だって、あんなに急いで帰ってこなきゃいけなかったんだもんね。
「じゃあ、やっぱり私は行かなくてよかったなぁ」
「えぇっ、来たらよかったのにー」
「だってお姉ちゃんきっと、こんな感じになっちゃうでしょ。皆さんに悪いよー」
「でも私がよくないぃー…」
「だめだよ、祝ってもらえる気持ちは大切にしなきゃ」
「大切にしてきたよぉ…」
2010/12/01(水) 07:21:15 ID:k2Khmd.AO [5/6]
197 軽音部員♪ [sage]
泣きつくお姉ちゃんに、まだ言っていなかった言葉を。
「そうだね。お姉ちゃん、おかえり」
「ただいまぁ、うい」
お姉ちゃんの背中をゆっくり撫でていると、ふぅとため息が聞こえました。
よかった、落ち着いてくれたかな。
「…それだけ?」
「なにが?」
「えぇー…」
不服そうな声がします。
あぁ、まだ言ってないことがあったね。
「お姉ちゃん、お誕生日おめでとう」
「ありがとぉー、えへへ」
2010/12/01(水) 07:32:31 ID:k2Khmd.AO [6/6]
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最終更新:2010年12月01日 19:19