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12月26日

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12月26日───
その日が私の誕生日。

クリスマスで街中が賑わう…その次の日に私は産まれた。
本当は25日に産まれるはずだったらしい。しかしその予定がずれて26日の午前3時頃に産まれたのだそうだ。
周りの人には「惜しかったね~」などと言われるけれど、私はこの誕生日が気に入っている。



唯「ほらっ和ちゃん、はやくはやくっ!」
和「な、なに?どうしたの唯?というかそもそもどうしてここに…」

冬休みの時期に入った学校。
休みではあるけれど生徒会の仕事のことで私はここに来ていた。
用事も済ませ、さあ帰ろうとしたその時…突然唯が生徒会室に飛び込んできて強引に私を引っ張り出したのだ。

唯「今日は和ちゃんの誕生日パーティーするんだよー!主役がいなくちゃ始まらないじゃん!」
和「えっ…ああ、そういえばそうだったわね。…まさか、ここで?」
唯「もっちろん!ムギちゃんがでっかいケーキ持ってきてくれてるし、なんとサプライズライブまであるんだよ~!」
和「唯、それって言ったらサプライズじゃなくなると思うのだけど…」
唯「ハッ!しまった…じゃ、じゃあ予告ライブってことで!」

グイグイと勢いよく私を引っ張りながらそう答える唯。相変わらずマイペースな子ね。

和「はぁ…サプライズの段取りなら情報漏洩には注意するのよ。ましてや本人にいきなりバラすなんて最悪じゃない」
唯「うぅ…手厳しいですな、和ちゃん…」

呆れ気味に注意する。
とはいえ、友達に誕生日を祝われて嫌な人間などいない。
私は内心ちょっと舞い上がりながらも平静を装い唯に引っ張られ続ける。
そうこうしているうちに、誕生日パーティ会場…音楽室に到着した。

唯「さー着いた!みなさま~!主賓のご登場で~す!拍手でお迎えくださ~いっ!」

                          2010/12/26(日) 04:50:01 ID:WmJLg+Wz0 [2/9]

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──

パーティが終わって、唯と途中まで一緒に帰宅。
外は今までより一層寒さを増して、吐く息も白くなって見える。
隣を歩く唯は寒そうに、いつかのクリスマスに憂から貰った手袋(ブークロちゃんという名前らしい)を頬に擦らせていた。

和「今日は楽しかったわ、ありがと」
唯「えへへ~。…でも和ちゃん、本当のお楽しみはこれからだよ?」
和「えっ?まだ何かあるの?」
唯「二次会だよ二次会!いま憂が料理作ってくれてるから!」
和「ああ…なるほど、憂がいなかったのはそういうわけね。…って、二次会?」
和「それなら憂もさっきのパーティーに呼んで一緒にしたら良かったんじゃない?」
唯「和ちゃ~ん、わかってないなぁ。さっきのは部活の皆として…次はわたし達姉妹としての感謝の気持ちだよぉ」

ああ、そういえばそうだった。
今までは私の誕生日といえば毎年平沢家でお祝いをしてもらっていた。
だけど、ここまで盛大にパーティーをしてもらったから今年はこれで終わりだろうと思っていたんだ。

和「わざわざ二度に分けなくてもいいのに、もう…」
唯「いいからいいから~。さて二次会場に到着だよっ、ただいま~うい~」

勢いよくドアが開けられ、暖かい空気が入ってくる。
その空気を纏うように憂がパタパタと出迎えにやってきた。

憂「お姉ちゃんおかえり~!和ちゃん、いらっしゃ~い♪」
和「お邪魔するわね、憂」
憂「遠慮せずに上がって上がって~。ちょうどお料理できるとこだったんだよー」
唯「おお、さすがうい~。タイミングばっちりだよ!よしよし♪」
憂「えへへ~…♪」

唯が嬉しそうに憂の頭を撫で、憂も嬉しそうに反応する。
この二人は本当に仲がいい。幼稚園の頃から唯と憂はあんな感じだ。
学年が違って憂が部活にも入っていない事から学校ではその様子を見ることは少ないが、
私しかいない時はまるで恋人同士のように二人はイチャついている。
…ということは完全に二人っきりの時は一体どうなっているのか想像もつかないわね…

                          2010/12/26(日) 04:52:00 ID:WmJLg+Wz0 [3/9]

772           名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]

唯憂「和ちゃん、お誕生日おめでと~っ!!」
和「うん。ありがと」

クラッカーが鳴って少し火薬の臭いが漂うが、テーブルに並べられた豪勢な料理の良い香りにかき消される。
更には部室で貰ったものにサイズこそ劣るものの見事なデコレーションが施されたケーキが用意されていた。
なんでも憂の手作りらしい。チョコで「ハッピーバースデー 和ちゃん」と書かれている。憂…本当に万能ね。
憂の年末年始の仕事量の異常な多さが本気で心配になったりもする。
唯の仕事といえばケーキの上に苺を乗せる作業だけだそうだ。ケーキの苺には人一倍の拘りがあるらしいけれど…

和「憂、これとっても美味しいわ」
憂「ほんと!?良かったぁ。」
和「憂は料理上手ね」
憂「えへへ…」
唯「そして私はそんな料理上手な憂の姉です!」
憂「うんうん、お姉ちゃんのおかげだよ♪」
唯「えっへん!」

それはちょっと違うんじゃ…と突っ込もうとしたけれど、それはあながち間違ってもいない。
憂は唯がいるからこそこんなに料理が上手くなったんだものね。

唯「あっ、うい~、ほっぺにクリーム付いてるよ~………ぺろっ♪」
憂「ひゃ!?もう…そういうお姉ちゃんだってクリームが…えいっ♪」

…なんか私がいること忘れてないかしら?
唯のほうはもう意図的にクリーム付けちゃってたし。
二人の行為がエスカレートしていきそうだったので、一応咳払いをしてみる。

唯憂「ハッ…!!」

ようやく私の存在に気付いてくれた…あれ、これって私の誕生日会なのよね?

                          2010/12/26(日) 04:53:16 ID:WmJLg+Wz0 [4/9]

773           名無しさん@お腹いっぱい。 [sage]

唯「よ、よぉし憂…あれをやるよっ」
憂「う、うんお姉ちゃん。あれだよねっ」
唯「さぁぁ~て…宴もたけなわではございますがぁ…」

なんか取り繕い始めてる。やっぱり面白いわねこの二人。

唯「ここでワタクシ共、平沢唯と平沢憂からお祝いの…コントとコメントでーす!」
憂「でーす!」

そしてなんか始まったわ。コメントはともかくコントは必要なのかしら…

唯「ど~も~!唯で~す!」
憂「う、憂で~す!」
唯「二人合わせて…」
唯憂「ゆいういで~す♪」
和「わ、わぁー。ぱちぱち」

唯は平気そうだけど憂はかなり恥ずかしそうね。

憂「いや~、今日12月26日は和ちゃんの誕生日だそうやん、お姉はんー」

別に無理して関西弁になろうとしてくてもいいと思うのだけれど…

唯「あ~あ~、今年日本一になった千葉ロッテがスローガンに掲げた『和』…」
憂「そりゃ『わ』だよやーっ!」

スパーンとハリセンの痛快な音が響く。こういうツッコミはいかに良い音が鳴るかが勝負だと何処かで聞いた気がする。

唯「あいてーっ!うい…強すぎ…」
憂「あぁっ!?お姉ちゃんごめんなさい!ケガしてない…?」

そんな感じでグダグダなコントが10分ほど続いた。

                          2010/12/26(日) 04:54:23 ID:WmJLg+Wz0 [5/9]

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唯「どうも~!ありがとうございました~!」
憂「ました~…!」
和「ひ、ひゅーひゅー。」

この企画の発案は唯なのだろう。憂がもう耳まで真っ赤だ。
どうしようもなく恥ずかしかったのが表情から見て取れる。唯も鬼ね。

憂「さ、さて続いてはお祝いのコメントです!」

切り替えるように憂が進行する。
きっとこっちが憂の発案で、おそらく唯は
「じゃあついでにコントもやっちゃおうよ!なんか似てるし!」的な発想で強引に組み込んだのだろう。

唯「和ちゃん、いつも変わらずにわたし達を見守ってくれてありがとう。」
憂「和ちゃんは私達にとってもう一人のお母さんのような存在です。」
唯「かけがえのない、大切な存在です。」
憂「これからもどうか、私達を見守っていてください。」
唯憂「大好きな和ちゃん、お誕生日おめでとう!」

和「唯…憂…こちらこそ、本当にありがとう」

私が12月26日という誕生日を気に入っている理由。
それは、「私らしい日」だから。
12月25日は皆に愛される華やかで素敵な日…だけど、それは1年に1度しかないからこそ。
翌日の26日という何でもない普通の日が25日を支えることで、人々はまた来年のクリスマスを待ちわびることができる。
それが、どことなく私という人間の在り方に似ている気がするのだ。

放課後ティータイムは勿論、この二人に対しても。
平沢唯と平沢憂…似ているようで全く似ていない、似ていないようでよく似ている姉妹。
そんな不思議な魅力を持った二人が仲良くしているのを見て、何故だか応援したい気持ちになってしまう。
私は唯と憂のように本当に愛する人がまだ見つからないけれど…今は、この子達が幸せならそれでいいかな。
…こんなだから「お母さんみたい」って言われちゃうのかしらね。

唯「むにゃ…和ちゃん~zzz」
憂「んん…和ちゃ~ん…zzz」

二次会のスケジュールは一通り終わったらしく、唯と憂は身を寄せ合ってソファに座りながら夢の世界へ旅立っている。

和「もう…風邪ひくわよ」

毛布を二人にそっとかけてあげる。私も今日は疲れてしまった。

和「今日くらいお邪魔しても…いいわよね」

                          2010/12/26(日) 04:55:06 ID:WmJLg+Wz0 [6/9]

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────翌朝。

唯「びっくりしたぁ…まさか起きたらソファの上で、しかも憂と和ちゃんに挟まれているとは…」
憂「毛布、和ちゃんがかけてくれたんだよね。ありがとう!」
和「ま、まぁね…」

今思うと相当恥ずかしいことをしてしまった。
唯と憂の様子を見ていてそれが当たり前だと思っていたのか、それとも気持ちが舞い上がりすぎていたのか…
慣れない場所で眠ったせいか体がビシビシと痛い。

唯「でも良かったよぉ~。『朝起きたら和ちゃんがいない!?』的な展開じゃなくて…」
和「当たり前じゃない。出て行く理由が無いわ」
唯「もし和ちゃんがいなかったら寂しさのあまり憂に慰めてもらうとこだったよぉ…」
憂「そっそれはどういう…」
唯「ん~?普通によしよしして貰うだけだけど~?なにを想像したのかなぁ~?むふふ」
憂「っ!!もう、お姉ちゃんったら!知らない!」
和「朝から絶好調ね、二人とも」
唯「えへへ~、お恥ずかしい~」
憂「お恥ずかしいならやめてよぉ!…そんなことよりっ、和ちゃん朝ごはん食べていく?」

普通なら頂いていく場面だけど、昨日あれだけして貰ったのにこれ以上は…

和「んー…遠慮しとくわ。そろそろ帰らないと」
憂「えっ、もう?」
唯「ぶーぶー、もっとゆっくりしていきなよ~」
和「それに私が特別扱いを受ける日はもう終わったのだし…また来年お願いするわね」
唯「むぅー…仕方ないなぁ」
憂「ざんねん…また来てね、和ちゃん」
和「ええ、また大晦日にでも会いましょう」

玄関から出ると、一気に凍えるような冷たい空気が入り込んでくる。
でも…心は温かいわね。

唯「またねー!和ちゃーん!」
憂「体に気をつけてねー!」


どうせまた数日後に会うというのに私が見えなくなるまで律儀に見送ってくれる二人。
私は少し振り向きながら片手を振って応える。

本当にありがとう。唯、憂。
私も、あなた達が大好きよ。



おわり

                          2010/12/26(日) 04:57:05 ID:WmJLg+Wz0 [7/9]

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  • 何か泣けるじゃねぇか…
    ほんとにこんな事有ったと思う -- (名無しさん) 2011-02-28 16:04:57
  • これは良い!
    なんか新鮮だ… -- (名無しさん) 2011-01-23 02:44:59

最終更新:2010年12月26日 22:18
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