「あっ…」

567           軽音部員♪ [sage]

「はぁ~…」
一通り家事を終えて、一息ついてコタツにはいる憂。
唯はまだ帰ってきていないのか、一人には少し大きいコタツの真ん中を占領する。

(最近夜あまりよく眠れてないんだよね…
お姉ちゃんが一人暮らしすることを考えると色々考えちゃって…)
テレビをつけてみるけど、夕方の番組は面白いものもなく特に気になるニュースもやっていない。

(お姉ちゃんももう少し帰ってこないだろうし、ちょっとだけここで寝ちゃおうかな?)
リモコンのスイッチを押し、こてっと横になって、そのままずりずりと体をコタツの中に沈める。
憂にしては珍しく、薄暗くなってきた窓を見てもカーテンを閉めることも億劫なようだ。

(…お姉ちゃん、遅いな。お姉ちゃんが一人暮らししたら毎日こんな感じなのかな?)
横になってみても考えたくないのにどんどん良くない考えが溢れてきて。

「…はぁ~、やっぱり眠れない」
それでもやっぱり少しは眠りたくて無理やり目を閉じると。

「ただいま~!う~寒い寒い!」
玄関からどたどたと大きな音を立てて唯がやってくる。
時計を見ると先ほど横になる前に確認した時刻からだいぶ立っていた。

「うい~!…って、あれ?どうしたの?お昼寝??」
リビングのドアを開け珍しくコタツで横になっている憂を見下ろしながら覗き込む唯。

「う~ん、ちょっとお昼寝しようかと思ったんだけど眠れなくて」
憂は横になっていた体をコタツから引き出して答える。

手にしていた荷物を一度部屋の端に置いてから憂の隣にねじ込むように唯も一緒にコタツに入る。
「お昼寝なんてういにしては珍しいね?具合悪いの??」

唯はテーブルに片耳をつけて見上げるように憂に聞く。
「体調は悪くないんだけど、最近あんまり夜眠れないからちょっと横になってただけだよ」
心配をかけまいと、いつも通りの笑顔で答える憂。

「ほ~」
唯はとぼけたように返事をしてからあごをコタツの上に乗せ何かを考え込む。
そんな唯を見ながら、憂はこんなお姉ちゃんを気軽に見られるのもあと少しなんだななんて考えてまた少し沈み込む。

ふと、何か思いついたようにくるりと憂のほうを向くと一言。
「じゃあ、子守唄を歌ってあげよう!」
唯は最良の回答を導き出した子供のような自信たっぷりの表情でそう言った。

「え、良いよ良いよ!ありがとう、大丈夫だから!」
姉の手を煩わすわけにはいかないと憂はつい反射的に断るが、唯にはそんなことはお構いなしだ。

「良いから良いから~、ほい、じゃあ横になって!」
そういって憂を無理やり寝かせると、自分はさっき部屋の隅に置いた荷物の元へ向かう。
その場でギターケースからギー太を取り出しいそいそとまた憂の元に戻ってくる。

ぺたんとコタツの横に座ってギー太を構える。
憂もそこまで準備万端の唯にさすがに断ることは出来なくて唯の提案を受け入れることにした。

「お、お姉ちゃん。寒くない?大丈夫?」
「だいじょ~ぶ!」
憂は心配になって声をかけるが唯の心はすでに憂に子守唄を聞かせることに夢中だ。
一応部屋全体を暖めているので本当にそんなには寒くないはず。

「では、1曲目、ふわふわ時間!」
「ふふ、お姉ちゃん全然子守唄じゃないじゃない」
勢いよく宣言する唯の選曲に思わず笑ってしまう憂。

~♪

最初はおかしな選曲に笑っていた憂だったけど、唯の歌声を聞いているとだんだん安心してうとうとしてきて
ゆっくりと瞼が落ちる。
あんなに眠れなったのが嘘のように簡単に眠りに落ちてしまう。

「じゃあ、次はU&I。」
憂が眠りに落ちる前に最後に唯が歌っていたのは、姉が彼女に捧げた歌だった。

                          2011/01/25(火) 00:33:44 ID:XNzLVb9g0 [2/3]

568           軽音部員♪ [sage]



「あっ…」
憂が目を覚ましたとき、唯は一緒にコタツの中に入って横で眠っていた。
歌っているうちに彼女自身も眠くなって憂の隣に入り込んだのだろう。
その手はしっかりと憂の手を握っていて、憂にはどこにも行かないよという唯からのメッセージみたいに思えた。

「くす、ありがとうお姉ちゃん」
しばらくそのままでいたかったけど、唯が風邪をひいてはいけないとコタツからはみ出た部分に何かかけてあげようと
手を解いて立ち上がろうとしたら。

「ん~…?」
唯が解いた手でごしごしと目をこすり始める。

「ごめん、起こしちゃった?」
そう憂が問いかけると。
まだ少々寝ぼけたような目で憂を見てから。
「ん~ん、それよりも憂は眠れた?」
にへらっと柔らかく笑う。

「うん、ぐっすり!ありがとうお姉ちゃん」

「ういが眠れないときは私がいつでも子守唄を歌いに行くよ!」
まだ眠いのか、憂の手をもう一度握り締めて目を瞑りながら言う。

その言葉を聞いて。

「…なんでお姉ちゃんは、私の欲しい答えをいつも的確にくれるのかな…?」
憂は独り言のように小さくそうつぶやく。

「ん~?なんか言った?」
目をつぶったままぼやっとした声で聞く唯。

「ん~ん、何でもない♪なんだか今日からまたぐっすり眠れそう」
「そ~?それは良かっ…た」
そう言った最後の方はほとんど起きているか寝ているかわからないような状態。
そんな唯を見てくすりと笑ってまた憂も目をつぶる。

「おやすみ…お姉ちゃん…本当にありがとう…」


おわり

                          2011/01/25(火) 00:35:15 ID:XNzLVb9g0 [3/3]

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  • 前半部分が切れてますよ -- (名無しさん) 2011-01-27 00:08:03

最終更新:2011年01月27日 17:40
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