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入れ替わりと秋の午後[1/2] [sage] 2009/10/10(土) 13:03:36 ID:sDmRLmrf
夏の暑さも身を潜め、甘い金木犀の香りが郷愁を誘う季節。
太陽は既に子午線を通過しており、秋陽が快い暖かさを齎す土曜日の午後。
困ったことに、その心地よさが妹の堕落っぷりに輪をかけていた。
憂「唯ー、もうお昼過ぎてるよー? そろそろ起きないと」
唯「……んー」
憂「んー、じゃなくて……」
はぁ、と一つため息をついてから布団に手をかける。
かくなる上は強硬手段しかない。
布団を奪い取ってしまえばさすがに起きるだろうから。
しかし――。
唯「……」
この顔である。
この幸せそうに惰眠を貪る愛らしい顔を見て尚、布団を奪い取ろうとする輩がいるのなら、
それはもはや人外である。この私が直々にしばき倒さなければならない。
憂「甘いなぁ、私も……」
唯の頬にそっと手を伸ばして、優しく撫でる。
その感触に気付いたのか、唯は私の手を両手で掴んでぎゅっと引っ張る。
憂「うわっ!?」
398 入れ替わりと秋の午後[2/2] [sage] 2009/10/10(土) 13:04:23 ID:sDmRLmrf
唯「んぅー、お姉ちゃん……好きー」
憂「……」
ここまでされたら仕方ない。
夢うつつで放たれた、『好き』の二文字を脳内で何度もリピート再生しながら、
喜悦に満ちた顔で私は妹の布団へと潜り込む。
自分の腕を枕代わりにして、未だ気持ちよさげに眠る妹の顔をガン見する。
すると妹は、私の背中にそっと両手をまわして抱き寄せようとする。
姉を抱き枕扱いである。
憂「唯、起きてるでしょ?」
唯「……えへ、ばれた?」
憂「全くもう……」
唯「お願いお姉ちゃん、もうちょっとだけこのままで……」
――胸を打つその言葉に、私は精一杯の優しい笑顔を作って妹に答えた。
―おまけ―
唯「やっぱり、変な感じだね」
憂「ふふ、でも私は楽しかったよ、お姉ちゃん?」
一日だけの、姉妹逆転生活。
その行為に意味など無かった。
いつもの姉の気まぐれである。
……というか、あんまり変わらない気がしたのは私だけだろうか?
最終更新:2009年12月14日 23:01