623 冬のはじまりの夜に [sage] 2009/11/03(火) 04:00:48 ID:1f2HgPyF
唯「憂、今日は寒いねー」
憂「そうだねぇ、木枯らしも吹いたっていうし、すっかり冬だね」
唯「ってことで、一緒に寝てもいい?」
憂「ってことでって、どういうことかよくわからないけど…うん、いいよ」
唯「えへへ、ありがとー♪」
というわけで、私とお姉ちゃんは一緒に寝ることになった。
こんな風に一緒の布団に入るのは久しぶりだ。
憂「お姉ちゃん、窮屈じゃない?」
唯「大丈夫だよー。それにくっついてた方があったかいし♪」
お姉ちゃんは私の体に優しく手を回した。
少し恥ずかしかったけど、その感触が心地よくて、私は体をお姉ちゃんに預ける。
憂「…あったかいね」
唯「うん、ぽかぽかだね」
本当にお姉ちゃんはあったかい。
こうしてそばにいると、心も体もしあわせで満たされていくような気がする。
お姉ちゃんがいたから、このあたたかさがあったから、今の私はあるんだろうと思う。
だけど、いや、だからこそ、たまに怖くなる。
いつかは、お姉ちゃんと離れて別々に暮らしていかなければならない日がやって来るだろう。
そうなったら、私は生きていけるんだろうか。
そばにお姉ちゃんがいなくても、しっかりと前を向いて歩いていけるんだろうか…
624 冬のはじまりの夜に [sage] 2009/11/03(火) 04:03:52 ID:1f2HgPyF
唯「憂?もう寝ちゃった?」
憂「え?お、起きてるよ。なあに?」
唯「うん、憂はあったかいなぁって思って。んー♪いいにおいー♪」
お姉ちゃんは私の背中に顔を押し付けて気持ちよさそうな声を上げた。
こんな風に甘えられるのはとてもうれしい。自分は頼られているんだっていう気がして、がんばろうという気になれる。
だけどその一方で、心細さもあった。
自分は本当にそこまで強いんだろうか。お姉ちゃんという存在がなかったら、私はこんな生き方はできないんじゃないか。一人きりの私は、実はとても弱い人間なんじゃないか…
憂「ねぇ、お姉ちゃん」
唯「ふわ~ぁ…なあに?」
憂「お姉ちゃんは、私と離れ離れになっても生きていける?」
唯「え?なあにいきなり」
憂「うん…ちょっと気になったから」
唯「うーん…」
この時の私は、どんな答えを期待していたのだろう。
もしかしたら無意識に、『うん、私憂がいなきゃ生きていけない』って言ってほしかったのかもしれない。
でも、お姉ちゃんの答えは違った。
唯「多分…生きていけると思うな」
625 冬のはじまりの夜に [sage] 2009/11/03(火) 04:07:00 ID:1f2HgPyF
憂「…どうして、そう思うの?」
唯「私、料理もできないし洗濯もできないし…失敗しちゃうかもしれないけど…でも、憂がいるから」
憂「お姉ちゃん、だから離れ離れなんだよ?私はそばにはいないんだよ?一人ぼっちなんだよ?それでも…大丈夫なの?」
唯「近くにいなくっても、憂はいるよ。どんなに離れてたって、消えてなくなっちゃうわけじゃないでしょ?」
憂「……!」
唯「だから私、絶対にくじけたりしないよ。それに」
お姉ちゃんは私を抱きしめる腕に力を込めて、静かに言った。
唯「私たちは姉妹なんだもん。どんな時だって一人なんかじゃないよ」
憂「お姉…ちゃん…」
私はバカだ…こんなに大切な、こんなに当たり前なことにも気付かないで弱気になるなんて。
そうだ、私にはお姉ちゃんがいる。たとえそばにいなくたって、お姉ちゃんはいるんだ。
だから私は一人ぼっちになんてならない。いつでも強い自分のまま、まっすぐに生きていけるんだ。
626 冬のはじまりの夜に [sage] 2009/11/03(火) 04:10:09 ID:1f2HgPyF
唯「憂はどう?私がいなくても生きていける?」
憂「うん、大丈夫だよ。だって私はお姉ちゃんの妹なんだもん」
唯「さすが私の妹だね」!」
憂「でもお姉ちゃんはこれから色々覚えないといけないことがあるから、がんばらないとだね」
唯「う…ま、まあなんとかなるんじゃないかなー?」
憂「あはは、もう、お姉ちゃんたら」
私はお姉ちゃんに向き合うと、ぎゅっとお姉ちゃんを抱きしめた。さっきお姉ちゃんがしてくれたように優しく、強く。
唯「憂?」
憂「たまには、私からでもいいでしょ?」
唯「…うん、いいかも♪」
将来のことは色々不安だ。時には寂しくなることや、泣いてしまうこともあるかもしれない。
でも、きっと大丈夫だよね。お姉ちゃんも私も、きっと笑顔で乗り越えられると思うから。
――だから、よろしくねお姉ちゃん。いつか旅立つその日まで。
おわり
627 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2009/11/03(火) 04:11:46 ID:1f2HgPyF
以上です
真夜中…というかもう朝という時間に失礼しました
最終更新:2009年12月14日 23:17