車を走らせ馴染みのコンビニへと向かう。
途中
ゆっくりが飛び出してギリギリかすめて通過。セーフ。
車が汚れなくて良かったとひと安心。
駐車場でに着いてドアを開けると不快な熱い外気、と、
「ゆっふ!ゆっ!ゆーふっ!!」
不快な声が耳に響く。
店の前に設置しているゆっくり専用ゴミ箱から聞こえてくる。
その前を通りすぎる際にゴミが話しかけて来た、
「ゆっ!?おにいさん!れいむをたすけてねっ!」
無視。
「どぼじでむしするのぉ!?」
自動ドアから店の中に入る。冷房が効いていて最高の環境だ。
お目当ての弁当と飲み物を買ってから週刊誌を立ち読みする。
そのあと、気に入った雑誌を追加購入して店を出た。
「おにいさん!かわいいれいむをたすけにきてくれたんだねっ!」
(まだ居るのかよ……。)
れいむは、ゴミ箱の淵をもみあげで掴み踏ん張っている。
体は半分穴に埋もれていて、自力での脱出は厳しそうだ。
「れいむはとってもゆっくりできるんだよーっ!」
滅茶苦茶必死の形相。凄く暑苦しい。
全然ゆっくり出来て無いじゃん。
「はやくたすけてねっ!このままじゃおちちゃうよっ!?」
唾を撒き散らし喚く。
こんなゆっくり誰も助けたいとは思わない。
「かわいいおちびちゃんをみせてあげるから れいむをたすけてねっ!」
「…おちびちゃんはどこに居るんだ?」
「おにいさんのあしもとにいるでしょうっ!おめめがみえないのっ!?」
足元?
下を見ると確かに居た。
虫の息だったが。
「おちびちゃんたちはかわいいでしょっ!?ゆっくりれいむをたすけてねっ!」
「可愛くないから助けなくていい?」
「どぼじでぞんなごどいうの゛ーーっ゛!?」
号泣。本当に暑苦しい。
下に落ちている赤ゆを摘みあげれいむに見せる。
驚愕の眼差しの後、「ひどいことするにんげんはゆっくりしねっ!」と喚きだす。
ただ拾っただけだっつーの。
「れいむ口開けて。」
「ゆっ!そうだねっ!れいむのおくちのなかにゆっくりかくれてねっ!
やばんなにんげんさんはゆっくりできないよっ!」
赤ゆ達を放り込む。
勝ち誇った顔がまたムカツク。何も好転してねーよ。
「おちびちゃんたちをきずつけた いしゃりょうをせいきゅうするよ!」
チラチラと手に下げた袋を見ながら催促をして来る。
口に赤ゆ詰め込んで流暢に喋るその無駄な技術。何げに凄くね?
「はいはい。わかりましたー。」
「なかなかいいこころがけだよっ!」
戯れにパックのジュースを飲ませてみた。れいむは至福の顔でとろけている。
普段口に出来ない甘みに感動しているようだ。
ゴックンと喉?を大きく鳴らす。
「もっといしゃりょうをちょうだいねっ!こんなんじゃたりないよっ!」
大口を開けて追加を要求する。
そこで先程放り込んだ物体が無いことに気づいた。
「……赤ゆは?」
「ゆゆっ?」
口を閉じて、もごもごと動かした後、れいむは固まった。
信じられない…。と言う顔をして、また口中を舌で探る。
いや、居ないから。明らかにお前が飲んだから。
「うっ!うわぁぁぁぁぁぁぁっ゛!!?あかちゃんがぁぁぁっ!」
「あーあ。お前アホだろ?」
「じゅーすをいっぱいおぐぢにいれるからでしょぉぉぉっ゛!?」
また言いがかりですか。
もう付き合いきれん。というか暑いからそろそろ帰りたい。
「ゆっくりはんせいしたなら れいむをひろってかわいがってねっ!?
いっぱいかわいいあかちゃんうんであげるよっ!かんしゃしてねっ!?」
自信に満ち溢れた声を張り上げる。
可愛いからジュースを貰えたし、ゆっくりプレイスにも連れて行ってくれる。
お嫁さんといっぱいすっきり~っ!してあかちゃんを作るよっ!
都合の良い妄想で未来を作り出している最中に、人間の手がゆっくり迫ってきた。
それを見てれいむは最高の笑顔で声を張り上げる。
「れいむをゆっくりさせてねっ!にんげんさん!」
薄暗い穴の底で蠢く物体が二つ。
ゆっくり出来る環境では無い事は確かである。
臭い,狭すぎる,暑い。まさに地獄。
「ぐぞにんげん!れいぶをおどしだなーーーーっ!?」
油断していたれいむはあっさり落ちた。
箱の中で運悪く逆さまに落ちて身動きが取れなくなっている。
「ゆ゛ーーっ!ぜっだいゆるざないよーーーっ!!」
マヌケな姿で強気に吼える。
体を震えさせ起き上がろうと試みるが、スペースが狭すぎて思うようにいかない。
そこで不安からちょっと弱腰になってしまい、
「いまたすけてくれたらゆっくりゆるしてあげるよっ!」
あっさり和平交渉に入った。
「きこえてるんでしょぉぉぉぉっ!おみみがわるいのっ!?」
『…ユッ』
「かわいいれいむがこまってるんだよっ!ばかなのっ!?」
『ユフッ。コフーッ!』
「しぬのっ!?……ゆっ!?じゃましないでねっ!せなかがあついよっ!」
れいむは背中に熱い風がかかるのが気になった。
人間さんを説教してる時に邪魔するなんてゆっくりできないよ!
さらに声を張り上げて話を続けようとした時、
『アマアマッ!イタダキマァァァスッ!』
後頭部に鋭い痛みが走った。
次は頬っぺたが引っ張られる感触。
そしてブチブチと千切れて何かの口に収まる。
「いだいーーー~っ゛!どぼじでっほっべざんがいだいのっ゛!?」
髪ともみあげが無理矢理毟られ
頬からは餡子がボタボタと床に落ちる
おりぼんが軽快な音を立てて砕けた
硬い物がれいむの体を削り取っていく
『ウッメッ!メッチャウメーーー~ッ!!』
「やべでーーっ!?ゆっぐぢでぎない゛ぃぃぃぃっ゛!!」
許しを願っても全く辞める気配を感じない。
自分の餡子が急激に減っている事が嫌でもわかる。
このままではれいむが死んじゃう!
にんげんさんっ!にんげんさんっ!おねがいっ!
「にんげんざん゛っ!だずげでっ!れいぶだべられぢゃうよっ!」
『ムーシャ!ムーシャッ!!』
「おでがいだがらっ!ゆっぐぢざぜでーー~っ!?」
『ウンメッ!マジパネェッ!!』
「うっ゛ぎゃぁあぁぁぁぁぁぁ!?」
このゴミ箱は水流式ではない。
コンビニでは回収作業が定期的に行われるので、投下式を設置していた。
この最新のゴミ箱は、転倒防止機能と這い上がりが出来ない構造に作られている。
回収作業を容易に行える様に、箱の底には棘状の突起物は無い。
その為、生きたまま投入されるゆっくり達は、そのまま底で生存する確率が高い。
餌の代わりに他のゆっくりを共食いして、生き残るのも珍しい事ではなかった。
そして、れいむはゴミ箱に居た主の糧となり死んだ。
食われる少し前にジュースを大量に飲んだ為なのか、
生命維持活動が活発になってしまい、なかなか絶命する事が出来なかった。
どこまでも不幸なれいむである。
「やっぱり野良は可愛く無いな。」
残りのジュースを飲みながら結論を述べた。
あの自信満々な声で喚いているのを聞いていたら、いつの間にか突き落としていた。
野良は人をイライラさせる何かがある。
やっぱり躾が行き届いて可愛いゆっくりの方が良い。
「そのあまあまをまりさによこすんだぜっ!」
「まりさっ!かっこいいっ!」
「ぴゃぴゃ!ぎゃんばれっ!」
「いちゃいめみりゅまえに こうちゃんしてにぇっ!」
とか思ってるとまた野良ゆっくりだよ。
全然ゆっくりできない。
「さっさと…」
「はいはい。ゆっくりゆっくりーっ。」
ポイポイと捨てる。
手際のよさに呆気を取られ、親達は何の反応も見せずゴミ箱の中へと消えた。
「…ぴゃぴゃとみゃみゃがぁー~っ!?」
「うぅ?にゃんでぇぇぇぇっ゛!?」
煩く騒ぐ赤ゆも例外なく放り込む。
片方の赤ゆを放り込んだ所で、残りの1匹が、
「…お、おにいしゃんのこじょもになりゅよ!」
早い、早いよ!裏切りが。
この赤ゆは優秀だ。生き残る術を知っている。
「ゆゆー~ん!きゃわいく…。」
でも残念ながらゴミ箱にIN!
汚いし可愛くも無い。それに簡単に家族見捨てるのは良くないよ?
みんなに会わせてやるから謝ってきな。
片道キップでの送迎になっちゃったけどね。
……すっごくガタガタ揺れてるよ。喧嘩でもしてるのか?
まぁ、なにはともあれゆっくり仲良くしていってねーっ。
家族の幸せを適当に願いつつ帰宅する事にした。
「ゆあっ゛!?ゆっぐぢやべでっ!まりざはづよいんだよっ! あ゛ぁー~っ゛!?」
「れいぶはおいじぐないよっ!だべるならおちびぢゃんをたべてねっ!?」
「「ぢょぼじでじょんなごぢょいうにょー~っ゛!?」」
『ムーシャ!ムーシャッ!シッ…シアワセーーー~ッ!!!』
「「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ゛!?」」
食欲旺盛にモリモリと食らう。
親ゆの大半を食らった後、隅に逃げた赤ゆを追い詰めていく。
「りぇいむはおいちくにゃいよ!おにぇちゃんのほうがおいちいよ!」
「いみょうとのほうがまろやきゃでおいちいよ!だきゃら……ゆびゃぁ!?」
「ゆっふゅふゅ!れぇいみゅはえりゃばれたんだにぇ!しゅーりりゅーりすゆよ!
ゆ…?おくちしゃんあけてにゃにするの?」
一口で絶命した。……ら幸せだったのに。
紙一重で生きていたが擦れ声を上げたのは大失敗。再度大きな口が迫ってくる。
もう一度容赦なく噛まれる恐怖を味わいながら、赤ゆは天に召された。
租借しながら狂ったように歓喜の声を上げ続ける主。
環境のストレスから食べる欲求のみが色濃く表面化して、完全に壊れていた。
この主も夕方の回収を待たずに死ぬだろう。今からまだまだ暑くなる。
じっくり蒸されてこの世にお別れをするのは時間の問題だ。
ひと時の幸せを求めて哀れな主は腹に同胞を詰めていく。
帰り道の途中で路上に転がる、ゆっくり家族の変り果てた姿が視界に入った。
(さっきのが餌を狩った後に戻ろうとして轢かれた。のかな?)
ゆっくりの固体判別は難しい。
外見個性が乏しすぎる。
そこに加えて現状はただの餡子の塊が数箇所に点在するのみ、
詳細な判別はほぼ不可能。
「こういうのは誰が片付けるんだろ?」
疑問を呟きながら、塊を避けるのは対向車が接近してる為にちょっと厳しいと判断する。
洗車を覚悟しながら、愛車で餡子に新しい轍を刻み込み走り去った。
終
「れいむとまほうのいた」
「金バッチ品質保障証」
「まりさは優秀な劇団員」
「ぬし」
最終更新:2011年07月28日 12:34