「どうちておにーしゃんはれいみゅをゆっくちさせちぇくれないにょ、ぴゅんぴゅん?!」
れいむは今の生活が不満で仕方がなかった。
まず、自分をゆっくりさせてくれない飼い主が大嫌いだった。
「れいむ!今日もお前に相応しい飯を持ってきてやったぞ!」
そう言って男が差し出したのは甘辛く煮込んだ大根、鮭おにぎり、そして豚肉のソテー。
野生のゆっくりならば涙を流して喜ぶごちそうなのだが、れいむは不満の声を上げた。
「おにーしゃんはどうちてれいみゅをゆっくちしゃせてくれにゃいの! おこりゅよ!?」
「外にはもっと美味しいものもあるもお前にはそれで十分だ!!」
馬鹿にしきったような表情を浮かべたお兄さんはそう吐き捨てると笑いながら去っていった。
ぷくぅぅぅぅうぅぅぅうう、と膨れるれいむの迫力に気圧されたのだろう。
れいむは追い払っては意味がないことには気づかず、自分がすごいという方向に結論付ける。
「きょんどはもっちょゆっくちちたごはんをもっちぇきちぇね!」
立ち去ったお兄さんに不満をぶつけていると、クズでノロマな家族が起きてきた。
母親のれいむに、姉のれいむが2匹の計3匹。
お兄さん曰く「外にはもっとゆっくりした家族もいるがお前にはこいつらで十分だ!」なゆっくりしてない家族だ。
「ゆゆっ! れいむ、はやおきだね! ゆっくりおはよう!」
「「ゆっくちちていってね!」」
「ゆっきゅりちていちぇね!・・・じゃにゃいよ、ぴゅんぴゅん!」
満面の笑みを浮かべてす~りす~りしに寄って来る家族たち。
しかし、れいむには彼女達の行動が身の程知らずの厚かましい行為にしか見えなかった。
「やめてね! ゆっきゅちできにゃいおきゃーしゃんたちとゆっくちなんてちにゃいよ!」
「ゆゆっ!? そんなこといわないでね! ゆっくりできないよ!」
「「れいむもおかーしゃんもゆっくちちてるよ!」」
れいむの言葉に対して家族は抗議の声を上げるが、れいむはむくれてそっぽ向くばかり。
ああ、なんて物分りの悪いゆっくりしていない家族なんだろう。
頭が悪いばかりにお兄さんに良いようにこき使われ、あんなゆっくりしていないご飯で満足する愚鈍な家族。
親であり、姉であるならばお兄さんの言うもっとゆっくり出来るものをれいむに与えるべきなんだ。
それを理解しない彼女達はやっぱりゆっくりしていないダメな家族だ。
「れいむ、おねーしゃんとこれであそぼうね!」
「やだよ! しょれはゆっきゅりできにゃいよ、ぴゅんぴゅん!」
散々ゆっくり出来ないと言っているのにしつこく構ってもらおうとしてくる姉のれいむが持ってきたものはタンバリン。
お兄さんによると「外にはもっとゆっくりしたおもちゃもわんさかあるがお前にはこれで十分」らしい。
当然、そう言われたれいむがタンバリンなんかで楽しめるはずが無かった。
外のゆっくりはもっと素敵な環境で、美味しいものをたくさん食べながら、ゆっくりした仲間と一緒にゆっくりしたおもちゃで遊んでいる。
なのに、どうして自分はこんなにゆっくり出来ないおもちゃでしか遊べないのだろうか?
「ゆぅ・・・ざんねんだよ! あそびたくなったらゆっくちいってね!」
「いつでもいっしょにゆっくちあそぼうね!」
姉たちはようやくれいむを誘うのを諦めて、母の傍でタンバリンを振りながらお歌や踊りで遊び始めた。
勿論、そのお歌も大嫌いだったから、耳障りだと文句を言って歌うのを止めさせた。
「外にはもっとゆっくりした飲み物もあるがお前にはそれで十分だ!」
れいむに叱られた姉たちが落ち込んでいるところにやってきたお兄さんの手にはオレンジジュース。
お決まりの文句を口にしながらストロー付きのボトルに入ったそれを床に置くとカーテンを開けて、出て行った。
言うまでもないが、れいむはこれも大嫌いだった。
「「ゆゆっ!ゆっくちおちたおひしゃまだよ~!」」
「そうだね! ゆっくりひなたぼっこしようね!」
「ゆっきゅちできにゃいおひしゃまはきえちぇね!ぴゅんぴゅん!」
それに、窓から差し込む暖かい春の日差しも、常時室温25度前後に保たれたこの部屋も大嫌いだった。
それだけじゃない。お風呂も、お菓子のチョコレートも全然ゆっくり出来ないから大嫌いだった。
お外では皆もっとゆっくりしているのに、どうして自分はこんなにゆっくり出来ないのか。
「ゆっきゅりちたいよぉ・・・」
自分自身のあまりの不遇に涙を堪えきれなくなったれいむは、寝床のふかふかした綿の中に顔をうずめて泣きじゃくった。
れいむは寝床の綿も大嫌いだった。きっと外にはもっとゆっくり出来るものがあるんだろう。
そう思うとより一層悲しくなってきた。
「ゆぅ・・・れいみゅはやきゅおちょなになりちゃいよ・・・」
ゆっくり出来ないご飯に、ゆっくり出来ない飲み物。
ゆっくり出来ないおうちに、ゆっくり出来ない寝床。
ゆっくり出来ないおもちゃにゆっくり出来ない家族。
そんな中で、れいむにとっての唯一の希望はお兄さんと交わしたある約束だった。
「お前が大人になったら好きなところに連れて行ってやる! そこで一生ゆっくりするがいい!」
れいむは大人になったとき、とってもゆっくり出来るお外でゆっくりすることを夢見て今日もゆっくり出来ない眠りについた。
そして、半年後。
今まで感じたことのない寒さのせいでゆっくり出来なくなったれいむが目を覚ますと、そこには見たこともないゆっくりがいた。
金髪に黒い帽子を被ったゆっくりの名はゆっくりまりさ。緩みきった下品な笑みを浮かべて、汚らしい体をれいむにこすり付けている。
「ゆゆっ! なにするの!? やめてね!」
「ゆぐっ!? い、いだいんだぜ・・・でも、かわいいからゆるしちゃうんだぜ!」
そう言って再びにやける汚らしいゆっくりまりさに警戒しながら、れいむはきょろきょろと辺りを見回す。
暗くて、湿っぽく、しかも寒い室内。ごつごつした天井と壁と床は信じられないほど狭く、全力で跳躍するスペースもない。
それに部屋にはゴミばかりが置かれていた。
土や泥にまみれた藁、何かよく分からない雑草や虫の死骸、それに中が空洞になっている木と木の枝。
そのどれもが信じられないほど薄汚く、不愉快なものばかりだった。
「ご・・・ごみすてばなんてゆっくりできないよ!」
「ゆゆっ!? おびずでばなんでいうなーっ!!ごごはばりざのゆっぐりぢだおうぢなんだぜえええええ!?」
そんなやり取りをしている最中、れいむは眠る前のことをようやく思い出した。
確か、ようやく成体になったと認めたお兄さんが、れいむを言う通りにお外に連れて行ってくれたはず。
そして、はしゃぎ疲れて眠ってしまった・・・ぐっすりした結果がこれだよ!
「ぷくぅうぅぅぅぅ! おにいさんにもんくいわなきゃ!」
「ばでぃざにあやばれええええええええ!?」
「うるさいよ!!そんなことよりおにーさんはどこなの!!」
れいむは汚らしい顔をより一層汚くして泣き喚くまりさを一喝してから、お兄さんの居場所を尋ねる。
が、まりさから返ってきた答えは信じられないものだった。
「で、でいぶのおにいざんなら・・・」
まりさが言うには、お兄さんがれいむをこのゴミ捨て場のようなまりさのおうちに置いて行ったらしい。
というのも、このまりさがこの辺り一帯で一番ゆっくり出来るゆっくりだと聞いたから。
当然、れいむはこの話を信じなかった。
「そんなわけないでしょ! おそとはとってもゆっくりできるんだよ!」
そう言うと、身を翻して僅かに明るい場所を目指して進んでいき、まりさの巣から飛び出すと・・・そこには一面の雪景色が広がっていた。
それだけじゃない。信じられないほどに、身体が凍てついてしまいそうなほどに寒かった。
「しゃ、しゃぶいいいいいいいいい!?」
「だめだよ、れいむ! ふゆはおそとじゃゆっくりできないよ!!」
「もうだやだ! おうちかえる!」
悲鳴に近い調子で叫んだれいむは雪上に一歩踏み出す。
が、雪の冷たさに負けてまりさのゴミ捨て場のような巣に戻ってきてしまった。
これじゃおうちに帰れない、そう判断したれいむは・・・
「まりさ、しかたないからここにすんであげるね! だからおいしいごはんをもってきてね!」
まりさに向かっておうち宣言ならぬ居候宣言をした。
「やめてね!きたないからちかづかないでね!」
「ぞんなごどいわないでよお゛お゛お゛お゛お゛!?」
泣き叫びながらもれいむににじり寄るまりさ。
彼女の目的は言うまでもなく、れいむとすっきりすることである。
本来、冬篭り中にすっきりーするなど言語道断なのだが、れいむのあまりの美ゆっくりを前にして理性が飛んでしまったのだ。
「で、でいぶうううう! ぼうがばんでぎないよ!!」
発情しきったまりさはれいむを巣の隅へと追い詰め、その距離を徐々に詰めていく。
一方のれいむは首、もとい全身を激しく左右に振ってまりさを拒絶するが、温室育ちのれいむにはいかんせん持久力がない。
体格で言えばれいむのほうが大きいにもかかわらず、少し噛み付かれただけで泣きじゃくり抵抗を忘れてしまう。
「いぢゃい! いぢゃいよ! やべでね、ゆっぐぢやべでね!?」
「でいぶうううううううう!?」
何時の間にれいむに密着していたまりさは自分の体を激しく前後左右に揺すり始めた。
すると、まりさの体から少しずつ粘着質な体液が分泌され、それによって少しずつ頬のすべりが良くなって行く。
そうしてしばらく体を揺すり続けていると、れいむの頬が紅潮し、体が火照ってきた。
「いや゛あああああああ! ずっぎぢぢだぐないいいいいいい!?」
「ゆっ・・・ゆふぅ・・・ゆんっ・・・」
それでもれいむは必死に抗議する。が、まりさはすりすりを一向にやめようとしない。
やがて、れいむも頬の刺激と快感に負けて発情し、しぶしぶながらもすっきりを受け入れた。
「「すっきりー」」
そして2匹同時に絶頂に達し、すっきりした。
直後、れいむの頭からにょきにょきと緑色の蔦が伸び、そこに小さな実が宿る。
言わずと知れたことだが、これが赤ゆっくりに成長するのだ。
「ゆゆっ! れいむのかわいいあかちゃ・・・「あかちゃんがうまれたらゆっくりできないよ!」
どんな相手と作った赤ちゃんでもれいむの大事な赤ちゃん。
だから、一緒にゆっくりしよう・・・そんな思いをこめて「ゆっくりはやくうまれてね!」と言おうとした瞬間、蔦ごとまりさに食べられた。
別に今回が初めてというわけでもないのだが、赤ちゃんを奪われたれいむは鬼の形相で泣き喚く。
「どほぢでごんなごどずるのおおおおおおお!?」
「む~しゃむ~しゃ、しあわせー!」
が、温室育ちのれいむが口先だけであることはまりさは既に理解している。
勿論、巣から出ることも、地力で越冬することも出来ないれいむとてまりさに危害を加えられないことは承知していた。
そして、まりさはれいむが自分の立場を弁えていることさえも既に理解していた。
「がえぢでええええええ!でいぶのあがぢゃんがえぢでええええええ!?」
「ゆゆっ! れいむもすっきりーしてつかれてるからむしさんをたべてゆっくりしようね!」
そのため、まりさはれいむがどんなに怒鳴っても全く怖くない。
平然と、何処かやり遂げた漢の表情を浮かべて、れいむの口に虫の死骸をねじ込んでいった。
「ゆべぇ! むぢざんだべだぐないいいいいい!?」
「そんなこといわないでね! ゆっくりできないよ!」
「ゆぐっ・・・むーぢゃむーぢゃ・・・にぎゃいよぉ!?」
れいむは今の生活が不満で仕方がなかった。
ゆっくり出来ないご飯に、ゆっくり出来ない飲み物。
ゆっくり出来ないおうちに、ゆっくり出来ない寝床。
ゆっくり出来ないおもちゃにゆっくり出来ないまりさ。
そんな中で、れいむにとっての唯一の希望は春になったらお兄さんのおうちに帰ることだった。
‐‐‐あとがき‐‐‐
大分前に最高の環境で赤ゆっくりを育てながら
「もっとゆっくりしたものもあるがお前にはこれで十分だ!」
と言い聞かせるというレスを見たのを思い出したので書いてみた。
ちなみにお兄さんは「もっとゆっくりしたもの“も”ある」としか言っていないで嘘はついていないはず。
byゆっくりボールマン
最終更新:2022年05月21日 22:05