涼やかな風が、赤色に染まった木々の間を吹き抜けた。
全てを焼き尽くすかのような太陽の熱も鳴りを潜め、夜と月の時間が復活を遂げる。
外の世界も、幻想郷も、四季の移り変わりに変化は無いのだ。
暑かった夏が終わり、季節は秋。
紅葉が風に乗って舞い散る様は、この季節独特の風情を感じさせる。
芸術の秋。
運動の秋。
食欲の秋。
夏の暑さに体力を奪われた者たちも復活し、活動を再開させた。
そしてそれは、人間に限った話ではない。
木陰でじっとしていた動物たちも、秋に生る果実目当てにその姿を見せた。
狐や狸、他にも愛くるしい小動物たちが人々の目に触れる。
同じように、野生に住まうゆっくりたちも、気温の下降と共に元気を取り戻すのだった。



「「「ゆっくりしていってね!!!」」」

澄み渡る秋空に、ゆっくりたちの声が重なり合う。
夏の間は少数だったその声も、秋の始まりと共にその数を少しずつ増やし始め、今では見事なまでの唱和となった。
夏は暑い。
それは人間も妖怪も動物も、そしてゆっくりも基本的に変わらない。
あまりに暑い太陽の日差しは動き回る元気を減少させ、水分の損失を防ぐために日陰でじっとしていることが多くなる。
だがゆっくりはその名前と違って動き回ることが大好きであり(大人になるとじっとしてゆっくりするのも好ましくなるが)、フラストレーションが溜まってしまう。
だから夏が終わり、秋になって涼しくなると、今までの積もり積もったストレスやら何やらを吹き飛ばす勢いではしゃぎまわるのだった。

「むきゅー! みんなたのしそうでいいわね!」

ここにいるゆっくりぱちゅりーも、そんな陽気に誘われたゆっくりの一匹だった。
ぱちゅりー種は知っての通り、ゆっくりという種族の中で身体が極端に弱い。
激しい運動は当たり前として、ちょっとした衝撃や、吃驚するような事態に遭遇しただけでも気分が悪くなったり、疲れて息が切れたり、吐いてしまうことすらある。
そんなぱちゅりーではあるが、動くのが嫌いというわけではなく、むしろ好きである(ゆっくりなのだから当たり前の話ではあるが)。
軽い運動程度ならこなせるので、跳ねることは出来ないがずりずりと歩き回ったり、他のゆっくりたちが元気良くはしゃぎまわっているのを見るだけで、とても幸せな気分になれた。
彼女たち風に言うのなら、とてもゆっくりしている、ということだろう。
夏の暑さに特に参っていたぱちゅりーは、開放感に満ち溢れていた。

「ぱちゅりー! いっしょにどんぐりさがそうよ!」
「ぱちゅりーがいてくれれば、ひゃくにんりきだね!」

と、そこにぱちゅりーの友人である二匹のゆっくりが、ぴょんぴょん飛び跳ねてやって来た。
ゆっくりれいむとゆっくりまりさである。
二匹はぱちゅりーを間に挟んで、親しげに頬を摺り寄せた。
ゆっくり種特有の行動である、親愛の表現だ。ぱちゅりーは嬉しくなって「むきゅー!」と鳴いた。
前述のようにぱちゅりー種は体力が極端に低く、地面に落ちている木の実などを拾ってくることすら辛い作業であり、狩りをするなど論外の域にまで達するほどだ。
だが、ぱちゅりー種が役立たずとして爪弾きにされないのには、理由がある。
ぱちゅりー種は先天的に知能に優れているのである(ただし、ゆっくりとしては、だが)。
ゆっくりは基本的に愚者であるため、餌を効率的に採取する方法や罠の作り方、外敵である捕食種や人間たちからの逃走方法に明るいぱちゅりー種をとても尊敬していた。
だからゆっくりたち――特にまだ若いゆっくりは狩りに出かけるとき、こうしてぱちゅりーを誘うことが多いのだった。

「このきせつなら、どんぐりだけじゃなくておいしいおやさいもたべれるわ!」
「ほんとう!?」
「ゆゆーん♪ やっぱりぱちゅりーをさそってよかったよ!」

嬉しそうな顔を浮かべるれいむとまりさ。既に自分たちが大量の収穫をした後のような気分になっているのだろう。
ぱちゅりーも、二人がそんな顔を見せるのはとても幸せなことだった。
これからも、ずっと一緒にゆっくりしたい……
ぱちゅりーは幸福に満たされながら、そろそろ出発しようと声をかけようとした。

「むきゅ! そろそ」
「ゆ……? なにかきこえない……?」
「ゆゆ……ほんとだ、へんなおとがきこえるね」
「……むきゅ?」

だが、れいむとまりさが不思議そうな顔で周囲を見渡したのに遮られた。
つられて、パチュリーも耳を澄ませてみる。
肉体こそ脆弱だが、感覚器官は他のゆっくりに劣っているわけではない。
程なくぱちゅりーも、地響きのような振動音を感じ取った。

「ぱちゅりー、なんなのこれ?」
「わ、わからないわ……」

分からないが、何だかとても嫌な予感がした。
自分の餡子に眠る、ゆっくりという種族の遺伝子が警告しているような……
見ればぱちゅりーたちだけではなく、周囲にいた他のゆっくりたちも不安気な様子で騒然としていた。

「ゆゆっ、なんだろうね?」
「これじゃゆっくりできないよ……」
「ゆえーん! おかあしゃーん!」

中には事情も分からぬまま、異様な雰囲気に飲み込まれて泣き出してしまった赤ゆっくりもいた。
比較的落ち着いている年齢を重ねたゆっくりが慌ててあやしているが、その光景はゆっくりたちの不安を増幅させただけだった。
何が起きているのか、分からない。
分からないが、何故かこのままだといけないような気がする。

「ゆっ!? なにかくるよ!?」

と、その時、一匹のゆっくりれいむがある一方を見て叫んだ。
その場にいた全てのゆっくりが、その視線の先に瞳を向ける。
ぱちゅりーは木々の奥に、何かゆらゆらと揺らめく黒い靄のような影を見た。

「むきゅ……? なにかしら、あれ……」

その正体を確かめようと、じっと目を凝らす。
すると。
ほどなく、その影の正体が、判明した。





「いだわっ、がわいいゆっぐりだぢよ゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!!」
「どがいはのあ゛り゛ずだぢがかわいがってあ゛げる゛わ゛あ゛あ゛あぁ゛ぁぁぁ!!!」
「んほぉぉぉおおぉおぉぉおおぉぉ!!! いっじょにぎもぢよぐなりまじょうね゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!!」





それは。
ゆっくりと呼ぶには、あまりにも汚く、醜く、荒々しい。
透き通るような金髪をかき乱し、蝶よ花よと詠われる顔を欲情で真っ赤にさせ。
目を血走らせ、涎を垂らすままに、鬼気迫る表情で歓喜に打ち震えながら疾走する。
発情した、五十匹を超すゆっくりありすの集団だった。





ゆっくりの繁殖は主に春と秋の初めに行われ、冬はもとより夏にもあまり行われない。
その理由は簡単、繁殖のための交尾の後、ゆっくりは酷く水分を消耗するのだ。
人間と同じようにゆっくりたちも生きるために水分を必要とする。
水分がなければ干乾びてしまい、やがて死に至るからだ。
夏の気温はゆっくりたちを消耗させ、汗をかかせる。
その上更に交尾して水分を失ってしまったら、新しい命を紡ぐどころか自らの生命が終わってしまう。
種の存続のため、ゆっくりたちは余程の愚者でもない限り夏の繁殖は避ける傾向にあった。


だが、その為に過度の精神的不可を溜め込んでしまうゆっくりがいた。
ゆっくりありすである。
普段はゆっくりぱちゅりーに次ぐ理知的な存在であり、その美貌で数多のゆっくりの好意を一身に集めるゆっくりありす。
だが、そんなゆっくりありすには呪いとも呼ぶべき恐ろしい本能があった。
性欲である。
一度発情したゆっくりありすは、普段の都会派っぷりはどこへやら、化け物と見紛う恐ろしい形相で誰彼構わずゆっくりに襲い掛かり、強引に繁殖を迫る。
その際、本当にゆっくりなのかと疑いたくなるような身体能力を発揮し、一度捕まってしまったら脱出を許されず、死ぬまで犯されるはめになる。
発情したゆっくりありすの通った後には、茎を大量に生やして黒く朽ち果てたゆっくりの死体と、生まれた瞬間から犯されて死んだ赤ちゃんゆっくりの死体しか残らないとさえ言われているほどだ。
そのため、ゆっくりたちの中にはありす種を徹底的に排除する集落まで存在する。
善良なゆっくりありすにとって迷惑極まりないことではあるが、それほどまでに発情したありすは恐ろしいのだ。


しかしそんなありすも夏の間は自らの発情を抑える傾向にある。
当然だ。いくら何匹のゆっくりでも相手出来る性欲魔人とはいえ、真夏の炎天下で交尾を続けていたら全ての水分を失って干乾びてしまう。
例外こそいくつかあれど、自らの命を守ろうとする本能が、夏の間だけありすの性欲を抑えているのだろう。


しかし夏を過ぎれば、溜まりに溜まった性欲が爆発する。
それが一匹だけならば被害も最小で済むのかもしれないが、何故かゆっくりアリスはこのような状況になった場合、徒党を組む傾向が見られた。
一匹だけでも恐ろしい存在が、無数に襲い掛かる。
ゆっくりたちは恐れ、戸惑い、一気にパニックへと陥った。

「ありすだぁぁぁぁ!!!」
「にげてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ゆっくりできなくなるよぉぉぉぉぉぉ!!!」

各自、滅茶苦茶な方向へ逃げ惑う。
懸命にぴょんぴょん飛び跳ねるその姿は、常にゆっくりすることをを是とするゆっくりとは思えないほど必死な表情。
ある意味、ゆっくりれみりゃなどの捕食種と相対したときよりも危機感を感じているのかもしれない。

「おいがげっごなんでじないで、わだしだぢどあいじあいまじょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆ、ゆーっ!? どうじでごんなにはやいの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!?」

だがゆっくりありすは、そんなゆっくりの速度を亀の歩みと言わんばかりの脅威的なスピードを発揮し、回り込んだ。
突然視界にドアップで映る、発情したゆっくりありすの醜い顔。
あまりの恐怖にゆっくりたちは一瞬動きを止めてしまい、その硬直した隙をゆっくりありすは見逃さなかった。
もっとも、発情したゆっくりありすの身体能力ならば、どちらでも結果は同じであっただろうが。

「んほぉぉ゛ぉ゛ぉぉ゛ぉ!!! ありずのあいをうげどっでぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ゆ、ゆぎゃぁぁぁ!!? のっかからないでぇぇぇぇぇぇ!!!」

一匹のゆっくりれいむが、ゆっくりありすに圧し掛かられた。
体格は同程度。だが、れいむがどれだけじたばたしても振りほどくことが出来ない。
限界まで餅のように身体を伸ばして逃れようとするが、追いすがるゆっくりありすも同じように身体を伸ばして密着させてきた。

「はぁはぁ、ぞんなにあわでなぐでもちゃんとずっぎりざぜであげるがらぁぁぁぁぁぁ!!!」
「やべでぇぇぇぇぇぇ、ぎもぢわるいぃぃぃぃ!!!」

ゆっくりが交尾の際に分泌される特殊な粘液を背中に感じ、れいむは悲鳴を上げた。
激しく身体を擦られる感触が気持ち悪い。
交尾の経験がないれいむは未知の感覚にひたすら恐怖し、一刻も早くこの状況を打破しようと必死にもがいた。


このれいむは一週間前、ようやく親元から巣立ったばかりのゆっくりだった。
母や妹たちが見送る中、涙を呑んで家族に別れを告げ、少し離れた木の根元に居を構えた。
それから必死に巣の内部を拡張し、食料や生活に必要なもの、綺麗な石などを溜め込み、巣としての体裁が整ったのが三日前。
立派な家持ちのゆっくりとなり、やがて可愛いお嫁さんを見つけて子供を作り、ゆっくりとした幸せな家庭を築くはずだった。
そう信じて疑わなかった。
だが現実は、そんな小さな幸せをも奪った。

「い゛い゛っ、いいわ゛ぁぁぁ!!! はぁはぁはぁ、こども、だぐざんづくりまじょうねぇぇぇぇぇ!!!」
「やだぁぁぁぁ!!! ゆっぐりでぎなぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

涙を諾々と流し、襲い掛かる暴力に抵抗しようとするれいむ。
だが身体はぴくりとも動かず、なすがままにありすの性交を受けてしまっている。
粘液の影響か、感じたくないのに段々と昂ぶっていく自分の心が嫌だった。
体内の水分が表皮に浮かび上がり、足元に水溜りを作る。
自分の身体がふやけ、それに反比例するかのように餡子が干乾びていくのが分かった。

「いいのね、ごごがいいのねっ!!?」
「やべでぇぇぇぇ!!! もうはなれでよぉぉぉぉぉ!!!」
「ぞ、ぞろぞろいぐっ、いぐわっ!!!」
「ゆぎぃぃぃぃぃ!!! だめぇぇぇぇぇぇ!!! ずっぎりじないでぇぇぇぇぇ!!!」

ありすの律動が早まる。そろそろすっきりするという合図だ。
れいむは本能的にそれを悟り、今まで以上に必死の形相で暴れだした。
だが、押さえつけるゆっくりアリスはびくともしない。
快感で見る者の生理的嫌悪感を催すような表情を浮かべながら、独り善がりの快楽を求めて振動を強めた。

「いぎまじょっ、いっじょにいぎまじょう!!!」
「い゛や゛ぁぁぁぁあ゛ああぁ゛ぁあ゛あぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁ!!!」
「んほおおおおおおおおおおおおおお!!! すっきりいいいぃぃいいいぃぃぃいぃいいぃぃぃぃ!!!」
「ずっぎりい゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁ!!! ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅう゛うぅ゛ぅぅぅ!!!」

同時に絶叫。
ありすはこの世全ての幸福を手にしたような極上の笑顔で。
れいむは最大の苦痛と快楽を同時に受け、涙や涎でぐちゃぐちゃになった絶望の表情で。
凍り付いたように動きを止めるれいむ、やがてその額から、凄まじい速度で植物の蔦のようなものが生え始めた。
同時に黒澄むれいむの身体。
まだ若いれいむは、子供を生んで無事でいられる身体を持っていなかったのだ。
栄養の全てを蔦に獲られ、れいむは突然の運命を呪いながら、朽ち果てて絶命した。

「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!」
「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!」

蔦に生った三匹の赤ちゃんゆっくりたちが、声を上げて地面に落下した。
本来はもう少し大きな身体になるまで蔦から離れず、親の栄養を吸収する赤ちゃんゆっくりであるが、親が死んでしまった瞬間、蔦から生まれ出ずる。
既に親が死んでしまっているので栄養の供給が出来ず、少しでも早く餌を食べられるようにしようという生存本能なのだろう。
兎にも角にも、ありすのレイプによって生まれた赤ちゃんゆっくり――全てれいむ種――は、自分たちの親に挨拶しようと周囲を見渡し。
そして、未だ性欲覚めやらないゆっくりありすを視界に納めた。

「ゆっ、おきゃあしゃん?」
「ゆー♪ ゆっきゅりしちぇ」
「ありずのあがぢゃぁぁぁぁぁん!!! いっじょにぎもぢよぐなりまじょうねぇぇぇ!!!」

ゆっくりありすが飛び掛る。
生まれたばかりの赤ちゃんゆっくりたちは、ゆっくりすることを知らないまま、苦しんで死んだ。





「やべでぇぇぇぇ!!! まりざのごどもにひどいごどじないでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

別の場所では、割と大きな体躯のゆっくりまりさが、数匹のゆっくりありすに圧し掛かられながら滂沱の涙を流していた。
まりさの眼前では、彼女の子供のちびまりさやれいむたちが、同じように子供のゆっくりありすに犯されている。
その傍には、大量の蔦を生やして呻く、ボロボロの身体のゆっくりれいむ。
まりさの番であるれいむは、まだかろうじて生きてはいたものの、瀕死の重傷であった。

「だいじょうびゅよ、ありしゅにまかしぇちぇ♪」
「きょうやっちぇしゅりしゅりしゅると、とっちぇもきみょちいいにょよ♪」
「や、やめちぇにぇ! まりしゃたちをはにゃしちぇにぇ!」
「ゆえーん! おきゃあしゃーん!! たしゅけちぇぇぇぇぇ!!!」

赤ちゃんゆっくりありすに圧し掛かられ、振動を加えられている赤ちゃんゆっくりまりさたち。
皆、一様に悲鳴を上げ、母に助けを求めていた。
ゆっくりまりさはその悲鳴が耳に届くたび、何も出来ない自分の身を呪い、悔しさに心をすり減らす。
今すぐにでも、子供の下に駆けつけたい。
だが、自分を囲んで律動する三匹のゆっくりありすが、それを許すはずもなく。

「まりざぁぁぁぁぁ!!! ありずだぢのてぐにっぐでめろめろにじであげるわぁぁぁぁ!!!」
「はぁはぁ、まりざがわいいぃぃぃぃぃぃ!!! いっじょにずっぎりじまじょうねぇぇぇぇぇぇ!!!」
「さんにんどうじなんで、まりざっだらなんでづみぶがいゆっぐりなのかしらぁぁぁぁぁ!!?」
「やべでぇぇぇ!!! からだすりつけないでぇぇぇ!!!」

左右と後方からの振動に、ただ耐える。
既に何度かすっきりされたのか、額にはいくつかの蔦を生やしていた。
蔦には小さなまりさ種、そして自分を犯したありす種が、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。
どうして、こんなことに……
ゆっくりまりさは朦朧とした意識で、過去を思い返す。


まりさとれいむは一ヶ月ほど前、餌を探しに出た森の中で出会った。
まりさが見たのは艶やかな黒髪を持つ美しいゆっくり、れいむが見たのは狩りが上手なかっこいいゆっくり。
二人はすぐに恋に落ち、一緒に暮らし始めた。
すぐにでも交尾したかったが季節は夏、炎天下でのすっきりは死の危険性が付き纏う。
だからまりさは誘惑を我慢し、れいむに手を出すことはしなかった。
そして先日、気温が下がり、秋が近付いたと確信した二匹は、ようやく子作りすることが出来たのだった。
蔦に生えた、愛の結晶。
小さなれいむとまりさが、生まれる日を夢見てゆっくりと眠っている。
れいむは家でおうたを歌ってあげ、まりさは子供の栄養も必要になったれいむのためにいっそう狩りに勤しむこととなった。
大変だったが、幸せに満ちた時間。
ついにその日がやって来て、生まれた子供が自分たちに向かって拙い声で「ゆっくりしていってね!」と言った瞬間、二人は感激の涙を流した。
あの時、二人は確かにゆっくりの絶頂にいたのだった。


「はぁはぁ、みょみょみょ、みょうしゅぐしゅっきりしゅるよ!」
「しゅっきりしゅると、とっちぇもきみょちいいにょよ♪」
「やぁぁぁぁ!!! やだぁぁぁぁぁ!!! しゅっきりちたくにゃいぃぃぃ!!!」
「みゃみゃー! たしゅけちぇ、みゃみゃー!!!」
「どうちてたしゅけちぇくれにゃいのぉぉぉ!!? おきゃあしゃんのばかぁぁぁ!!!」

子供たちの悲鳴が聞こえる。
助けてくれない自分をなじる声がする。
ごめんね、れいむ、まりさ。
まりさの意識は、闇の中へと溶けていった。





ぱちゅりーは、迫り来る暴力から必死に逃げようとしていた。
しかし、ぱちゅりー種は元来体力の低いゆっくり。
跳ねることが出来ず、這いずることしか出来ない速度では、やがて追いつかれてしまうだろう。

「ぱちゅりー、がんばってね!」
「ゆっしょ、ゆっしょ! ここをぬければきっとたすかるよ!」

それを支えるのは、友人のれいむとまりさだった。
二匹は両脇から挟みこむように陣取り、ぱちゅりーの背中を押している。
自分たちの命がかかっている中、このような行動を取るのは、なにも友達想いだからというだけではない。
二匹はぱちゅりーのことが好きだった。
いつか、どちらかを番に選んでもらおうと思っていた。
だからこうして、愛するぱちゅりーを見捨てず、背中を押しているのだった。

「む、むっきゅぅ……ふたりとも、ぱちゅりーをおいてにげて……」

そんな二匹に押されているぱちゅりーは、息も絶え絶えだった。
援護があるとはいえ、普段では到底出すことの出来ないスピードで走っているのだ。
脆弱な肉体は悲鳴を上げ、餡子を吐き出しそうになるのを必死に堪えている。
ありすに捕まりたくは無い。
だが、これ以上肉体に負荷がかかるのも耐えられない。
このままでは、れいむとまりさまで捕まってしまう。
自分が貧弱なぱちゅりー種であることを、ここまで恨んだことはなかった。

「なにいってるの! みんなでいっしょににげるんだよ!」
「そうだよ! がんばってにげて、いっしょにゆっくりしようね!」

だが二匹は元気付けるように微笑んだ。
ぱちゅりーは感極まり、嬉し涙を流す。
れいむとまりさはそれに気付き、そっと舌で涙を舐めとった。

「むきゅー……ありがとう、れいむ、まりさ……」
「さぁ、もうちょっとだよ、がんばろうね!」
「もうそろそろ、ありすたちも」
「いだわぁぁぁぁ!!! ごぉぉぉんなにがわいいゆっぐりだぢがざんびぎもぉぉぉぉ!!!♪」

と。
無情にも、ゆっくりありすが四匹、左手側の草むらから飛び出してきた。
三匹は恐慌し――だがれいむとまりさはすぐにぱちゅりーを庇う位置に立ち、ぷくぅーと威嚇するように頬を膨らませた。

「ぱちゅりー、にげて!」
「む、むきゅー! そんなことできないわ!」
「いいから、はやく!!!」

ありすたちはだれがどのゆっくりを担当するか、相談しているようだ。
その爛々と狂気に満ちた瞳。ゆっくりぱちゅりーの本能的な部分が警鐘を鳴らす。
友達を見捨てたくはなかった。
だけどそれ以上に、ありすに犯し殺されるのは嫌だった。

「ごめんなさい……!」

ぱちゅりーはれいむとまりさに背を向け、必死に這いずって逃げ出した。
後方で、れいむとまりさの悲鳴が上がる。
残酷な運命に、ぱちゅりーは先程とは違う種類の涙を流した。










「ゆっゆっゆー♪ ゆっくりのお歌はどんなもんだーい、と……」

太陽が沈み、月と星々が煌く夜空の下、俺はほろ酔い気分であぜ道を歩いていた。
本日は外界の話を本に纏めたいとかいうことで、俺を含めた村に住む外界の人間が阿求ちゃんの家に集められたのだった。
外界から幻想郷にやってきた人間は大抵妖怪の餌となってしまうが、無事村に辿り着いたものは外の世界へ戻るか、この幻想郷に残るかの選択肢を得られる。
俺たちは戻るのを拒否し、ここで新たな生活を手に入れた組。外の世界のことを知らない村人たちに話をせがまれたりすることもある。
年齢層は様々で、上は三十年も幻想郷で暮らしているというじいちゃん、下はなんと十二歳の子供までいる。
俺が五年前、幻想郷に誘われたのは十五歳のときだった。月日は経つものだなぁ、と少々感慨にふけってみたり。
とにかく、久しぶりに外の世界を懐かしんで話が出来たので、ついつい時間が長引いてしまった。
家で待ってるれいむも、お腹を空かせてしまっていることだろう。
急いで帰って晩御飯を作ってあげないとな。

「――――!」
「ん?」

今なんか、ゆっくりの悲鳴が聞こえたような。
足を止めて、きょろきょろと辺りを見渡す。
電灯のない、月明かりだけの暗闇と、静謐な雰囲気。
気のせいだったのかな?
ついゆっくり関係に敏感になってしまう自分に苦笑しながら、耳を澄ませた。

「……こっちの方向か?」

林の中から、確かにゆっくりの声らしきものが聞こえた。
近いとは言えないが、それほど遠いというわけでもない距離のようだ。
うーん。
まぁいいや、見に行こう。
俺は酒の勢いもあり、お気楽気分で林の中へと足を踏み入れた。





「はぁはぁはぁ、い゛いでじょ!? ぎもぢいいでじょぉぉぉ!!?」
「むっぎゅぅぅぅ!!! だずげでぇぇぇぇぇ!!!」

なんか凄い光景が広がっていた。
れいぱーありすに、ゆっくりぱちゅりーが犯されている。
ありすの発情した顔は尋常なものではない。なんであのゆっくりの中でも特に可愛い顔がここまで変化するんだろう、って感じ。
あれだ、言うなれば……ヤマンバ。
一方ぱちゅりーのほうは、苦しそうに呻きながら、逃げ出そうともがいている。
涙を流し、必死な表情のゆっくり……
あ、やべぇ、興奮してきた。

「むぎゅ!? お、おにいざん!!! ぱぢゅりーをだずげでぐだざぃぃぃぃ!!!」

俺の気配に気付いたのか、ぱちゅりーが涙目、いや涙顔で俺に嘆願してくる。
んー。
んんー……
……
助けてやるか。
俺、実は発情したありすって胴体付きれみりゃの次くらいに嫌いなんだよね。
ゆっくりをいじめる小道具としては好きなんだけど。
これでも俺はゆっくり愛で派なわけで、制裁は好きだけど虐待は嫌いなんだ。
人様に迷惑をかけない、悪いことをしていないゆっくりは、幸福に暮らすべきだと考えている。
だって可愛いもん、ゆっくり。
いやまぁ、このぱちゅりーがゲスではないなんて言い切れないんだけどさ。
とはいえ、今はゆっくりを捕獲出来そうなアイテムを所持していない。
仕方無い、気分悪くなるけどやるしかないのか。

「そら、よっ!」
「んほぉぉぉぉぉぉ!!! すっき……ゆげぇぇぇ!!?」

地面に落ちていた木の枝を広い、至福の顔ですっきりしようとしていたありすの頭を突き刺した。
激痛が走ったのだろう、ありすは悶え苦しみ、突き刺された穴の端からカスタードが少し零れ出る。
んあー、やっぱり肉体を直接攻撃するのは嫌いだなー、俺。
やっぱり攻めるなら精神のほうでしょ。

「むぎゅっ、むぎゅっ……」

ゆっくりぱちゅりーはありすの動きが止まったのを理解すると、なんとかありすの下から這い出した。
だが肉体的に極限状態だったらしく、えれえれと餡子を吐き出してしまう。
うわっ、きったねー。
俺はゆっくりありすの馬鹿力で枝が抜けないよう、もう一本渾身の力を込めて枝をありすに突き刺すと、ぱちゅりーが落ち着くのを待った。


やがてふらふらながらもなんとかしゃべるくらいの元気を取り戻したぱちゅりーが、俺に事情を説明する。

「ふーん、発情ありすの群れがねぇ」

話には聞いていたが、実際そんなことが起こるもんなんだなぁ。
じゃあ、集落一つ分のゆっくりたちが泣いて逃げ惑ったわけで……おっと、想像だけでなんかムラムラしてきた。
極力顔に出さないよう努めながら、俺はぱちゅりーを抱き抱えた。

「じゃあ、すぐ助けに行こうか。もしかしたら友達も救えるかもしれない」
「むきゅ、おねがいするわ……ごほっ、ごほっ!」
「ああほら、無茶すんな。静かに運んでやるから、な?」
「だ、だめよ、いそいで……れいむとまりさが……」

どうやら、友達思いのぱちゅりーらしい。ゲスじゃなくて良かった。
俺は体力を極端に失ったぱちゅりーを疲れさせないよう神経を使いながら、より深く林の奥へと進んでいった。





結論から言うと、生き残ったゆっくりは一匹たりとていなかった。
どのゆっくりも大量の蔦を生やし、黒ずんで朽ち果てていた。

「酷い有様だな、これは……」

あまりの惨状に、ごくりと唾を飲み込む。
こっちのれいむは犯し殺されたあげく、生まれた子供まで犯されたらしい。
あちらのまりさは、目の前で子供が犯される姿を見せ付けられたようだ。
どいつもこいつも、性交後のすっきりとした顔ではなく、怨嗟と憎悪に塗れた悲痛な表情をしている。
それほどまでに、恐ろしい体験をしたのだろう。
人間だろうが妖怪だろうがゆっくりだろうが、『死』というものを嫌悪する俺は眉をしかめた。
ゆっくりありすたちの姿は影も形も見当たらない。
存分にすっきりしたので、新たに生まれた赤ちゃんゆっくりありすを連れてどこかへ去っていったのだろう。
……もしかしたら、未だ快感が足らず、他の獲物を求めに行ったのかもしれないが。
そうなると、また何処かの集落が同じように襲われ、ここと同じ惨状になるのだろうか。
想像したら気分が悪くなってきた。

「れ、れいむ……まりさぁ……」

ぱちゅりーの友人のれいむとまりさは、少し離れた場所で見つかった。
他のゆっくりと同じように、額から何本もの蔦を生やし、生まれ犯され死んだ子供たちに囲まれて朽ち果てていた。
黒ずんだ顔に光る涙の跡。
見るだけで苦しみが伝わってくるほど、酷い体験だったのだろう。
ぱちゅりーは呆然とした表情でそれを眺めている。
今まで暮らしてきたコミュニティの全滅、そして友達の喪失。
しかもそれはあらかじめ来ると予想されていたものではなく、ある日唐突にやってきた暴力。
ぱちゅりーはぶるぶる震えている。
だがすぐに、体力の限界となったのか、白目を剥いて気絶してしまった。

「あ、おい!?」

慌てて気を確かめようと揺らそうとし、思い留まる。
ぱちゅりー種は体力がない
子供を作ることだけは回避出来たとはいえ、精神的な疲労もあって瀕死状態なのだろう。
このままでは、本当に死んでしまう。

「仕方無い、乗りかかった船だ。家に連れ帰って介抱してやるか……」

万全の状態に回復出来るなんて断言出来ないが、出来る限りのことはしてやろう。
愛で派ですから。
ゆっくりの泣き顔を見るのも好きだけど、ゆっくりしているところを見るのも好きなんです。

「とはいえ、少しくらい役得があってもいいよな?」

俺はぱちゅりーを襲っていたゆっくりありすのところに戻った。
ありすはなんとか突き刺された棒から抜け出そうともがいている。
その度に激痛が襲い掛かるだろうに、大した奴だ。
俺に気付いたのか、ありすは血走った目で叫んだ。

「ぞのぱぢゅりーをよごずのよっ!!! まだあいじだりないわぁぁぁあぁああぁぁぁ!!!」
「……」

開口一番それかよ。
ゆっくりありすの精力、恐るべし!
なんか嫌な気配を感じたのか、抱き抱えたぱちゅりーがぶるぶる震えだすし。
はぁ。
まぁいいか。





これから、また楽しくなりそうだ。

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最終更新:2022年04月16日 23:49