>331 :名無したんはエロカワイイ:2008/07/31(木) 10:59:58 ID:fukPI9hM0
 > あー、ゆっくりで塊魂プレイしたい

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(なーなな ななーなーなーな なーなーななーな
 ずんずくずずんず どぅんどぅくどぅんどぅん)


---ゆっくりで塊魂---


「……なんだこりゃあ」
 魔法の森の近くをの小道を急ぎ足で歩いていた俺は、目を剥いた。
 路上にゆっくりれいむが、ひと群れ。それ自体は珍しくもない。
 おかしいのは、そいつらがベタベタとくっつきあって固まっていることだった。
「おまえらナニやってんの?」
「ゆっ、ゆぐぅぅう~」
「わかんないよ、くっついちゃったよ!」
「おにいさん、ゆっくり助けてね!」
 バレーボール台のゆっくりれいむに、ピンポン玉ぐらいのやつがうじゃうじゃと八つか九つもくっついている。
たぶん家族だろう。母れいむはしきりに体をもぞつかせて子供たちを振り落とそうとするが、下手に動くと下側
の子れいむを潰してしまいそうなためか、思うように動けないらしい。
「ゆっ! ゆっ! んゅっッ! よーっはッとッ! へっぷほ!」
「おがあざぁぁん、おもいおもい!」
「つぶれるよ、ゆっくりうごかないでね!」
「……ぷっ」
 その場で一人相撲をしているようなアホくさい母れいむの姿に、俺はふきだした。
「ぷっははははははは、ばっかじゃねーのおめーら、饅頭のお前らがそんなんなっちゃったら生きていかれねー
だろ。ちょっとは考えて生きろよ!」
「そんなこと言わないでねぇぇぇぇ!」
 母れいむは涙目でぶくぶく膨れる。ほっぺたの下のやつが潰されて悲鳴を上げる。
 あー……。
 陽気がすごいからなア。
 おおかた家族でゆうゆうもたれあっているうちに、この猛暑で溶けてくっちいちゃったんだろう。
 これは俺のせいじゃないからな。ゆっくりが勝手に苦労してるだけだ。
 そばで眺めていたって、なんら罪ではない。
 俺は、困り果ててぶるんぶるん回っているゆっくりれいむを、しばらく見物した。
 ……十分ほどで飽きた。
「しゃーねえなあ、恨まれても寝覚めが悪いから、助けてやるよ」
「ゆっ、ほんとう?」
「さっさと助けてね! ふんふん!」
 ナマイキなことをぬかしやがる母れいむを無視して、俺はそいつの頬に触れてやった。
  ころん
「あれっ?」
 母は後ろへ一回転する。「ゆべっ!」「うぎっ!?」と悲鳴を上げて子供たちがぺちゃんとつぶれ、母の肌に
張り付いた。
「何してんのお前、娘つぶれちゃったじゃん!」
「ゆぐぅぅぅぅ!? れいむの子どもがぁぁぁ!」
「じっとしてろよ、残った娘、殺したくないだろ?」
 そう言って俺は、また手を伸ばした。
 額に触れる。
  ころんころんころん
「ゆぐぐぐぅ!」
 母れいむは三回転した。その途中で石やら草やらも貼り付けてなんだか汚くなった。
「あっれぇ……」
 俺は不思議に思った。
 こいつ、ちょっと触っただけで、ボーリングの玉みたいにスムーズに転がりやがる。
 なんか変なことになってんじゃないか……?
 ゆっぐゆっぐともがいている母れいむに歩み寄って、さらに押した。
  ころころ、ごろろんっ
「ゆっぐりやめでねぇぇぇ!?」
「あは」
 俺は笑った。
 こいつ、坂を上ったぞ?
 しかも小枝や葉っぱをくっつけてさらに汚くなった。
 ……これは面白い。
 俺は母れいむの苦情を無視して、道なりにそいつを転がし始めた。
  ころころん
  ころころん
  ころころころころん
 一回押すたびに、五メートルほど転がって路肩で止まる。そのたびにそこら辺のものを吸いつけて、雪だるま
のように大きくなる。
 子供のころ、石蹴りってやったじゃん。
 学校から家まで、これって決めた石をずっと蹴って歩いた。
 別に石自体が好きなわけではないが、最初に決めたから、そいつを蹴り飛ばさなければならなかった。
 そんな感じで、俺は目的地までひたすらころころと母を転がし始めた。
「やめでぇぇ!」
「ゆっくちちたいよぉぉ!」
 おお、まだ子れいむも生きてんのか? 石やなんかでゴマ団子みたいにデコボコになった、五十センチほどの
ゆっくり塊の中を覗き込むと、ちょうど他のものの隙間にハマったらしく、小さな赤いリボンの頭がぴょこぴょ
こ動いていた。
「おまえ、運が良かったなあ。そこならずっと潰れないよ」
「はやくやめちぇねえぇぇぇ!」
「悪い、まだ二、三キロあるんだ」
 母娘一匹ずつの悲鳴をBGMに転がし続けた。
 少しいくと、面白いことが起こった。
 川沿いに日光浴をしていた白黒のゆっくりまりさ家族。俺たちが近づくと振り向いて挨拶する。
「ゆっくりしていってね!!!」
「していってね!」
「しちぇっちぇね!」
 次の瞬間、そばを通ったゆっくり塊に、そいつらは吸い寄せられた。
  ひゅうん ぽぽぽぽむっ
「ゆっ!?」
「ゆっくりくっついたよ?」
「ゆっくりはなちてね!! はなちてっ! はなちぇはなちぇー!」
「ほう……」
 俺は感心してあごを撫でた。
 なるほど。
 これではっきりした。ただの自然現象じゃない。母れいむは辺りのものを吸い寄せる力を身につけてしまった
らしい。よく見れば外側の石やら木やらは、別段刺さってもいないのにくっついている。
 俺がくっつかないのは謎だが、まあそんな細かいことはどうでもいい。
 ひとつ、これがどこまで続くか試してみようか。
「よし、みんないっくぞー☆」
「やめでえぇぇぇぇぇぇ!?」
 進めば進むほど、塊は大きくなった。道端にいたれいむ家族、木のうろから顔を出したぱちゅりー家族、通り
すがりのちぇんやらん、近くを飛んでいたゆっくりゃやフランまで引き寄せた。八十センチ、一メートル、一メ
ートル半。ゆっくり塊はどんどん大きくなった。
  ひゅうん ぽむっ
  ひゅうん ぽむっ
「ゆっくりはなしてぇぇ!」
「はっはっは、そりゃ☆無理だ」
 意味もなくハイテンションに笑いながら俺は答える。
 これ、大きくなっても全然重さが増えない。
 ころころと軽いままなのだ。不思議きわまる。
 そして楽しい!
 鼻歌を歌いながら俺は押して行き、目的地のアリス邸にたどりついた。
「ちわーっす、郵便です」
 ああうん、言い忘れていたけど、俺配達人。肩掛けの郵袋も、これこの通り。いまどき徒歩で運ぶなんてレト
ロだろう。
「あら、どうもありがとう」
 玄関に出てきたアリスさんが微笑んだ。うむ美人だ。美人だらけの幻想郷の中でもこの人は群を抜いている。
いろいろ怪しい噂もあるが、そんなところも俺は好きだ。
 そんなアリスさんが、俺の背後の塊を見てギョッとした。
「って、それは何!?」
 無理もない。ゆっくり塊の大きさは、今では四メートルを越えている。
「ゆっくりはなしてね!」
「つぶれて顔がいたいよぉぉ!」
「いやっいやああぁぁ、れみり゛ゃぎらいーー!」
「うっうー! れみりゃを早くはなすんだどぉー!?」
 数百のゆっくりがてんで勝手に悲鳴を上げている。驚かないほうがどうかしている。
「いやまぁ、なんといいますか、ただの拾いもんです」
 俺はあいまいに答えた。
 アリスさんは顔を引きつり気味にして、後ずさろうとした。
「な、なんだかわからないけれど、あんまり係わり合いになりたくないわね……きゃあっ!?」
  ひゅうん ぽむっ
「おおお?」
 俺は驚愕した。アリスさんまで塊に吸い寄せられ、くっついてしまったのだ。
「ちょっと、何するの! 離して、離しなさいよ!」
 叫んどる叫んどる。美少女が拘束されて悲鳴を上げとる。
 実にいい景色だ。――とか言ってる場合ではないか。
「すみません、それ外れないんですよ」
「なんですって?」
「俺が作ったんじゃないもんですから」
 答えながら、俺はあることに気づいていた。
 アリスさんのような有名妖怪まで引き付ける力があるのか、この塊は。
 ということは――
 もしかして、やりたい放題じゃないか!?
「……なーなな ななーなーなーな なーなーななーな
 ずんずくずずんず どぅんどぅくどぅんどぅん」
「なっ、なにを鼻歌なんか歌ってるの? 早くなんとか――」
「すんません。俺、ハジけます!」
「えっ? ってきゃあああああああ」
  すってんころころ すってんころころ
  すってんころころ すってんころころ
 俺は両手を使って勢いよく塊を押し始めた。

 霧雨魔理沙、ゲット。
 博麗霊夢、ゲット。
 紅美鈴、ゲット。
「おいおいなんなんだこれはー! 霊夢、これなんだよ!」
「知らないわよ私だって、アリス、アリスー?」
「私は被害者よー!」
「離して、離してってば! 仕事中なのよ私は、このぉっ……ふんッ!」
「きゃあああああ!」
「ちょっこらっやめっ!」
「気功を使うなぁぁぁ!」
 おーおーお、なんかビリビリしてえらい騒ぎになっとる。
 そして当然――
「ゆぎいいぃぃぃぃぃ!」
「いだいよぉおぉぉぉぉ!」
「皮がびりびりするよぉぉ!」
「んおおぉぉっ、んほっ、ほおぉぉぉぉ!」
 ゆっくりたちも涙目で大騒ぎしている。中にはキモチよさそうなのもいるが。
 ゆっくり魂の直径は六メートルになった。それでも止まらず、俺は幻想郷を駆け巡る。
「むぎゅぅぅ、苦しい……」
「咲夜、咲夜! 早く何とかして!」
「はっはい、ただいまっ! ふッ! ……時間を止めても外れない!?」
「ぴーっ、アタイこんなの趣味じゃないいぃ!」
 なんか館の一部ごと飲み込んで、三十メートル。
「らんしゃま助けてぇぇぇ!?」
「ちぇぇぇん! くそっ、紫さま、紫さまぁぁ!?」
 なんかよくわからないお屋敷みたいなものを巻き込んで五十メートル。
「うわあぁっ!? ちょっ、ちょっと今実験中よ!?」
「なんだこの……ハッ!」
「あちゃちゃダメです火はやめてください火は!」
「あっれー、これもしかして私が仕掛けたやつか?」
 竹やぶと京屋敷みたいなもんをまるごと飲み込んで、百メートルつまり二十五階建てのビルぐらいになった塊
をころんころんと転がしていると、俺の目の前に来た兎耳の女の子が、ほっぺたポリポリかきながら言った。
 おお、この人は。
「てゐさんじゃないスか。これ、あんたが?」
「昨日、ゆっくりに、いろんなものがくっついちゃう悪戯をして放り出しといたんだけど……」
「魔法の森の入り口あたりだったら、多分それっす」
「やっぱりかー」
「これ、どうしたら外れるんですか」
「それはねぇ……」
 言いかけたとき、ぴゅうと風が吹いて塊がころころと転がった。
 あ、あー……てゐさん、上のほうへ行っちゃったよ。
 次いつ来るかわからんな。
 というか、これがバラバラになったら、なんかただ事ではすまん気がする。
「ゆっくりさせでぇぇぇ!!」
「私もっ、私もゆっくりしたいわよッ!」
「このっ、もう我慢できない――マスタースパーク!」
「ゆぎゅぁぁぁ!」
「あっつぅぅぅこらっ魔理沙魔理沙!」
「ゆっぐぅうぅ、ゆぐぅぅぅぅ!!」
 もう人間もゆっくりも関係ない。ひとつに丸まった人と妖怪と饅頭とガラクタの混合物が、もざもざわさわさ
と動いて、悲鳴を上げたり、ビームを出したり、弾幕を放ったりしている。
「俺です」なんつったら、殺されるな、これは。
 となると――。
「行けるところまで行くか!」
 俺はさらにころころころころとゆっくり塊を転がし、幻想郷の森も川も山も湖も突っ切って駆け回った。ゆっ
くり塊はどんどんどんどん成長して妖怪とゆっくりと人間を飲み込み、ついには直径一キロを越えててっぺんは
妖怪の山の頂上を越えた。
 そのころ、とうとうゆっくり塊は浮上した。上のほうについた天狗やら虫やら何やらが、逃げようとして飛ん
だためだろう。
「あー……」
 空を飛んでしまったら、もう俺には手が届かない。
 俺は若干の寂しさとともに、数ヵ月をともに過ごした巨大なゆっくり塊を見送ったのだった。
「達者でなあ。元気でなあー……」


 それ以来、夜空に星がひとつ増えた。
 オリオン座のあたりにまぶしく輝く「ゆっくり星」を見るたびに、俺はかつて幻想郷をにぎやかしていた美少
女たちとゆっくりたちを思い起こし、懐かしむのだった。


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最終更新:2022年05月04日 22:05