野生のゆっくりげすまりさは、知り合いのぱちゅりーからある話を聞いた。
里で野菜の生えているところを襲わず、道の端っこで歌を歌えば、ゆっくりできるものがもらえると。
事実その里では、飼いゆっくり・野良ゆっくり問わず、ゆっくりによるストリートライブが盛んだった。
げすまりさは伴侶のまりさと子供たち20匹を連れ、人里へと下っていった。
ちなみに20匹もいる理由は、後先考えずにすっきりしたからである。下衆の遺伝子はこうして増えていくのである。
ぱちゅりーに言われたとおりに、空き缶を目の前に置く。そしてみんなで歌を歌い始める。
「ゆゆゆっゆー♪」
「ゆゆー♪」
「ゆーゆー♪」
人間が聞けば耳を塞ぎたくなるような声であるが、この里ではドスとの協定のせいで、人間の住居に危害を加えていないゆっくりを潰すことができない。
行く者は皆、不快そうな顔でゆっくりをにらみつけるか、いらなくなったゴミを缶の中に突っ込むかのどちらかしかいない。
親まりさは「もっとゆっくりできるものをちょうだいね!いちまんえんでいいよ!」と抗議するが、そのたびに無視される。
「たからものがいっぱいあつまったよ!」
子まりさはのんきなもので、綺麗な小石や変わった形のゴミなどを帽子の中に突っ込んで大喜びしている。
「…おい」
「ゆ?」
そこに、一人の男が通りすがった。
「おにーさん、まりさたちにおかねくれるならとくべつにおうたをきかせてあげてもいいよ!」
「いちまんえんでいいよ!」
「来い」
男は2匹の親まりさの帽子を素早く奪い取り、すたすたと歩き出す。
「ゆっぐりでぎないよおおおおお!!!」
親まりさはそのあとを必死になって追う。そして親まりさを追いかける子まりさと赤まりさ。なんとも平和的な光景である。
この里のメインストリートのライブは素晴らしいものであった。
「ゆっくりいっかはゆかいだっなぁ~♪」
人間の歌に勝るとも劣らぬ美声を披露するゆっくりれいむ。(あんなのはへたなゆっくりのうただよ!まりさたちのほうがひゃくおくまんばいはすてきなうただよ!)
「まんじゅうに~うまれたぁこのぉいのちい~♪ゆゆゆゆ~♪」
子供とコーラスをするゆっくりまりさ一家(あんなへんなうたをうたうなんてあわれだね!ゲラゲラゲラ)
「ゆゆゆ~♪どおしてわだじは~ゆんでれら~♪」
歌は今ひとつだが、寸劇を織り込むことでひとつのミュージカル風の演劇を作り出すゆっくりの群れ(あんなことでないているなんてなんなの?しぬの?)。
それを見せながら、男はまりさ一家に語る。
「ああいうのが人間がゆっくりできる歌なんだよ。お前らのは歌じゃない、雑音だ。こんなのじゃ金どころか餌ももらえねぇよ」
「ひどいよ!まりさたちはドスにもほめられたんだよ!」
「そりゃゆっくりの間では上手いのかもしれないがな、人間が聞いたら殺されかねないぞ」
「あんなゆっくりできないうたをうたうなんて、ゆっくりじゃないよ!おじさんはゆっくりりかいしてね!」
「それにドスとの「きょうてい」もあるからころされないよ!おじさんばかなの?」
「おおおろかおろか」
「「「「ゲラゲラゲラ」」」」
小ばかにしたように笑うげすまりさの一家。男はそれを無表情で見つめている。
何を言っても無駄だ。男は再びゆっくりの帽子を素早く奪い、今度は路地裏の広場へと歩いていく。
「ま、まりざだぢのぼうじがえじでえええええ!!!」
まりさたちはやはり路地裏におびき寄せられる。そこで待ち伏せしていた男は、素早くゆっくりたちを透明な箱に突っ込んでいく。
「お前らを一流のストリート・ミュージシャンに仕立ててやるよ」
男はそういいながら、自分の家へと帰っていった。
数日後。男は片方の親まりさに撥を持たせていた。目の前には、見学に来た別の男がいる。
「教えたとおりにやれ」
「ゆ、でも…」
「やれ、このゴミ饅頭が」
男に言われ、親まりさは泣きそうな顔で、地面に敷かれているボードを撥で叩き始める。
「ゆべっ」
叩いた場所が、ちょうどシの音を奏でる。別の場所を叩くと、今度はラの音を奏でる。いずれもゆっくりの悲鳴だ。
そのボードは20個のマスを持ち、それが1つの音階を作り出していた。
「ゆべっ」「ゆびゃっ」「ゆぎっ」「ゆげぇ」「ゆぐっ」「ゆごあ!」「ゆびょ」「ぷぎぇ」
そのマスには子ゆっくりが埋め込まれており、それぞれが叩かれたときの悲鳴で別の音を奏でる。それがひとつの音楽を奏でていた。今回は「七つの子」をひいている。
そしてもうひとつ、「歌詞ボード」という場所が存在する。ここからはゆっくりの歌声が聞こえる。ここにはもう片方の親まりさが埋め込まれている。
「があらあずう…なぜなぐのお…」
「…また凝った演奏方法だな」
見学に来た男が、不思議そうなまなざしでその謎のボードを見つめる。ボードには子ゆっくりが苦悶の表情を浮かべている。おでこには「肉」…ではなく、ドだのソだのという文字が書かれている。
「ゆっくりの悲鳴を音階状に仕立て上げたんだ。とりあえずオレンジジュースをボードにぶっかけてやれば復活する。ちなみにお代は別請求にする」
男は得意げに言いながら親まりさから撥を奪い取り、『剣の舞』をたたき始めた。
「ゆびゃびゃびゃびゃびゃびゃびぇびゃあ!」
「まりざのごどもがあああああ!!!」
「で、名前は?」
「まぁモチーフは木琴だからな。名づけて『ゆっきん』ってところかね」
男は撥を演奏まりさの口に突っ込みながらにんまりと笑う。
「まぁお前らも、これで多少稼ぎができるってもんだ。感謝しろよ。お前たちも苦労しているドスまりさに人間の里の菓子でも買ってやったらどうだ?」
ゆっきんボードには、バスケットボールくらいの大きさしかない、生物としては非力なまりさでも引けるようにローラーがついている。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。どうしてまりさの家族はこんなことになってしまったんだろう。
まりさは泣きながら、「七つの子」を叩き続ける。我が子の悲鳴が、生きる糧を得る唯一の方法だ。
毎日楽して暮らしたい。そう思った結果がこれだ。
「おれんじじゅーすと、おかねちょうだいね…」
「はい、オレンジジュース。あとこれお金。じゃあなゆっくり!」
「…そんな…2えんじゃ…ゆっくりできないよ…」
隣の熱唱れいむは、自分たちにとってまったくゆっくりできないロックソングを歌っている。その結果、100円玉はもちろんのこと、紙のお金までもらっている。
あれだけお金があれば、きっと子供たちも養っていけるのだろう。
それに比べて、自分は完璧な「ゆっきん」を使って1日中がんばってやっと2円だ。
親まりさは今更になって、自分の技量が足りないことを思い知ったのであった。
めでたし、めでたし。
材料は勝手に山から下りてくる。仕込みに時間はかかるが、その間の虐待が楽しい。しかもものめずらしさから高く売れる。
男はゆっくりのストリートライブを発展させるため、今日もゆっきん作りに励んでいる。
ゆっきんの作り方
1.適当なゆっくり一家を捕まえる。できれば15匹以上が望ましい。
2.砂糖を表面に延ばした板とオレンジジュース、カッターナイフ(ゆっくりを切るもの)を用意。
3.子ゆっくりを前面と背面に切り分け、前面を砂糖板にくっつけ、オレンジジュースで癒着させる。これを繰り返す。ゆっくりは餡子を適当な分量で残しておけば、顔を切られても死ぬことはない。
4.子ゆっくりの顔、または上の板に対応する音を書く。
5.ゆっきん仕込みを開始する
6.ゆっきん仕込みが終わったら、砂糖板の四隅にキャリアーをつけてゆっくりが運びやすいようにしてやる
これで完成。砂糖板はちゃんと防腐・防虫加工のために殺虫剤を混ぜてあるため、虫やカビは寄り付きません。寿命は大体3ヶ月です。
手入れは毎日弾くことと、オレンジジュースをぶっかけてやることです。食べさせてはいけません!
ゆっきん仕込みのやり方
1.板にくっついた子ゆっくりを、調教専用の撥で叩く。ゆっくりは悲鳴を上げる。
2.音を隣で奏で、「叩いたらこの音を出せ」ということを言い続ける。失敗したら皮を引きちぎってやろう。
3.死にそうになったらオレンジジュースや、背面の餡子を傷口から塗りこんでやる。食べさせるとゆっくりが助長するため、調教の成果が薄くなる。傷口に粗塩を塗りこむような治療が重要である。
4.完璧に音が奏でられるようになったら次にいく。これを何回も繰り返す。
5.すべてのゆっくりが音を奏でられるようになったら、適当な曲を弾いてみる。間違えたゆっくりとその両隣のゆっくりを、死ぬ寸前まで殴り続ける。こうして連帯責任感を植えつける。
6.一曲奏でられるようになったら、硬化剤を注入。ゆっくりの強度を上げる。この作業には時間がかかるため、硬化後にまた簡単な調教を行う。ゆっくりは死の恐怖と調教の記憶から、すぐに曲が奏でられるようになるはずだ。
7. 歌詞ボードを作る場合、ゆっくりの悲鳴で音楽を奏でながら「ここはこう言え」ということを同じように仕込む。歌詞ボードのゆっくりは片親がよいだろう。子ゆっくりの場合、記憶力が足りないのだ。なお、がんばれば3分くらいの曲を歌うことができる。
8.演奏ゆっくりがいる場合、そのゆっくりを「この順番で叩け」と言うことを仕込んでいく。こちらは無理ならやらなくてもいい。ゆっきんの演奏者は別に誰でも構わないからである。
9.たまに、反抗心が強かったり、音をどうしても奏でられないダメなゆっくり一家がいる。その場合は虐待用にして、別のゆっくりに「このゆっくりは曲が奏でられないからこんな目にあっているんだよ」ということを教える際の材料にする。
ゆっきんがあったら俺は『U.N.オーエンは彼女なのか』とか『ネイティブフェイス』とかの激しい曲を延々と奏でたいですね
最終更新:2022年05月03日 15:29