れいむが逃げて行った直後、まりさはありすと共に絶頂を向かえ、望まぬ我が子を頭に宿すことになった。

「ゆっぐ・・・ゆぅううぅ・・・どうぢでばりざが、ゆっ・・・」
「んほおおおおお!ばでぃさああああ!もっどずっぎぢぢまぢょおおおおお!!」
「ゆ゛っ!やべっ!やべでぇ!?もうずっぎぢぢだぐないいいいいい!?」

必死で抵抗しようとするも、すっきりさせられたショックと子どもに餡子を奪われた疲労で抵抗することすらままならない。
ありすのなすがままに犯され、注がれ・・・4度目の絶頂を迎えるその直前に、まりさは黒ずんで朽ち果ててしまった。

「もっと・・・ゆっくり、したかったよ・・・」
「ゆふぅ・・・すっきりー」

もはや物言わぬ饅頭となったまりさを相手に最後のすっきりをしてありすは満足した。

「ゆぅ?まりさったら、すぐにへばっちゃうなんて、いなかものね!」
「・・・・・・ゅぅゅぅ」
「ゆほっ!かわいいあかちゃんがいるわ!」

そして賢者モードに突入したありすはまりさの事など気にも留めずに、我が子の誕生を喜んだ。
それは母になる喜びでは断じて無かった。
可愛いまりさがいっぱい、4本の蔦に4匹ずつ、あわせて16匹も居ることが嬉しかったのだ。
すぐに死んでしまう赤ちゃんでも1回くらいはすっきり出来るから、まりさで16回もすっきり出来る。

「ありすのとかいはなあかちゃん、ゆっくりいそいでうまれてきてね〜」

勿論、ありすをすっきりさせるために。
ありすのほうはどうしようか?
そうだ、れいむにでも育てさせてあげよう。
あの子は可愛いものが大好きだから、きっと泣いて喜ぶに違いない。
それから、ご褒美に1回くらいすっきりの相手をしてあげよう。

「ゆふふふっ」

すっきりがいっぱいのありすの素敵な未来予想図。
想像するだけで涎が溢れ出てくるような最高の生活。
しかし、それが叶うことは永久になかった。

「うっうっー♪」
「ゆがっ!?」

「うー」という聞き慣れない鳴き声とともにありすを襲撃したのは幼児体系の胴体を持つゆっくりそっくりの顔をした生き物だった。
ゆっくりれみりゃ。ゆっくりでありながら災厄とともに封印され、昨夜、箱から解き放たれたその怪物はゆっくりを好んで喰らう恐ろしい存在である。
まるっとした2本の腕を伸ばしてありすを掴み、鋭い牙の生えた口へと彼女を誘う。
大きく開いた口はありすにとっては地獄の入り口も同然。
ひとたび閉じてしまえば、彼女は二度とこちらの世界に帰ってくることが出来なくなってしまった。

「うまうま〜♪」
「がっ・・・い゛っ、やべでぇ・・・いだい゛いぃぃぃいい・・・!?」
「うるさいんだど〜、がぶっ☆」
「あ゛っ・・・もっど、どど・・・い゛っ・・・」

ゆっくりにとっての悲願であるゆっくりすること。
それに対する悲壮なまでの欲求を如実に表すあの断末魔を口にすることさえも許されずに、れみりゃの口の中へと収まった。

「う〜・・・ちいちゃいのはもってかえ゛っ!?」

ありすを食べ終えて満足したれみりゃは赤ゆっくりを生やしたまりさを巣にもって帰ろうとする。
が、彼女は失念していた。自分もまた脆弱なゆっくりであり、しかも他の動物を惹きつけやすい匂いを放っているということを。

ワォーン!とでも記述すればいいのだろうか。
とにかく、そのような鳴き声とともに姿を現したのは群れることのない変わり者のあの野犬だった。
最初の奇襲同然の一撃だけでれみりゃの右腕を食いちぎり、思いっきり突き飛ばして近くの、木の幹に叩きつけた。

「うぶふっ!?」

失った腕から、そしてたたきつけられた時に背の低い木の枝に刺さり、そのまま千切れた右足から、そして口から肉汁を漏らす。
そう、ゆっくりの多くが饅頭であるように、れみりゃは動く肉まんであった。
立つことはかなわない、反撃することも当然不可能。なす術のないれみりゃは取った行動は・・・

「ごーばがんのおぜおうさばになにずるんだどー!?」

実際にはここまではっきりと喋れていない。
痛みと恐怖でろれつが回らず、ぼろぼろになった口内は思うように音を発してくれなかった。
よって、犬には「ぼーばばんほおへーふぁふぁ、ひ・・・はひふはほー!?」くらいにしか聞こえていない。
もっとも、ちゃんと喋れたところで言葉は通じないのだが。

「うぎゃああああああ!?」

問答無用で今度は左手を噛み千切る野犬。
それから左足を、背中の羽を噛み千切り、痛みで気を失って静かになったところでれみりゃと傍にあったまりさだった饅頭を巣へと持ち帰った。



れいむがちぇんの巣に到着した時、巣の入り口付近にぱちゅりーが横たわっていた。

「ぱ、ぱちゅりー!どうしたの、ゆっくりしてねっ!?」
「む、むきゅう・・・れいむ、く・・・るしいわ・・・ゲフッゲフッ!?」

ぱちゅりーは喋るたびに咳き込み中身のクリームを吐き出す。
辺りを見てみるとちぇんの巣の傍にあるぱちゅりーの巣からクリームの跡が点々と続いていた。
恐らく、ちぇんに助けを求めるために、まともに動くこともかなわない身体でここまで這いずってきたのだろう。

「ぱちゅりー!ゆっくりしてね!ゆっくりしてよー!」
「む、むきゅぅ・・・・・・ゲフゲフ!?」

喋るたびに、ではなかった。
苦しみのあまりに呻くたびに咳き込み少量ながらも中身を吐き出してしまう。
なのに、これだけ入り口で騒いでいるにも関わらず、ちぇんが姿を現す気配は一向にない。

「ぱちゅりー!ゆっくりしようよー!?」

そう言ってぱちゅりーの頬をさするれいむ。
そうやって刺激を与えることが危険なのだが、混乱しているれいむにそのことに気付く余裕はない。

「やべ・・・やべtゴホッゲホッ!?」
「ぱ、ぱちゅりー!?」

ぱちゅりーは今までの中で一番盛大にクリームを吐き出した。
そして二度と彼女が喋ることも、動くことも、咳き込むこともなかった。
涙と吐き出したクリームに塗れ、長い髪はくしゃくしゃで、げっそりとやつれた正視に堪えない死に顔だった。

「ぱちゅりいいいいいいいいいいい!?」
「だめだよ!ゆっくりしないでゆっくりしようね!」
「ゆっくりしちゃだめだよ!ゆっくりしてよー!?」
「ゆっくりしたらゆっくりできないよおおおおお!?」
「ゆっくりしようね!ゆっくりー!?」
「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってねー!?」
「ゆっくりー!ゆっく、ゆっぐりぃ・・・・」

れいむはぱちゅりーだった饅頭に頬擦りをし、顔を舐めながら呼びかけるが、彼女が返事することはなかった。
そして、数十分後。
れいむは頬を膨らませながらちぇんの巣の中に入っていった。
当然、入り口でぱちゅりーがゆっくり出来なくて苦しんでいるのに助けようとしなかったことを叱るために。

「ちぇん!どうしてぱちゅりーを・・・?」

が、巣の中の光景を目の当たりにしたれいむは怒ることを忘れてしまった。
食い散らかされた餌、巣の中に散乱するちぇんの宝物。そして、部屋の隅でぶるぶると震えるちぇん。
何か恐ろしい化け物にでも襲撃されかたのような惨状。

「ちぇ、ちぇん・・・?ゆっくりしていってね!」
「ゆ゛っ!ゆっぎぢぢでいっでね!?」

反射的に返事したちぇんだったが、れいむの顔を見るや否や恐怖に青ざめて再び震え始めた。

「ちぇん、どうしたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「おこえがちいさいよ!それじゃゆっくりきこえないよ!」

そう言いながらちぇんの傍に這いずって近寄るれいむ。
ようやくちぇんの言葉が聞こえたとき、れいむはまたしても呆然とする事しか出来なかった。

「ぎゃくたいおにーさんがくるよー、わからないよー」
「おにーさんがぎゃくたいおにーさんだねー、わかるよー」
「ちぇんはぎゃくたいされたくないよー、わかってよー」
「すっきりさせられるんだよー、わからないよー」
「ちぇんもすきですっきりしてるんじゃないよー、わかってよー」
「すきだけどそーじゃないんだよー」
「どうしてちぇんにゆっくりできないこというのー、わからないよー」
「やめてねー、あかちゃんいぢめないでよー」
「ちぇんはあかちゃんとすっきりーしたくないよー」
「やらないところすんだねー、わかるよー」
「したくてすっきりしたんじゃないんだよー、わかってよー」
「しんだらゆっくりじごくにいっちゃうんだねー、わかるよー」
「ゆっくりじごくはもっとゆっくりできないんだねー、わかるよー」
「どうしてもゆっくりできないよー、わからないよー」
「うまれかわってもきっとゆっくりできないんだよー、わからないよー」

何がなんだかよく分からないが、途轍もなくゆっくり出来ないことをぶつぶつと口走っていた。
結局、れいむはちぇんが怖くなって、巣からそそくさと立ち去った。



れいむは森の中を必死で駆けていった。
何故か森の中は全然ゆっくり出来なかった。
見たこともない体つきのゆっくりが、そいつと良く似た空を飛ぶゆっくりがれいむ達を襲い喰らっていた。
昨日まではれいむ達に食べられるばかりだった虫さんが、群れを成してれいむ達を食べていた。
濁った目をしたまりさ種がれいむ種を犯し、蔦になった子ども達を食い漁っていた。
焦点の定まらない目をしたありす種が涎を垂らしながらまりさを犯し尽くし、犯されたまりさは黒ずんで死んだ。
ぱちゅりー種は道端でクリームを撒き散らしながら野垂れ死んでいた。
そして、その亡骸に幼いちぇん種やみょん種が我先にと喜び勇んで食いついていた。

「「「んほおおおおおおおおおおおおおおお!」」」
「やべぢぇええええええええええええ!?」
「なにいってるの!?れいむはかわいそうなんだよ!」
「れいむをゆっくりさせないれいむはゆっくりしね!」
「いなかものをすっきりさせてあげるありすはすごくとかいはだわ!」
「「ばりざああああ!ありずごずっぎぢぢましょおおおおおおおおお!!」」
「「ずっぎぢぢだぐないんだじぇえええええええ!?」」
「「「うっう〜」」」
「やめちぇね!れーみゅたべにゃいでにぇ!?」
「たべりゅんなられーみゅにちてにぇ!?まりしゃはにげりゅよ!」
「「「どほちちぇしょんなこちょいうにょーーーーー!?」」」
「「「うっめ、これめっちゃうめぇ!」」」
「「「「おきゃーしゃんのきゅじゅ!にょろみゃ!おきゃーしゃんにゃんてゆっきゅちちね!」」」」
「そんなこというゆっくりできないこはれいむのこどもじゃないよ!ゆっくりしね!」
「「どほぢちぇしょんなこちょいうにょおおおおお!?」」
「むきゅぅ・・・もってかないでー・・・」
「「むーしゃむーしゃ、しあわせ〜!」」
「「「ちーんっぽ!!」」」

もはや、れいむの住んでいた森はかつての最高のゆっくりプレイスではなくなっていた。
同族が同族を傷つけ、家族同士で罵りあい、他の種族や生き物に蹂躙される脆弱なゆっくり達。
それを尻目にれいむは必死に逃げた。
お兄さんに助けてもらうために。お兄さんとゆっくりするために。

「おにーさあああああん、こわいよおおおおおおお!?」

あまりの恐怖にいつの間にか涙は垂れ流しで見栄も体裁もない有様になっていた。
それでもれいむは必死に跳ねる。
川まで行けば少しはゆっくり出来る。川を流れていけばお兄さんに会える。
その願いに一縷の望みを託し、れいむは運良く川まで到着した。
が・・・・・・

「ゆゆっ!なんだかへんだよ!?」
「どほぢででいぶどげでるのおおおお!?」
「ごんなのどがいはじゃないわあああああ!?」
「まりささまはぼうししゃんにのるぜ!・・・どうほぢでおみずさんはいってぐるのおおおお!?」

川も全然ゆっくり出来ない有様へと変貌してしまっていた。
穏やかな流れに浮かぶ無数の饅頭はどれもふやけ、やがて破れていった。
破れた饅頭からは餡子やカスタードが漏れ出し、川を醜く染めている。

「ゆゆっ・・・さすがまりささまだぜ!おぼうしさんで・・・やべでええ、ばりざをたべないでえええ!?」
「「「「うーうー」」」」

運良く、何かの上に乗ることのできたゆっくりも上空を飛び回る顔だけのれみりゃ達の餌食となった。
その光景を、絶望に満ちた面持ちで見守ること約10分。
れいむ達はすっかり忘れていたことだが、れみりゃ達は日光を嫌う。
れいむは幸運にも、見つかる前に日の光が降り注ぎ、れみりゃ達は森の奥深くへと退散していった。

「ゆ・・・ゆぅ・・・かわさん、どうぢでゆっくぢしてぐれないのぉ・・・」

川の中のの地獄絵図を目の当たりにしたれいむにそこに飛び込む勇気などあるはずもなかった。



数時間後、れいむはお腹を空かせながら、底部の痛みで涙目になりながらもなんとかお兄さんのおうちまでたどり着くことが出来た。
とっくに昼を過ぎ、日も沈み始める頃、お兄さんはいつものように軒先でのんびりとくつろいでいた。

「ゆぅ・・・やったぁ、これでゆっくりできるよぉ・・・」

そう呟く彼女の頭の中にかつての友人達の存在はない。
忘れたいのか、ゆっくり欲が全てを忘れさせているのか、そんなことは定かではないが。
それともお兄さんに会えた喜びで記憶が軽く飛んでしまったのか。
重い足を引きずって、ゆっくりゆっくりとお兄さんの家へと這いずって行く。

「ゆぅ・・・ゆぅ・・・ゆっくりついたよぉ・・・」

数十分後、れいむはようやくお兄さんの家の目の前へと到着し、ほっとため息を吐いた。
が、そこで、れいむは信じられないものを目撃することになる。

「ゆ゛っ・・・・・・!?」

お兄さんの家と畑の周りにはゆっくりの死体が散乱していた。
成体も子どもも赤ちゃんも、れいむもまりさもありすもぱちゅりーも、皆ぼろぼろのぐちゃぐちゃの酷い有様だった。

「ゆひぃ・・・・・ゆっ・・・」

耳を澄ませば、死体の中から嗚咽のようなものが漏れてくる。
が、駆け寄ってみるとどのゆっくりもいつ死んでもおかしくないような姿だった。
目はうつろで、餡子が大量に漏れ出している死体同然の仲間達。
助けを求められても、れいむは足がすくんで何も出来なかったし、すくまなくても結局何も出来なかっただろう。

「おい、クソ饅頭」

唖然とするれいむの頭上から聞こえてくる声。
それは紛れもなくれいむの大好きなお兄さんのもの。
しかし、今までに聞いたことのない餡子が凍りつきそうな冷たい声だった。

「お、おにーさん・・・ゆっくりしていってね!?」
「うるせぇんだよ!!」

振り返って、何とか笑顔を浮かべたれいむは問答無用の蹴りが浴びせられ、そのまま意識を失った。



夕暮れ時の薄暗い森の中を男は歩いていた。
彼の向かう先にあるのはゆっくり達の集落だった場所。

「ゆゆっ!ばかなにんげんさん!ここをとおりたかったら、ゆげぇ!?」

行く手をさえぎり通行料を要求しようとしたまりさを踏み潰し、男は歩き続ける。
それから、いちいち絡んでくるれいむを、ありすを、みょんを踏み潰し、男はあるゆっくりの巣へと到着した。

「ゆっくりしていってね」
「ゆっくりしていってね・・・どうぢでおにーざんがいるのー、わがらないよー!?」
「勿論、虐待しに来たのさ。れいむがあんまりいい声で泣くものだから目覚めちゃったよ、ははは」
「あわないようにおうぢにいだのにー!」

それだけ告げると問答無用にちぇんの尻尾を掴み、巣を後にした。
が、その時、男はどこからか妙な声が聞こえてくることに気がついた。

「ん・・・?」

耳を住ませてみると、その声はかなり近くから聞こえてきている。
そして、夕暮れ時にこんなところまでやってくる男は言うまでもなく物好きの部類であり、それゆえにその声に興味を示した。

「お前は・・・・・・」

声の出所をたどって到着した洞窟にはあの野犬の姿があった。
男の姿を確認した野犬は低い声でうなる。が、男とて森に入る以上用心のために農具の一つくらい持っている。
その得物の恐ろしさを野生の勘で理解した野犬は決して飛び掛ってこない。
ただ、じっと男の出方を伺っている。

((((((((((いにゅしゃん・・・ゆっきゅちがんばっちぇね!))))))))))

赤ゆっくり達が目を覚ました時、そこには夜の闇と薄暗い洞窟と、ふさふさの体毛をもつ野犬の姿があった。
赤ゆっくり達はまりさ種が16匹とありす種が16匹の計32匹。
対する野犬は成体が1匹とその子どもと思しき小さな犬が5匹の計6匹。

仔犬は母親に目いっぱい甘え、母親もまんざらでもなさそうな様子で対応している。
その幸せそうな光景を見ながらまりさ達は思った。
まだ喋ることもできないけれど、まだ動くことも出来ないけれど。
生まれたら真っ先におかーさんに甘えよう。
何度も何度も「ゆっくりしていってね!」って挨拶しよう。
みんなで一緒にずっとゆっくりしよう。

そして、今、目の前では野犬が大きな生き物と対峙している。
その大きな生き物の手にはありす達と同じゆっくりが握られていて、とてもゆっくり出来ない表情をしていた。
これだけの状況証拠があれば十分。
きっと、犬さんはありす達を守ろうとしてくれているんだ。
そう勘違いしたありす達は心の中で野犬にエールを送る。

「ん・・・?」

しかし、野犬は突然、男に背中を向けて洞窟の中へと戻ってゆく。

((((((((((ゆゆっ!いにゅしゃん、はやきゅあいちゅやっちゅけちぇね!))))))))))
(((((ときゃいはにゃありしゅたちのいうこちょをきいちぇね!)))))
(((((やきゅたたじゅはゆるしゃにゃいよ!ぴゅんぴゅん!)))))

そんな野犬の行動を訝しがる男と赤ゆっくり達。
そんな両者を尻目に犬はまりさの頭の蔦の一本を食いちぎった。

(((((((((ゆぴゃあ!?)))))))))
(((((((((どうちちぇしょんなこちょするのおおおおお?!)))))))))

赤ゆっくり達は物言えぬ口で悲鳴を上げ、あるいは必死に抗議する。
が、その声は誰の耳にも届くことなく、野犬は男にその蔦と、蔦に成った赤ゆっくりを差し出した。

「・・・くれるのか?」

くぅーん・・・と、野犬は肯定するように鳴いてみせる。
その振る舞いにただならぬものを感じた男は農具を下ろし、目をこらして洞窟の奥を見て、全てを理解した。

「そうか、お前・・・子どもが居たんだな・・・」

そう呟き、一気に差し出された赤ゆっくり達を食べると、口内に上品な甘みが広がった。



野犬はれみりゃという安定して手に入る食料を得たことで男の畑を荒らす必要があまりなくなった。
男もまた、ゆっくりという非常食を得たことで多少畑を荒らされても笑って許せるようになった。
もっとも、最近では野犬が男の家に来れば、犬の食べられそうなものをあげる関係になっているので、荒らされる事など全くないのだが。

「お、今日はれみりゃの腕を持ってきてくれたのか?」
「じゃあ、ちょっと洗って、温めるからそこで待っててくれよ」

男は野犬の持って来たれみりゃの腕を抱えて台所へと駆けていく。
5匹の仔犬を連れた野犬は涎を垂らしながらも男が戻ってくるのをお利口に待っている。
一緒に美味いものを食べ、持ちつ持たれつの関係を気付いた一人と一匹と、その子ども達は今では最高の友人同士だった。

「「ゆっくりしたいよぉ・・・・・・」」
「「「「「「「ゆぴぇーん・・・どうちちぇゆっきゅちできにゃいのー・・・」」」」」」」
「「「「「わきゃらにゃいよー・・・」」」」」

そんな両者の幸せそうな姿を底部を焼かれて身動き一つ取れないゆっくり達が羨ましそうに見つめていた。






おまけ?】

「どほぢではござんあげぢゃっだのおおおおおおお!?」

ゴッドスまりさはれいむの愚考に怒り心頭だった。
せっかくゆっくり出来ないものを全て封印してあげたのに。
我を忘れて怒り狂うゴッドスまりさはどすんどすんと飛び跳ねる。

「鬱陶しいぞ、まりさ?」

そう言いながら、何者かが跳ね回るゴッドスまりさの頭を掴んだ。
恐る恐る振り返ると、封印にクレームをつけた別の神様が陰険な笑みを浮かべている。
そこでようやくゴッドスまりさは彼が何の神であるかを理解した。

かつて、きめら丸を拳一つで倒した男がいた。
彼は生涯のうちに318匹のドスまりさを己の肉体だけで痛めつけ、102匹のりおれいむを嬲り殺した。
年老いてなお森の賢者ぱちゅりーを、ティガれみりゃを、ありとあらゆる巨大種を虐待し続けた。
勿論、通常種も伝説とすら呼べるほどの勢いで殺し尽くした。
死後、彼はゆっくり虐殺の咎で地獄に落とされた。
しかし、それでも彼は地獄を抜けだしてはゆっくり地獄に赴き、ゆっくりを殺し続けた。
その常軌を逸した虐待中毒ぶりは、鍛えすぎた肉体も相まって鬼すらも手が付けられず、秦広王を苦笑させた。
初江王も、宋帝王も、五官王も匙を投げ、閻魔王の長い説教すらもどこ吹く風だった。
そして、五道転輪王の「ここまで来るとある意味悟りを開いてね?」という一言によって彼は人を超えた存在としての地位を得た。

そう、彼こそ虐待お兄さんの神だったのだ。

「ひゃっはー、我慢できねぇ・・・虐待だぁ!!」
「ごれぢゃゆっぐぢでぎないよぉ!?」

ちなみに、他の神様達は関わるのも馬鹿馬鹿しいので無視を決め込んだ。




‐‐‐あとがき‐‐‐
パンドラの箱の中に残っていたのはもっとも恐ろしい災いで「それが外に出なかったことだけが唯一の希望」という解釈があるそうです。
で、そのもっとも恐ろしい災いというのが絶望であり、もっと詳しく言うと予兆、つまり未来を知ってしまい、なおかつそれが不可避であることを理解してしまうことだそうな。
ちぇんがラリっていたのはその最後の災いを食べてしまったからです。もっとも、元々ゆっくりに予知能力なんてないような気もしますが。
この説明で訳が分からないという人はJOJO6部のブッチ神父の最後のスタンドのを思い出すと分かりやすいかも。
あのスタンドの発想はニーチェか仏教に通じるものがあるような気がするが、何にせよ神父が口にする主義・主張ではないんだよー。
というか、そんな壮大な絶望を覚悟一つで吹き飛ばせるわけがないんだよー。

byゆっくりボールマン

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最終更新:2022年05月21日 22:06