※警告、ゲスなドスまりさが出ます
※警告、ゲスな人間が出ます。
ゆっくりによる被害が顕著に出始めた頃、
村の長たちはゆっくりを束ねるドスまりさに村の畑を荒らさないよう交渉した。
「バカか、冗談じゃねぇぞ!!」
男はイライラして足元にあった桶を蹴り上げる。
「叔父貴はいいのか、ゆっくりに畑を荒らされた村人の気持ちが分からんのか」
「村の長はドスまりさの群に畑を三つ献上する。そこできた作物は全てゆっくりのものじゃ」
「そこを耕す村人の気持ちはどうなる?!」
「・・・理解してくれると信じておる」
「バカバカしい。あんなのは鬼の時と一緒だ。騙まし討ちでも何でもして殺しゃいいだろ!!」
「おい、滅多な事は言うな。人は改めるのだ」
自分の叔父を睨みつけた男は腰に下げた刀に手をかける。
その刀は男が狩猟用に使っていたもので形は外で言うククリナイフに似ていた。
「滅多な事は考えるな。お前一人吼えても村の長達は決定を変えん」
男は刀を抜く、叔父の頬には汗が流れる。
「待て、やめろ!」
男は刀を投げる。それは先ほど蹴った桶に刺さる。
「叔父貴、帰ってくれ。俺は準備をしなくちゃいけない」
叔父貴と呼ばれている中年の男は逃げるように帰っていった。
男は何時もの狩りに出る格好をすると、村を出た。
ドスの村に与えられる畑を見る。耕している村人の中に見知った男を見つけ呼び止める。
老人は手を振り、軽い足取りでこっちにやってくる。
「坊ちゃん、どうしたんですか」
「もう坊ちゃんはよせ、勘当された身だ」
「村長、いや、親父は本当にこの畑をゆっくりにくれてやるつもりか?」
「どうも、そのようで。爺はここの」
老人が声を小さくする。
「爺はここの見張りをするように言われております。村人が手を抜かぬよう。作物をゆっくりに持っていかれると知って嫌な思いをする者も多いですから」
「呆れた奴だ。村人にこんな事をさせて、さらに信用すらしていないのか」
「しかし、旦那様はこの爺は信用してくださっているようです。大丈夫、何があってもここの村人には悪い思いはさせません」
「ああ、頼む」
「それと、まだ詳しくは分かりませんが、この畑、どうやら裏があるようです」
「裏とは?」
「この畑が不作だった場合。他の村の作物を補填されるのです。どうやら、旦那様は横流しをしてわざと不足を作るようです」
「自分を肥やすためにか、血のつながりすら疎ましい。
「坊ちゃんもどうかご無理をなさらないように。ゆっくりは大層多いそうです」
男は老人の言葉に驚く。
「狩りに出るにしては籠も何も、獲物を入れるものを持っていないではありませんか」
「ああ、爺には敵わんな。村人の事、よろしく頼む」
男は老人に一礼する。老人は慌てて頭を上げてくれと騒ぐが、
自分が気の済むまで男は頭を挙げる事はなかった。
男は森に入る。
すぐにゆっくりまりさの一家をつける。
「やぁ、ゆっくりさせてね」
「ゆ?にんげん?ゆっくりしていってね」
「ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかい?」
「おかしくれないとこたえないよ」
「ほら、人間はお前達に畑の作物をやってるだろ?」
「ゆー?そんなのはどうでもいいからおかしちょうだい!!」
親がそう言うと子どもたちも一緒になっておねだりをする。
「「「おかしちょうらい」」」
男は無言で投げナイフを取り出し、ゆっくりまりさの子ども達に投げる。
三匹の内の一匹にナイフが当たる。しかし、人間の顔で言うちょうど顎の部分を軽く切っただけで、まだ生きている。
男は生きている子どもと投げナイフを拾い上げると、ナイフを子どもの顔に当てる。
「質問に答えろ」
「いやだ!!」
「こいつがどうなってもいいのか?」
「おにいさんなんか、ゆっくりしね!!」
男は無言で水筒を取り出し、手に水をかけると、子どものゆっくりまりさの傷口をこねてやる。
「もう、いい。後は風通しの良い場所で休めば傷は治る」
男は子どもをゆっくりまりさに返す。ゆっくりまりさは奪い返すように受け取ると、森の奥に逃げていった。
「もう少し利己心の強い奴を唆すか」
男は険しい山の奥へ進む。
「なに、あのバカ、ワシらがドスと結んだ取り決めを潰す気か?!」
男が森に入った事に村の長たちの中でも一際声のデカイ男が大層腹を立てる。
「なんだい、そのバカってのは」
人里から来ている使者が尋ねる。この使者は各村々を周り、村ごとのゆっくりへの対応を人里の長から頼まれ調べている。
「ああ・・・、なんでもねぇよ。客人は黙っててくれ」
そう言って声のデカイ男は村の詰め所から出て行った。
「やれやれ、やっと」「これで実のある話が出来る」「倅も良い頃合に森に入ってくれた」
他の村長達が口を開く。人里からの使者を交えて、ドスまりさの群に対する返答の協議が始まった。
「どうする?今から追いかければ倅に援軍を送れる」「待て待て、あいつが死ねば交渉をより有利に進めることができる」
「奴が一人で暴れてくれりゃ、ドス退治もやりやすくなる」「なるほど、何も身内からけが人を出さずともと言う事か」
それでは、と使者が尋ねる。
「ああ、あいつの倅、今は猟師をしてる男だが、奴がドスの森に入った。奴が死ねば、ワシらはドスに不利な条約を結ばせる」
「生きて帰ってくれば、処刑してしまおう。そうすればドスもそれ以上は要求して込んだろう」
「まあ、別に俺達は村人を今から送り込んで、何人死んでも構わのだがね」
「そうなると、ワシらは下げたくも無い頭を下げねばならんくなる。それはちとのぉ」
使者はもう結構。分かりました。とだけ言い、詰め所を出る。
「どんだけ腐ってるんだ。ここの奴らは」
汚いものを見る目で、使者は詰め所を睨みつけた。
「ゆゆ?ほんと?」
「ああ、本当さ。俺の質問に答えてくれたら俺の家の畑でゆっくりして良いよ」
「ごはんたべられる?」
「ああ、食べられるよ。畑は知ってるだろ?」
「ドスからきいたよ。にんげんからもらえるって」
「ああ、君には俺の畑をやろう。君もドスと同じぐらいゆっくりできるよ」
見てくれの汚いゆっくりまりさは今まで森に生えている草ばかり食べていた。
しわくちゃの帽子と汚い頬、ドスまりさの群では一番下に見られていた部類だ。
餌の配給もろくに受けていない。そんな奴に上手い話を持っていけば、
上手く引っかかる。
「まず、ドスまりさはどこにいる?俺はドスと話し合うために来たんだ」
「もりのおくのどうくつにいるよ」
「あと、この森には妖怪は住んでいるかな?」
「ようかい?」
「洋服を着た女の子か女の人」
「ゆー・・・みたことないよ」
こんな森の中にいる女といえばそれは間違いなく妖怪の類だ。
それがいないとなると、夜でも動けるな。
「洞窟の近くまで案内してくれる?」
「いいよ。どうくつにあんないしなくていいの?」
「いきなり行ったらビックリしちゃうし、俺もまだ準備をしなくちゃいけないからさ」
「ゆ?うん、わかった」
本当かな?男は疑問に思いつつもゆっくりまりさについて行った。
そして、洞窟の近くまで案内させるとゆっくりまりさに森の入り口で待つように伝えた。
「ゆ?そこでまっていればいいの?」
「ああ、それと最後に」
「ゆ?なに?」
「畑を襲うように命令したのはドスなのか?」
村人のために外道になると決めた。しかし、ゆっくりを殺そうとは思えなかった。
偽善だと分かっている。それにドスを殺しても、村の長達が変わるわけではない。
またドスまりさの群が来れば同じことの繰り返しだろう。
今、自分がやっている行為自体、勝手な我が侭による問題の先送りなのだと男は分かっている。
何度も、今から長達の詰め所に乗り込んで、全員斬ってしまったらと考える。
それをすれば村人のためにはならない。刀を抜いて、その刃に自分を映す。
ドスまりさを殺す。ドスが殺されれば他のゆっくりは恐れて森を出るだろう。
何度も自分に言い聞かせる。男は藪の中に隠れ夜を待った。
その間、頭の中ではどちらともつかない倫理観があれこれと仮説を論じてきた。
「ええい、うるさい」
男は忌々しそうに自分に呟いた。
夜、日が落ちて、妖怪達の時間となる。
男は息を殺し、気配を殺し、洞窟へ近づく。
眠りこけているゆっくりには目もやらぬ。ドスさえ死ねば、群は瓦解する。
村は助かる。少なくとも村人はゆっくりに畑を荒らされる機会は減る。
「あら、間に合ったわ」
前に一人の女が急に現れる。男は女の方から吹いている突風のようなものに一歩足を下げてしまう。
周りの木々は揺れていない。この突風の正体はその女から発せられる物凄い量の妖気だった。
「萃香がまた人間が同じ事をしようとしていると聞いたからついつい世話を焼きに来ちゃったの」
男は腰に下げていた刀、胸ポケットにしまってあったナイフを自分の前に置き、胡坐をかき、両手の拳を地面につかせ頭を下げる。
「そちら、大妖怪八雲紫様をお見受けする」
「ええ、よく知ってるのね」
「私はドスまりさの事が嫌いでここまで着ました。私は見た通りみすぼらしい猟師でございます。
人間の私が地べたを這いずり回るような苦しい生活をしている一方で、このドスまりさは村から畑を貰うと聞きました。私は憎くて仕方ありません。
ならば、ドスまりさを殺してやろう。殺して私のこの惨めな気持ちを和らげる糧にしてやろうと思いここまできたのです」
目の前にいる妖怪がドスまりさの味方かもしれない。自分を含めた人間の企みが露呈すれば、
死ぬのは自分や親父だけとは限らない。それならば俺が私怨でドスまりさを殺したがっていると思わせた方が被害が少ない。
「嘘」
「嘘ではございません。大妖怪ともあろうお方に嘘など言うものですか」
「嘘ね」
「嘘だよ。そいつは村人のためにドスまりさを殺しに来たのさ」
男は背中の方から聞こえる。声にぞっとした。
「そいつの親父、村の長の一人は私益のためにドスとの妙な交渉を結んだ」
やめろ。言わないでくれ。男はそう叫びたい。
しかし、それをすれば自分の言った事が嘘だとバレる。
「他の村の長も同じ穴のナントカさ。自分らさえ良けりゃそれでいい」
「・・・それで、人間側につくあなたとしてはどうなの?」
「そいつが仕損じたら、いや、そいつが何かする前に私がドスまりさを殺す予定だった」
「あら、タイミングの悪い所に来てしまったようね」
後ろにいる者は誰だ。八雲紫と既知の仲なのか、
今、動けば・・・。いや、相手は若い女の姿をしているが、妖怪の親玉みたいな奴だ。
私など動いた瞬間、首が落ちるだろう。後ろの者のために隙を作るか、
八雲紫の懐に飛び込めば、駄目だ。そこまで後ろの誰かを信用する事はできない。
「というわけで、紫、お前は引きな。ここはあんたみたいな大物が出てくる場面じゃない」
「そーね。じゃあ、あなたを足止めするわ」
そう言って八雲紫は男の隣を歩き、後ろにいる者と対峙する。
「ちょっと、まて、お前、どういうことだ」
「妹紅、人がまた過ちを犯すのならば、妖怪はそれを見守ります。その過ちがなくなるまで」
「八雲殿、恩にきります」
男は目の前にある刀とナイフを取り洞窟に駆け込む。
「ドス、おきろ。ドスまりさ」
「ゆ?ゆゆ?!おにいさん、だれ?」
「村の者だ。ドスまりさ、どうか村と関わらないで欲しい」
「ゆ?どういうこと?」
「お前らが畑を荒らすのを俺は許せない。だが、お前たちの命まで奪いたくない」
「ゆ?・・・おにいさんはドスにかつつもりなの?」
「本当はお前が寝ているうちに殺す手はずだった」
「なんで、おこしたの?」
「気紛れだ」
「じゃあ、おにいさんにおながいがあるよ」
「何だ?」
「ドスのむれにはドスのいうことをきかない。ゆっくりできないこたちがいるんだ。そのこたちをころしてね」
「そうすれば畑を襲わないのか?」
「ゆ?・・・おそわないよ」
ドスまりさの目を見る。どこを見ているともつかない目。
まっすぐ何も見ていない目だ。
「ドスまりさ、畑を襲ったのはお前の命令か?」
「ち、ちがうよ」
「じゃあ、その俺に殺して欲しいって奴にしわくちゃの帽子をかぶったゆっくりまりさはいるか?」
「ゆ?あいつのことしってるんだね。はやくころしてね。きたなくてほんとうにゆっくりできないやつだよ」
それを効いて男はドスまりさの目に向かってナイフを投げる。
しわくちゃの帽子のゆっくりまりさとの最後の会話を思い出す。
「ゆ・・・どうしてもいわなくちゃだめ?」
「いや、お前が言いたくなければいい。別にそれで畑の話をやめたりしないよ」
「おにいさんはドスとはなしあいにきたんだよね?」
「ああ」
「じゃあ、ちゃんとしたことをしってないとね。はたけをおそわせたのはドスだよ」
「そうか」
「・・・おにいさん、はたけのことやっぱりなしでいいよ」
「どうした?」
「まりさもドスにいわれてはたけをおそったんだよ。だから、はたけは・・・」
「俺も嘘をついた。お相子だ。白状する。俺はドスが悪い奴だったら殺しに来た」
それから、しわくちゃの帽子のゆっくりまりさはドスまりさの話をしてくれた。
ドスまりさは自分のような形の悪いゆっくりに畑を襲わせ、それを人間に捕まえさせ、
目の前で処刑することで信用を得た事。群のほとんどは森で生活していけるのに。
欲張りなドスまりさは他の群に自慢したいために畑を襲っていた事、
自分のパートナーで見てくれの良かったゆっくりアリスはドスまりさにレイプされ死んだ事、
「ゆぎゃ!!!めが、ドスのめが!!!」
「もう一つだ」
男の投げたナイフは残っている方の目にも刺さる。
「にんげんめ!!ゆっくりしね!!」
大きく息を吸い込みドスパークを撃とうとする。
男は口元に飛びつき、底に刀を突き刺す。あとは体重をかけて切り裂く。
その傷口からドスパークが漏れ出す。
「いだい、やげるやげる!!」
自分に何が起こっているか分からないドスまりさは狭い洞窟の中で暴れる。
「うお、こりゃ危ないぞ」
男が洞窟を出た直後、崩落が起き、ドスまりさは岩の下敷きになった。
「ハッハッハッハッ、あやつまさか、ドスまりさを殺してくれるとは」
「いやはや、これで無駄な出費が無くて済みそうじゃ」
「葬式なんざ、最初っからする気は無かったがのぉ」
詰め所で繰り広げられるバカ騒ぎ、そこに人里の長と上白沢慧音が事情聴取に訪れたのは男が森から帰ってくるより前だった。
「で、結局、ゆっくりはどうなるんだ?」
寺子屋の縁側でお茶を飲む紫に妹紅は尋ねる。
「んー、別に餌には困ってないから村にはもうめっきり来なくなったそうよ。あの男は?」
「なんでも、新しい村の長になるのを断って、まだ猟師やってるみたいだ」
そこに慧音がやってくる。
「今回の件では世話になったな。八雲紫」
「いいのよん」
「前の村の長たちは全員お役ご免となった」
ふーんと紫は関係ないと言わんばかりにお茶をすすった。
~あとがき~
勧善懲悪ものに挑戦したら、ほとんど誰も死ななかった。
男はもっと最初にあった一家を殺し、しわくちゃの帽子のゆっくりまりさも殺し、
ドスまりさも殺し。最後は村長と自分の父親も殺す予定だったのですが、アクメツって感じで、
結局、殺したのはドスまりさだけでした。
あと、最初は八雲紫ではなくリグルが出てくる予定でした。
しわくちゃの帽子のまりさが「女の子は見ていない」と言っていたので、リグル出演のチャンス!!と思いましたが、
リグルでは八雲紫に比べ力不足かと思い、紫が採用されました。
なんだか、あまり虐待虐待していないのは少し苦手ですね。118にしては珍しい作品かな?
次回は
ついにメジャーデビュー?
八意永琳と八雲紫のゆっくり虐待アイドルグループ「88(はちはち)少女隊」
でお送りする・・・ウサ
by118
最終更新:2022年04月14日 23:47