幻想郷の空をリリーが舞い、桜が咲き乱れ、鳥達が絶え間なくさえずっている。
そんなうららかな春の昼下がり。
20人あまりの少年達がただ広いだけの野原にやってきた。真っ先に彼らの目に止まったのは一組のゆっくりのカップルだった。
ゆっくり魔理沙とゆっくりアリスというかなり珍しい組み合わせのカップル。まだ年若いのかどちらもやや小ぶりだ。
大抵の魔理沙はゆっくりアリスが発情期になると見境なく自分を陵辱することを本能で理解しているので、アリスを避けようとするのだが、
アリスの性欲が他のアリスより希薄なのか、あるいは魔理沙の危機意識が他の魔理沙より低いのか、このカップルは今のところ順風満帆といった感じである。
「「ゆっくりしていってね!」」
少年達の気配に気付いたカップルは声をそろえてお約束のせりふを口にする。
警戒する様子は一切ない。普段から少年達と野原で遊んでいる二人にとって彼らは友達、いや時に捕食者であるゆっくりゃを追い払ってくれる頼もしい恩人達なのだから当然だろう。
だからこそ、このカップルはこんな隠れる場所もない野原でゆっくりしていられる。それほど少年達のことを信頼しているのだ。
「みんな、きょうもゆっくりしていってね!」
そう言いながら満面の笑みを浮かべ、顔だけしかない自身の体全体と弾力性のある皮を巧みに弾ませて少年達の下へ駆け寄ってきたのはゆっくり魔理沙。
最初から「いっしょにゆっくり」などと口にするのは自己中心的で傲慢で、人間や他のゆっくりを自分の居場所から追い払おうとすることの多い魔理沙種にしては珍しい。
一方のアリスも魔理沙のように一目散に飛び跳ねてくることはないが、あまりにも無防備な満面の笑みを浮かべながらゆっくりの名に相応しいゆったりとした動作でやってきた。
「きょうもゆっくりさせてあげてもいいわよ!」
一見すると上から目線ではあるが、これは妙にプライドの高いアリス種の特徴であって、本当に子供達を自分より下に見ているわけではない。
なんにせよ、この2匹が少年達を信頼していることを疑う余地はなさそうだ。
勿論、その信頼は少年達にだって伝わっている。
ある農家の末っ子の少年はアリスの偉そうな物言いに
「うわっ、こいつやっぱり生意気~」
と毒づきながらも、その表情はゆっくりたちにも負けない満面の笑み。
またある八百屋の少年は
「お前らに言われなくてもゆっくりするよ」
と魔理沙の頭(いや胴体か?)をなで、
狩猟で生計を立てる一家の次男坊は
「って言うか、いい加減森に帰れよ。俺達のいないときに襲われたら危ないよ?」
と、邪険にしながらも実は心配しているというツンデレぶりを発揮していた。
とにかく、ゆっくりのカップルは少年達が大好きで、少年達はゆっくりが大好きだった。
「ゆ?おにいさん、それなぁに?」
しばらく少年達と戯れていた魔理沙が彼らの持ってきたプラスチック製のボールの存在に気付いた。
すると、リーダー格の少年がそのボールを手に取り、誇らしげに掲げる。
「これはね、阿求さんからもらったサッカーみたいなちょっと激しい遊びでも僕達とゆっくりが一緒に楽しめるようになる道具だよ」
阿求というのは人里の要人で、可愛らしい少女である。
このリーダー格の少年は密かに彼女に好意を持っていたりするが、そんなことはどうでもいい。
「ゆ!本当に?魔理沙たちもいっしょにサッカーできるの?!」
その言葉に魔理沙もアリスも瞳を輝かせる。
当然ながらが激しいぶつかり合いを繰り広げる人間同士のサッカーにゆっくりが参加することなど不可能。
今まで少年達がサッカーを始めると疎外感を感じていた魔理沙達にとってこの知らせは非常に喜ばしいものだったのだろう。
「「ゆっくりサッカーしようね!」」
ボールの前で瞳を輝かせながら必死にサッカーを催促する2匹。
その視線に苦笑しながらも、リーダー格の少年はボールをふたに割ると、2つの半球の上にアリスと魔理沙を乗せる。
「よっ、と!」
2匹が半球の上に乗ったのを確認すると素早く、半球を閉じて球体に戻す。
それから、近所のゆっくり愛好家からもらったボールを保護するための空気穴のあいたゴムを手際よく被せる。
ちなみにこのゴムは真っ黒で内部の様子が一切分からないようになっている。
したがって、少年達には殆ど身動きが取れない状況に陥っている2匹の状態をうかがい知ることは出来ない。
それにこのボールは防音を重視した設計になっているので、口を押さえつけられまともに喋れないゆっくりの声なんて殆ど聞こえない。
しかし、少年達は日ごろ優しい阿求や
ゆっくりについて語りだすと止まらなくなる変だけどゆっくりが大好きな親切なお兄さんの「ゆっくりは振動を与えると喜ぶからボールの中に入れて蹴ってあげると良い」という言葉を信じて試合を開始した。
少年達はゆっくりが大好きなのと同様に阿求やお兄さんも大好きだから、彼らの言葉を疑うことなど微塵もなかった。
ところ変わってここは稗田邸のある一室。
「阿求様。こちらが先日注文していただいた妊娠ゆっくり用のゆっくりボールの試作品です」
そう言って、少女に大人のゆっくりとほぼ同じサイズのプラスチックボールを差し出したこれといった特徴のない男は幻想郷で1,2を争うゆっくり好き自称する変わり者。
「いつもありがとうございます。こちらがお代金と・・・わずかばかりではありますが、今後のゆっくりグッズ開発のための資金です」
プラスチックボールと引き換えに包みに入ったお金を差し出した彼女こそ人里の名家の当主、稗田阿求である。
「いえ、こちらこそ。いつも阿求様には助けていただいてばかりで・・・」
恐縮しながらも、もらえるものは遠慮なく懐にしまった男は思い出したように「説明書」と書かれた紙切れをボールのそばに置き、そそくさと稗田邸を後にした。
一人部屋に残された阿求は説明書を手に取り、そこに書かれた短い文章に目を通した。
『このボールには妊娠初期のゆっくりを入れてください。妊娠期の動きの鈍い母親を保護するほか、圧力で赤ちゃんが成長しにくくなり小ぶりになるため、母親は無痛で出産できます。』
人並みに常識のある人ならばこの説明書がいかに異常かすぐに理解できるだろう。しかし、阿求にとってはそれが良いのだ。
明らかに常軌を逸した思考のものが作ったそのグッズは、予想の斜め上を行く拷問道具として機能する。
彼が最初に作ったゆっくりボールは透明な箱にも劣らぬ閉塞感でゆっくり霊夢の心を、長きに渡る拘束があらゆる身体の機能を破壊しつくし、ボールから解き放っても身動き一つ取れない正真正銘の顔饅頭へと仕立て上げてしまった。
その次のペア用のゆっくりボールにはゆっくり魔理沙とゆっくりアリスを放り込んだ。そして自室に置いて気が向いたときに蹴り飛ばし、回して暇を潰した。
ボールに守られたゆっくりが殆ど怪我をしないのは腹立たしかったが、阿求はそのボールが気に入った。
蹴るたびに、回すたびに与えられる振動がアリスを欲情させ、同じボールに閉じ込められている魔理沙は内と外、双方からの脅威によって恐怖のどん底に陥れるのが非常に面白かった。
もっともそのボールは魔理沙とアリスが死んでしまった後に村の少年にあげたので、今は手元にないのだけれど。
思い出すだけで、稲妻で貫かれるような快感が全身を駆け巡る。
それから、ボールをあげた少年が可愛がっている野原に生息するゆっくりのカップルも魔理沙とアリスだと聞いたことを思い出して、頬を緩める。
今頃、信頼していた少年達に絶望を刻み付けられたゆっくり魔理沙は、少年達にどんな言葉を投げかけるのだろうか?
気がついたらパートナーを苦しめてしまっていたゆっくりアリスは、少年達にどんな態度をとるのだろうか?
きっと魔理沙とアリスのことだから少年達の事情や気持ちなんてお構いなしに彼らを罵るのだろう。
ああ、可哀そうな少年達。ゆっくりのためを思ってやったことなのに、ただ私にだまされただけなのに。
きっと泣いて帰ってくるであろう少年達に涙ながらに訴えよう。「私はそんなつもりじゃなかった」って。
そうすれば、酷い言葉を投げかけたゆっくりなんかより、私のことを信用してくれるはず。
そしたら彼らにゆっくりの邪悪さと醜悪さを教えてあげて、それから皆でそのカップルゆっくりを殺しに行こう。
痛めつけて、痛めつけて、痛めつけて・・・虫の息になったところでこう囁こう。
「何も知らないこの子達をだましてあのボールを使わせたのは私なのよ?」って。
馬鹿だから意味が理解できないだろうか?それとも妙に情緒面だけ発達しているから暴言を吐いてしまったことを後悔するだろうか?
それから、「あなた達のせいで彼らはゆっくり嫌いになった。きっと彼らにたくさんのゆっくりが殺されるわ」って囁いて、それから止めを刺そう。
想像するだけで、濡れてくる。
-----あとがき-----
ゆっくりを虐待するシーンそのものは殆どなし。
ホスト規制まじぱねぇよ。ケータイまで規制喰らってやがる。
ゆっくりゃの依存の対象になっている咲夜さんがうざいと抜かす不届きものに、
むしろ、その依存はいじめられている最中において絶望の中の微かな希望も同然であり、ゆっくりゃの虐め甲斐は何もせずとも勝手に「咲夜が助けてくれる」という幻想をひとりでに抱いていることにある。
すなわち、勝手に裏切られた絶望を味わうことにあるのだから、我々は西瓜の甘みを引き立てる塩のような存在として咲夜さんを崇めるべきだ、とか
揺さぶられて感じているゆっくりアリスでフルボッキしちゃう、とか
色々語りたいことがあるというのに・・・ふぁーっく。
ボールに需要があるかなんて全く気にせず、思いつきとノリと勢いだけで素人が書いたものなので非常に読みづらいでしょうが、目を通していただけると幸いです。
最終更新:2022年04月15日 23:28