黒い箱3(終)










男が1人、淡々と小高い丘を登っている。
その男の肩に背負ったバッグの隙間からは透明な箱が僅かに顔を除かせている。
ゆらゆらと揺れるその「透明な箱」の中にまりさは居た。

まりさの頭の上にはくすんだ色の麦藁帽子。
失った帽子の代わりにと、人間がまりさに手渡したものだった。
お飾りに変わりは無い。人間はその事を知っている筈である。
仲間の帽子を奪って汚い水の中に投げ込んだり、れいむのリボンを奪えと命令した事からもそれは明らかだった。

こいつはわかっていてやっているのだ。

まりさの体がフルフルと震え、瞳にジワリと涙が浮ぶ。
顔を上に向けて、僅かな隙間から天を仰いで青い青い空を無表情で見つめる。
憎らしいほどに清々しく澄み切った青空。白い雲がゆっくりと視界に入り、ゆっくりと視界から消えていく。
久々に見る外の光景。普段なら「ゆっくりできるね」と言うのに申し分ないのどかなその景色とは対照的に
まりさの心は深い暗闇に包まれていた。

「もうここ(街)はイヤだよ。まりさはお山さんで暮らしたいよ」と言うと、
男は何も答えずに簡単な身支度を済ませると、
まりさを透明な箱の中に入れて、マンションの裏に聳える小高い丘を登り始めた。

まりさが視線を下に移すと、まるでジオラマの様に小さくなった街が一望できる。
もうあんな地獄のような所には二度と戻るまい。

人間から与えられる食事の味に慣れてしまったまりさには、
最初は虫さんや草さんといった、野生のゆっくりが主食としている食べ物は口には合わないだろう。
更に山での生活も、お飾りが無いので、野生のゆっくりの群れに入れてもらうのは恐らく無理に思えた。
1人で冬を越す為には、直ぐにでも餌を集めて冬篭りの支度をはじめなければ・・・
まりさは取りとめも無くこれからはじまる辛い野生での生活の事をあれこれと想像していた。

しかしそんな必要は無かった。

男は無造作に鞄を頬リ投げると、一本だけ生えた大きな杉木の傍に一心不乱に穴を掘り始めた。
鞄から投げ出された透明な箱の中からそれを怪訝な表情を浮かべながら見つめるまりさが口を開いた。

「もうここでいいよっ!まりさを箱からだしてねっ!」

男はまりさの言葉に耳を貸さない。手にしたスコップで延々と穴を掘り続けている。
まりさの頬をひと筋の汗がつたう。
この人間は何をしている?何故、穴なんか掘っている?まりさを箱から出して家へ帰るだけでは無いのか?
まりさは箱の空気穴に口をあてて男に向かって必死に声を張り上げる。

「きいてねっ!まりさは山さんへ帰るよ!早くしてねっ!」
「・・・逃がさないよ」
「ゆっ!?」
「俺は飼いゆっくりをやめて外に出してやるって言っただけで「逃がす」なんて一言も言ってない」
「ゆ゛っ!!!」

そういうと男は穴を掘る作業を再開した。
男の言っている事は詭弁である。そんな物言いが通る筈が無い。
しかしそれが詭弁として破棄されるのは、人間同士の対等な約束だった場合だ。
いくら喚めこうが、騒わごうが男の意志は覆らないだろう。無駄に賢いまりさはそれを即座に理解してしまった。
子れいむを言われた通りに殺してしまった結果がこれだ!言われるままにれいむを食べ・・・食べ!?

「ん゛っ!!ん゛む゛ぅ!!え゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛れ゛っ!!!」

洗面所での惨状を思い出した瞬間、まりさの中を逆流してこみ上げてきたものを思わず吐き出した。
ボタボタとまりさの口から流れ出る餡子に混ざって転がる丸い物体。
それを見てまりさの顔は凍りついた。

「・・・・じ・・・・ね・・・・じねぇ・・・・・」

それは丸呑みした為に餡子に変換されるのに時間がかかり、未だに体内に未餡化(未消化)で残っていたれいむだった。
既に髪の毛は溶けて残っておらず、削げた顔面を晒して歯をガチガチと鳴らしながら呪いの言葉を吐き続けていた。

「ゆ゛ぅううううう!!!ゆ゛ぅうううううう!!!」

その姿は繁華街の裏路地で男に潰された番から生まれた未発育の赤ゆっくりと重なった。
まりさはその瀕死のゆっくりを見つめながら言葉にならない言葉を叫ぶ。
そんなまりさを尻目に男がスコップを捨ててこちらに向かって来た。

「れいむが生きてるな、約束を破ったのか?」
「ぢがうよおおおおお!!ぢがうよおおおおお!!!」

掘られた穴。逃げ出せない箱。それを結びつける答えはまりさにも何とか理解できた。
この箱をあの穴に入れて埋めるつもりだ!どうして?何故そんなことを?
首をイヤイヤさせながら後ずさって箱に背中を押し付けるまりさ。
箱がバランスを崩して傾き、パタリと倒れる。
まりさの背中が地面に位置を変えて目の前に居たれいむが、まりさの顔面にぴちゃり!と張り付く

「んぎぎぎいいいいいい!!!」

家の中で殺せば家が汚れる。
亡骸をまりさに始末させたとは言え、男はこの後の洗面所の掃除の事を考えると気が重くなった。
外の近場で殺せば、誰かの目についてその事が先程の警官に知られるかもしれない。
普通に逃がせばバッジのせいですぐに戻ってきてしまうだろう。
バッジを奪って逃がすのはどうか?問題外だ。こいつが何か喋る可能性は大きい。
遠くの山へ行って捨てるのがベストだったが、こんなゴミに時間を割くのは勿体無い。
だからこそこの自宅から近い裏山の小高い丘へやってきたのだ。
男はしょっちゅうこの小高い丘で山菜や昆虫を採っていた。この行動に何も違和感は無い。
ここにまりさを埋めて全てを無かった事にしようと考えた。
本当は暫く時間を置いて行動に移すのがベストだろう。男もそれはわかっていた。しかし。

「もう顔を見るのも沢山だ」

苛立たしそうにそう呟くと、片手で箱を掴んで無造作に放り投げた。
穴の中に綺麗に納まる透明な箱。その透明な壁に顔を押し付けてまりさが悲痛な叫び声をあげる。
男はそんなまりさを無言で眺めていたが、その姿は男の目には映っていない。
男は先程の初老の私服警官の笑顔を思い出して、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

私服警官の善意、勝手に男の内面を推し量って勝手な結論を出し、勝手に善意をぶつける。
それは偽善である。そして警官が想像した男の人間像は惨めで情けなく、男をこの上無く侮辱したものだった。
更に特異で男をここまでの凶行に走らせたのは、その推測が正解だったからである。
端的明白に言えば、図星を突かれて開き直って癇癪を起こしていると言われれば、それまでの拙い行動であった。

まりさを見るたびにその事を思い出してしまう。
だから今すぐにでも捨てなければならない、多少危険でもだ。
それが男の惨めで情け無い、性格の捻じ曲がった考えだった。

「やべでえええ!!やべでええええ!!」

箱の中で暴れるまりさ。
それを醒めた目で眺めながら男は土をかけ始めた。
徐々に塞がれていくまりさの視界。青く澄んだ空が悪意をもっているかの様にまりさには感じられた。
自分を放置してそんな高いところで「ゆっくりしている」空に身を焼かれる程の嫉妬と孤独を感じた。

「うべないでっ!ぐるじいっ!いぎができないぃぃ!」

耳を劈くような奇声をあげていたまりさだったが
土を盛られるたびにその声は小さくなり、やがて辺りは心地いい虫の鳴き声だけが静かに響いた。
暫く静かにその虫の声に耳を傾けていた男だったが、満足気な笑みを浮かべると小高い丘を下りていった。




5年後




「・・・・・・・ゅ・・・・」

再び聞こえた小さな声に男は我に帰る。
今度は聞き間違いではない。確かに箱の中から声が聞こえた。
その時、地面に尻餅をついていた男の手に赤黒く錆付いた金属の棒が触れる。

「これは・・・・?」

拾い上げたそれはスプーンだった。
この形には見覚えがあった。これは昔、男が自宅で使っていたものである。
一本だけ気がついたら無くなっていたこのスプーンがここにあるという事は
つまり、あの日にまりさがこの場に持ち込んだと思って間違いは無い。
これを使って箱の空気穴から土を掘って、空気を取り込んだという事だろうか?
と、言う事は窒息死はしていないという事だ。

しかしそれでも5年間生き延びたという根拠には程遠い。
あの中には食べ物は何も無かったのだ。
強いて言えばあの死にかけたれいむか。
しかしれいむの餡子だけで5年間も生き延びるなどありえない話だ。

次に考えられるのが冬眠か。
何らかの方法で冬眠状態になって仮死状態のままで5年間を・・・
・・・いや、これも無理な話だろう。冬眠状態は12月から春先までのせいぜい3~4ヶ月間が限度。
それ以降何年も冬眠し続けたゆっくりなど聞いたことがない。
そもそも何らかの方法という荒唐無稽な推測はもはや妄想と変わらない。

では何だ?何が原因でまりさは5年も生き延びたのだろう?
この黒くなった箱がその要因なのだろうか?
男は物言わず佇む、黒く濁った箱を憎々しげに睨み付けた。

「・・・・・!?」

その時、男は箱と目があった。
土から僅かに顔を除かせる黒い箱の中から薄っすらと浮かび上がったのは「丸い眼球」だった。
暫し、無言で互いを見詰め合う男と箱の中の眼球。

バササササッ!

突然周囲に鳴り響いた音に驚いた男はビクリ!と肩を震わせた。
辺りを見回すと男の目に映ったのはすぐ傍にある森から飛び立つ鳥の群れだった。

「はぁっ・・・!く、くそっ!」

息を荒げながら視線を箱に戻す。
そこには先程と変わらずに男を見つめ続ける二つの眼球。
見間違えでは無かった奇妙なその光景に男は思わず顔を引きつらせる。
しかし、それと同時に沸々とこみ上げる怒り。
ゆっくり如きに場を支配されている憤りが一瞬だけだが箱に対する恐怖に勝った。

「ふざけるなっ!」

男は声を荒げると箱を蹴り上げた。
土砂を撒き散らしながら蹴り上げられた箱が地表に姿を現して地面を転がる。
顔についた土砂を拭いながら男はゆっくりと箱に向かって歩き出した。
しかし、その時男の手に「ぬるり」とした奇妙な感触が走る。
咄嗟に顔を拭った自分の手の甲に視線を落とす男。
奇妙な感触の正体は土砂に混じって蠢く無数の「蟻」だった。

「に゛・・・・っ・・・・に゛ん゛げ・・・・・っ」

箱がカタカタと揺れて丸い眼球が再び黒い箱の表面に浮かび上がった。
この黒いものは餡子か?箱の中はびっしりと餡子が詰まっていて眼球がその中を漂っている?
そしてこの不自然な量の蟻。餡子を狙って集まってきているのだろうか?
何とか現状を把握しようと思案を巡らせる男だったが、酷い不快感に苛まれて正常な思考が行えないでいた。

「・・・・じねっ!・・・・・じねぇぇぇっ!!」

空気を切り裂くような音が耳元で聞こえたその瞬間。
男は頬に鋭い痛みを感じて地面に膝をついた。
そっと、頬に触れると何か鋭利なもので切り裂かれたような真一文字の傷跡と、そこから流れ出る生暖かい液体の感触。

黒い箱がカタカタと笑っているかの様に振動を続けている。
今のはあの箱・・・いや、まりさがやったのだろうか?
あの状態でどうやってこんな事ができるというのだろうか?
完全に場の空気に飲まれてしまった男の額にはじっとりと汗が滲んでいた。

静寂に包まれていた小高い丘に蛙の鳴き声が一斉に聞こえ始める。
その無機質に延々と繰り返される泣き声がこの光景を更に不気味な物へと変貌させていった。





5年前




まりさを埋めた場所の土が小さく陥没した瞬間、中から金属の棒が飛び出した。
地面に転がるそれは金属製のスプーンだった。
そのゴルフボール程の穴からは唾液の混じった空気がフヒューフヒュー!と忙しなく吐き出されている。

「うめっ!めっちゃっ空気うめえっ!」

身支度をする時にこっそりと麦藁帽子の中に隠して持って来たスプーン。
それを使って空気穴から地表へ向かって土を掘り進んで、
最後に口からスプーンを噴出して箱と地表を繋ぐ穴を開通させて空気を取り込んで、何とか窒息死を免れたまりさ。
野良生活にあたってまず必要になるであろう自分の巣穴を掘るために、
こっそりと持ち込んだスプーンがまりさの命を繋いだ。

「これで息が吸えるよっ!だからゆっぐりじでね!おぢび・・・」

まりさが必死に上空に覆いかぶさった土を退けている間も、うわ言のように呪いの言葉を発していたれいむだったが、
気がつくと食い縛っていた歯を力なく半開きにして事切れていた。
それを見てまりさの瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

「ゆぐっ・・・!ごべんね・・・ごべんねぇぇ、おちびちゃんんん」

日が暮れて辺りが深い闇に包まれても、
それが薄っすらと白みをまして辺りに目を覚ました鳥のさえずりが聞こえてきても
まりさはいつまでもれいむに謝罪の言葉を繰り返し続けた。

「ゆ゛っ!!」

まりさは蝉のけたたましい喧騒と照りつくような暑さで目を覚ました。
夏の炎天下は地中に居てもその刺すような日差しで土を熱してまりさを苦しめようとしていた。
どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。
しかしそんな暑さも隣で永遠にゆっくりしたれいむを見た瞬間に吹き飛んだ。

「ゆ゛っ!!ゆ゛うううう!!」

思わず傍らに抱いていたれいむを突き飛ばして箱の隅へ体を押し付けるまりさ。
れいむの亡き骸には夥しい量の蟻がたかっていたのだ。
れいむの甘い匂いを嗅ぎ付けて、空気を取り入れる為に掘った穴から列をなして進入してくる蟻の集団。

「ゆ゛わ゛ぁぁぁ!でていってねぇぇ!ゆっぐりでていってねぇぇぇ!」

箱の中の蟻を舌で潰しながら狂ったように取り乱すまりさ。
それと同時に全身に僅かに突き刺す様な痛みが走った。

「ゆ゛っ?・・・・ゆゆっ??・・・・ゆ゛う゛っ!!!」

まりさの体にも無数の蟻が蠢いていた。
僅かに感じた痛みはまりさの皮を食い破り蟻が体内に侵入しようとしていた為だった。
狭い箱の中を転げ周り、体中に舌を這わせて蟻を殺す作業に一心不乱に没頭するまりさ。
そうしている間に辺りはまた深い闇に包まれていった。

「いやだぁぁぁ・・・いやだぁぁぁ・・・」

昼夜を問わず箱の中に進入を続ける蟻の襲来にまりさは眠る事すらできなかった。
自分の事で精一杯になり、放置してしまったれいむは見る影も無くグズグズになった残骸を晒している。
それを時折見てまりさは顔を青くして嗚咽した。
しかし何時までも眠らずに居られるわけもなく、やがて力尽きて吸い込まれる様に眠りについてしまう。

「すーや!すーや!すー・・・・う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

そして目覚める度に全身に集った蟻に驚いて、泣き叫びながら一日かけてそれを取り除く
そんな気の狂いそうな日々を何日か繰り返した。

「い゛っ・・・びっ・・・ん゛っ」

全身を擦りむいた様な傷が覆い、フルフルと痙攣するまりさ。
これ以上蟻によって体を傷つけられれば、やがて餡子が垂れ流して死に至るだろう。
それは時間の問題だった。
時折、勝手に閉じようとする瞼を舌で無理やりこじ開けながら、自分の側に寄ってくる蟻を舌で潰して口の中へ放り込む。
れいむの姿はもう跡形も無かった。
れいむが居た場所には持ち主を失ったお飾りと金色のバッジが寂しげに転がっている。

まりさの疲労は既に限界を超えていた。
心はとうに折れていた。ただ機械の様に淡々と迫り来る蟻を押しつぶすだけである。
ここまでして生きる必要があるだろうか?いくらあがいた所で終着点は変わらない。
どんなに抵抗しようと、そこへたどり着くのが幾分早いか遅いかだけであろう。
どうせまりさはもう二度とゆっくりなどできない。
ゆっくりしたい。ゆっくりさせてほしい。ゆっくり。ゆっく・・・ゅ・・・

まりさは自分の意識が一瞬だけ遠退いたと思ったその瞬間。
暗闇に包まれていた箱の中が、突然目も開けられない程に明るくなった。

「ゆ゛っ・・・?急に明る・・・ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

まりさは疲れのあまり夢も見ずに眠ってしまっていた。
それが、まりさには一瞬にして昼夜が切り替わったように感じられたのだった。
そして日の光に照らされた自分の体には全身をを覆いつくす夥しい量の蟻が集っていた。
もはやどうすることできない。転がろうが体を振り回そうがここまで全身を蝕む蟻はどうすることもできなかった。

「んぎっ!ぎぎぎぎっ!!ゆっぐりぃぃ!!」

歯を食いしばって苦悶の表情を浮かべるまりさ。
全身を駆け巡る焼けるような痛みに終始襲っていた眠気が一気に吹き飛んだ。
まりさの体のそこかしこに開いた穴から小さな餡子の塊を抱えた蟻が無数に這い出てくる。
それを見てまりさは舌で蟻を潰そうとするが、その舌にも無数の蟻がたかっている事に気がついて
狂ったように荒い呼吸を繰り返しながら無言で空を眺めた。

ギラギラと輝く太陽。澄み切った青い空。
ゆっくりできそうなその光景はまりさの世界とは遠くかけ離れていて不気味に感じた。
すぐ上の穴からは無数の蟻。蟻。まりさの中身を求めて無数の蟻が迫ってくる。
その時、ようやくまりさは気がついた。まりさの体がピクリとも動かせない事に。

「ゆ゛っ?ゆ゛っ?ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!?」

まりさは涙を垂れ流しながら必死に体を捩る。
しかしまりさの意志に反して体がいう事を聞かない。

「どぼじでええ!!どぼじでええええ!!」

そうこうしている間にも視界を覆う大量の蟻がまりさの大事な中身を持ち去っていく
はやく。はやく止めなければ。こいつらを殺して中身を取り返さなければ。
まりさは顔を真っ赤にして無理やり体を動かそうと懇親の力をこめて身を捩る。

「ん゛ぎぎぎぎぎぎっ!!!・・・・・ん゛ん゛っ?!」

「プリョッ!」と妙な音がした。
今まで生きてきた中で聞いたことの無い音だった。
そしてもっと変だったのは、その音が体の中から聞こえたという事だった。

「・・・・・・ゆ゛っ?」

「ぐにゃり」とまりさの体が崩れ落ちて倒れこんだ瞬間に体が爆ぜた。
無数の蟻に体を食い破られてスカスカになってしまっていたまりさの体は
無理やり動かした事によっていとも簡単に崩壊してしまったのだ。
ドロドロと流れ出したまりさの餡子は狭い箱の中を並々と満たした。

「う゛っ・・・・うぎゅっ・・・・ゆぎぎぎぃ!?」

しかしまりさは死ぬ事ができなかった。
まりさの視界には暗い餡子の海が広がっていたが
箱の中を満たした餡子の上にプカリと眼球が浮くとまりさの視界は開けた。

箱がまりさの新しい皮になってしまったのだ。

その要因はいくつかある。
蟻に全身を食い破られたが、ゆっくりの体を司る急所である「中枢餡」は奇跡的にも無傷だった事。
狭い箱の中で餡子が飛び散らずにその場にとどまった事。
人間から餌だけは良質のものを与えられていた上、蟻を食べ続けていたので栄養状態が良好だった事。
そして一番の要因は、まりさの「肉体」が徹底的に死を拒絶した事である。

たとえ栄養の無い雑草を毎日食べていても、それで「ゆっくり」できていれば、そのゆっくりが死ぬ事は無い。
逆に栄養価の高い人間が食べているものと同じような食事を取り続けていても、
精神的に「ゆっくり」できなければ、そのゆっくりは徐々に衰弱して死に至る。

水に溺れた時も、窒息死する事は無い。呼吸などしていないからである。
しかし呼吸ができないという思い込みから「ゆっくり」できないと感じれば、
全身は青ざめてまるで窒息死したかのような表情で死に至る。

まりさはどんなに肉体的、精神的に追い詰められようとも、表面上は「ゆっくりできない」と感じて
生きる事を諦めてすらいたが、内面である体はその信号を無視し続けていた。
「ゆっくりできないので死ぬ」という選択肢の無い体を持ったゆっくりはそうそう死なない。
いや、死ねないのだ。これは一種の病気であるかも知れない。

地表から穴へと列をなして進んでくる蟻の群が次々と餡子の海に落ちてウネウネと苦しそうに蠢いている。
それを餡子に浮んだ眼球からまりさは見ていた。

「じっ!・・・じねっ!まりさをゆっぐりざぜない蟻ざんはゆっぐりじん゛でね゛っ!!」

蟻は暫く苦しそうに身を悶えさせていたが、暫くすると動かなくなり、少しずつその体が餡子に変換されていく・・・
その様子を見てまりさはほくそ笑んだ。
自分をゆっくりさせない蟻のゆっくりできない死にまりさは心底うれしそうな声をあげた。

「ゆっぐりぃ!ゆっぐりできるよぉぉぉ!!」

不味いが食べ物は勝手に向こうから歩いてやってくる。
口を動かす必要も無い。餌を探す必要も無い。まりさの命を繋ぎとめる者は勝手にやってくるのだ。
この状況にまりさは久々にゆっくりした。
男の視線を気にする事も無く日がな日光を浴び、起きたい時に起きて、寝たいときに寝た。
誰に気を使うことも無く思うがままに歌を歌ってゆっくりを謳歌した。

しかしそんなゆっくりも数日したら飽きた。

体を動かせず、すっきりはおろか、すりすりもぺろぺろもできない。
他のゆっくりに出会ってもゆっくりと認識してもらえないであろうその姿にまりさは早々に苦痛を感じ始めた。
箱に満たされた餡子の中で眼球をウロウロと動き回らせて何か状況の打開策はないかと模索する。
しかし、そんなものは無かった。
やがて、穴に入ってくる虫も居なくなり、身を突き刺すような寒さと言葉に言い表せないような孤独感、そして空腹がまりさを襲う。
まりさは底の無い穴に突き落とされたような絶望感の中で深い眠りについた。

まりさが目を覚ますと寒さは無くなっていたが、回りには何も変化の無い景色が広がる。
眠りにつく刹那、まりさはやっと楽になれると思っていた。ゆっくりと死ねると思った。それは間違いだった。
まりさは本能的に冬に備えて冬眠しただけだったのだ。

春になり、穴に迷い込む虫が現れた事によってまりさの意識は再び覚醒する。
僅かに満たされた空腹感。まりさは自分が生きている事を実感した。
しかしそれは冬の寒さを持ってしてもまりさにとっては最後のゆっくりである「死」が訪れない事を決定付けていた。
やがて夏になり大量の虫がまりさの穴に押し寄せる、しかし腹いっぱい虫を食べてもまりさはゆっくりできなかった。
何時終わるとも知れないこの状況。やがて訪れるであろう冬にまりさは身を震わせて恐怖した。




再び5年後





季節が何回か巡り、もはや自分が言葉を発せられるという事すら忘れかけたある日。
自分がゆっくりという事も忘れかけていたにも関わらず、常に心に付きまとう孤独感は晴れなかった。
それ所か最近はどんなに虫を食べても空腹感が満たされなくなってきていた。
気が狂いそうな状況であっても精神は崩壊せず、体はピクリとも動かない深い闇の中で
まりさは5年という月日を苦しみ続けて過ごした。

その時、荒い息遣いとともに掘り起される周りの土。
そしてまりさの視界に入る見覚えのある顔。
まりさの霞がかった意識が数年ぶりに覚醒する。
久々にその身を照らす日光に自分がまりさだと言う事を久しぶりに思い出した。
あいつだ。まりさをこんな目にあわせたあいつが目の前にいる。

「に゛っ・・・!にんげん・・・・にんげんんんんん」

かつてまりさを遊び半分、暇つぶしの感覚で痛め続けた挙句、
こんな状況にした人間が目の前で尻餅をついて驚いた顔を浮かべながらまりさを見ている。

「じねっ!じねぇぇぇ!!!」

まりさは餡子の中を漂う舌で先日穴に迷い込んでまだ餡子に変換されていない
固い甲虫の殻を舌で包むと空気穴から器用に舌を突き出してそれを噴出した。
吹き矢のように空気を咲いて飛ぶ甲虫の欠片は人間の頬を切り裂いた。

「うわっ・・・!痛っ・・・!」

頬を押さえてその場にしゃがみこむ人間。
その姿を見てまりさの漂う餡子に忘れかけていた感覚が駆け巡った。

ゆっくり

これはゆっくりだ。久しく忘れていた全身を駆け巡る身を震わせるような快感。
それにまりさは我を忘れて叫んだ。

「ゆっくりぃぃぃぃ!ゆっくりぃぃぃぃ!!」

ガタガタと振動する黒い箱。
パンパンに膨らんだそれは周りの土をまきちらしながら笑っているかのように揺れた。
男がゆっくりと立ち上がって箱を睨みつける。
あの顔。まりさの餡子脳にずっと昔の光景が浮かび上がる。
かわいいまりさのおちびちゃんを散々痛みつけて、最後にはまりさに無理やり食べさせた男の顔。

あの時はあれに逆らう事はゆっくりできない死を意味していた。
しかし今は違う。今の状況よりも苦しい状況など無い。死ぬよりももっと苦しい今の状況。
あれほど怖かった男の形相だったが今はちっとも怖くは無かった。
取るに足らない存在だった。そう、あの時食い殺してやったおちびの様に。

「じねっ!じねぇぇぇぇ!」

黒い箱の中の餡子をまりさの舌が駆け巡る。
さっきより固いもの。もっとあいつをゆっくりできなくするものは無いか?
やがてまりさの舌は先程の甲虫などよりもずっと「固い丸いもの」を絡め取った。
再び空気穴から舌を出して狙いを男に定め・・・・

「ゆ゛っ!!」

男がスコップを振りかぶりながら、地面を蹴って凄まじい形相を浮かべながらこちらに突進してくる。
まりさはできるだけ気持ちを落ち着かせて、舌先の標準を男に合わせる。
そして男が手に握ったスコップを振り下ろした瞬間に「固い丸いもの」を縦に丸めた舌から発射した。

「い゛っ・・・・」

その固い丸いものは男の肩口に直撃した。
男は小さく呻き声を漏らすとバランスを崩して倒れるように再び地面に膝をついた
男の狙いが外れてスコップは黒い箱の端を僅かに掠めただけだった。
その衝撃で黒い箱は地面を転がって再び男との距離が離れる。

男は足元を転がる肩に当たった「固くて丸いもの」を拾い上げる。
それは銀色に輝くバッジだった。
それをぶつけられた肩口を指で軽く撫でると男の体にビリビリとした痛みが走る。

バッジを握り締めながら男が黒い箱に視線を落とす。
どうやって攻撃してきたのかは、今のぶつかり合いの時にわかった。
しかし、問題はどうしてゆっくり如きが吹き矢の要領で噴出したものにここまでの威力があるのか?という事である。

野良暮らしの素行の悪いゆっくりの一部には時折、人間の栽培した農作物に手を出す事がある。
その時、生の大根に齧り付く程の強靭な顎の力を持っていながら。
その一方で何故か人間に攻撃を仕掛けた時には、その皮膚に歯跡すら残せないのである。

その現象の回答の一つとして無意識の力の制御が挙げられている。
ゆっくりは残した子孫に記憶の一部を引き継げるという特性を持っている。
それによって、生まれ持って言語を操り、捕食種の存在を知り、一定のゆっくりできるもの、できないものを判別できる。
つまり過去にゆっくりの祖先が人間、または他の生物に攻撃を仕掛けた際に手酷い反撃を受けてしまった記憶が
リミッターとなって働き、自分より強い個体には無意識に力をセーブした攻撃を行ってしまうのではないだろうか?
それによって自分より強い個体との争いを避け、安全に暮らすという機能がこの場合悪いほうに作用してしまっていると考えられる。

その無意識の力の制御が正常に作動していないゆっくり。
それが恐らく目の前で奇声をあげている黒い箱のまりさであろう。
これは遊び半分で駆除できるような生き物ではない。
男は自分も下手をすれば、傷を負うという状況。相手と同等の立場になった事を予感していた。

ヒュン!

男の耳元を何かが通り抜ける。
地面に落ちて弾むそれは石ころだった。
黒い箱の方を見ると、その空気穴から舌が伸びて地面の石を拾い上げてはこちらに投げつけている。
その石のひとつが男の足に当たって男は顔を顰める。
一つ一つは大した痛手にならないが、延々と繰り返されれば、致命傷になりかねない。
男は姿勢を低く保ってスコップで頭部を守る。

その時、黒い箱が自分の力で傾いて位置を変えると空気穴の部分が上になった。
その姿勢は先程、バッジを打ち出した時と同じ姿勢である。
不意に襲ってきた生命の危機。小さく縮こまってスコップを盾にしながら縮こまる男の表情は
まるであの日のまりさの様に情け無い笑みを浮かべていた。

「ゆっぐりできなくじてあげるよっ!ばかなにんげんざんっ!」

黒い箱の中を彷徨うまりさの舌が絡め取った今までで一番ずっしりと重いもの。
それはれいむの金バッジだった。
それを握りながら空気穴から舌を出して狙いを定めるまりさ。
その先には小さく縮こまった男の丸いシルエット。
どうしてあんなちっぽけな奴を怖がって機嫌を伺って媚び諂っていたのだろうか?
このおちびちゃんの残した金バッジであの人間を永遠にゆっくりできなくしてやる。おちびちゃんの仇を取ってやる。

「じねっ!くずにんげんはゆっぐりじ・・・・」
「ま、まてっ!・・・まってくれまりさっ!」
「ゆ゛っ?」

スコップで頭部を守りながら丸まっていた男がまりさの方に手を差し出して叫び声をあげた。

「悪かった・・・!許してくださいっ!」
「い、いまさら・・・いまさらなにいっでるのぉおお!!」

あれだけ辺りを照らしてた夏の日差しはいつの間にか姿を消し、
この季節にしては肌寒い風がこの小高い丘を撫でた。

「許すわげないでしょおおおお!!おぢびちゃんががえっでくるの?ぞれでえええ!!」
「まっ!まって!まってくれ!!」

男はスコップを地面に置いて膝を折り曲げると頭を地面に擦り付けて謝罪した。
酷く滑稽で情けない男の態度にまりさは気が晴れる所か沸々と沸き立つ怒りを感じていた。
暫しまりさは沈黙して考え込む。
まりさが何度も何度も身を地面に擦り付けて許しを懇願した時、あの男はどうしただろうか?
れいむを殺す事を何度も何度も天に向かって拒み続けたあの時、あの男はどうしただろうか?
そう、許せる筈が無かった。

「ゆっくり考えたけどだめだよっ!ゆっくりしんでねっ!そしてゆっくり反省してねっ!」
「しねぇよ、そんなもん」
「ゆ゛っ!?」

突如豹変した男の態度にまりさは驚きの表情を浮かべる。
もっとも今は黒い箱なので表情など浮かべられない、その感情はまりさ本人以外には伝わらなかった。
その時、まりさの体である黒い箱を先程からしきりに打つ物体に気がついた。

「ゆ゛っ!?なにこれ!?」

まりさは気がついていなかったが、先程からパラパラと降っていた小雨が
その雨脚を強めていよいよ本降りに突入しようとしていた。

「雨ざんっ!?雨ざんはゆ゛っぐりできないよっ!」

まりさは自力で箱をパタン!パタン!傾けて倒すと空気穴の部分を下にして
雨水の浸入を防いだ。

「ゆふふっ!これで大丈夫だよっ!ゆっぐりでぎるね゛っ!」
「そうだねゆっくりできるね。主に俺が」
「ゆ゛うっ!!!」

裏返しになって安堵の声をあげるまりさだったが、その目の前には何時の間にか男が立っていた。
雨を滴らせながら、全身には投石による打撲の傷跡が浮んでいる。
そしてその手にしっかりと握られてるスコップ。
男は身を縮込ませて待っていたのだった。小降りの雨が本降りになるのを
その為の時間稼ぎもなりふり構わず行った。

その結果がこの形勢逆転だった。

懇親の力を込めて箱に振り落とされるスコップ。
箱は一瞬して拉げて砕け、その破片を辺りに散らばせた。
深々と突き刺さったスコップ、その冷たい金属の塊が体内に挿入された痛みにまりさは思わず叫んだ。

「ん゛っ!!ん゛ぎっ!い゛だい゛!!いだぁぁぁぁぁいいい゛」

ようやく他のゆっくりのような弱々しい悲鳴を上げたまりさ。
その声を聞いて満面の笑みを浮かべてまりさを見下ろす男。
頬と鼻の頭にこびりついた血を拭い取りながら男はここに来た目的である銀色のバッジを口に含むと粉々に噛み砕いた。
男にとって当初の目的である銀バッジの回収など、もうどうでもよくなってしまっていた。

「前はぬるいじめだったからなぁ、反省してるよまりさ」

突き刺さったスコップをそのままにして箱を抱えると愛しそうにそれに頬擦りする男。
まりさである箱に向けられる視線は以前の様に醒めものではない。
男は絡みつくような熱っぽい視線を箱に送り続ける。

「ぬ゛いでっ!ごれぬ゛い゛でねっ!!いだいぃぃぃ!いだいぃぃぃ!!」
「そうかそうか」

スコップが突き刺さったままの黒い箱を抱きかかえて来た道を戻る男。
まりさと出会うよりもずっと前、「楽しくゆっくりと遊んでいた」男。
ゆっくりを虐待する事でしか性的快感を得られなくなってしまい、
その行為は日に日にエスカレートして取り付かれた様に飽きる事無くそれを繰り返し続けた。

しかし心の成長と共にゆっくりへの固執を払拭して他の人間と同じような生活へ戻った男。
しかしこの黒い箱のまりさが再び男の歪んだ性癖に火をつけてしまったようだった。
男もまた一種の病気を抱えていた。ゆっくりに対して病的なまでの好意を寄せてしまう心の病である。

黒い箱のまりさ。そうとうつらい思いをしたであろう。
男の中を様々な考えが駆け巡る。
その長い年月で受け続けた「苦痛」を超える「苦痛」をあたえるにはどうすればいいだろうか?

「なにがいいかな?なにかあるだろ?あるはずだ、なにかなにかなにか・・・・」

ブツブツと独り言をこぼしながら足に絡みつく雑草を意にかけずに引きちぎりながら進む男。
コンポスト?この箱をゴミ箱の底に設置して延々とゴミを食わせるか?

いやいや、無理やり蘇生してみるのはどうだ?生地を買ってきて丸くしてそれにこの
箱の中身を移して無理やり元に戻す。その際には想像を絶する苦痛があるだろう。
それを野生の群に放してみるか?同属にどんな仕打ちを受けるか見物ではある。

いやいや、箱の中に無数のパチンコ玉を入れて命令すると弾を噴出するように躾けて
ゆっくりの群を襲撃させるというのはどうだろう?

いやいや、空気穴から拾ってきたゆっくりに無理やりすっきりさせたらどうなるだろう
「産まれる」のだろうか?産まれたとしてそれは正常な赤ゆっくりなのだろうか?
箱の上の穴を大きくして産まれた落ちた途端に箱の中へ落ちるようにしたらきっと、声をあげて「喜ぶ」だろう

いやいや、それならいっそ箱の中に拾ってきたゆっくりを放り込んで見るというのはどうだ?
どうなるだろうか?精神が混じるか?それとも発狂するだろうか?
それも一匹でなく何匹も放り込んだらどうなる?興味は尽きない。
いやいや、これはどうだ?いやいやいや、手ぬるい、手ぬるすぎるもっとあるだろ?もっともっと?

取り留めなく思いつく限りの虐待方法をブツブツと呟く男。
男の手にしっかりと抱かれた箱が男の妄想を聞いてブルブルと振動した。
全て気のせいだった。他のゆっくりの苦しむ姿を二度と見たくないという確固たる決意。
苦痛に塗れた地中での気の遠くなるような長い時間の生活で悟った人間への恐怖の払拭。

全て気のせいだった。

人間さんに勝てると思ったの?馬鹿なの?死ぬの?成長物語気取りなの?
心の中で自分で自分を罵倒しながらまりさは、これから始まる今までよりもっと辛い生活を想像した。
新しい皮である黒い箱のせいでその表情はわからないが、
きっと今、5年前の様に眉毛をハの字にして力の無い笑みを浮かべているだろうまりさから弱々しい声がひねりだされた。

「ごべんなざい、まりざをゆるじでね」












おしまい



※最後まで読んでくれてありがとうございました。




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  • 副工場長れいむの末路
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最終更新:2022年04月16日 22:23