※現代社会に当然のようにゆっくりがいます。
※オリ設定満載です。
※ぬる虐めです。そして割と愛で気味です。
fuku2278.txtの続きですが、読まなくても問題はありません。


















数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる新たなる生命体。

人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎる。

が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。

そんなご時勢ゆえ、こんなものが出現するのも時間の問題だったといえる。



ゆっくりと遊べるアトラクションパーク“ゆー園地”はこの夏オープン!ゆっくり好きのみんなは絶対に来てね!

そんな馬鹿馬鹿しいキャッチフレーズに騙される物好きというのは意外と多いもので、ゆー園地はゆっくり連れの人々でごった返していた。

「おにーさん、たのしみだね!」

右を向けばやや小柄な青年の肩に乗ったまりさが瞳を輝かせ・・・

「れいむゆっくりあそぶよ!」

左を向けば父親と並んで歩く12歳前後の少年に抱きかかえられたれいむが腕の中で飛び跳ねている。

「「ゆっきゅりー!!」」

どうやら私の前の女性は本来同伴不可の赤ちゃんゆっくりを連れてきているようだ。

「たのしいところなんだねー、わかるよー!」

後ろのほうからはちょっと珍しい種の・・・確かゆっくりちぇんの期待に満ちた声が聞こえてくる。

あたり一面ゆっくり馬鹿だらけ。

かく言う私もその一人・・・とは言いがたいところなんだけど、傍から見れば十分にゆっくり馬鹿に見えるんだろう。実に心外だ。

今私たちが目指している場所、『ゆー園地』はその名の通りゆっくりと飼い主が一緒に楽しめる遊園地。

最高時速25kmのジェットコースターや最高到達点15mの観覧車、顔饅頭だらけのお化け屋敷などの素敵なアトラクションが盛りだくさん。

しかもこれで入場料は大人1人3000円のゆっくり1匹につき500円。フリーパスだとその2倍。

・・・・・・・・・・ちょっと責任者出て来なさい。

「れいむー、たのしみだねー!」

そう言いながら私の右肩で緩みきった間抜け面をさらしているのはゆっくりまりさ。

「ゆっくりしようねー」

まりさに返事をしたのは左肩に乗っているゆっくりれいむ。ちなみに、まりさのつがいで子どもが6匹いたりするが子どもはサイズの関係で入場禁止なので友人宅に預けている。

こっちは入場料や、恐らく中に入ったらこいつらが欲しがるであろう食べ物なんかの出費を考えるだけで頭が痛いのに、なんとも気楽な連中だ。

「おねーさん、ゆっくりあるいてね!」

そして、抱きかかえられたまま私のお腹に顔をうずめて怯えているのはもう1匹のゆっくりまりさ。

こいつは非ゆっくり過敏症なる珍妙な症状を持っていて、時速3km以上の速度で移動するものを見ると気絶してしまう。

しかも、ふざけた事に自分自身の落下速度が3kmを超えると気絶してしまうので這って移動することしか出来ない。

そんな有様だから私が普通に歩くだけでも気絶してしまう。そのため、仕方なくこうやって視界を塞いで連れ歩いているのだ。

何で私がゆっくりなんかのためにここまでせにゃならんのか・・・。

「はぁ・・・」

何度目になるかもわからないため息をついた時、ようやくゆー園地に到着した。



入場した私たちはまず手近にあったメリーゴーラウンドに乗った。

ここのメリーゴーラウンドは四つん這いになったメイド服の妖精少女が木馬代わりという実にシュールな代物だ。

木馬の台数は15台程度。ゆっくりが乗ることを前提に作られているので全体的に小ぢんまりとした造りで、ゆっくり用の台座がメイドの頭に設置されている。

そして、回転速度も非常に遅い。時速2kmくらいしか出てないんじゃないか、これ?

「おーい、まりさ。これならあんたでも大丈夫だろ?」

せっかく連れてきたんだから楽しんでもらおうと思って過敏症まりさに声をかける。

「ゆゆっ!ほ、ほんとうに?!」

そして、その言葉を信じたまりさは恐る恐る外へ目を向ける。

エレエレエレエレエレ・・・

すると、視界に飛び込んできた普通に歩いているお兄さんを見て嘔吐、気絶してしまった。

・・・だめだこりゃ。

念のため用意しておいた透明のビニール袋で過敏症まりさの嘔吐を受け止め、まりさ自身もそこに放り込んでおく。

「はぁ・・・仕方ないか。アンタらだけでも楽しみな?」

「いわれなくても~」

「ゆっくりたのしんでるよ~!」

流石と言うか何と言うか、言われるまでもなく2匹はゆっくりしていた。

「ゆ~ゆ~ゆ~、ゆ~ゆ~♪」

「ゆゆっ~ゆゆ~♪」

こっちはどうしようもないほど退屈だというのにむかつくほど楽しそうだ。

その姿を見ていると、何故か頬をつねりたくなってくる。いや、そう思ったときには既にれいむの頬をつねっていた。

「ああ、くそっ!うっとうしい!」

「はひふふほ、ほへーひゃん!」

「ゆゆっ!おねーさんゆっくりやめてあげてね!」

「うるさーい!私も少しは楽しませろ~!」

周囲の人たちが騒いでいる私たちの様子をチラチラと伺っているような気がしたが、メリーゴーラウンドが止まるまでずっとつねり続けてやった。



「あっはっは・・・ごめんごめん。ちょっと調子に乗りすぎた」

酷くふてくされて頬を膨らませているれいむに苦笑しながら右手を自分の顔の前にかざして謝る。

「ぷんっ!れいむ、やめてっていったのに!やめてくれなかったおねーさんなんてきらいだよ!」

「まりさもやめてっていったのにどうしてやめてくれなかったの!?おねーさんひどいよ!ぷんっぷんっ!」

ついでにパートナーのまりさもふて腐れている。

「う~ん・・・おわびにお菓子買ってあげるから、それで許してくれ」

「お菓子」という単語に反応したれいむとまりさはちらりと私のほうに目を向ける。

が、すぐにそっぽ向いてしまった。

「おかしなんかにつられないよ!」

「れいむほんとうにおこってるんだからね!」

しかし、そう言いつつもこちらの様子をちらちらと伺う2匹。やっぱりお菓子が気になるらしい。

その様子を見て、私はある作戦を思いついた。

「ねえ、まりさぁ、許してよぉ~。許してくれたら美味しいお菓子を買ってあげるからさぁ~」

「ゆ、ゆぅぅぅうう・・・」

作戦名『各個撃破』。2匹をいっぺんに懐柔しようと双方が双方の気持ちを汲んで、自分も良からなく茶という意識を芽生えさせるためなかなか上手い行かない。

しかし、1匹ずつならどうだろうか?それも直接つねられた訳ではないから比較的怒りの軽いまりさを重点的に攻める。

「ね、まりさ、お願い?」

と、許しを請いつつまりさの抱きつく。

饅頭に詫びながら胸を押し付ける女ってのは傍から見たらどういう風に見えるのだろうか?

「ゆぅ・・・しかたないね!あやまるんならゆるしてあげるよ!」

「おお~!ありがと~、まりさぁ~!」

自分でも気色の悪いとしか思えないような猫なで声でまりさに感謝の意を伝えつつ、今度は頬ずりをした。

「ゆぅ~!おねーさん、おかしわすれないでね!」

「もちろん忘れないよ♪やっぱりまりさは優しいなぁ」

「ま、まりさのばかあああああああ!どほぢででいぶをみずでるのおおおお!!」

「ゆゆっ!?みすててないよ!おねーさんをゆるしてあげただけだよ!」

「でいぶがゆるぢでないのどどぼぢでがっでにゆるずのおおお!まぢざなんでぎらいだよ!」

「ゆぅ!?どぼぢでぞんなごどいうのおおおおお!」

気がつけば私そっちのけで痴話げんかを始めてしまった。



「まりさ~、だいすきだよ~♪」

「まりさもだよ~♪」

痴話げんかを始めてからものの42秒ほどで仲直りした馬鹿2匹は、不快指数を高める何かを撒き散らしていた。

「あ~、暑苦しい暑苦しい・・・」

腕の中で鬱陶しいくらいいちゃいちゃしている2匹から目をそらしつつ、私は適当に何か食べられそうな場所を探していた。

「何かないかなぁ?」

しかしこのゆー園地って施設は、ゆっくりも入場可の癖に無駄に広い。

そのくせアトラクションの数はそれなりに多いのだが一つ一つが小さめだし、休憩所になりそうなところも少ない。

更に敷地内がほとんど舗装されていなくて、結構大きな石ころなんかがごろごろ転がっていたりする。

「はっはっは、れいむは鈍臭いな~♪」

「おにいざああああん!まっでえええええええ!!」

そんなわけで、飼い主に運んでもらえず、自力で移動せざる得ないゆっくり達はみんな痛みを堪えて涙目になっている。

「・・・もしかして、私甘すぎる?」

そんな風にぼやいたとき、運よく園内の地図を見つけた。

「適当に何か食べれそうなところは・・・お、あったあった」

「ゆ?おねーさん、なにがあったの?」

「まりさたちにもゆっくりおしえてね!」

いつの間にかいちゃいちゃタイムを終えていた2匹は首をかしげながら上目遣いで私に質問をする。

「ん、ゆーくりーむだってさ。どんなものかは知らんけど、多分シュークリーム的な何かだ」

「「ゆゆっ!しゅーくり-むってなに!?ゆっくりできるもの?」」

「ハモるな、鬱陶しい。ん~、まあ、そうだな・・・アンタらの基準で言えばゆっくり出来るものだな」

「「ゆ~っ!おねーさん!ゆっくりいそいでゆっくりできるものをたべにいこうね!」」

ゆっくりできる、と聞くや否や、2匹は満面の笑みを浮かべていまだ見たことの無いゆーくりーむなるものを催促し始める。

「はいはい、わかったわかった」

そう言って私がゆーくりーむ販売店目指して歩き出したとき、どこかでゆっくりの悲鳴が聞こえた。

「ゆぎぃいいいいいいい!?おにーざん、でいぶのあんよがあああああ!!」

「ん、どうしたんだい?・・・おや、ガラス片が落ちてたみたいだね。それにこんな深手を負ったんじゃ歩けそうに無いね」

「おにいざあああああん、あのおねえざんびだいにでいぶをだっごぢでええええ!」

「やだよ。重いし暑苦しいし」

「ゆぎいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

やっぱり私は甘すぎるようだ。それにしてもガラス片が落ちていたというのは笑えないな・・・。



「こ、これが・・・ゆーくりーむ・・・」

私は思わず喉を鳴らしてしまった。しかし、美味しそうだからではない。

「ご、ごんあのだべでないよおおおおおおおおおお!!」

「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおお!!」

2匹にいたっては泣き出してしまった。ちなみに、過敏症まりさは歩いている途中に目を覚ましたが、また気絶してしまったのでリアクションは皆無。

私達の前に差し出されたそれは、こんがりと底部を焼かれたテニスボールサイズの子ゆっくりまりさだった。

子ゆっくりの口の中にはスライスされた美味しそうなイチゴが並んでいる。それもあまおう2つ分くらいの量だ。しかし、それをこの子ゆっくりが食べることは無い。

なぜならその子の口には歯が一本も無く、口の両端にキノコの山のビスケット部分のようなものがつっかえ棒としてはめ込まれているから。

れいむ達を怯えさせているのはそれだけではない。この子は・・・目も失ってしまっていた。そして、その空洞には右目に生クリームが、左目にはカスタードクリームがねじ込まれている。

「あ・・・ぁああぁ・・・」

しかし、このような悲惨な姿にされてもなお、この子ゆっくりは死んでおらず、時々うめき声のようなものが漏れ出してきた。

「・・・・・・いくらなんでも、これは引くわ」

確かにゆっくりのテーマパークの名物らしい代物ではあるが、どう見ても悪趣味すぎる。

「・・・・・・って言っても1つ600円もしたんだし、捨てるわけにもいかないか」

「ゆっ!?おねーさん、このこをだべぢゃうの!?」

「だめだよ、おねーさん!このごをゆっぐぢだづげでね!!」

当然といえば当然だが、2匹は私がその子ゆっくりを食べることにさえも強い抵抗感を示していた。

「って、言われてもなぁ・・・この子どう見てももう助からないよ?歯も目も無いし、足も使い物にならないし・・・」

目が無い、歯が無い、足が動かないのうちのどれか一つくらいならまだしも、3つセットでは流石にどうしようもない。

それに、よしんば助かったとしてもこれ以上ゆっくりを養う経済力を私は持ち合わせていないのだ。

「こんなんでも飼ってくれる物好きはそうそういないだろうしなぁ・・・」

やはり、さっさと楽にしてやるのが一番だろう。

そう結論付けた私はその子ゆっくりにかじりついた。

「「ゆぎゃ!?おねええざあああん!!なにぢでるのおおおおお!!」」

「む~しゃむ~しゃ・・・う、美味い!?」

ゆーくりーむは想像を絶する美味さだった。あまり甘いものが好きでない私でも普通に食べられる。

不味くない、決して不味くないぞ。見た目はかなりアレだけど。帽子があるので手が汚れないのもポイント高いな。



「むーしゃむーしゃ、しあわせ~!」

「うっめ、これめっちゃうめぇ!」

私に散々文句を言っていた2匹は「供養だと思って食べてやれ」といったらしぶしぶ食べ始めた。

ただし、しぶしぶだったのは最初だけ。一度口に入れてからはもうノリノリだ。

「ははっ、そんなに美味しかったんならまた買うかい?」

「ゆゆっ!もういらないよ!」

とはいえ、流石に生きた同属を食うのはもう勘弁願いたいらしい。

「そうか。じゃあ、気を取り直して・・・次はアレに乗ろうか?」

私は最高時速25kmというジェットとは程遠いジェットコースターを指差した。



「うおあああああああああああああ!!」

最高時速25kmとか言った奴出て来い!どう見ても普通のジェットコースター並みの時速に達してるじゃないか!

位置エネルギーを得るために高く高く昇りつめたゆっくりれみりゃと呼ばれる種の形をしたマシンが落下を始めた瞬間、頭の中はゆー遊地の公式ホームページのゆっくりコースターの解説への怒りでいっぱいになった。

「ゆぎゃああああああああああああああ!!」

「ゆぎぃぃいいいいいいいいい!!」

ジェットコースター恒例の悲鳴の中にゆっくりの叫び声も混じる。

少し落下が落ち着いたところで隣のゆっくり用の座席にくくりつけられているれいむ達を見ると、今にも吹き飛ばされそうな格好のまま見たことも無いような壮絶な形相で悲鳴を上げていた。

ちなみに帽子やリボンはどう考えても落下しそうだったので私が持っている。

「「「「ゆぎゅううううううううう!?」」」」

「「「「ゆげええええええええ!?」」」」

加速したマシンが右へ左へ振られるたびにゆっくり達が悲鳴を上げる。

「おにいざあああああああああん!だしゅげでええええええええええ!!」

落下し手からしばらく走行し、ある程度速度が落ちたところで前の席のお兄さんのれいむが泣き言を口にした。

2つ目の山を登り始めたころに聞こえてきたそのれいむの言葉を皮切りに、ほかのゆっくり達も泣き声を上げる。

「おねえざあああああああああん・・・!」

それはうちのれいむとまりさも例外じゃなかった。過敏症まりさは言うまでもなく気絶中。

「ははっ、大丈夫だって。私がついてるんだから安心しな」

「ゆぅ・・・まりさがんばるよ!」

「よしよし、いい子だ」

しかし、そうは言いながらも私はある不安を隠せないでいた。

最初のキャメルバックが一番高く、そこで得た位置エネルギーを運動エネルギーに変えてマシンを走らせるのが一般的なジェットコースターの仕組みだ。

摩擦でエネルギーを消耗してしまうので、大抵の場合1つ目のがいちばん高いのだが・・・このジェットコースターは2つ目の山が一番高い。

そんな構造は最初の位置エネルギーのみ走行しているならば不可能。だが、最近はリニア式の加速を用いることで、途中でも加速することが出来るらしい。

何が言いたいかというとだ・・・このマシンはさっきより高いところから落ちる、つまりさっきより加速がつくってこと。

「れいむ、まりさ、来るぞ!」

その言葉と同時に身構える2匹、というかマシン上の全ゆっくり。

「ひゃあああああああああああああああ♪」

「きゃあああああああああああああああ!」

「ゆぐええええええええええええええ!?」

「ゆぎょおおおおおおおおおおおお!?」

「うぎゃあああああああああああああああ!?」

「ゆべええええええええええええええ!?」

「ゆうううううううううううううう!?」

搭乗者の悲鳴が園内に一斉に轟く。人間のほうは案外余裕がある。私だって速いとわかっていればさほど怖くはない。

が、ゆっくりのほうはそうも言ってられないらしい。

あるゆっくりはエレエレと中身を撒き散らし、また帽子を被ったままだったあるまりさは帽子を失ってしまっていたが目先の恐怖でそのことに気づけないでいた。

またある小柄なゆっくりぱちゅりーは完全に意識を失ってしまっていた。

初めて見る胴体付きのゆっくりゃと呼ばれるゆっくりもぼろぼろ涙を零しながら悲鳴を上げていた。

しかし、各々恐慌状態に陥ったゆっくり達を乗せたマシンはゆっくり達の都合なんてお構い無しにメインのループに差し掛かっていく。

そして、あっという間に転地が逆転していた。

「「「きゃああああああああああああああ!!」」」

ジェットコースターとはこういうものだと理解している人間は余裕綽々。悲鳴を上げているがみんな妙に楽しそうだ。

「ぢぬううううううううううううううう!!」

「おぢるうううううううううううう!!」

「ゆっぐぢでぎないいいいいいいいいい!!」

「もっどゆっぐぢぢだがっだよおおおおおお!!」

が、ゆっくりはそうは行かない。高速で駆け抜けた直後の天地が逆転したその光景に死さえも覚悟していた。

悲鳴を上げていないのは気絶してしまっているゆっくりぱちゅりーとうちの過敏症まりさくらいだろう。白目をむいてぶくぶくと泡を吹いている。

ループから抜け出し、直線に差し掛かったところでようやくゆっくり達は安堵のため息をつく者も居たがマシンの軌道はそこに追い討ちをかけた。

前触れのない3度目の急降下。と言っても前の2回のキャメルバックの際に残しておいた位置エネルギーを使っているだけだから、ちゃんとコースを確認しておけば予想できることだけど。

だが、もちろんそんな器用なことをゆっくりに出来るはずもなく、予期せぬ加速に恐怖した全てのゆっくりが内容物を吐き出した。

エレエレエレエレエレエレ・・・・・・

エレエレエレエレエレエレ・・・・・・

エレエレエレエレエレエレ・・・・・・

エレエレエレエレエレエレ・・・・・・

エレエレエレエレエレエレ・・・・・・

吐き出されたそれらが酷く手抜きな舗装しかされていない敷地内の地面に落下した時には、ジェットコースターは余剰エネルギーを熱にして発散し、搭乗口へと到着していた。



「おかえりだど~♪」

そう言ってジェットコースターから降りた母親に飛びついたのは胴体付きゆっくりれみりゃの子どもだった。

「うぅ~・・・ま~まはきぼぢわどぅいんだど~・・・」

しかし、ジェットコースター酔いで足元のおぼつかない母れみりゃは子どもの体当たりを受け止めることが出来ず、転んだ拍子に階段から転げ落ちていった。

「うぎゃああああああああああああああ!!」

「いだいーーーーー!!いだいどおおおおおおお!!」

その隣ではさっき帽子を落としてしまったまりさが泣き叫んでいる。

「おにいざあああああああああん!まりざのぼうぢがないよおおおおおお!!」

「あっはっは!新しいのを買えばいいじゃないか!」

「ぞれじゃゆっぐぢでぎないよおおおおおお!!」

帽子は固体識別のために必要なのだが、このお兄さんはそのことを知らないのだろうか?

まあ、他人の家のゆっくり事情に首を突っ込むのも野暮なので放っておこう。

「おにーざぁん・・・でいぶをはやぐおろぢでええええ!?」

声のしたほうに視線をやると、怪我しているらしく足に当たる部分に包帯を巻いているれいむが自力で降りられないため、飼い主に助けを求めている。

が、飼い主は次の乗客と思しき女性と話をしていた。

「おや、ゆっくりを連れて来ていらっしゃらないんで?」

「いえ、連れてきてたんですけど・・・ちょっと倒れてしまって・・・」

「でしたらうちのれいむと一緒に乗ってあげてください」

「良いんですか?」

「まだ乗るって聞かないんですよ。でも俺は十分堪能したんで・・・」

「だったら、喜んで借りさせていただきますね。ありがとうございます」

哀れ。ゆっくりれいむはナンパのだしにされた挙句、もう一度乗ることが決定してしまった。

「む・・・むぎゅううううう・・・」

そんなお兄さんの足元を飼い主の女性に連れられておぼつかない足取りで通り過ぎていくのは気を失っていたゆっくりぱちゅりー。

げっそりとやつれたその表情にはどこか同情を誘うものがある。

「さ~って!ぱちゅりー!次はフリーフォール行くよ!!」

が、絶叫ものが好きらしく、テンションが上がりすぎた主人はぱちゅりーのコンディションなどお構い無しに次のアトラクションへと向かっていった。

「・・・・・・あんたら、優しい飼い主でよかったね」

いまだにジェットコースターの恐怖で震えている腕の中の2匹にそう呟き、さっきれみりゃが転げ落ちた階段を下りて行った。



「むきゅ!そこのかわいいゆっくりさん、ぱちゅりぃといっしょにすっきりするのよ!」

今私の腰掛けているベンチは高さ的は70cm程度でどう見てもゆっくりの跳躍力で乗ることは不可能。形状的は骨組みの金属製のパイプそのままで、座ると言うよりも少し腰を預ける程度の用途のものだ。

そのゆっくりではまともに座ることも出来ない皆ベンチに腰掛け、膝の上にまりさとれいむを乗っけてゆっくりしていると、目の前に胴体つきのぱちゅりー種が現れた。

「いきなりすっきりを要求するってのはどうよ?」

などと突っ込みつつも、れいむとまりさを膝から降ろして、そのぱちゅりぃの前へとつかつかと歩いて行く。

後ろからゆっくりにとってはそこに置かれること自体が既に苦行に等しいベンチの上にいるれいむとまりさの「おねーざぁん、れいぶおぢぢゃうううう!」とか「ゆっぐぢでぎないよおおお!」という悲鳴が聞こえてくるが無視無視。

それから、身をかがめて目の高さを合わせてぱちゅりぃの表情をしげしげと眺める。

「むきゅ!口では抵抗してても体は素直ね!」

すると、何を勘違いしたのかぱちゅりぃは私の胸に猛然とパンチを繰り出し始めた。

どうやら、このぱちゅりぃは私の胸とゆっくりの区別がつかないらしい。相当おつむが残念なようだ。

もちろん、ゆっくりの中でも虚弱なぱちゅりぃの攻撃なんて痛くもかゆくもないけど、何となく鬱陶しい。

というか、見ず知らずのゆっくりにいきなり胸をしごかれて嬉しいのはごく一部の変態お姉さんくらいだろう。

「むきゅ・・・むきゅ!むきゅ・・・!ぱちゅりぃのろんりてきなてくにっくはすごいでしょ?」

などと抜かしながら1匹で勝手によがって、頬を紅潮させていくぱちゅりぃ。

私の冷めた視線にはまったく気づいていない。

「いまにもすっきりしそうでしょ?ぱちゅりぃのてくすごいでしょ?」

どこまでも自分の技巧を信じて疑わず延々と私の胸にパンチ(愛撫のつもりだろうか?)を繰り返す。

「すごいほっぺよ!こんないやらしいほっぺしてるゆっくりはじめてよ!」

なるほど、ゆっくりにとって頬の柔らかさは人間の胸に通じる何かがあるらしい。

「はあぁはぁ・・・」

そんな感じで自分だけ勝手に盛り上がっているぱちゅりぃの表情はどんどん奇天烈なものになっていく。

きっとゆっくり同士なら欲望を刺激するいやらしい表情なのかもしれないが、残念ながら人間の私には「うわぁ・・・きもい」と言う感想しか浮かんでこなかった。

「鬱陶しい!」

胸を殴打し続けるぱちゅりぃに突っ込みのでこピンをお見舞いしてから、首根っこを掴んでれいむ達が座っているベンチへ連れて行く。

れいむ達は落ちまいと必死にプルプルしているが、まだ助けなくても大丈夫そうなのでぱちゅりぃをベンチに無理やり座らせて説教の一つでもたれようとしたその時・・・

「お姉さん、ちょい待ちぃ!うちの子苛めたらあかん!」

垢抜けない感じのおさげ眼鏡の少女が飛んできた。

「ん、飼い主?」

「せや、飼い主や!その子はうちのペットやさかい、苛めたらあかんよ!」

「そうかそうか、飼い主か。じゃ・・・」

その偉く賑やかな飼い主にぱちゅりぃが私の胸に対して働いた狼藉を虚実交えて説明してあげた。



「このドアホを好きなようにしてください!」

物分りのよいお嬢さんだ。事情を理解したらすぐにぱちゅりぃを差し出してくれた。

「むきゅ!?どほぢえええ!!でばぢゅでぃーなにぼぢではないわよーーー!!」

「やかましいわっ!訴えられたらどないするつもりやってん!?」

「ははっ、ちょっと叱ってやろうと思っただけだから」

私に代わってぱちゅりぃにお仕置きのコブラツイストをかけている彼女をなだめてから、ある提案をした。

「それでも気が済まないんなら・・・荷物持ちにでもなってもらおうかな?」

と言っても、持たせられるものはれいむとまりさと過敏症まりさの入った袋くらいなのだけど。

「かしこまりました、お姉さま!不肖の女子高生、由栗 珠緒とそのペット・・・全力で荷物持ちをさせていただきます!」

そんなわけで妙な連れができた。



「くぉら、ぱちゅりぃ!何ちんたら歩いとんねん!」

「むぎゅううううううう!おもいいいいいいいい・・・!」

れいむとまりさを抱きかかえて今にも死にそうな表情でふらふらと歩いているぱちゅりぃに容赦ない叱責が飛ぶ。

「お姉さまを待たせたらうちが容赦せえへんからなぁ!」

いつの間にかお姉さまになってるよ、私。そっちの気は基本的に持ち合わせていないんだけどなぁ。

「ん~・・・ちょっとお腹すいたから何か食べてかない?どうせ観覧車までもうすぐなんだし、急ぐこともないだろ?」

「・・・お姉さま、気ぃ使ってへん?」

「使ってない使ってない。本当にお腹がすいただけだから」

厳密には半分が気遣い、もう半分が本当にお腹がすいただけといったところだけど。

ぱちゅりぃが力尽きて転んだら、れいむ達も怪我しかねないし。

「そうですかぁ~・・・せやったらあっこのゆっくりゃの肉まんが美味しいですよ~!」

と言われ、彼女の指差すほうを見てみると、親と思しき大きめの胴体付きれみりゃが子どもれみりゃの四肢をもいではそれを肉まんに加工していた。

どうやらそれらの子どもはみんなれみりゃの子どもらしい。

その子どもの数総勢121匹。とにかく機械的に出産を繰り返させられたことは火を見るより明らかだった。

「でびりゃのあがぢゃんでづぐったおいぢいにぐまんはいりまぜんがあああああああ!!」

「「「「「「ままぁー!!いだいいいーーー!いだいーーーー!!」」」」」」

その子ども達も我が子を捌く母れみりゃもみんなずっと涙を流し続けている。なんとも悪趣味な。

しかし、ほかの客からはなかなか好評なようで・・・

「こどもをうるなんて。おお、おろかおろか」

「あのれみりゃはなにしてるんだど~?」

「あのれみりゃはね、悪いことをしたお馬鹿さんだからお仕置きをされているんだよ」

「まぬけなんだど~♪」

「ひっどいかおね!まったくとかいはじゃないわ!」

などなど、口々に目の前の捕食種の不遇を馬鹿にして楽しんでいた。

「おねーさん!あのれみりゃかわいそうだよ!」

そんなことを口にするのはようやく追いついたぱちゅりぃに抱きかかえられている我が家のれいむ。

なんていい子なんだろうか。おねーさんは感動した!

「よっしゃ!それでは珠緒、行きますっ!」

ぱちゅりぃが追いついたことを確認した珠緒は早速肉まんを買いに行った。

「肉まん5つお願いします!」

「はいよ、5つね。れみりゃ!!」

「いやだああああ!でびりゃのあがぢゃん、うぎゃ!」

やはり、我が子の四肢を引きちぎるのが苦痛なのだろう。売店の床にぺたんと座り込んでじたばたと手足をばたつかせる。

が、そんな抵抗をしたところで何の意味もなく、ただ蹴り飛ばされただけだった。

「お客さんを待たせたらダメだろ?」

「いだいーーーーーー!!」

「もっとお仕置きして欲しいか?」

「いやでずうう!やりまずううううう!!」

泣き叫びながらも、手を床について起き上がったれみりゃは近くの子どもの右足を引きちぎる。

「うぎゃああああああああああああああああ!!」

それと同時に子どもの悲鳴がこだました。

「床に手をついたら手を洗え!!」

ごもっとも、といって良いのかいけないのか?

またしてもれみりゃは店主に殴られた。そして、泣く泣く引きちぎった四肢は汚い手で触ったために破棄されてしまった。

そんな調子で5分後には製作工程を知らなければ美味しそうな肉まんが私達の手元に届けられた。



ゆーくりーむの時と同じようなやり取りの後で、肉まんを食べ終えた私達は早速観覧車に飛び乗った。

15mどころかどう見ても50mはありそうな気がしたが、公式ホームページの情報が当てにならないのは先刻承知済みなので気にしないことにする。

「ゆうううう!おねーさん、たかいよ!」

「ゆぅぅぅうううう!おねーさん、こわいよ!」

「むきゅうううううう!ぱちゅりーはこわぐないわよ゛!」

どう見ても怖がっています。が、その気持ちもわからなくはない。

この観覧車は恐ろしいことに足元や座席部分が透明の板で出来ているのだ。

人間の私や珠緒でも床があるとわかっていても怖いのだからあ、ゆっくりたちにとってその恐怖は計り知れないものだろう。

しかし、しかしだ。観覧車と言う乗り物。これはゆっくりと上っていく優雅さを楽しむ人もいるのだろうが、残念ながら私はそういうタイプではない。

たまに居るだろ?意味も無く揺らしてみたり、落ちたらどうなるだろうとか呟く奴が。

実は私はそういうタイプなのだ。

「なぁ、れいむ?いきなり止まって動かなくなったらどうしようか?」

「ゆぎゅ!?ゆっぐりやべでね、おねーざん!ごわいごどいわないでね!」

既に涙目。高所はあらゆる生き物が本能的に怖がると言うが、どうやらゆっくりもその例に漏れないらしい。

「でもさ、風が吹いたりしたら・・・こんな風に」

言いながら体を揺らしてゴンドラを左右に振る。

「やべでええええ!おねえざあああん!」

「ははっ、大丈夫だって」

どうやら私はゆっくりより馬鹿らしい。高いところに来てテンションが上がっていたため自重しない。

「ゆ~ら、ゆ~ら・・・」

「ゆううううううううううううううう!!」

「ゆぎいいいいいいいいいいいいいいい!!」

「むぎゅうううううううううううう!!」

ゆっくり達は私や珠緒にへばりついて泣きじゃくる。しかし私は自重しない。

この恐怖のひと時は観覧車から降りるまで、つまり15分いっぱい続いた。



「おねーさん、ひどいよ!ぷんぷんっ!」

「まりさたちすごくこわかったんだからねっ!」

そういって2匹は頬を膨らませる。しかし、文句を言いながらも私のひざの上に居るのはご愛嬌。

その隣ではぱちゅりぃも2匹に倣って頬を膨らませていたが、珠緒に「お姉さまに失礼や!」などとぶん殴られていた。

「いやぁ、悪い悪い。帰りにスルメ買ってあげるからそれで勘弁してくれ」

あまり悪びれた様子もなく頭を掻きながら謝る私を見た2匹は苦笑を浮かべ「まあ、それでこそおねーさんだししかたないか」と言って許してくれた。

ゆっくりに理解されるのは地味にむかつくものがあるが、今は気にしないでおこう。

「ありがとう」

頭をなでると2匹ともうれしそうに目を細める。その様子を伺いながら近くの時計を見ると18時をさしていた。

「お姉さま、もうすぐパレードや!」

そう言いながら立ち上がった珠緒はさっさとパレードのコースへと行ってしまう。

「こらこらぁ~、先に行くなよ~」

苦笑しながら2匹を肩に乗せ、過敏症まりさの入った袋を持ち、ぱちゅりぃの手を握って彼女を追いかける。



「・・・なんだ、これ?」

珠緒に追いついた私の目の前で繰り広げられる光景は私の想像を絶するものだった。

まず、先頭に必死に逃げ回るゆっくり達。

「これじゃゆっぐぢでぎないよ!!」

「わからないよー!!」

「ゆぎゃあああああああああ!!」

などなど、思い思いの悲鳴を上げながら阿鼻叫喚の一部として頑張っている。

「待つんだど~♪」

「うっう~♪」

「まぁま~、もっとゆっくりあるくんだど~」

などなどのん気な様子で先頭集団を追いかけるのはゆっくりれみりゃの群れ。

「うーっ!美味しいんだど~♪」

この子達に捕まった先頭集団のゆっくりは食べられてしまう運命にあった。

「「「「「ゆっくりしね!」」」」」

更にその後ろを追いかけるのはゆっくりふらんと呼ばれるはじめてみる種族。

この種族はれみりゃを捕食するほか、捕らえたゆっくりをいたぶる習性があるらしい。

「やべでえええええええ!」

「でいぶのあがぢゃんだべないでえええええ!」

あるふらんはれみりゃに馬乗りになってただひたすら殴り続けている。

またあるふらんは母れいむを足で押さえつけて子どもを一匹一匹食い殺して居る。

そして、またあるふらんは・・・竹やりを持った男性に虐待されていた。

その男性はパレード最後の集団『虐待お兄さんズ』の一人だ。

「ゆっくりしろモーニング!」

「ひゃあ!我慢できねぇ!虐待だぁ!」

などなど、各々の虐待愛を口にしながら目に付いたゆっくりを片っ端から嬲って行く。

更にエキサイトしたギャラリーが自分の手にしたゆっくりたちを投げ込んだり、パレードに乱入してゆっくりを虐待し始める。

「おねーざん、どぼぢでえええええええええええ!」

「やべでええええ!でいぶなにもぢでないよおおおおお!!」

「わがらない!わがらないよー!!」

「はっはっは!家や街中だと人目があるし、森や山の中でも後始末が面倒だけど・・・ここなら思いっきり虐待できるぜぇ!!」

「ごめんね、まりさ・・・私本当は・・・ずっと貴方のことを嬲り殺したいと思っていたのよぉぉぉぉおおおお!!」

園内の各所で繰り広げられる虐待祭り。

物の数分もしたころには園内が餡子臭で満たされ、餡子に汚されていた。

「・・・・・・ゆがががが・・・が・・・」

「ゆげぇ・・・ゆ゛ゆ゛・・・」

あまりに衝撃的な後継を目の当たりにして気を失ってしまった2匹をさっきよりきつく抱きしめながら、隣にいる珠緒の表情を伺う。

「ああぁ・・・すごいわぁ・・・」

頬に手を当てた格好のままぱちゅりぃにチョークスリーパーをかけている彼女は恍惚の笑みを浮かべていた。

「・・・ねぇ、珠緒?」

「なんですか、お姉さま?」

「ここって・・・ゆー遊地だよね?」

「ちゃいますよ。ここは虐待家と捕食種のパラダイス『うー園地』ですよ」


おわり

---あとがき?---
ゆっくりが現代社会にいたところで世間体のせいで虐待できないだろうな、と思ってこんなものを書いてみました。
とにかく話の展開にぶつ切り感あふれるのが気になるところ。
急に登場したオリキャラ「由栗 珠緒」は某所での悪乗りの産物・・・っ!!

byゆっくりボールマン













タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2022年04月16日 23:08