「ゆっくりごはんを食べに行こうね!」
「「「「ゆっくり連れて行ってね!!!」」」」
森にあるゆっくりれいむの巣の中には親れいむと6匹の子れいむがいた。今日は親れいむにつれられて外にごはんを食べに行くようだ。
「きょうはおいしいものをいっぱい食べようね。おかーさんはおいしいものがあるところをいっぱい知ってるんだよ。」
「さすがおかーさんだね!」
「みんなでゆっくりしようね!」
「たくさん食べようね!」
親れいむは子どもたちに自分が知っている様々なゆっくりスポットを教えるつもりでいた。今までは子育てに忙しくて、あまり巣から離れることが
できなかったため、子どもたちに食べさせられるのは虫と草花だけであった。だが、子どもたちも大きくなり、少しずつ巣の外へ出ることができる
ようになったため、親れいむは子どもたちは何より、自分も久しぶりのごちそうにありつこうと考えていた。
「入り口をきちんと隠そうね!」
「しっかり隠すよ!」
「これなら誰もわからないね!」
「れいむたちのおうちだもんね!」
留守中に他のゆっくりが入ることの無いように、石や枝を積み上げて巧みに巣の入り口を隠すゆっくり一家。
「それじゃあゆっくりと出発するよ!皆ゆっくりついてきてね!」
「「「ゆっくりついていくね!」」」
そうしてれいむ一家は人間の里へと出発した。
「ゆ、ゆ、ゆ~♪」
「ゆゆゆ~ゆ~♪」
「みんなでおうたをうたうとたのしいね!」
「もうすぐ着くからね!まずはおやさいを食べるよ!」
「おやさいってな~に?」
「ゆっくりできるの?」
「おやさいはたべごたえがあってすごくおいしんだよ!」
「ほんと~!?」
「楽しみ~。」
期待に胸を膨らませるゆっくり一家。今まで見たことも無い、食べたことも無いものに子どもたちは大はしゃぎである。
また、親れいむは久々に食べるごちそうに、口からよだれがあふれそうだった。そうしてゆっくり一家が人間の畑に
到着すると!親れいむが驚きの声を上げた!
「ゆゆ!畑のまわりになにかあるよ!」
「おかーさん!どうしたの?」
「あれなーに?」
母れいむは驚いた。前に来たときはこんなもの無かったのに!畑は、ゆっくりには到底飛び越えられそうに無い柵で囲われていたのだ。
ゆっくりによる畑荒らしが多発していることは人間なら誰もが知っている。そのため、人間がゆっくりに対して何の対策も講じないことなど
ありえないのだ。だが、ゆっくりの頭ではそんなことは理解できない。それでも、親れいむは何とか進入できないものかと策に近づいた。
「ゆゆ~!入れないよ!どおしてええええええええ!!!!!!」
「おかーさん、大丈夫?」
「ここにおいしいものがあるの?」
策のすきまも赤ちゃんゆっくりですら入れないほどにきちんと作りこまれており、柵の根元にも石が敷き詰められており、穴を掘るのも難しそうだ。
何とか入り口を探そうとしても、人間用の扉をゆっくりに開けられるはずも無く、親れいむは地団太踏んで悔しがった。
「ゆぎいいいいいいい!!!れいむのごはんなのにいいいいいい!!!!」
「おかーさん大丈夫!」
「れいむに任せてね!」
「ゆ?どうしたの?」
「れいむにいい考えがあるよ!」
子ども達の中で一番賢いお姉さんれいむが母へ話しかける。お姉さんの考えを聞いた親れいむは一転してぱあっと明るくなった。
「さすがれいむの子どもだね!早速やってみようね!」
「それじゃあおかーさんは下になってね!」
「ゆっくりおかーさんを踏み台にしてね!」
策の根元でじっとする親れいむ。その親れいむをめがけて助走をつけたお姉さんれいむが勢いよくジャンプする。そして―――。
「おかーさんを踏み台にしたああ!!」
「とんでる!れいむとんでるよー!!!」
「ゆうううううううう!」
見事に策を飛び越えるお姉さんれいむ。やったね!これでごちそうが食べられるね!親れいむの顔は喜びに満ち溢れていた。しかし、
「ゆぎゃあああああああ!!!!いだいいいいいいいい!!!!」
柵のむこうからお姉さんれいむの悲鳴が聞こえる。
「やめてねええええ!!!!れいむはおいしくないからね!!!!」
「どうしたの!何があったの!」
「ゆううううううううううううう!!!!!」
お姉さんれいむの断末魔を聞いたゆっくり一家はガタガタ震えだした。
「おかーさん!ここはゆっくりできないよ!」
「急いでここから逃げるよ「!」
「ゆっくりできないいいいいいい!!!!!」
一斉に畑から逃げ出すゆっくり一家。畑の中に何がいたのだろうか?
この畑の持ち主は、野菜を作るだけではなく、豚を飼ってその肉を里へ卸していた。
そのため、収穫が終わった畑には豚を放ち、土地を休めると同時に、次の収穫のための土作りを行っていた。、
おねさんれいむは運悪く、おなかを空かせた豚の群れの中に飛び込んでしまったのだが、外のゆっくり一家にはそれがわからなかった。
「ゆう、ゆう、怖かったね。」
「ゆっくり危なかったね。」
「ゆ!なんかおっきなのがあるよ!」
「おかーさんあれ何?」
「ゆ~、いいにおいがするよ!」
畑から急いで逃げたゆっくり一家は里のすぐ近くまで来ていた。無我夢中で逃げてきたゆっくりたちだが、人間の家を発見したことで、
家族の死を忘れていた。さすがゆっくりである。
「今度はいっぱいおいしいもの食べようね!」
「みんなでゆっくりできるね!」
期待に胸を膨らませて一軒の家へ近づくゆっくり一家。今度は大丈夫。根拠の無い自信が親れいむの中にはあった。
「ゆっくりあけるよ。」
玄関の戸に近づき、戸板の端に噛み付き引っ張る親れいむ。だが、
「ふぐっふぁがないお!(ゆぐっあかないよ!)」
「おかーさんがんばって!」
「ゆっくりひっぱってね!」
「ゆぐうううう、ここがだめなら他の場所から入ろうね!」
玄関からの進入は無理だと悟った親れいむは子どもたちをつれて縁側へとまわる。
「この石を使って、中に入ろうね!」
と、大き目の石を用意した親れいむ、石をくわえて縁側の窓に体当たりをしてガラスを割って中に侵入するつもりのようだ。だが、
「ゆぐふぇっ!!!!」
「ゆー!おかーさん大丈夫?」
「ゆっくり起き上がってね!」
「どおおじでわれないのおおおおおお!!!!!」
親れいむが必死に体当たりしたガラスはただのガラスではなかった。ゆっくりの侵入を防ぐべく、エンジニアの河童が里の依頼で発明した
特殊強化ガラスだったのだ。ゆっくりにはもちろん。人間にもそう簡単に割ることができるものではなかったのだ。
もちろんそんなことは知るはずも無い親れいむ、ただただむだな突進を繰り返す。
「ゆっ!ゆゆゆ~!いたいっ!」
ふと、後ろから子どもの声がして振り向くと、1匹のねこが子どもに飛び掛っていた。
「ゆううううう!!!!!ねこさん!!れいむのこどもになにするのおおおお!!!!!」
慌てて猫にかけよる親れいむ、だが、猫は子どもをくわえると、玄関とは反対の方向へ駆け出し、そのまま塀を飛び越えていってしまった。
「もっとゆっくりしたかったよおおおおおおお!!!!」
「ねこさん待って!れいむのこどもかえしてよおおおお!!!」
「れいむのいもうとを返せええええ!!!!」
その後を一匹の子れいむが追いかけていく。と、そこへ!
ワンワンワン! ガブリ!
この家で飼われているのであろう犬が走りより、子れいむをくわえる!
「いだいよおおおおおお!!!!!」
「みんな!急いで逃げてね!」
「ゆっ!逃げるよ!」
「逃げないでだずげでよおおおおおおお!!!!!」
自分よりもはるかに大きい犬を見た親れいむは大急ぎで逃げ出し、子どもたちも親れいむに続く。
「まっでよおおおおお!!!!おいでがなっ!ぐえ!…ゆっぐりじようどじだげっががごれだよ…。」
くわえられた子れいむは逃げた皆を恨みながらそのまま食べられてしまった。犬は鎖につながれていたので、
それ以上追跡することはできなかった。
「どおじでええええ!!!!ゆっぐりでぎないよおおおおおおおお!!!!」
親れいむは里の外で泣き叫んでいた。あの後他の家に侵入しようとしても、同じように侵入することができない。
人の目を盗んでこっそりと魚屋や八百屋の商品を食べようと思っても、ゆっくりの届くところに商品は無いし、
あっても頑丈なケースに入れられていた。親れいむが子育てに夢中になっている間に、人間はゆっくり対策を
万全にしていたんだ。もはや人間の里で野生のゆっくりがゆっくりできる場所などどこにもないのだ。
だが、それでも親れいむはあきらめなかった。人間があまり来ない場所でゆっくりすればいいと思ったからだ。
「ここでならみんなでゆっくりできるよ。」
親れいむが子どもたちをつれてきたのは川だった。
「ゆー、水は怖いよ。」
「ゆっくりできなくなるよ。」
はじめて見る大きな川に最初はおどろく子ゆっくりだが、やはり本能的に水は怖いのだろう。
「大丈夫、これを皆で引っ張るよ。」
「ゆゆ?それなーに?」
「これをひっぱるとおいしいものがたべられるよ!」
そういって親れいむは岸に打ち付けてあった杭の元へ子どもたちをよぶ。その杭にはロープが結び付けてあった。
それは人間が川魚を取るために仕掛けた罠であった。
「さあ、引っ張るよ。ゆー、えす!ゆー、えす!」
「「「ゆー、えす!ゆー、えす!」」」
ぐいぐいとロープを引っ張るゆっくり一家。しばらくすると、鉄の網でできたカゴが目の前に現れた。
「おかーさん、何か入ってるよ。」
「おいしそーだね。」
「れいむが一番だよ」
「ゆゆ~?」
親れいむがこれまでに引き上げだ罠はこんな網の箱ではなく、筒のようなものだった。その筒を石で割ると、
大小様々な魚が入っていたのだ。この網はおそらく石では割れないだろう。それに、中に入っていたのは
今まで見たことのない生き物だった。そうこうしていると、1匹が隙間を見つけて中に入ってしまった。
「ゆっくり食べるよ!」
「ずるい!れいむも入るよ!」
「おねーちゃんを先に入れてね!」
先に入った子れいむに続いて、中に入ろうとするほかの子れいむ。だが、
「ゆぐ、いだい!いだい!」
「「「ゆゆ!」」」
中に入っていたのは、子れいむよりわずかに大きい蟹であった。蟹を食べようとした子れいむは反対に蟹にはさまれてしまった。
「いだいよおおおお!!!おがああざあああん!!」
「ゆっくり逃げてね!はやくそこから出てきてね!」
「おねええぢゃあああああんn!!」
中の子れいむはなんとか蟹のはさみを逃れようとするがそう簡単には離さない。あわてて親れいむはカゴに体当たりをする。
「ゆっくりれいむの子を離してね!」
だが、逆に体当たりの振動で、ますます体にはさみを食い込ませる子れいむ。
「いだいいだいいだいいいいい!!!もうやべでえええええ!!!!ゆっ!?」
母ゆっくりの渾身の体当たりの衝撃で、なんとか蟹のはさみがはずれた子れいむ。だが、その体からは少し餡子がもれている。
「ゆっ!ゆふぅっ!いだがっだよおおおお!!!!!」
「はやく出てきてね!はやくしないとゆっくりできなくなるよ!」
懸命に子れいむを救出しようとする親れいむ。だが、
「出れないよ!ここから出れないよ!」
罠というものは中に入った獲物を逃がさないように作られている。中に入った時点で子れいむの運命は決まっていたのだ。さらに、
「こっちにこないでね!れいむはここから出て行くからここでゆっくりしててね!ゆっぐりじでっでいっでるのにいいいいいいい!!!!!」
蟹はどうやら子れいむを食べるつもりのようで、子れいむにのしかかる。
「ああああああ!!!!でいぶのごどもがあああああ!!!!」
「おねえぢゃんをばなじでえええええ!!!!」
泣き叫ぶゆっくり一家。と、子れいむの一匹が何かに気づく。
「おかーさん。何か来るよ!」
「ゆゆっ!人間だ!急いで逃げるよ!」
「れいむも逃げるよ!!!」
人間の姿を確認した親れいむは、子れいむをつれて急いでその場から離れた。
「ゆ゛っ!ゆ゛っ!ゆ゛っ!ゆ゛っ!…」
蟹に襲われていた子れいむは、静かなうめき声をあげているだけだった。
「ゆぐうううううう!!!!全然ゆっぐぢでぎないいいいい!!!!」
ここにきてようやく後悔の涙を流す親ゆっくり。6匹いた子れいむは2匹まで減っていた。人間の里へ近づいたのは大間違いだった。
もうこんな怖いところにちかづくのはやめよう。せめて残った森の中で穏やかに暮らそう。親れいむはそう考えていた。
「ゆううううううう。」
「ゆーん。ゆーん。」
子れいむたちも泣いている。あれだけの惨状を見てきたのだ。むりもない。親れいむは安全におうちへ帰ろうと覚悟を決め、川沿いの道を
子どもたちをつれてはねていた。
「おかーさん。疲れたよ。」
「そうだね。そろそろ休憩しようね。」
「れいむおなかすいちゃったよ。ごはんにするね。」
「あまりおいしくないね…。」
母の一言でその辺の草を食べ始める子れいむ。想像していたごちそうにはありつけなかったが、自分たちは生きている。それだけで
よかったのだ。だが、子れいむが水を飲もうと水面に近づいた瞬間。
ゴボッ! 「ゆぎゅ!」
水面から鈍い音と子どもの声が聞こえたと思った親れいむが子どものほうを見ると、そこには子どもの影も形ものこっておらず、ただ、こどもが
いたであろうところが、少しぬれていただけだった。
「ゆゆ?れいむの子どもがいないよ!どこに言ったの!?」
「れいむのいもうとどこー!?でてきてよー!?」
必死にあたりをさがす親れいむと残った子れいむ。
「いっしょにゆっくりしようよ!!!」
「どこなのー!どこにいるのおおおお!!!」
と、最後の子れいむが水辺に近づいた瞬間。
ゴボッ!
今度は親れいむにもはっきり、スローで見ることができた。水面から巨大な魚の頭が出てきたと思うと、
その魚の大きな口が、れいむの子どもをくわえて――――。
「いぎゃああああああああ!!!!れいむの子どもがあああああああ!!!!!」
泣き叫ぶ親れいむ。だが、どうすることもできない。近づけば自分もゆっくりできなくなる。
しばらくその場で佇んでいた親れいむは、わんわん泣きながらおうちへ帰った。
「ゆー…ゆー…」
泣き疲れた親れいむは長い道のりを超えてようやくおうちに帰り着いた。どうしてだろう?今日はみんなでおいしいものをいっぱい食べて
ゆっくりするはずだったのに…。何がいけなかったのだろう。やっぱり人間の住処に近づいたからだろうか。もう、人間の住処に近づくのは
やめよう…。親れいむはそう決意した。だが、失った子どもたちはかえってこない。
「みんなああああ!!!!おかーさんのせいでごめんねえええええ!!!!!」
親れいむはまた泣き出した。ひとしきり泣いた後、ゆっくりと食料を貯蔵している部屋へ向かった。そういえばいろいろあって、今日は
ほとんど何も食べていないことを思い出したのだ。だが、親れいむが目にしたのは自分たちが集めた食料ではなかった。
「ゆ!ねずみさん!れいむのごはんを食べないでね!それはれいむがあつめたごはんだよ!」
おそらく入り口のわずかな隙間から入ったのだろう。れいむの食料をたくさんのねずみが貪り食っていた。それにたいしてれいむは体を
膨らませて威嚇する。やっぱりゆっくりの頭では今日一日に起きたことを理解することはできなかった。確かに人間はきけんなものだと
悟ったであろうが、今日殺された子どもたちは皆人間以外の動物に殺されていたことを親れいむは理解していなかった。そして、親れいむを
見たねずみは、われ先へとれいむに飛び掛る。
「いだい!いだいよおおお!!!れいむをだべないでよおおおお!!!!!れいむのおうぢでゆっぐぢさぜでえええええ!!!!!」
このねずみたちはおなかいっぱいごはんをたべたそうな。めでたしめでたし。
最終更新:2018年03月19日 22:34