ほのぼのハッピーエンド(?)注意。
過去作以上にぬるいです。









幻想郷には珍しい和洋折衷な一軒家、そこに子供のいない夫婦が住んでいる。
子供のいない寂しさを埋めるため、彼らは多くのゆっくりを飼いはじめた。
以下に見ていくのはゆっくり達の日常の一部である。




①きれい好きなれみりゃ

台所をぽてぽてと歩いているれみりゃ、このれみりゃは非常にきれい好きである。
常にハンカチを装備し、汚れを見つけるとごしごしと拭ってきれいにする。

「うっう~♪きれいきれいだどぉ~♪れみりゃきれいきれいだどぉ~……う?」

妙に体がべたつく。見ると、汗(肉汁)をかいているではないか。
家は暖房が入って温まっている。れみりゃには少し暑すぎるのだろう。

「う~~~~きちゃないどぉ!きれいきれいするどぉ~☆」

ごしごしと顔や手を拭い始めるれみりゃ。つるっときれいになった肌(皮)に満足する。
が、それも一瞬のことだった。きれいになったと思ったらすぐに肉汁がじんわり染み出てくる。
れみりゃは体の中にジューシー肉汁の染みた具が詰まった肉まんなのだから、当然といえば当然である。

「う~~~!?!?!?どうしてだどぉ!?きれいにならないどぉ!」

ごしごしごしごし。
れみりゃは際限無くあふれる肉汁を一心不乱に拭う。
ごしごしごしごし。
ハンカチがべとべとになり、皮がすれて真っ赤になっても拭い続けた。
ごしごしごしごし。

「うっ……うああああああぁあああぁぁあああぁああ!!!!!!!」

数時間後、れみりゃは全身ずる剥けになり中の具をあふれさせた状態で、飼い主の「おかあさん」に発見された。
ほとんど虫の息だったが、「おかあさん」がすぐさま手当てしてくれたので一命は取り留めた。
しかし、台所を汚した罰としてぬか漬けの樽に突っ込まれて数日放置されることになってしまった。
きれい好きのれみりゃは、しばらくぬか漬けのきつい臭いがとれなかったそうな。




②酒かすゆっくり

「なあ、すいか」
「なに?ういっく、おと、うぷっ、さん!」
「吐くなよ。……こんどな、俺の友達が遊びにくるんだ」
「うん」
「そいつな、凄い酒に弱いんだ。臭いも駄目なぐらい」
「うん」
「……お前、中身酒かすだよな?」
「……うん」
「…………いつも酒の臭いがするよな」
「…………うん」
「……………………………………」
「……………………………………」
「………………ごめん」
「………………うんっ………………」

数日後、木枯らし吹きすさぶ庭から暖かい家を眺めているゆっくりすいかがいた。
楽しげに鍋をつつく他のゆっくり達を見つめる視線は羨ましげで、酒に弱い「おとうさん」の友達を睨みつける視線はじっとりしていた。

「……へっくしゅん…………うぃっぷ」

酒臭いくしゃみが、草木の枯れ果てた庭に、やけに大きく響いた……。




③ドイツ風ちしきまんじゅう

まりさとぱちゅりー、二匹はとっても仲良しなゆっくりである。
悲しみに満ちた目で見つめてくるありすのことなど綺麗に無視して、いつも二匹で戯れている。

「まっ、まりさ!!」
「どうしたのぱちゅりー?」
「(いっ、いうのよぱちゅりー!まりさにわたしのあいをつげるのよ!) いっ……いっいっひりーべまりさ!!!!」
「?」
「(む、むきゅ?きこえなかったのかしら??もういっかい……) いっひりーべまりさ!」
「なにいってるのぱちゅりー?」
「(むっ、むきゅうん!?!?) いっひりーべまりさ!!」
「もう、さっきからなんなの!?まりさおこるよ!?」
「(だってごほんにはあいのこくはくってかいてあったの!) いっひりーべまりさぁ!!!」
「わけわかんないことばっかり!!もういいよ!わけわかんないぱちゅりーなんて嫌いだよ!ぷんぷん!」
「いっひりーべ…………まっまりさ!まっていかないで……げほっごほっうぐぇっほ!」

まりさとありす、二匹はとっても仲良しなゆっくりである。
絶望に満ちた目で見つめてくるぱちゅりーのことなど綺麗に無視して、いつも二匹で戯れている。

「むぎゅううううううう……なんでぇ……なんでなのぉ……まりざあああ……」

部屋の隅には「楽しい初心者ドイツ語講座(ふりがな付き)」と書かれた本がくしゃくしゃになって放り捨てられていた。


結論:ゆっくりには日本語で話しかけましょう




④こけしカット

家で最も日当たりのいい場所に作られた「おかあさん」の部屋。
そこではこの家のゆっくり達の最古参であるかぐやが「おかあさん」に髪を整えてもらっていた。
ふかふかの座布団の上で、かぐやはいつにもましてうつらうつらとしている。

「かぐや、たまには違う髪形にしてみない?」
「ゆぅー……?」

つるつると手触りのいい長い黒髪はかぐやの自慢だ。基本的に何事にも執着しない面倒くさがりなかぐやが、この髪だけは大事にしている。
床に流れる髪はまるで黒曜石を編みこんだようで、人間にだってひけをとらないだろう。
美しい、この上なく美しい。だかろこそいぢってみたくなる。

「……かぐや、ゆっくりの髪も伸びるんだよね?」
「ゆー……ゆん(うん)」
「……切ってもいい?」
「ゆーん…………ゆん」

かぐやは、ぼんやり寝ぼけた思考で肯定の返事を返してしまった。
「おかあさん」の言葉の意味をあんまりよく考えることなく。


――――う゛あ゛ああああ゛あ゛ああ゛あん……うあああ゛あ゛あ゛あ゛あああ゛ん゛ん゛ん゛……――――


穏やかな昼下がり、突如として響いたかぐやの泣き声に昼寝をしていたえーりんは飛び起きた。
自らの最高速度を持って泣き声が響いてくる方へと急ぐ。途中でれいむを突き飛ばしたような気がするが気にしない。

「かぐやっ!」

急いで飛び込んだ「おかあさん」の部屋。そこにいたのは。

「……かぐや?」
「う゛あ゛っう゛っひっぐ……え゛、え゛ーり゛ん」

こけしだった。否、こけしヘアーにカットされたかぐやだった。

「ゆんって言うからてっきり切ってもいいのだと……寝ぼけていたんだね。ごめんなさいねぇ……」

困り顔で謝る「おかあさん」。泣き止まないかぐや。
しばし呆然としていたえーりんだったが、二人を交互に見つめると、やがて何か決心したような面持ちで口を開いた。

「おかあさん!」
「んー?」
「わたしのかみもきって!」
「え」
「かぐやとおそろいにしてっ!!!」




「……なあ、あれ」

「おとうさん」が指差す先にはかぐやとえーりんが寄り添いあって眠っていた。
あの後、お揃いのこけしヘアーになった二匹は互いに寄り添い泣き続け、そのまま眠りに落ちたのだった。

「……何も言わないでおくれ」
「いや、うん…………こけしカットだけなら俺だって何も言わない。髪はまた伸びるからな。でも…………」
「…………」



「…………なんで顔の表情までこけしそっくりになっちゃってんの?」



―――これは、こけしの道を極めたゆっくりの物語である―――








あとがき
すっごくお久しぶりなぽてちです。
こけしなかぐやとえーりん想像したら悲しくなりました。とんだ自分いぢめです。





ぽてちその他の作品。

ゆっくりめんどくさい
ゆっくりえーりんの一日
ゆっくりごはんですよー
ぶたまんじごうじとく
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ようじょのにっき




byぽてち


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最終更新:2018年03月21日 17:55