畑がうるさいので見に行くと畑に来る小動物用に仕掛けていた罠に子ゆっくりが4匹捕まっていた。
れいむ種とまりさ種だ。この二種類は里に近いところに住んでいるのでよく見かける。
子ゆっくりはどうやら畑の作物を食べようとしていたらしい。
「ゆゆっ!でぐちがどこにもないよ!」
「さっきまではあったのに!」
「ここじゃそのうちゆっくりできなくなるよ!」
「だれかたちゅけちぇね!」
先ほどの騒ぎ声は罠に嵌り出れなくなった子ゆっくりのものだったようだ。
一匹は赤ちゃんか、赤ちゃんに良いとこ見せようとしたんだな。
罠をがたがたと揺らして逃げようとする姿をじっと見るのもいいがそうもいかない。
「ゆゆっ!だれかきちゃよ!」
「おじちゃんたすけてね!」
「れいむちがうよ!けがふさふさだからおにーさんだよ!」
「ゆっ!そうだね!おにーさんたすけてね!」
誰が仕掛けたと思ってるんだ。無視して罠を交換する。
出してもらえると思った子ゆっくりは早く出してねと俺を急かしている。
どうやら運が良かったようだ。
「ゆゆっ?おにーさんどうしたの?はやくしてね!」
「たかいところはこわいよ!はやくおろしてね!」
「入ってるのがゆっくりだけで良かったな。」
前に仕掛けていた罠はゆっくりといのししが一緒に入っていた。
そのため俺が気づいたときにはいのししが食い散らかしていた。
今回は掃除しなくてすみそうである。
「おにーさん早くだしt・・・ゆべべべべ!」
「ゆっぐぢでぎないいいいいいいいい!」
「おね゙ええええぢゃあああああああん!」
「ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙!」
うるさいので箱を揺する。箱の中で跳ね回る子ゆっくり達。
面白いので縁側まで揺すってしまった。
死んでは無いだろうが餡子を吐かれては困る。
家につく前に飛んでいたうーぱっくを呼び寄せ、この子達の親を呼んできてもらう。
その後、近くに置いていた新聞を手早く広げ、そこにゆっくりを慎重に出していく。
「ゆ~、みんなぐりゅぐりゅ~」
「れいむにげないでね!」
「まりさこそにげないでね!」
「きもちわりゅいいいいい!」
まだ、餡子を吐くほどではなかったか。
それでも目を回した状態のゆっくりは跳ねようとして転がったり見当違いの場所に進んだりしている。
一匹吐きそうだったので口を押さえて背中を撫でてやる。
「口から出さずに飲み込め。」
「ゆぐぐぐggggゴックン」
どうせ餡子を吐くんだから飲んでも問題ないだろうと思ったのだが、苦しいのは苦しいらしい。
飲み込んでる間に立ち直った他のゆっくりが苦しんでる子ゆっくりに近づいてくる。
それを待ってからゆっくりに話しかけた。
「何で捕まってたか分かるか?」
「わからないよ!ゆっくりおしえてね!」
「それは君達が取ろうとしてたのは俺が育ててた野菜だからだ。」
「ゆぅ・・・でもれいむたちおなかすいてたんだよ!」
「ちゃんと柵作ってたんだけど小さいからすり抜けれたんだな。」
「いもーとだっておなかすいてたんだよ!」
「ひとのものをとっちゃだめって言われなかったかい?」
思い当たる節があるのか口を噤むれいむ達。
それでも一匹のれいむは納得できないようで、
「ゆぅうう・・・まりさ!このおにーさんはゆっくりできないよ!」
「でもおかーさんはひとのものとっちゃだめっていってたよ!」
「そんなのわすれちゃったよ!まりさはゆっくりしたくないの!」
「ゆゆっ!ゆっくりしたいよ!」
「じゃあおにーさんをたおせばいいんだよ!」
「そうだね!みんなねきょうりょくすればかてるね!」
ある程度は予想していたがこうも簡単に説得されるとは。
子供だから自分達の力を過信してるんだろうね。
ここで説得できずに反省して変えられても困ったので素直に用意してた小石を手に掴む。
「ゆゆっ!おにーさんまりさたちとやるきだね!」
「けがしてもしらないよ!」
「おねーしゃんがんばっちぇね!」
臨戦態勢に入った子ゆっくりが膨らんで威嚇してくる。
そのまま体当たりをしてくるのを避けて赤ちゃんれいむの頭上に腕を動かす。
「ゆゆ!?あかちゃんはやめてね!」
「かわりにまりさたちとしょうぶしてね!」
「あかちゃんはやくこっちにきてね!」
だがもう遅い。俺は掴んでいた小石を赤ちゃんの上に落とす。
「ゆ゙べべべっ・・・」
悲鳴を言っていた赤ちゃんも小石に埋まって見えなくなってしまった。
「ぎゃあああれいむのいもうとがあああああ!」
「ゆ!まだたすかるよ!ゆっくりこいしをどけてね!」
赤ちゃんゆっくりに落とした小石は頭上すれすれからだったので餡子を出していない。
それに気づいたまりさはれいむ達に声をかけ小石を取り除き始める。
れいむたちも小石を取り除き始めたので静かになった。
俺はと言うと小石を回収している。まだ使うからな。
とうとう赤ちゃんゆっくりの顔が見えた。
光が来たときうれしそうだった顔はたちまち涙を溜め始める。
「ゆうううごわがっだよおおおおおお!」
「もうだいじょうぶだからね!」
「あかちゃんはそこでゆっくりしててね!」
そういって周りの石も取り除き始める子ゆっくり。
それからしばらくして全部の小石を取り去った。
「おにーさんあかちゃんにらんぼうしないでね!」
「そうだよ!あかちゃんがかわいそうだよ!」
「先に仕掛けたのはお前達じゃないか。」
「ゆぅぅぅぅ・・・やるならまりさたちでね!」
「そうだよ!あかちゃんをねらうなんてひきょうだよ!」
「じゃあまりさにやろう。」
「ゆっ?」
そう言って今度は小石をまりさに落とした。
量を増やしたので赤ちゃんのように全部埋まる。
今度はまりさを助ける版だ。文句もそこそこにまりさを掘り出していく。
「おー赤ちゃんもがんばってるね。」
「うるさいよ!おにーさんはやくまりさをたすけてね!」
「君達は俺より強いんだろ?それなのに俺に頼っちゃだめじゃないか。」
「ゆうううう!じゃあ静かにしててね!」
そんなやり取りを繰り返しながらまりさを掘り出す。
まりさを掘り出したら同じようにれいむも埋めてやった。
「ゆぅ・・・おもがっだあああああ!」
「おに゙いさんも゙うやめ゙でえええええ!」
これ以上やると餡子が漏れそうだから止めてやる。
動かない俺を見て、安心したのか赤ちゃんを護るように集まる子ゆっくり。
「おにーさんはそこでゆっくりしていってね!」
小石で汚れた体を新聞に体を擦り付けたり、舐めあったりして汚れを取る。
しかし、全員分やるのを待つと昼になってしまう。
「おい、これで体綺麗にしろよ。」
「ゆゆっ?」
子ゆっくりの前に置いてやったのはお湯の入った皿だ。
ゆっくりは体の性質上、水を嫌うように見えるが汚れを取るためむしろよく水に入る。
泳げないゆっくりは沈んで水を飲みすぎて溶けるが、外皮は水に濡れても大丈夫である。
もちろん子ゆっくりも水浴びは好きなので仲良く一緒に飛び込んだ。
「ゆっくりし・・・あづいいいいいいい!」
「ここじゃゆっくりでぎないいいいい!」
「ゆぅうういちゃいよおおおおお!」
「だいじょうぶだよ!しばらくしたらなおるからね!」
はいってゆっくりするつもりだった子ゆっくりは余りの熱さにゆっくり出来なかったようだ。
赤ちゃんゆっくりはそこが赤くはれて涙目だ。火傷ではないがしばらく痛いだろう。
子まりさがそこを舐めてあやしている。子れいむは痛がりながら皿の水を眺める。
「ゆゆ?どーしいてあついのおおおお!」
「まえはいったときにはつめたかったよ!」
「おしおき中にゆっくりできると思ってたのかい?」
「ゆぅぅ・・・おにーさんのせいだね!」
「その通り。どうだすごいだろう?」
「ゆゆゆゆ・・・」
自分達がよく入る水がゆっくり出来ないものに変えられたのを知った子ゆっくりは眉間を寄せながら俺を睨む。
しかし、どうやって水が熱くなったのか分からない子ゆっくりは俺の力だと思ってさっきまでの用に歯向かう気はないようだ。
なべに入れて火で熱しただけなんだけどね。
怯えを含みだした子ゆっくりにどうしてお仕置きされているのかをもう一度教える。
「どうだ?人のものをとっちゃダメって理解できたか?」
「わかったけどそれじゃゆっくりできないよ!」
「そーだよ!それにうめられてこわかったよ!」
「おみずもあつかったよ!あかちゃんがけがしちゃった!」
「ゆっくちしたいよ!」
どうやら理解はしたが納得できないようだ。
すこしやりすぎたか。まぁもう少しで親が来るだろう。
それまでもう少し遊んでやることにした。
「じゃじゃーん。」
「ゆ?」
取り出したのは孫の手。背中を掻くときに重宝する棒だ。
「へんなかたちー!」
「おにーさんのてみたいだね!」
「そんなのこわくないよ!」
「ゆっゆっ!」
見たこともない棒を持った俺の周りを跳ねて思ったことを口にする子ゆっくりたち。
赤ちゃんゆっくりはまだ底が痛いのかすこし這ったりしている。
まずは赤ちゃんゆっくりからだな。
俺は孫の手を赤ちゃんを潰さないように圧し付けた。
「ゆびゅ!」
「れいむのあかぢゃんがああああああ!」
赤ちゃんの叫び声に気づいたれいむが一番に赤ちゃんに近づく。遅れて他のれいむとまりさもれいむを追う。
「ゆぎゅぅ・・・」
「もうだいじょうぶだよ!すぐにとってあげるからね!」
「ゆぐぐぐ・・・おもいいいい!」
「あかちゃんのためにゆっくりがんばってね!」
赤ちゃんの上から孫の手をどけようと咥えたり押したりとがんばる子ゆっくり。
だが子ゆっくりぐらいの力ならなんとか耐えれる。
孫の手をすこし動かしてやると「ゆぎゅ!」とか「ゆびゅ!」とか音が出るので面白い。
「おにーさんもうやてね!このままじゃあかちゃんがしんじゃうよ!」
「いじわるしないでね!やめてあげてね!」
「じゃあ次はおまえな。」
「でじゃびゅ!」
小石のときのように別のゆっくりも押さえつけていく。
今度はこっちに向かって体当たりしてくるのでデコピンで打ち落とす。
そんなやりとりを繰り返してるとうーぱっくが帰ってきた。
「うー!うー!」
「ありがとう。これはお代だ。」
「うー☆」
連れてきてくれたお礼に野菜をいくつか入れてやる。
飛び立ったうーぱっくのあとに残ったのは親と思われるゆっくりまりさだ。
子ゆっくりに向かう親まりさ。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「おどおおおちゃあああん!」
「ゆっぐりでぎながっだよおおおお!」
「ゆぅううううううう!」
「ゆっくちちていっちぇね!」
いきなり現れた親ゆっくりに向かって跳ねていく子ゆっくり。
さんざん遊んであげたからみんな涙目で喜んでいる。
そして、感動の対面のように親ゆっくりに飛び込む子ゆっくりを親ゆっくりはよけた。
「ゆびゅ!」
親が受け止めてくれると信じてた子ゆっくりはそろって地面に顔を打ち付ける。
「どおしてにんげんのさとにいったの!」
「ゆゆゆ!だっておいしいものが・・・」
「ひとのものをとっちゃだめっていってるでしょ!おぼえてなかったの!」
「ゆゆっ!ちゃんとおぼえてたよ!」
「じゃあやっちゃだめでしょ!あかちゃんがまねしちゃったじゃない!」
「ゆぅ・・・」
おー、怒られてる怒られてる。
説教はしばらく続きそうだな。今のうちに昼ごはんを食べることにするか。
親ゆっくりの後ろで昼用に作ったおにぎりをほおばる。
子ゆっくりも気づいたのか、こちらを見て涎をだしてる。
親ゆっくりの説教もどこ吹く風だ。
「ゆっ!ちゃんときいてるの!」
「ゆゆ!ちゃんときいてるよ!」
親ゆっくりにあわてて反応してるのが面白い。
傍目からも聞いていないのが分かるぐらいにおにぎりを見つめている子ゆっくり達。
遊びつかれてお腹が空いているのだろう。
そんなことは知らない親ゆっくりは怒りゲージが上がりまくりだ。
俺が最後のおにぎりを食べ終わる頃には、
「どお゙じでぎがな゙い゙の゜おおおおおおお!」
「おがあしゃんごめんなさいいいいいい!」
と、泣きながら子ゆっくりに体当たりしだした。
子供よりも大きい親ゆっくりの体当たりは強烈だ。
子供達は吹き飛ばされながら必死に許しを請う。
泣きながら説教を始めた親ゆっくりの話を今度はちゃんと聞いているのだろう。
子ゆっくりは涙を目に浮かべながら顔を俯けていた。
お茶を飲み一服していると説教が親ゆっくりがやってきた。
「おにーさんまりさのこどもがわるさをしました。ごめんなさい!」
「こっちはすっきりできたからもういいよ。」
「ううん。だめだよ!ちゃんととったぶんはたらくよ!」
「そうか、じゃあ一緒に畑仕事をしてもらおうか!」
「ゆっくりがんばるよ!」
昼からはゆっくり家族ともに畑仕事だ。
といってもゆっくりではやることが限られるので、とりあえず雑草を抜いてもらった。
俺の説明を聞いた親ゆっくりの指導のもの雑草を食べていく子ゆっくり達。
さっきまで何も食べていなかったのでむしゃむしゃと雑草を食べていく。
たまに野菜に手を出そうとする子ゆっくりもいたが、すぐに親ゆっくりの体当たりを受けて雑草に戻っていった。
雑草をあらかた取ると次は水遣りだ。
井戸水を俺がくみ上げてやりゆっくりが水を口に含みたぷんたぷんと野菜まで運ぶ。
野菜の根元に水をかけてまた戻ってくるの繰り返し。
途中で子れいむ同士がどれだけ水を含めるか競争しだして片方が崩れかけたので日にたっぷり照らされた石の上に置いて乾かしてやる。
じゅううううとおいしいそうな音を立てながら乾くゆっくりを放置して次の野菜の収穫に向かう。
一通り見回り取れそうな野菜を確認すると鋏を入れていく。
取れた野菜はゆっくりが乗せている箱の中に。
虫食いなどを確認しながら手際よく進める。
しばらくすると、
「おにいさんおも゙ぃ・・・」
「ゆぎゅうう・・・」
箱にいっぱいになる前にゆっくりがつぶれてしまいそうになっていた。
重くなると畑の外にある箱に移すようにと言って作業を続ける。
井戸近くで「あづいいいいいいい!」と言う叫び声が聞こえたが無視だ。
しばらくすると転げまわったのか泥だらけになった子れいむ戻ってきた。
もう動いても大丈夫なようだ。
そんなこんなで畑作業を夕暮れまで続けた。
途中で虫を追いかけた赤ちゃんゆっくりが穴にはまったり、用水路で帽子を洗っていたまりさが帽子を流されたりしたので途中から手伝いとはいえなくなっていたがそれでもいないよりははかどった。
井戸水で体を洗っているゆっくり家族のうち親ゆっくりだけを呼び出す。
「今日は良くがんばったな。」
「ゆっくりがんばったよ!これでまりさのこどもたちゆるしてくれるよね!」
「あぁ。ついでにこれもやろう。」
「ゆゆっ!おにーさんいいの!?」
「あぁお前は何もしてないからな。その分のお礼だ。これで今から餌取りに行かなくていいだろう。」
「おにーさんありがとう!」
俺が渡したのは収穫のときに虫食いがあったりで売れないものだ。
人は食べないだろうがゆっくりなら食べる。
巣にもどってから見せるようにと帽子の中に隠してやる。
洗い終わった子ゆっくりがやってきて、
「おにーさんやさいとってごめんなさい!」
「もうしません!」
「つぎからはきをつけるね!」
「ちがうところでゆっくちするよ!」
そうやって俺に謝って帰っていった。
これでもう野菜はとらないだろう。今回のことは十分記憶に残ったはずだ。
こうやって人里に入った子ゆっくりに人の強さを覚えこませてきた結果ゆっくりは人里で物を取ることはなくなった。
かといってゆっくりが人里に下りてこないわけではなく、先ほどのように人を手伝ったりして食べ物を貰ったりしている。
人とゆっくりは今ではそれなりにゆっくりと生活している。
最終更新:2018年03月18日 17:18