「いいか。着いてくるなよ。・・・じゃあな」
そう吐き捨てて遠ざかる背中。空からは雪が降っていて、辺り一面が白一色になっている。
どうして、と考えても自分が逃がされた理由が分からない。
とても寒い。こんな所、もともと私の住める環境じゃないのに。
こんな所で、これから独りで生きていくのか・・・。
ずっとボックスに預けられたままで、大してレベルも高くないのにどうやって・・・。
そんなことを考えていたら、辺りはいつの間にか暗くなっていた。雪は相変わらず降っている。
これから、どうしよう・・・。
逃がされてから、何日も過ぎた。
敵に襲われると、圧倒的に不利だった。レベルが違いすぎる。
懸命に逃げて、なんとか生き延びるような日が続いた。もう、体中が痛い。
もう、駄目だ・・・、私は雪の上に倒れた。
逃がされてから、何週間も経った朝だった。
私の上に、雪がどんどん積もっていく。眠いのか何なのか分からない。
その時、遠くに見覚えのある人影が、ぼんやりと見えた。
ああ、あれは・・・
「ったく・・・此処までくるのも一苦労だな・・・」
人目に付かないように、この雪が降っていて、あまり人がいない場所にポケモンを逃がす。
生まれたばかりだろうと、住む環境が全く違う場所だろうと関係無く。
前に逃がした奴らのことなんて考えてる暇なんてない。
逃がすために、目的地へと向かい、雪の中を歩いていく。
目的地に着くとポケモンを逃がす。
「いいか。着いてくるなよ・・・」そう言って。そして、また来た道を引き返す。
「・・・ん?」
雪の中に、何かが埋もれている。まぁ、草かなんかだろう。
俺は、特に気にもせず、また近いうち訪れるその場所を後にした。
・・・あなたは知らないのでしょうね。
あなたが何度も歩いているこの雪の下に、
私のように、住む環境が全く違う此処へあなたに逃がされ、この環境に耐えられなかったポケモン達、
生まれたばかりでどうしようもなく力尽きていったポケモンや、
その兄弟達が埋もれて冷たくなっている事を・・・。
作 2代目スレ>>426-427
最終更新:2008年05月06日 19:55