「ごめん…ばいばい、」
違う、そんな言葉が私は欲しかったんじゃない。
私が初めてあなたに会った時、あなたはとても嬉しそうに私を見ていた。
「僕の初めてのポケモン!」なんて言いながら。
とても嬉しそうに笑うから、私も嬉しい気持ちになったのを、今でもはっきり覚えてる。
その様子を見ながら優しく笑う、博士の顔も。
それからは、たくさんのことを見て、知りながら、旅をした。
四天王、と呼ばれる人とも戦った。傷だらけになりながら、チャンピオンも倒した。
毎日が楽しかった、のに。
ある日、私はボックスに入れられた。
いつまでもあの人は迎えに来ない。
それから何日か経って、私の周りには、私の進化前の姿の子がたくさん溢れるようになった。
どうしてだろう、胸騒ぎがする。
その時、あの人が来た。久しぶりに外へ出れるのだろうか。
「…そろそろボックスがやばいな、逃がすか…」と、声がはっきり聞こえた。
そして、あの人は私をボックスから連れ出した。
…久しぶりに外へ出れたのに、嬉しいなんて思えなかった。
あの人の隣りにいるのは、私と同じ姿の…
…私はもう必要無くなったのかな。
「僕の初めてのポケモン!」なんて言っていた幼い頃の彼の顔が、ぼんやりと霞んでいる。
目的の場所についたのだろうか。ボールから出される。
そして、「ごめん…ばいばい、」
………
私はそんな言葉が欲しかったんじゃない。
またあなたの為に戦って、一緒に喜び、悲しむことをしたかった。
どうせ別れるなら、そんなに悲しい顔をしないで欲しかった。
足早に去るあの人を、慌てて追いかける私と同じ姿のポケモン。
やがて、あの人は見えなくなった…
あれからどれぐらい経ったのかな…
私は今、かつて私が住んでいた場所にいる。
…野生の世界でも、何の問題も無く生きることが出来た。
あの人との冒険の中で、私はとても鍛えられていたから。
それでもやっぱり、どこか悲しい。
けれど、恨むとか、憎むとかは絶対に有り得なかった。
なぜなら、何があろうと、あの人は私の親で友でもあり、パートナーで、
そして最高のトレーナーだったから。
作 2代目スレ>>439-440
最終更新:2008年05月06日 20:00