※主人は災害から人やポケモンを救助するという仕事をしている設定です。



迂闊、だった。

目の前には崩れた天井の数々、そこらには倒れたイワークやイシツブテが。
右足は瓦礫の下敷きになって動かない。じわりと、血が滲んでいる。しくじった、畜生。
軽く舌打ちをして、隣で不安そうに見つめるパートナーにほほ笑んだ。


直にここも余震で崩れるだろう。
その前に、何とかしなくては。

残された狭い空間で小さなパートナー以外は出せそうもない。
例え出したとしても、重さや大きさでさらに被害が出てしまうだろう。
パートナーに頼んで、鞄に入ったありったけのボールで野生のポケモン達を回収してもらう、そろそろここも崩れる。
急がなければ。右足の感覚はもうなかった。
小さな手に沢山のボールを抱えたパートナーからそれを受取るとまた鞄に戻す。
ついでに腰に付いている他の仲間達を鞄に詰めた。最後にぎゅう、と抱きしめる。だいぶ不格好な終わり方だ。ごめんよ。

不思議そうに首を傾げた小さなパートナーに鞄を渡した。

「いいかい、これから言う事を絶対に守るんだよ」

元気良く、君は頷く。

「その鞄を持って直ぐに町まで走りなさい。そうすれば私と同じような仲間が待っているから。そうしてその鞄を渡しなさい。」

がらり、と背後で音が、鳴る。


「私の事は後から仲間が助けてくれるから、お前は安心していいからね。
なぁに、私は大丈夫よ。ちょっと疲れただけだもの。イワーク達の方が重傷だからね、そういい子だ」

がらがら。
君のおでこに小さなリップ音を立て。

「さぁ、お行き」

そう言って駆け出した君の背中を見て私は安心して目を閉じた。
暫くして私の居た場所は大きな音や土煙を上げる。

暗転後に転落。
真っ暗な私の世界に広がったのは貴方達と居た楽しかった記憶。



私は最期まで笑っていられたでしょうか。
貴方達の最高の"親"でいられたでしょうか。
危険な仕事に巻き込んでごめんね。
苦労させましたね。
頑張ってくれてありがとう。
私は、ちゃんと、貴方達を、愛してあげられた、でしょう、か、

わ、たし、は、、、、

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そうして、灯は消え揺る。


作 2代目スレ>>574-575

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最終更新:2008年08月28日 18:02