僕は捨てられた。理由は簡単、僕が弱かったからだ。
同じピチューでも、強さに違いがあるらしく、僕は弱い方に入っていた。
周りには、同じ様に捨てられたピチューが十数匹いる。皆、呆然と立ち尽くしているか、オロオロしている。中には、涙を流しているヤツもいる。
その中でも、僕は比較的落ち着いていた。性格が冷静なせいもあるだろう。
近くには主人、いや元主人というべきか、とにかく僕達のタマゴを持っていた人の気配がまだしていた。
なぜまだいるのか知りたくて、僕はそっと近付いてみた。

そこには僕達と同じ、ピチューがいた。しかし、僕達と何かが違う。僕がそこで感じた劣等感は、未だ忘れた事は無い。

主人は、そのピチューに話し掛けていた。風の流れからか、話し声が良く聞こえた。

「いいかピチュー、よく聞け。お前は強く生まれた。それは誇りに思っていい。
しかし相手が弱いからといって、馬鹿にしてはいけないぞ。相手も、一生懸命戦って、努力して、生きているのだから…。
そしてどうしよう無くて自然に返した、お前の兄弟達の為にも、頑張るんだぞ…。」

僕はその場を離れた。前述の劣等感と同時に、この時みた、主人の優しく、それでいて悲しそうな顔は、忘れる事が無いだろう。



あれから、長い年月が経った。
俺は運良くライチュウになれ、自然界を、逞しく生きている。あの時の兄弟は散り散りになり、生きているのか死んでいるのか分からない。
しかし、主を恨む気持ちは特に無い。あの時のピチューも、頑張っていて欲しいと思う。
何故恨まないかって?主は、大切なモノを知っていたからさ。それは…、

全ての生き物は、弱いのも強いのも、皆等しい命を持っている…

あの時の会話は、こういう意味だと、俺は信じている。


作 2代目スレ>>645

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年10月02日 22:04