「ん?エネコか。珍しいな。迷いポケモンか?
まいごのまいごのエネコちゃん♪あなたのおうちはどこですか~?」
コガネシティ南に位置する34番道路。そこでエネコと戯れているのはこの近辺で勤務中のお巡りさん
その様子を物陰から一人の男が見ていた
「…やれやれ。これだから我が国の警察はダメなんだろうな」
こんな所にエネコがいるのをまず疑問に思えよ。まあ、俺が逃がしたんだけどな
いわゆる廃人トレーナーからポケモンを預かり適当な場所を見繕って逃がす
ただそれだけでかなりの稼ぎだ。ポケモン逃がし屋―、我ながらボロい商売を思いついたもんだ
育てる途中で手に負えなくなったポケモンをどうにかしたい奴
無能とはいえ警察の目が届く範囲でポケモンを逃がすのをためらう奴
タマゴの孵化が忙しくて逃がしてる暇のない奴
ポケモンを逃がしている事を知られたくない「いい子ちゃん」のフリをしたい奴
客になりそうな奴はいくらでもいる
もちろん本当に適当に選んでいる訳じゃあない。下手に逃がすと足がつく
町の近くは残飯にあるつけるからどうにか生きてはいけるだろう。
この辺りにはすぐ近くに育て屋があり、完全に警察をナメきっているトレーナー達が
捨てていった野良ポケモンに紛れるし、運がよければ他の誰かに拾われるかもしれないな
例えば、そこで近くの雑草をネコジャラシにしているバカな警察とか
このエネコは可愛いからって繁殖させすぎて育てきれなくなった、と、どっかのババアから
引き取ってきた奴だ。今見えているのは一匹だけだが、全部で数十匹はいたはずだ…
良心は痛まない。何故なら、どんなにポケモンを逃がそうが俺のポケモンじゃないからだ
恨むならお前たちを捨てた元のトレーナーを恨めばいい。そう、心が痛むはずなんてない
…いつからこうなっちまったんだろうな。タマゴ技、個体値、性格、厳選……
ポケモンバトルの情報は急激に加速し、それに着いていけず取り残されていくトレーナーも多く出た
ある者は流れなんて気にせず自分の好きなように、ある者はトレーナーを辞め別の道に
ある者はてっとり早くポケモンを強化するために、怪しい機械に手を出す
そしてある者は、どうにか流れについていこうと努力し、あらゆる知識を身につけ
多くのポケモンを育て多くのポケモンを捨て、結果疲れ果て、その成れの果てが……
「今日のリストはこれだけか」
…ウパー1ボックスはキツイな。数匹づつ小分けにするか。まずは水辺のチェックからだな
たまに丁度いい場所を見つけてもコイキングで溢れているってことがよくある
コイキングならまだいいが、ギャラドスが寿司詰めの池を見たときは呆れを通り越して笑ったな
良心は痛まない。何故なら、どんなにポケモンを逃がそうが俺のポケモンじゃないからだ
この行動は正しいとは言わない事ぐらいは知っている。だがもう手遅れだ、引き返せない
もし俺が辞めたとしても、いずれ同じ事を思いつく奴が出るはずだ。俺が知らないだけで
すでに同業者がいるのかもしれない。完全に“仕事”と割り切ってしまえば楽になれるんだろうな
…顧客リストを処分できないのが俺の甘い所だ
作 4代目スレ>>212-213