「――この子に世界を見せてあげてくれ。」
私はどうやらゲン…という人から貰った卵から孵ったらしい。
卵から孵って、すぐにジョウトへと送られた。
新たな主人の後ろからいつも見ていた世界…。
多くの人と闘ううちに私は進化を遂げた。
ある日、主人と主人の友人が勝負した。
…結果は惨敗。手も足も出ないうちにやられてしまった。私は主人の力になれなかった…。
それからというもの、主人は私たちに見向きもせず
ディスプレイを見つめ、友人から受け取ったポケモンに着きっきりになった。
「――お前もう要らないよ。」
久しぶりの太陽の日差しを感じる中、主人は冷たく言い放った。
意味がわからず主人に顔を向けた瞬間、脇腹に強い衝撃を感じた。
「…よくやった、ゴウカザル。」
主人の無機質な声を最後に意識が途切れた。
…捨てられたのだ。私は…。
――世界を見せてあげてくれ―― か…。皮肉な物だ。思わず自傷的な笑みがこぼれる。
…さて、このままこうしていても何も変わらない。
しかし、野良ポケモンとして生きるつもりは無い。
確かこの道に沿って歩き、海に出ればジムがある。
格闘タイプと鋼タイプ…
可能性は無くは無かった。
あと少しで海が見える。
そのような所まで来たとき、突然通行人が道を開けた。
…いや、避けたと言うべきだろうか?
「なんで此処に来るのかしらね。」
「また来たの?いい加減警察に電話しません?」
自分の事を言われてると思いドキッとしたが、1つのワードが引っ掛かった。
…『また』?
いきなり男が大きな雄叫びをあげて迫ってきた。上半身は裸である。
…どうやら住民の不満の原因はコイツらしい。
「ウー、ハァー!」
「ウー、ハァー!!」
意味のわからない単語を叫び、男は前進する。
すると、こちらに気づいたのか、男は進路を変えてこちらに向かってくる。
その異様さに、逃げる事が出来ない。男は私の目の前で止まった。
「ジョウトでは見ない顔だな…。捨てられたのか?」
いきなりデリカシーのない奴め…。しかし事実は事実。仕方なく私は頷いた。
男はしばらく、う~んと唸った後に、
「席がちょうど1つ開いている。俺と来ないか?」
――
――――
そして、今。
私は此処にいる。
彼は強い。それは確かだ。
…ただ、1つだけ言うなら…。
シバ「今日はスリバチ山に行くぞ!ウー、ハー!!」
……まぁ、いいや。
ウー、ハー!
完
最終更新:2011年07月30日 22:46