私は今天国にいる、ギガレウスという名前のアルセウスの内の1匹です。

名前からも既にお分かりの通り私はまだこの世にいた時からアルセウスの姿をしてはいたものの本物ではありません。
これからそんな私の生い立ちと、私の元ご主人様のお話をしたいと思います。
これは、今から5年も昔のお話です。
私の元ご主人様は、クレナイという一人の若き少年でした。
2010年の秋の事、彼は初めてイッシュ地方のポケモンリーグで殿堂入りを果たし、
今度はプラズマ団との決着を着けようと、私が生まれてからも少しの間一緒に旅を続けた
ジャローダのジャロさん、ケンホロウのマメたろう、ガマゲロゲのがまくん、
シビルドンのうなぎいぬ、ヒヒダルマのダルマン、
そして私が生まれたのと入れ替わりで
ボックス送りになったオノノクスのキババの6匹でNとゲーチスの元に挑みました。
ところが、当時の元ご主人様のレギュラーだった6匹全員がレベル不足だった為か、
ゲーチスのゾロアークに完敗し、その後彼はチャンピオンロードなどで
ポケモン達をある程度鍛え、何度も何度も二人に挑みました。
しかし、毎回毎回ゲーチスに敗北する事の繰り返しで、酷いスランプに陥っていたのです。
この出来事が、そんな私が誕生する事になったきっかけである事はまちがいないでしょう。
そして、何回戦ってもゲーチスに勝てず途方にくれていた元ご主人様は、遂に最強のポケモンを製造できる
怪しいマシンをどこからか手に入れてしまったのです。
勿論、このマシンを使用して最強の改造ポケモンを作り、使用する事は
イッシュ地方は勿論全国の法律で禁じられておりましたが、
元ご主人様を初め一部の心無いトレーナー達は当たり前のように使用しており、
私のように不正な改造ポケモンが作られていた事が当時大きな社会問題となっていました。
やがてあまりに多発するこの事態に、
警察の力だけではとても対応できず、改造ポケモンの摘発や対策は
月日が流れると共に難しくなっていました。
そんな当時問題となっていた不正な改造ポケモンの1匹である私を生み出した元ご主人様は、
生まれてまもなく「かっこいい名前をつけてあげるね。」といって、
私にギガレウスという名前をつけてくれたのを覚えています。
その後、生まれて間もない私の大活躍によって、遂に念願のゲーチスに勝利し、
プラズマ団を壊滅させた事で、元ご主人様はイッシュ地方の平和を取り戻す事ができました。
更にまた暫く経って、ここでも私の大活躍により
二度目のポケモンリーグでチャンピオンのアテグに勝利を収めた彼は、
遂にイッシュ地方最強のポケモントレーナーの座に輝く事ができました。
当時の元ご主人様の輝かしい活躍は、テレビのニュース番組や新聞などでも
度々報道され彼はイッシュ地方のみならず全国のトレーナーからも
非常に尊敬される存在になっていました。
そう。彼の数々の功績は私という不正な改造ポケモンの
おかげであったことなど、
前述の通り当時違法な改造ポケモンの摘発が思うように進まなかったために、
誰も知る由はありませんでした。
あの運命の日が訪れるまでは。
2010年12月の初めごろ、すっかり最強のトレーナーの座に輝き、浮かれていた元ご主人様は、
その後も私を生み出した例のマシンを利用して、
元ご主人様が運命の日を迎えるまで一緒に旅をした
黒いレックウザのアビス、ホウオウのハジメドリ、
ルギアのアギラスをはじめとした
イッシュ地方では見られない最強伝説ポケモン達を続々と不正に生み出し、
終いには通常のトレーナーではまず手に入れる事の不可能な
色違いゲノゼクトのゲノム、そしてこれまた色違いのメロエッタのめろにゃんという
幻ポケモンを生み出す事にまでエスカレートしていました。
彼が運命の日を迎えるまで、私とこの5匹で旅を続け、
イッシュ地方のみならずホウエンやオーレ地方などの大会にまで進出し、
常に優勝を誇っておりました。
しかし、もう運命の時は刻一刻と迫ってきていたのです。
それは、2010年12月23日の事です。

その日の午後、元ご主人様はクリスマスにオーレ地方で開催される世界大会に出場する為、
宿泊先の高級ホテルへ向かう為愛車のバイクで高速道路を走行中、
突然パトカーに呼び止められ二人の警察官からの検問を受けました。
私はあの時の検問が今までの人生で一番忘れられない出来事でした。
二人の警官は、すぐ元ご主人様にトレーナーカードを提示させ、
私を含む手持ちポケモン達の厳密な能力検査を何かの機械で行いました。
あの時私はまさかとは思いましたが、とうとう改造ポケである事がばれてしまったのか、
これでおしまいなのかと思いました。
検査の結果、私を含む全ての手持ちポケモンが不正に作られた改造ポケである事が明らかになり、
元ご主人様は「改造ポケモン取締法違反」の罪で現行犯逮捕され、
すぐパトカーに乗せられた彼はイッシュ地方の警察署へと送られました。
そこでは毎日元ご主人様と刑事さんの間での厳しい取調べが続きました。

更に逮捕された当時彼が所持していた私を含む6匹のほか、
私たちが生まれるまで使用していたボックス内にいた皆を含む
全てのポケモン達が
証拠物件として警察に押収され、厳しい鑑定が毎日行われました。
あの時、私も他のポケモン達も、
ご主人様が逮捕された事で主を失ってしまい、
この後どうなってしまうんだろうと、
毎日警察署内の暗い証拠品保管場で泣いていたのを思い出します。 やがて、年が明けた2011年2月半ばのある日、元ご主人様が拘置所へ移送される日が訪れ、
同時に私たちを含む元所有ポケモン達も拘置所へ移送されることとなりました。
それから更に数日後の3月初頭、いよいよ彼がブラックシティにある最高裁での
初公判が行われる日が訪れました。
彼の裁判は何日も続けられました。
更に月日が流れ、元ご主人様が逮捕されて3ヶ月が経過した4月半ばのある日。
遂に彼の判決が下される日が訪れました。
同時に私たちのこの世での命が終わる事が確定した日でもありました。
元ご主人様の判決は、「不正な改造ポケモンを度々生産・使用した事で
公平なバトルを望んでいた多くのトレーナー達に多くの迷惑と、混乱を与えた事は
許されるべき行為ではない」として、「懲役4年」、「ポケモントレーナーの権利の失格」、
「全所有ポケモンの殺処分」の実刑判決が下されました。
そして判決を下された彼は、サザナミタウンにある刑務所に服役する事になりました。
やがて、彼が刑務所に送られてから3日後、
私たちを含む元ご主人様の全ポケモン達が、殺処分の為イッシュ地方から遠く離れた
どこか知らない土地にある保健所へ運ばれる日が訪れました。
私たちは、彼が判決を下されるまでの数ヶ月間過ごした拘置所を後にし、
モンスターボールに閉じ込められたまま青い箱に入れられた上で
トラックに載せられ2時間余りの距離をゴトゴトと運ばれました。
そして、遂に保健所に到着し職員の手によってボールから取り出された私たちが目にしたものは、
ベルトコンベアに乗せられた数え切れないほどの数のポケモン達の姿と、
コンベアの一番先にある溶解炉でドロドロに溶かされるポケモン達の痛ましい姿でした。
恐らく、多くの心無い全国の廃人達に逃がされた生まれたての性格不一致や低固体値のポケモンたちでしょう。
運ばれたポケモン達は今まで元ご主人様との旅先での野生で会ったものから御三家まで様々でした。
私たちがベルトコンベア上に乗せられる直前に目にした一番先の溶解炉に落とされ、
溶かされる寸前に断末魔をあげるポケモン達の姿は今でも忘れられません。
とうとう、私たちが殺処分される番になりました。
他のポケモン達同様に、職員の手でコンベアに乗せられる直前に鉄の鎖で拘束される私たち。
私を含め100匹以上のポケモン達全てが溶かされるべくコンベアに乗せられました。
私を含めみんなは先に殺処分されたポケモン達以上に叫び声を上げました。
溶解炉に落とされる寸前まで、私の頭の中では元ご主人様との数々の思い出が
走馬灯のようによみがえりました。
ゲーチスを倒した日の事、強化四天王とチャンピオンに勝利した事、
多くの他地方の大会で優勝した事など。
他のみんなが先に溶解炉で断末魔をあげながら溶かされていく中。
そして、私は遂に溶解炉に落とされました。
溶解炉に落とされたと同時に、断末魔をあげ、段々自分の身体がなくなっていく気がしました。
私はこうしてこの世での短い生命を終え、元ご主人様の相棒全員と一緒に天国へ旅立ったのです。
最後に天国の私から、元ご主人様と全国のトレーナー達にメッセージを送ろうと思います。


元ご主人様であるクレナイと、全国のトレーナー達へ


元ご主人様のクレナイ君へ、私と共に暮らした日々はいかがでしたか。
私は今天国であなたの他の相棒達と共に幸せな毎日を送っています。
あなたはそろそろ刑務所から出所し心を入れ替えて新たな人生をやり直そうとしている頃だと思います。
でも、決して忘れないでください。こんな私を生み出してしまった事で、
あなたがトレーナーになってから初めて殿堂入りを果たすまで共に旅をした、
何の罪もないジャロさんのほか、マメたろうやダルマン、
うなぎいぬやがまくんたちを初めとした数多くの大切な相棒達が犠牲になってしまったことを。
あなたがこんな私や他にも散々改造ポケたちを生み出さずに、正々堂々とバトルをしていれば、
こんな悲しい結末にはならずに済んだはずです。
あなたはこれからあなた自身の愚かな行いで、何の罪のない数多くの仲間たちの生命までもが
奪われた罪をこれから一生、償っていかなければなりません。
その事をいつまでも忘れないで、私たちの分まで生きてください。
私たちはこれからも、あなたの人生を草葉の陰から見守っています。
それと、もう1つ。これは全国のトレーナー達に私が言っておきたいことを
2つほど述べたいと思います。

「改造ポケモンはダメ、絶対。」
「厳選=ポケモン達の生命を粗末にする事です。」


byアルセウス(NN:ギガレウス)より

おしまい

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最終更新:2015年12月06日 09:24