僕の名前はコイキング。数日前心無いトレーナーに捨てられたポケモンの1匹です。
3年前とある海の底で生まれた僕は生まれて暫く後にとある釣り人のおじさんに吊り上げられました。
このおじさんは僕の一人目のご主人様にあたるのですが、彼は大変僕を粗末に扱う人でした。
彼は本当は、僕の未来の姿であるギャラドスというポケモンが欲しかったようですが、あちこちの海や川や湖で何回釣りをしても
出来損ない僕の兄弟しかつる事ができず、泣く泣く進化前の僕を何とかギャラドスに進化させじっくり強いポケモンに育てようとしたつもりで
こんな出来損ない僕のご主人様になったのだと思います。
おじさんは、僕を釣り上げてすぐに、「早く大きくなって強いポケモンになるんだぞ」といったのを覚えています。
しかし、僕と一人目のご主人様であるおじさんとの生活は最悪なものになってしまいました。

僕のご主人様になってすぐ彼は僕を一日も早くギャラドスに進化させ、強いポケモンに育てようと
沢山の野生ポケモンやトレーナーとのバトルに出されました。しかし、僕はいくら頑張っても
ただはねる事しか出来ず、戦いに出るたびに完敗を味わい、おじさんにしごかれる毎日でした。
その後も僕は何度も何度もバトルに負け続け、こんな情けない僕にとうとう愛想を尽かした一人目のご主人様は
ある日、お月見山にあるポケモンセンターで僕を500円という破格の値段でよそのトレーナーに売りつけることにしました。
僕が安値で売りに出されてから僅か数日後、僕をある一人の少女が買ってくれたのです。
彼女は、後に僕の二人目のご主人様となる新米トレーナーでした。
それを裏付けるかのように、彼女は僕を買ってくれる前にニビジムで手に入れた最初のバッジをつけていました。
でも、当時僕はなぜこんな情けない自分を買ってくれる人がいるのか、不思議に思いました。
そう。僕を買ってくれた当時の彼女の手持ちポケモンは、ヒトカゲとバタフリーとピカチュウ、コラッタやポッポの
姿がありました。恐らく、長らく水ポケモンが手に入らなかったからこそ、こんな僕を期待して買ってくれたのだと思います。
僕はこれで彼女の元でやっと幸せに暮らせる、ギャラドスに進化するまで育ててくれて、強いポケモンになれる。
そう思っていたのですが、それは大きな勘違いでした。
まさか最初のご主人様と同じような事になるなんて思いませんでした。
彼女は次の町ハナダシティへ向かうためお月見山を通り僕は野生のズバットたちや
ロケット団員が繰り出すポケモン達を相手にいくらかバトルにも参加しました。
しかし、ただはねることしか出来ない僕がバトルに勝てるはずもなく、1度目の野生のズバットとの戦いでは
ズバットの吸血攻撃1発で大ダメージを食らいすぐにピカチュウに交代させられ、
2度目のトレーナーとのバトルではタイプ上本来は有利なはずの山男のイシツブテの体当たり攻撃
1発で瀕死になり、交代したバタフリーの念力攻撃で彼女は何とか敗北を免れましたが
僕は一度もバトルに勝つことは出来ませんでした。
何とかハナダに到着することが出来た彼女ですが、バトルに出ても勝てない僕に
早くも愛想を尽かしてしまったようでポケモンセンター到着後僕はすぐにボックス送りに
なってしまいました。僕はまたもや、一人目のご主人様であるおじさん同様に新米トレーナーの少女からも見捨てられ
それから運命の時が訪れるまで他のポケモンや人間達に関わることなくボックスの中で長い眠りに付きました。
そんな日々が1年以上続きました。僕は夢の中で、いつ何処に捨てられてしまうのだろう。
また新たな人間に売りとばれるんだろうか。僕を粗末に扱わずギャラドスに進化できるまで
大切に育ててくれる親切な人間はいないのか。と思い続けていました。
そう思い続けている間にも、月日の流れと共に僕が眠るボックスの中では生まれてから見たことも無いような
強そうなポケモン達で次第に溢れかえってきました。
やがて、僕に運命の日が訪れました。
それは、僕がボックス送りになってから1年以上が経過したある日の事です。
僕が眠るボックスの元に、ある一人の少女が訪れました。
僕は、最初見たときはあまりにも大人びていて分かりませんでしたが、
よく見るとあの時僕を見捨ててボックス送りにしたトレーナーの少女である事が分かりました。
どうやら彼女は、ポケモンリーグを制覇し、今度は全国図鑑完成に向けての旅を続けているようでした。
手持ちには僕も見たことない強い顔ぶれがそろい、その内の1匹には僕の未来の姿である進化系のギャラドスの顔もありました。
僕はこの時とてもショックを受けました。あの時なぜ、僕をあんなに粗末に扱うんだよ、
どこで僕が大人になった姿なんか見つけてきたんだよ、と怒りも覚えました。
やがて、彼女は数多くのポケモンでいっぱいになったボックスの中を整理し始めました。
その時です。僕は彼女に1年以上ぶりに連れて行かれました。
あの時僕は不思議に思いました。なぜ、僕の未来の姿のポケモンを手に入れたはずなのに、
今更こんな僕を連れ出すのだろうと。
やがて彼女が自転車を走らせる事1時間半余り、とある海岸に到着したようでした。
そして、僕にとうとう運命の時が訪れたのです。
彼女は僕を1年ぶりにボールから取り出しました。ふと見るとこの海は3年前僕が生まれた海だったのです。
そう、一人目のご主人様であるあの釣り人のおじさんに釣り上げられた場所。
僕はこの海をふと目にした瞬間本当に懐かしい気持ちになりましたが、ここからが最大の問題です。
なんと少女は、僕にさよならの言葉を交わすことなく、僕を海の底に捨ててしまいました。
その時の僕はとても複雑な気持ちになりました。生まれ故郷の海に里帰りできたものの、
またもや人間に粗末に扱われた末、捨てられてしまうことを・・・。
そして、2年以上ぶりに帰った僕の生まれ故郷は、すっかり荒れ果てたものでした。
生まれたばかりの多くの水ポケモン達で溢れかえっていたのです、恐らく多くの廃人トレーナーが逃がした
低固体値・性格不一致の仲間たちなのでしょう、僕の沢山の兄弟のほか、仲には各地方の水御三家までさまざまでしたが、
こんなに痛々しい光景を見たことは今までありませんでした。 僕は生まれてまもなく捨てられたわけではないものの、本来なら大切に長い目で
育てれば強いポケモンになれるはずが、二人のトレーナーに粗末に扱われた末、
捨てられた始末というある意味世界一不幸なポケモンなのかもしれません。
でも、僕は今でも、毎日生まれ故郷の海の中で沢山の兄弟達と、親切なトレーナーの元の
手にされ大切に育てられ、ギャラドスになることを夢見ています。いつの日かまだ分からないけど・・・。

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最終更新:2015年12月06日 22:50