僕の名前はマルマイン。僕は10年ほど前、あるトレーナーに瀕死状態のまま捨てられ、今は天国で
沢山の他のポケモン達と楽しく暮らしています。これからそんな僕の自己紹介をしたいと思います。
今からさかのぼる事10年前の2005年の秋、僕はニューキンセツというキンセツシティのすぐ近くにある
発電所で生まれました。僕はここで生まれてから長らくの間、同じくここで生まれた沢山の兄弟達や、
コイルやレアコイル達と一緒に仲良く楽しい生活を送っていました。
やがて、僕が3歳の誕生日を迎えてから暫く経ったある日のこと、僕はとある
ポケモントレーナーの少年と出会い、モンスターボールで捕獲されて一緒に旅をする事になりました。
僕はご主人様となる彼にゲットされ、旅をする事になって大変嬉しい気持ちになりましたが、
ゲットされた直後、ご主人様は僕に大変厳しい約束事を言い渡したのです。
そして、この約束事が後に悲劇を生む事になるとは、思いもしませんでした。
その約束事とは、これらのようなものでした。
1.回復にはポケモンセンターを一切使用禁止とし、傷薬などの回復用の道具のみを使用する。
2.瀕死になったポケモンは、戦列から別れなければならない。
(つまり瀕死になった時点で野生に逃がす、元気のかけらも使用禁止)
僕はそんな事を聞いた時最初は戸惑いましたが、
ご主人様との約束を守り通し共に殿堂入りを目指す事を決意しました。
ご主人様のほか、仲間になった当時旅仲間であったヌマクローのゴローさんや、キノガッサのココちゃん、
ドンメルのドンちゃん、オオスバメのつばくろう君、マッスグマのジグたろうと共に・・・。
御主人様が最強のトレーナーとなり僕が世界一強いポケモンになるという大きな夢をかなえるためにも。
僕はご主人様に、僕がモンスターボールに似ているからか、もん太という素敵な名前をつけてくれました。
そして、ご主人様の仲間になった僕は、数多くのジムリーダー達や、憎きマグマ団や、ライバルを相手に、
数多くの戦いで勝利を収めていきました。
しかし、そんな僕の輝かしい活躍の裏で、悲しい出来事も沢山経験しました。
ご主人様の厳しい縛りルールにより、ジム戦やライバル戦、マグマ団幹部戦があるたびに
戦いに敗れた他の沢山のたび仲間たちが瀕死のまま野生に捨てられていきました。
僕はそんな機会が度々訪れるたびに、涙をこらえながらこんな事を心の中で思いました。
「瀕死状態のまま捨てられた皆はこれからどうやって生きていくのだろう。
餌も食べられないんじゃないか。そのうち餓死したり、事故にあって死んでしまうのではないか。」と。
でも、そんな事はとてもご主人様の前で口に出す事ができません。もしもご主人様に、
「瀕死のままポケモンを捨ててしまうなんて、余りにも可哀相じゃないか!とても生きていけないじゃないか!」
などと反抗したら、ご主人様は怒りの余り俺を裏切った奴は問答無用で切り捨てる
といって、僕を捨ててしまうと思いましたから。
こんな日々が何日も続きました。今までのお別れで一番悲しかったのは、
僕と共に旅をした時間が一番長く最後のマグマ団戦で敗れたラグラージのゴローさんとの別れでした。
ルネシティ周辺のどこか遠い場所でお別れの時、ゴローさんは満身創痍の身体で最期の力を振り絞って
「俺の分までポケモンリーグ優勝目指して最強のトレーナーになれよ」と僕らにいってくれました。
そして、その言葉を最後にゴローさんは僕らの目の前でお空に旅立ったのです。
ご主人様も僕も他の皆も、誰もが大きな鳴き声をあげながら涙を流しました。
もっとも、ご主人様にとって一番付き合いの長い相棒でしたから。
でも、この別れの後暫くしてご主人様との別れが訪れるとは思いもしませんでした。
数多くの辛い別れも経験しながら、沢山の強敵たちとの厳しい戦いで勝利を収めるにつれ、
僕はいつの間にかビリリダマからマルマインに進化を遂げる事ができました。
そして、僕が旅を始めてから3ヵ月後、最後のジムバッジを入手し、グラードンを仲間にする事に成功した
ご主人様は、ポケモンリーグに挑戦し最強のトレーナーとなるべくチャンピオンロードへ向かいました。
まさか、これが僕とご主人様の永遠の別れになるなんてちっとも思いません。
それどころか、僕たちがポケモンリーグで大活躍を収め、ご主人様を最強のトレーナーにしたいという
気持ちでもういっぱいでしたから。
やがて、運命の時が訪れました。ご主人様は、ポケモンリーグ出場権を得るため、
ミツルとの最終決戦に挑む事になりました。ミツルのチルタリスやレアコイルなどの強力なポケモン達に苦戦する僕達。
それでも何とか彼が繰り出す4匹のポケモン達に仲間全員が無傷のまま勝利し
相手のポケモンは残りただ1匹のみとなりました。
ミツルはサーナイトを繰り出しました。サーナイトの余りに強力すぎる力で、
他のポケモン達は今まで以上に大苦戦を強いられました。
その上ご主人様のオオスバメ、ギャラドス、マグカルゴ、が次々と敗北し、
ご主人様の残りのポケモンは僕を含めわずかに3匹と追い詰められました。
彼らが戦いに敗れた後、いよいよ僕の出番となりました。僕は絶対に勝つ、
負けた仲間たちの分まで頑張ろうと誓いました。
しかし、ご主人様との別れはもうすぐ近づいていたのです。
サーナイトが繰り出す猛攻に、僕も負けじと攻撃を続けました。
その内、僕も相手のサーナイトも共に残りHPわずかの満身創痍となりました。
ご主人様もミツルも回復用道具を全て使いきり、トレーナーまでもうボロボロの状態でした。
そして、そんな満身創痍の僕に、ご主人様は衝撃の命令を出します。
ご主人様「マルマイン!早くサーナイトに止めをさすんだ!自爆しろ!」
そんな命令を出され、僕は遂にご主人様に歯向かってしまいました。
「嫌だ!何で俺が、死ななきゃいけないんだ!一緒に約束したじゃないか!共に
ポケモンリーグで殿堂入りして、最強のトレーナーになるって。」
僕がそんな言葉を吐くと、ご主人様は僕に雷を落としました。
ご主人様「俺がリーグに出場する為には、これしかもう方法はないんだ!早く!
いつまでももたもたしてると他の皆まで犠牲になるんだ!このままでは、全滅する!
もしここで俺が負けたら僕らの今までの努力は全て水の泡になってしまう!
俺はこれ以上ポケモン達を犠牲にする訳にはいかない。絶対にかつんだ。
そのためには、今はこれしか方法がないんだ!」
ご主人様のそんな言葉を聴いて、満身創痍の身体で僕は、遂に自爆しました。
ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
ものすごい爆発音と共に、ものすごい炎と煙が吹き上がりました。
この爆発で相手のサーナイトは遂に力尽きました。
ご主人様は、見事、ミツルに勝利を収めました。遂にリーグへの出場権を得たのです。
ご主人様「勝った!遂に勝ったんだ!ポケモンリーグへの出場権を得たんだ!」
ミツル「いい勝負だった。ありがとう。君はきっと、このまま勝ち進んで、リーグで殿堂入り出来るよ。
僕の分まで頑張って!」
そういうとミツルはチャンピオンロードを後にしました。
ご主人様はミツルが去った後、すぐポケモンリーグに向かうかと思いきや、またどこか別の場所へ向かいました。
御主人様は、戦いに敗れた他の3匹の傷ついたポケモン達をそれぞれの元々いた場所に
逃がしていきました。沢山の涙を流しながら。
そして遂に、僕とのお別れの番になりました。
僕の生まれ故郷のニューキンセツにたどり着くと、傷だらけの僕をボールから取り出しました。
ご主人様「マルマイン、俺は絶対、お前の分まで頑張って、最強のトレーナーになって見せるからな・・・。
いつまでもここで幸せに暮らせよ。」
マルマイン「ごめんねご主人様。僕ポケモンリーグ、出たかったけど、出られなかったね。
でも、あの時僕のおかげで勝てたんだよね・・・・。」
ご主人様「そうだ。だから絶対お前の分まで頑張る。バイバイマルマイン。」
こうしてご主人様は、ミツル戦で傷つき倒れた満身創痍の僕の元を去っていきました。
そして翌朝、僕は天国へと旅立ちました。今まで犠牲になった仲間たちのところへ。
月日は流れ、僕が天国に旅立ってから今年で10年の歳月が経ちました。
僕はご主人様に、メッセージを送りたいと思います。
ご主人様へ
お久しぶりです。僕は天国で沢山のポケモン達と幸せに暮らしています。
きっと、ご主人様も今頃は全国各地のリーグや大会で優勝し、世界一のポケモントレーナーに
鳴っていると思います。僕は10年前、辛い事も沢山あったけど、ご主人様と出会えて、一緒に旅が出来て、
本当によかったと思います。僕が亡くなる前の日にミツルと戦った時自爆して、
ご主人様や他のみんなとポケモンリーグに出るという約束が果たせなくて、本当にごめんなさい。
僕はこれからも、ご主人様や他のポケモン達を草葉の陰から見守っています。
またいつかご主人様や他の皆と再会できる事を祈っています。
だから、天国の僕と再会できるまで、世界最強のトレーナーである事を誇りに、
これからも、沢山活躍してください。
さようなら。
マルマイン