ここはグローバルトレードステーション。全国のトレーナー達がwi-fiを利用して
ポケモン交換を行う場所です。この場所では片方のバージョンでしか入手できないポケモンや、
ストーリー中1匹しか手に入らない御三家ポケモン同士を交換する人たちで毎日賑わっています。
しかし、この場所ではもう10年ほど前から、当たり前のように存在する問題が多発していました。
それらの問題の1つ目は、自分が譲渡するポケモンに釣り合わないポケモンを求めている連中が多い事、
2つめは、譲渡するポケモンに詐欺コメントをつけた上で相手から珍しい伝説ポケモンを
巻き上げてしまう行為が多発している事です。
GTSを利用している人なら、誰もが目にした事があるでしょう。欲しいポケモンをミュウツーなどの世界に1匹しか
存在しない伝説ポケモンを希望しているにもかかわらず、自分があげるポケモンは
ホルビーやジグザグマやケムッソなどの最弱のポケモン達・・・。
このような交換条件を出す余りにも馬鹿すぎる奴らは、まともな交換を望む
トレーナー達にとっては検索妨害のいい迷惑でしかなくなっていました。更に、最近では自分のあげるポケモンが持つ特性が夢特性ではないにもかかわらず、
強力な夢特性を持っているというウソのコメントをつけたり、そこらへんの草むらで
適当に捕まえてきたクソ個体値のメタモンたちに個体値6Vというウソのコメントをつけて
預け、伝説ポケモンを相手から奪う迷惑な連中が増えていき、GTSはますます
伝説乞食どもの巣窟となってしまいました。
しかし、これらのような詐欺やクレクレよりもっとGTSでの大問題を起こしている
一匹の虫ポケモンが存在している事をわれわれは忘れてはなりません。
その虫ポケモンの名前は、2年前に発見されたちょうちょポケモンのビビヨンというポケモンでした。 ビビヨンは、もはや今更皆さんに説明の必要もないでしょう。
全国各地で発見されたいわゆる序盤虫ポケモンの1匹です。幼虫のコフキムシから、
さなぎポケモンのコフーライへの進化を経て、やがて成虫になると美しいちょうちょポケモンへと
進化することが出来るのです。更に、ビビヨンは先輩格にあたるバタフリーやアゲハントなどの
他の序盤虫ポケモンよりも、非常に優れた能力を持っているため、多くのトレーナー達に人気がありました。
しかしビビヨンの人気の理由はそれだけではありません。彼らは、生まれた地域によってそれぞれ18種類の違う模様の
姿に進化するため、多くのトレーナー達は、GTSのほか、交換掲示板では世界中の全ビビヨンを集めようと
争奪戦になっていました。だが、この生まれた地域により違う模様の姿になるという
特徴が、ある1種類のビビヨンにとっては悲劇を生んでしまう結果になってしまうわけです。2年前の秋にビビヨン一族が発見されて以来GTSではさまざまな模様のビビヨンたちを
集めようと多くのコレクターたちがビビヨン同士を交換したり、はたまた珍しい伝説ポケモンたちを
手放してでも貴重種のビビヨンたちを入手しようとするマニア達で溢れかえっていました。
自ら伝説ポケモンをGTSに預け、ビビヨンを希望するトレーナーもいました。
しかし、これらのようなトレードは次第に問題だらけになってしまいました。
ポケモントレーナーの多くは日本人が大多数を占めていました。
最近では海外のトレーナーも少しずつ増加しているようですが、依然として日本人の
トレーナー人口が1位をキープしていました。ですから、トレーナー達の持っている
殆どのビビヨンは日本産の紫色のビビヨンです。勿論このビビヨンの価値は
他のビビヨン達と違い価値はないに等しく、コイキング以下の価値同然になっていました。
そしてビビヨン同士の交換を望む多くのトレーナー達や、伝説ポケモンを手放してでも
貴重種のビビヨンを求めるマニア達に無価値な紫色のビビヨンを贈りつける詐欺や嫌がらせ行為が
多発していってしまいました。
当然、伝説ポケモンを奪われた上に無価値な紫色のビビヨンをつかまされた多くのトレーナーは
怒り心頭でした。勿論、世界のビビヨン同士の交換を望んでいたトレーナー達も同様でした。
彼らは、無理矢理つかまされた何万匹もの紫色のビビヨンたちを逃がし、保健所送りにしていきました。
ですので保健所では、多くの廃人トレーナー達が逃がした沢山のクソ個体や性格不一致の個体を殺処分する作業に加え、
近年では沢山のトレーナー達に捨てられた紫色のビビヨンたちの殺処分にも追われ、ポケモンを殺処分する職員の人手も
不足し、更にはポケモンを殺処分する保健所も不足するという最悪の事態となってしまいました。
沢山の生まれたてのポケモン達に混じって保健所のガス室で殺処分された
数え切れないほどの数の紫色のビビヨンたちの亡骸が、火葬場で燃やされ、
天国へと旅立っていきました。天国では亡くなった人間や動物たちのみならず、沢山のトレーナーに
捨てられ殺処分された生まれたてのポケモン達が人間に捨てられた憎しみや怒りを共に思いながら、
暮らしています。そして、同様に捨てられた沢山の紫色のビビヨンたちが今日も
天国の広い広いお花畑を飛び回っていました。
恐らく、こんなにまで数々の悲劇を生むポケモンは成虫になることさえできないミツハニー♂と
コイキング以下の価値同然である紫色のビビヨン以外ないことでしょう。
彼らのような沢山の悲劇を生むポケモン達が将来また誕生しませんように。
おしまい